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やまねこ調査隊

第6回 意外なヤングアダルトの宝庫、東京創元社を訪ねる

〈ウィーツィ・バット ブックス〉全5巻

「ウィーツィ・バット」表紙
〈ウィーツィ・バット ブックス〉全5巻
フランチェスカ・リア・ブロック著
金原瑞人・小川美紀訳
(東京創元社 本体各980円)
第1巻『ウィーツィ・バット』が10月刊行。

 東京創元社といえば、一般の読者にはミステリやSFの出版社というイメージが強い。だが同社は『エイプリルに恋して』(メルヴィン・バージェス著/雨沢泰訳)や『ローン・レンジャーとトント、天国で殴り合う』(シャーマン・アレクシー著/金原瑞人・小川美紀訳)など、海外の優れたヤングアダルト作品も手がけており、児童書ファンにとっても目の離せない出版社だ。そこで今回、やまねこ調査隊は、東京・飯田橋にある同社編集部を訪ね、社内でのヤングアダルト作品の位置付けや今後の展開などについて、編集者の松浦さん、山村さんに話をうかがった。

 実は、編集部には特にヤングアダルト作品の担当者がいるわけではない。出版する作品を選ぶときは、ヤングアダルトや児童書というカテゴリーをあまり意識してはいないという。東京創元社のカラーに合った、おもしろい作品を幅広く探しているうちに、たまたまヤングアダルト作品にめぐり合うのだそうだ。また、「外国の児童書には、日本で児童書として出版するには馴染まないようなハードな内容の小説もあります」という松浦さんの言葉のとおり、作品が優れていても児童書出版社からはなかなか出版できないというケースが少なくない。「そういった、埋もれてしまうには惜しい作品も、当社なら出すことができます」と山村さん。これは、ヤングアダルト作品を一般書と区別せずに出版している東京創元社ならではの強みだろう。

 99年秋から2000年にかけて刊行される本を紹介してもらった。まずは、10月から毎月1冊ずつ刊行される〈ウィーツィ・バット ブックス〉全5巻(フランチェスカ・リア・ブロック著/金原瑞人・小川美紀訳)。つきあい始めた彼がゲイだと知り、ふたりで一緒にボーイフレンドを探していると、ある日ランプの精があらわれて願いを3つだけかなえてくれるという……。こんな突飛とも思えるストーリーの中に、ティーンエイジャーの抱える問題がリアルに描かれており、アメリカで大人気のシリーズらしい。「日本でも若い人にぜひ読んでほしいですね」(山村さん)

 97年のカーネギー賞(イギリスの児童文学賞)受賞作JUNK(メルヴィン・バージェス著/池田真紀子訳)も2000年1月に刊行される。こちらはローティーンの少年少女の麻薬問題を描き、イギリス本国でもセンセーションを巻き起こした作品だ。さらに、本年度の受賞作であるSKELLIG(デイヴィッド・アーモンド著/山田順子訳)も2000年刊行の予定。

(生方頼子)

「キッズBOOKカフェ」(月刊『翻訳の世界』1999年12月号掲載)のホームページ版です。

表紙の画像は、出版社の許可を得て掲載しています(無断転載不可)。

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