国書刊行会新刊情報

2003年7月刊行

ノーベル文学賞受賞

運命ではなく:表紙

運命ではなく

ケルテース・イムレ
岩崎悦子 訳


ISBN 4-336-04520-8
定価 本体1900円+税

できごとは、あとから思いおこしてはじめてわかることがある。
ただ、目の前におこったことを、おこったこととして対応していく。
そうしていくうちに1年がすぎる。
14歳の少年は勤労奉仕に向かう途中ユダヤ人狩りにあった。
 長い間またされ、仲間たちとともにアウシュヴィッツへ送られる。
 それから、ブーヘンヴァルト、そしてツァイツに収容……。

ただ与えられた状況があるだけだし、その中にさらに新たな状況があるだけだ、という言葉だ。
僕も与えられた僕の運命を最後まで生きた。僕の運命じゃなかったけれど、僕は最後まで生きたのだ。
(中略)
僕はまた、僕の運命とともに何かを始めなければならないし、どこかに、それとも何かに自分を適応させなければならない。

これは、この少年がいった言葉だ。


【作者】ケルテース・イムレ
 1929年ハンガリーのブダペシュト生まれ。第2次世界大戦中、アウシュヴィッツなどで収容所生活を送る。最初の作品である本書により、ドイツ、フランス、アメリカを中心に高い評価を受ける。他の作品として、『挫折』(1988)、『生まれなかった子のためのカディッシュ』(1990)などがある。ニーチェやカネッティなどドイツ文学の翻訳も手がける。2002年度ノーベル文学賞受賞。

【訳者】岩崎悦子 1943年神奈川県生まれ。東京教育大学卒。東京外国語大学等のハンガリー語講師。訳書にコンラード・ジェルジュ『ケースワーカー』、ハンガリー短篇集『トランシルヴァニアの仲間』(共に恒文社)、エルケーニョ・イシュトヴァーン『薔薇の展示会』(未知谷)、カリンティ・フリジェシュ他『そうはいっても飛ぶのはやさしい』(小社刊、共訳)他。


2002年11月刊行

ガブガブの本:表紙 ガブガブの本
「ドリトル先生」番外篇



ヒュー・ロフティング 作
南條竹則 訳

ISBN 4-336-04472-4
本体 1800円+税


忘れられていたもう一冊の『ドリトル先生』発見!
ドリトル一家の人気者、食いしん坊のブタさんガブガブが語る奇想天外な「食べ物話」10編。
オウムさんのポリネシアや、アヒルさんのダブダブら、ドリトル仲間もみんな登場するのです。


本書はロフティングの名作「ドリトル先生物語」の番外編にあたるものとして、1932年に出版。
『ドリトル先生月へゆく』(1928)、と『ドリトル先生月から帰る』(1933)の中間に発表された作品です。

たくさんの洒落やパロディの類がでてくるこの本の巻末には、翻訳者の方による、原語一覧表付き!

「本文を御覧になって楽しくお読みいただけたら、今度は英和辞典を片手に、
この一覧表を御覧になってみてはいかがでしょう」(翻訳者 あとがきより)


【訳者】南條竹則(なんじょう たけのり) 1958年生まれ。作家、英文学者。主要著訳書に『酒仙』(新潮文庫)、『ドリトル先生の英国』(文春新書)、『幽霊船』(リチャード・ミドルトン/国書刊行会)など。




2002年10月刊行

狂人の太鼓・表紙

狂人の太鼓

リンド・ウォード

ISBN 4-336-04455-4
本体 2000円+税



文字がないのに、木版画によって小説として差し出される1冊――

 絵本『おおきくなりすぎたくま』の作者による、言葉をつかわない小説
 見開きの右ページに木版画をおき、120枚めくる。そこから様々な解釈のできる物語……

 
奴隷商人がアフリカから持ち帰ったひとつの太鼓。この太鼓が何をもたらすか
木版画で綴る運命奇譚




メールマガジン「海外読物案内」(2月21日配信号)でレビューが掲載されました。

 文字のない小説――そんなものが成立するのかと思う人は、ぜひ本書を手にとってみてほしい。文字は一切なく、百二十枚の木版画がすべてを語っている。
 物語は、奴隷商人の男がアフリカで原住民を殺し、太鼓を奪うところから始まる。男は奴隷売買で富を得るが、次の航海で命を落としてしまう。読書に明け暮れる息子は学問以外には無関心。研究に没頭し、他人を顧みない彼には、さまざまな不幸が押し寄せてくる。呪われた太鼓が息子にもたらす運命は過酷で容赦ない。
 丹念に描かれた絵は、文字よりも雄弁に太鼓の禍々しさや、登場人物の心理状態を語っていく。奴隷商人の息子の無感動な表情が狂気をむき出しにする様子は、ぞっとするような迫力に満ちている。強烈な明暗法によって生まれた影は物語全体を覆い、不気味で怪しい絵は見るものをくぎ付けにせずにはおかない。計算しつくされた一連の絵によって、読者は大きな物語の流れに導かれる。しかし、そこからの解釈は想像力しだい。文字がないために、むしろ想像力が刺激され、飽きることがない。
 また、見開きの右のページにだけ絵が印刷されているので、読者自身の読みとった物語が左の真っ白なページに浮き出てくるような錯覚がある。読み終わると、また最初から物語を追わずにはいられない。

 なつこ(出版翻訳ネットワーク)


作者Lynd Ward  (リンド・ウォード) 1905年生まれ。コロンビア大学卒業後、ドイツへ渡りグラフィックの技法を学び帰国。帰国後、最初に得た仕事が児童書の挿絵だった。文字のない小説は、本作を含め6作品。1985年沒。


株式会社国書刊行会(http://www.kokusho.co.jp/)
 〒174-0056 東京都板橋区志村1-13-15  TEL 03-5970-7421

2002-2003 Copyright Kokushokankokai Corporation Ltd.
メープルストリートへ戻る

Last Modified: 2003/09/09
担当:さかな
HTML編集: 出版翻訳ネットワークやまねこ翻訳クラブ