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洋書でブレイク

パンツ一丁で悪と戦うずっこけヒーロー

“キャプテン・アンダーパンツ”は、悪ガキ小学生のハロルドとジョージが考え出す自作マンガの主人公だ。
「スーパーヒーローってさ、みんなパンツみたいなのをはいて、飛びまわってるでしょ。だけどこいつは、ほんもののパンツをはいて飛びまわるんだ!」
 ふたりはげらげら大笑いしながら、鉛筆でかりかりとマンガを描く。
 ああ、馬鹿話をしながら、ノートにマンガを描いて自己満足にひたるこの姿、うちの息子たちにそっくりだ! 小学生の生態は日本でもアメリカでも大して変わらないらしい。
 当然のことながら、このシリーズは、たちまちアメリカの子どもたちのハートをとらえた。97年に発売された THE ADVENTURES OF CAPTAIN UNDERPANTS は、昨年2月までに100万部を売り、第2巻も発売から1か月で5万部を突破した。
 さて、悪ガキたちの鉛筆の先から生まれたこの“キャプテン・アンダーパンツ”だが、物語中で実際に活躍するのは、なんとふたりの通う小学校の校長先生だ。何がどうしてそうなるのか、その辺は実際に読んでいただくとして、一番笑ってしまうのがこの校長先生の変身ぶり。大の子ども嫌いで、いつも眉間にしわを寄せている先生が、服もカツラも脱ぎ捨てて「トララララ〜!」と町に飛びだし、地球侵略をたくらむ“ドクターおむつ”や“人食いトイレ”に敢然と立ち向かう。このとぼけた味がたまらない(あ、でも今思わず眉をひそめてしまった方は、読まないほうがいいかもしれない。ほんとに)。
 作者のデイヴ・ピルキーは、幼いころひどく「落ち着きのない」子どもで、学校では年がら年中、机ごと廊下に出されていたという。そのとき廊下でひとり描き続けたマンガの主人公こそ“キャプテン・アンダーパンツ”だった。だからハロルドとジョージは作者の分身だし、おこりんぼの校長先生がずっこけヒーローに変身する物語には、一言では語り尽くせぬ作者の思いが込められている。
 子ども時代の夢と反骨心をでっかい笑いに包んで、“キャプテン・アンダーパンツ”は今日も町をゆく。「トララララ〜!」
                                                           

 (内藤文子)
THE ADVENTURES OF CAPTAIN UNDERPANTS
by Dav Pilkey, 1997
(Little Apple $3.99 121pages)
未訳

「キッズBOOKカフェ」(月刊『翻訳の世界』2000年5月号掲載)のホームページ版です。

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