●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━      月刊      やまねこ      A C T I V A T O R (FA-TEXT)      やまねこ翻訳クラブ・アクチベーター                       (2007年6月20日)                           No.174 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  編集・発行……やまねこ翻訳クラブ http://www.yamaneko.org/ ------------------------------------------------------------------------ 【目次】 ●ファンタジーマラソンを走り終えて ●掲示板ア・ラ・カルト ●メープルストリート新刊情報 ------------------------------------------------------------------------ ファンタジーマラソンを走り終えて ------------------------------------------------------------------------    ファンタジーマラソンといえば、本誌でも1年にわたり実況中継をお   こなってきたので、興味を持ってくださった方も多いかもしれない。今   回は、やまねこ翻訳クラブの読書マラソンに初めて参加した会員にその   魅力を語ってもらった。(ち)  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  今、大ブームのファンタジー。その言葉を冠した企画名に引かれて、私がファ ンタジーマラソンを走り出したのは、スタートの号砲が鳴ってから2週間ほどた ってからのことだった。「ファンタジー」の定義はあえて参加者に任せ、読んだ 本のあらすじと感想を掲示板にアップする。すると、同じレースを走るランナー たちから次々とコメントがつく。  マラソン期間中でなくては、読破できなかったと思う本がある。「ゲド戦記」 シリーズだ。登場人物たちの禅問答のようなやり取りに、何度挫折しかけたこと か。それでも、最終的にアースシーをめぐる一大叙事詩を堪能できたと思えるの はマラソンのおかげだ。  また、例えばダイアナ・ウィン・ジョーンズ(DWJ)作品に初挑戦してみよ うと思い立ったとする。はて、最初に読むにはどれがいいだろう。そんな時は、 「どうしよう」と掲示板でつぶやいてみる。すると、はるか前を走っている優勝 候補のDWJ大ファンランナーが私の元にすっとんできて、心のこもったアドバ イスをくれたりする。  このマラソンは、全速力で走るもあり、のんびり歩くもあり、途中でトイレ休 憩、いや3か月のバカンスを取るもあり。深く豊かな「ファンタジーの森」を、 あくまでマイペースで堪能できるところも魅力の一つだと思う。                               (ナウシカ) ※マラソン終了後、各自が気に入ったファンタジーを発表しあい、リストにしま した。今後の読書の参考にどうぞ! ▽ファンタジーマラソン参加者個人ベスト5(資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/gen/fntsy/fm_best5.htm ▽勉強会に興味のある方は「学習室」をご覧ください。 http://www.yamaneko.org/gakushu/index.htm ------------------------------------------------------------------------ 掲示板ア・ラ・カルト ------------------------------------------------------------------------    「#」のうしろの数字は、各掲示板での発言番号を表しています。 ★読書室掲示板★ http://www.yamaneko.or.tv/open/c-board/c-board.cgi?id=dokusho 【主なトピック】 #1331〜 訃報(ロイド・アリグザンダー) #1332〜 『ハエくん』読みました(続き) #1343〜 "Flotsam" 邦訳出版 #1360〜 5月に読んだ本 #1363〜 チルドレンズ・ブック賞発表! #1365〜 管理人交代のお知らせ #1366〜 ボストングローブ・ホーンブック賞発表! #1372〜 イタリア・アンデルセン賞発表! #1374〜 『帰ってきた船乗り人形』読みました(続き) #1376〜 『ビッグTと呼んでくれ』読みました(続き) #1382〜 『シャンプーなんて、だいきらい』読みました(続き) #1388〜 「ファンタジーマラソン参加者個人ベスト5」公開(広場掲示板      #1785にも掲載)  このほか、ガーディアン賞ロングリストの話題も。賞関連の情報は、速報掲示 板もご利用ください。 ▽「速報(海外児童文学賞)」掲示板 http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=award @カーネギー賞&ケイト・グリーナウェイ賞候補作を読もう!会@ *【S】はショートリスト作品、【L】はロングリスト作品を表します。 〈ケイト・グリーナウェイ賞〉 #1387〜【L】"Mayfly Day"(text by Jeanne Willis, illustrations by Tony Ross, Andersen Press):夜明けとともに1匹のカゲロウが新しい世界に飛び立 つ。カゲロウは、生命にあふれたこの世界の美しさを感じながら、大人になって 最初で最後の1日を幸せに送る。生きる喜びを、明るく優しい色彩で描いた絵本。 @その他の作品レビュー@ 【新刊読み物】 #1338〜『魔使いの弟子』(ジョゼフ・ディレイニー作/金原瑞人・田中亜希子 訳/東京創元社):7番目に生まれた息子の7番目の息子トムは、修行のため、 「魔使い」に弟子入りする。魔法を使わずに魔女やボガートを相手にする「魔使 い」って、かなりかっこいい!? 「魔使いシリーズ」の第1作。 #1364〜『魂食らい』(ミシェル・ペイヴァー作/さくまゆみこ訳/評論社): 「クロニクル 千古の闇」シリーズ第3巻。大切な弟分、オオカミのウルフが何 者かにさらわれた! 主人公トラクとその友人レンは、ウルフをさがすため、北 の地へ向かう……。 #1390〜『ストーンハート』(チャーリー・フィッチャー作/大嶌双恵訳/理論 社):12歳の少年ジョージは、ひょんなことからロンドン中の彫像からねらわれ る羽目になった。動き出した彫像たち、過去を見る能力を持つ不思議な少女、ジ ョージをつけまわす謎の男……ドキドキの24時間を描いた冒険ファンタジー。3 部作の第1巻。 【新刊絵本】 #1330〜『かかし』(シド・フライシュマン文/ピーター・シス絵/小池昌代訳 /ゴブリン書房):ある日、年老いた農夫がかかしを作った。ひとりぼっちの農 夫は、やがてかかしに愛着を抱くようになり、かかしを生きもののように扱いは じめる。そんなある日、農夫は町からやってきた青年と出会い……。 #1371〜『オークとなかまたち』(リチャード・メイビー文/クレア・ロバーツ 絵/野の水生訳/講談社):300年近くにわたるオークの木の一生と、オークと さまざまに関わる生きものたちが描かれる。瑞々しく力強い命が感じられる、美 しく、かつ読みごたえのある絵本。淡々とした描写が、なおのこと雄大さを感じ させ、ここちよい余韻を残す。 【未訳読み物】 #1328〜 "Shug"(by Jenny Han, Simon and Schuster):中学に通いはじめたと たん、男の子も女の子も頭の中は異性のことばかり。みんなが自分とは違う世界 に行ってしまったように思える。大好きな幼なじみは、美人の姉のほうに夢中に なってるし……。思春期にさしかかった少女の揺れる気持ちが伝わってくる物語。 【未訳絵本】 #1362〜 "Mi Leon"(o の上にアクセント)(by Madana Sadat, Fondo de Cultura Economica):黄色い大地から黒人の少年の姿を見つめる真っ赤なライ オン。あっと思う間にライオンが襲いかかる。驚く男の子。そして……。文字は ないが、画面いっぱいに描かれた動きのある絵が、いろいろなことを物語る。作 者はパリに住むイラン人。もともとはフランスで出版された絵本だが、この版は メキシコで出版されたもので、スペイン語のタイトルがつけられている。 ▽このほかにも、メープルストリートで紹介されている新刊書の話題などで盛り 上がっています。掲示板の「トピック表示」もどうぞご利用ください。 http://www.yamaneko.or.tv/open/c-board/c-board.cgi?cmd=tpc;id=dokusho                               (えみりい) ★喫茶室掲示板★ http://www.yamaneko.or.tv/open/c-board/c-board.cgi?id=kissa #334〜 エラゴンとシャーロットの DVD→龍のお話いろいろ #335〜 【HP】映画になった児童文学(5月) #341〜 映画『黄金の羅針盤』 #346〜 実写版『ゲド〜戦いのはじまり〜前編』 #351〜 Children's Laureate #357〜 「月刊児童文学翻訳」6月号 html 版公開 #360〜 ロバート・サブダの番組 ▽作品リストの更新情報などは「更新履歴」掲示板でどうぞ。 http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=rireki ▽リストに関する追加・訂正等の情報は「やまねこ資料室:メモ用掲示板」まで。 http://www.yamaneko.or.tv/open/c-board/c-board.cgi?id=siryo ▽「イベント情報掲示板」はこちら。 http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=event ★お菓子掲示板★ http://www.yamaneko.or.tv/open/c-board/c-board.cgi?id=okashi ★おはなし小部屋掲示板★ http://www.yamaneko.or.tv/open/c-board/c-board.cgi?id=ohanashi #104〜 紙芝居文化の会・紙芝居講座 in 豊田(続き) #105〜 6月・新宿・ジュンク堂ミニおはなし会 ★広場掲示板★(会員限定) http://www.yamaneko.or.tv/member/c-board/c-board.cgi?cmd=tre;id=hiroba #1777〜 春のオフ(東京)→ありがとうございました #1778〜 ご意見募集〜ファンタジーマラソン関連(続き) #1785〜 【公開】ファンタジーマラソン個人ベスト5 #1788〜 中級シノプシス勉強会参加者募集(続き) #1795〜 次の読書マラソン #1813〜 リードオンリーのお知らせ〜ファンタジーマラソン掲示板 #1817〜 会員からの質問 #1824〜 CLCD ニュースレター6月号 #1859〜 原画展の案内@岐阜 #1873〜 グレゴリー・コルベール作品展オフ→ありがとうございました #1890〜 リスト勉強会終了のお知らせ #1897〜 トークセッションの案内@東京 #1898〜 7月の定例チャットのお知らせ #1902〜 喫茶室掲示板より>龍の話 ▽現在進行中または予定されている勉強会の情報はこちらでどうぞ。 http://www.yamaneko.org/gakushu/open/index.htm(勉強会の予定) ▽非会員で、勉強会に興味のある方は入会案内ページへ。 http://www.yamaneko.org/info/guide.htm                                (ラッテ) ------------------------------------------------------------------------ メープルストリート新刊情報 ------------------------------------------------------------------------ http://www.litrans.net/maplestreet/index.htm <偕成社> http://www.litrans.net/maplestreet/p/kaisei/index.htm 『気むずかしやの伯爵夫人』(サリー・ガードナー作・絵/村上利佳訳):わく わくする、人形の冒険物語の登場だ。公園におきざりにされた箱の中には、材質 もそして身分(?)も違う5体の人形がはいっていた。本人たちも、なぜそこに おきざりにされたかはわからない。わかっているのは、日々の糧を手に入れなが ら、管理人やネコから身を守って、生きていかないといけないということ。親切 なネズミ夫婦の助けを借りて、人形たちは公園での暮らしをはじめる。ところが、 ただひとり、気むずかしい伯爵夫人だけは、協力するつもりなどさらさらない様 子。さて、この高慢ちきな人形は、公園で暮らしていけるのだろうか? 人形が 動くというストーリーも楽しいが、さらにすばらしいことに、ほぼ全ページにわ たり、ふんだんに挿絵が配されている。舞台美術に関わってきた作者自身による、 センスのいいコラージュやイラストが堪能できる。訳者はやまねこ翻訳クラブ会 員。 『セーラーとペッカ、町へいく』、『いったいどうした? セーラーとペッカ』 (ヨックム・ノードストリューム作/菱木晃子訳):円熟した大人の国という印 象があるスウェーデンから、味のある絵本が届いた。元船乗りのセーラーと、愛 犬ペッカの(あくまでも本人たちにとっては)なにげない日常を描いた、レトロ で、粋で、ほのぼのさせられる物語。コマ割りされたイラストと、その下枠に書 かれた文字とで展開するストーリーは、さながら無声映画をみているよう。そし てその合間に、見開きページがいい塩梅ではさまってくる。元船乗りだけあって、 いきなり刺青をいれにいったりするセーラーに、日本的児童文学に慣れ親しんだ 者は驚きの声をあげてしまうかも。菱木氏による、いなせな彼らにぴったりのせ りふまわしにもご注目。 <光村教育図書> http://www.litrans.net/maplestreet/p/mitumura/index.htm 『ローザ』(ニッキ・ジョヴァンニ文/ブライアン・コリアー絵/さくまゆみこ 訳):バスで席を譲らない。それは静かだけれど、決死の覚悟を要する行為だっ た。1955年、黒人女性ローザ・パークスは、バスの中で、黒人も白人も座ってよ いとされるゾーンのシートに座っていた。にもかかわらず、白人から席を譲るよ う強要された。そこで立たなかった彼女の決断が、人種差別に異を唱える大きな うねりのきっかけとなった。うねりが頂点に達したページが圧巻だが、表紙のロ ーザの毅然とした様子にはそれにも負けない迫力がある。 『なにしてるの、サム?』(メアリー=ルイーズ・ゲイ作/江國香織訳):ステ ラの弟、サムが主人公としてひとり立ちしてから3冊目の絵本。いつも年下扱い される末っ子は、誰かに教えたり、世話してやったりしたがたるもの。雨の日に、 サムは家の中で、犬をしたがえてやりたい放題。ステラは、あきれながらもお姉 ちゃんらしい目でサムを見守る。いいきょうだいだなぁ。                                  (NON) <徳間書店> http://www.litrans.net/maplestreet/p/tokuma/index.htm 『シャンプーなんて、だいきらい』(アンバー・スチュアート文/ローラ・ラン キン絵/おおつかのりこ訳):うさぎのポップは、好きなことと嫌いなことがは っきりしている男の子。うさちゃんのぬいぐるみも好き、チョコレートケーキも 好き、でも、耳をシャンプーするのは大嫌い! シャンプーしたいママとしたく ないポップの、あの手この手の攻防戦。シャンプー嫌いの子どもはもちろん、そ ういえば昔は苦手だったなあという大人も、「うん、うん」と共感するこのシチ ュエーション。ほんの小さなことだって、ひとつのことができるようになるまで は決して平坦な道ではない。そんな成長のひとこまをユーモラスに描いたほほえ ましい絵本。ポップの豊かな表情に、思わずクスッとしてしまうこと間違いなし! 訳者はやまねこ翻訳クラブ会員。                               (えみりい) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ● 発行人 冬木恵子(やまねこ翻訳クラブ 会長) 編 集 えみりい/ち〜ず/NON/ラッテ 協 力 出版翻訳ネットワーク管理人 小野仙内(http://www.litrans.net/)     ナウシカ  いよいよ、まもなく、カーネギー賞とケイト・グリーナウェイ賞の受賞作が 発表されます。さて、今年はどの作品が受賞するのでしょうか? 読書室で開 催中の「カーネギー賞&ケイト・グリーナウェイ賞の候補作を読もう!会」は、 会員以外の方にもご参加いただけます。どうぞお気軽に書き込みをしてみてく ださい。(ち) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●