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やまねこ調査隊

第3回 原画から作家の想いがあふれ出る「絵本の100年展」

<絵本の100年展>
今後の巡回予定
山口・下関市立美術館 1999年8月12日(木)〜9月19日(日)
愛知・刈谷市美術館 1999年9月25日(土)〜11月7日(日)
岩手・萬鉄五郎記念美術館 1999年11月13日(土)〜2000年1月10日(月)
京都・大丸ミュージアムKYOTO 2000年2月10日(木)〜2000年2月22日(火)
(主催:朝日新聞社ほか)

 今回やまねこ調査隊が向かったのは、兵庫を皮切りに、東京、広島と各地で順 次開催中の「絵本の100年展」。今世紀を彩る世界の絵本作家50人を紹介すると ともに、その代表作の原画や初版本など約300点を展示するという、なんともゴ ージャスな展覧会だ。

 期待に胸をふくらませ足を踏み入れた会場は、まさに別世界だった。印刷され た本でいくら見慣れた絵であっても、オリジナルの作品を見ると、また新たな発 見がある。何十年かの時を越え押し寄せてくる懐かしさと、言葉にならない感動 にうち震え、しばし呆然となる調査隊員。

 誰もが知っている『クマのプーさん』(E・H・シェパード)や『ピーターラビットのおはなし』(B・ポター)にふむふむと頷き、ひょうきんで楽しい『がちょうのペ チューニア』(R・デュボアザン)には思わず吹き出し、迫力満点の『三びきのやぎのがらがらどん』(M・ブラウン)の前ではのけぞり、絵本とは色使いが違 っていた『よあけ』(U・シュルヴィッツ)に首を傾げ……。原画をじっと見つ めていると、絵本ではわかりにくい微妙な色合いに加えて、筆の流れまでがはっ きりとわかり、作者の息づかいがそのまま伝わってくる。ミリ単位の細かい修正 の跡には、より良い作品を創り出そうとする信念が感じられる。また、ラフスケ ッチや原案を本の形に綴じた自筆束見本などで、絵本の制作過程の一端を覗くこ とができるのも興味深い。

 会場は年代ごとにコーナー分けされており、表現手法の変化だけでなく、時代 と共に多様化してきたテーマをも感じとりながら、絵本の歴史100年を振り返る ことのできる展示形式になっている。

 絵本に親しんだことがある人なら誰でも、心から楽しめること間違いなしの展 覧会である。お近くで開催される際には、ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。 お気に入りだった、あなたのあの絵本に再会できるかもしれない。

(谷川倫子)

「キッズBOOKカフェ」(月刊『翻訳の世界』1999年9月号掲載)のホームページ版です。

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