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やまねこ翻訳クラブ レビュー集

今月のおすすめ(99年7月)


『友情をこめて、ハンナより』表紙

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  『友情をこめて、ハンナより』

     Love from Your Friend,Hannah

   ミンディ・ウォーショウ・スコルスキー/作 
   カバー画 クリス・ラシュカ 
   唐沢則幸/訳  くもん出版 1999.4 

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*表紙の画像は、出版社の許可を得て使用しています。

 

 

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 1937年アメリカ――ペンフレンドが欲しいハンナはクラスの「文通希望者箱」の中から一枚のカードをひく。そこに書かれていた名前はエドワード。女の子のペンフレンドが欲しかったハンナだが、とにかく彼に手紙を書いてみた。ところが返事は無愛想な2行のみ。がっかりしたハンナは親友のアギーに愚痴の手紙を書く。しかし、このアギー、親友といいながら転校したきりまったく返事をくれないのだ。筆まめなペンフレンドが欲しいハンナは、ルーズベルト大統領に手紙を書きペンフレンドを捜してもらうことを思いつく。

 ハンナのように手紙好きだと、この物語は一段と楽しめる。なぜなら、ハンナと同じように、筆まめなペンフレンドを捜す苦労を知っているからだ。ペンフレンドがほしいハンナは手紙を書き続ける。おばあちゃんに、叔母さんに、大統領に、返事をくれないアギーに、エドワードに……。

 おばあちゃんからの返事は早い。そしていつもあたたかい。大人たちの返事はどれもハンナへの愛情に満ちている。少しだけ人生を先に歩んでいる者がそれをふりかざすことなく、率直に手紙という形でハンナに語りかける。

 アギーの手紙を待ち続けるハンナに、こう言ってくれる人がいた。「わたしだったら、手紙は書き続けますが、何通出したかは気にしないことにします。」もうハンナはアギーに「これは、何通目の手紙よ」とは書かない。返事がこなくてもアギーは大事な友達にかわりないこと、そしていつのまにか自分に真の友ができていることに気づくのだ。

 この物語はペンフレンドとハンナの友情物語。文通というのは、書く、読む、そしまた書くというシンプルな行為である。友情が深まるのは、文章の中にその人を想う気持ちがぎっしり入るからなのだろう。そのことに私自身も気づかされる。たくさんの楽しい手紙を読ませてくれてありがとう、ハンナ。 (林 さかな)

 

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【作者】】Mindy Warshaw Skolsky(ミンディ・ウォーショウ・スコルスキー): 世界大恐慌下のアメリカ、ハドソン・ヴァレーで育つ。教職生活を送ったのち、作家となる。本書の前にも、ハンナの登場する作品を4作書いている(未訳、70年代後半から80年に出版)。現在はニューヨーク州スミスタウンに住んでいる。

【訳者】唐沢則幸(からさわ のりゆき):1958年、東京生まれ。青山学院大学文学部英米文学科卒業。神宮輝夫に師事。翻訳家。児童文学の書評なども手がける。主な訳書に絵本『ウォーリーをさがせ!』シリーズ(フレーベル館)『エヴァがめざめるとき』(徳間書店)『父がしたこと』(くもん出版)など多数。 

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