●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━      月刊      やまねこ      A C T I V A T O R (FA-TEXT)      やまねこ翻訳クラブ・アクチベーター                       (2008年2月20日)                           No.181 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  編集・発行……やまねこ翻訳クラブ http://www.yamaneko.org/ ------------------------------------------------------------------------ 【目次】 ●☆★☆10周年記念コンテスト☆★☆ 結果発表&事後勉強会報告 ●徳間書店「子どもの本だより」に、やまねこ賞がとりあげられる! ●掲示板ア・ラ・カルト ●メープルストリート新刊情報 ------------------------------------------------------------------------ ☆★☆10周年記念コンテスト☆★☆ 結果発表&事後勉強会報告 ------------------------------------------------------------------------  やまねこ翻訳クラブ創立10周年を記念して開催された絵本翻訳コンテストの、 待ちに待った審査結果が発表された。コンテストには定員いっぱいの50名の応募 があったが、そのうち実際に訳文を提出した38名の中から8名が一次審査を通過。 そして――さらにその中からみごと最優秀賞の栄冠に輝いたのは、審査員のこだ まともこ先生に「主人公の心に沿った、素直な訳」と評された、村上利佳さんの 訳文だった!  コンテストの課題となった "Dougal the Garbage Dump Bear"(by Matt Dray, Penguin Books Australia)は、村上さんの訳により、アールアイシー出版から 翻訳出版される。これから改稿作業を経て、さらに磨きのかかった訳文が絵本の 姿になって登場する日が、今から楽しみだ。  さて、課題作品は一見かわいらしい絵本だが、文章量も多い上になかなかの難 物。ここはこの訳でいいのか、ほかの応募者はあそこをどう訳しただろうと、気 になる点も多かったに違いない。そんな疑問を思う存分ぶつけ合えるのが、当ク ラブならではのコンテスト事後勉強会。約1か月間、特設掲示板を利用して、参 加者の間で活発に意見が交換された。ちょうどこの勉強会の終盤に審査結果が発 表され、同時に、こだま先生と一次審査員のみなさんから丁寧な講評をいただけ たのも、実にうれしいことである。盛会だった勉強会の模様をお伝えすべく、参 加者のおひとりに感想をお寄せいただいた。ぜひ、勉強会の熱気を感じていただ きたい。                               (えみりい)  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  コンテスト事後勉強会は参加者も21名と大人数だったため、同じ掲示板上で3 つのグループに分けて行われました。  私自身はこのような勉強会は初参加だったので、初めは勝手がわからずどうな ることかドキドキしました。まずは自分の提出した訳文を UP! ほどなくして、 同じグループ内の他のメンバーさんから次々とコメントがつけられました。さっ そく読んでいくと「なるほど〜!」。自分ではそれなりに「これでよし!」と思 って提出した訳文でも、他の方々のフィルターを通せば、いろいろと不完全なと ころや意味の取り違いなど見えてくるものですね。それに、自分は何となく感覚 で「こうに違いない」と判断して訳した部分についても、はっきりと納得できる まではとことん調べ尽くそうとするメンバーさんも少なからずいらっしゃって、 その熱意には本当に頭の下がる思いでした。  そして、自分なりに推敲を重ねた後、改稿、そして仕上げの最終稿へと自分の 作品を磨き上げていきます。しかし、言葉の選び方のひとつひとつ、表現の仕方 のひとつひとつ、1個を変えると他のもそれに合わせて変えたりして、推敲する のも本当にキリがなくて、最後まで悩み続けました。最終稿が初稿よりすべての 面において格段と良くなったかどうかは自分でも全く自信がありませんが、他の 方々から客観的な意見をいただいて、悩んだその過程はとても勉強になったと思 います。自分に今足りないものもいろいろと見えて、とても有意義な経験でした。  そして、1次審査員代表の方の講評――「英語を訳す」ことだけにこだわりす ぎず、日本語として、いかに読みやすく、おもしろく、作品に入り込みやすくで きるか、ということを念頭に置いて訳してみましょう――これを今後の自分の座 右の銘にしていきたいと思っています。とにかく読んで(読み聞かせて)楽しい 作品にしたい、何かが心に残る文章にしたい……そう思っています。誤訳のない 読解力を磨く、それはもちろんですが、訳者さんそれぞれの個性、価値観は違っ ても、最終的に目指すところはそこなんだなと改めて気づかされた今回のコンテ スト&勉強会でした。なかなか他のグループの方の作品にコメントする余裕まで はなかったのが正直なところですが、同じグループ内のやりとりの中でも、お顔 は見えなくても熱いやりとりがあり、ぜひまた交流したいと思えたところも今回 の勉強会の貴重な収穫だったと思います。                                (みるく) ▽10周年記念コンテスト案内 http://www.yamaneko.org/gakushu/contest.htm ▽コンテスト結果発表および講評(閲覧は会員限定) http://www.yamaneko.org/member/gakusyu/winner.htm ------------------------------------------------------------------------ 徳間書店「子どもの本だより」に、やまねこ賞がとりあげられる! ------------------------------------------------------------------------  こちらも昨年、記念すべき第10回を迎えた「やまねこ賞」で、徳間書店刊行の 『ウェン王子とトラ』(チェン・ジャンホン作・絵/平岡敦訳)が、みごと絵本 部門の大賞に選ばれた。それをきっかけに、同出版社の児童書編集部から「子ど もの本だより」で、やまねこ賞をとりあげてくださるとのお声がかかった。徳間 書店の「子どもの本だより」といえば、児童書の情報が満載の小冊子で、会員に もファンが多い。その1ページを割いて、賞の概要とともに、これまでに入賞し た徳間書店の作品数点に対する会員のコメントを紹介いただいた。会員にとって、 1年間の読書の総決算である「やまねこ賞」、そのエッセンスがぎゅっと詰まっ た記事は、クラブ10年の軌跡のひとつとして、かけがえのない宝ものとなった。 ▽徳間書店「子どもの本だより」2008年1月/2月号(やまねこ工房) http://www.yamaneko.org/honyaku/jisseki/club_tokuma.htm                                (ち〜ず) ------------------------------------------------------------------------ 掲示板ア・ラ・カルト ------------------------------------------------------------------------    「#」のうしろの数字は、各掲示板での発言番号を表しています。 ★読書室掲示板★ http://www.yamaneko.or.tv/open/c-board/c-board.cgi?id=dokusho 【主なトピック】 #1717〜 『ハリネズミかあさんのふゆじたく』(続き) #1719〜 MWA賞候補作発表! #1720〜 「月刊児童文学翻訳」号外発行 #1722〜 『ネズミ父さん大ピンチ!』(続き) #1725〜 どなたかご存じありませんか? #1726〜 「世界の児童文学賞ラリー」途中経過 #1727〜 『ユゴーの不思議な発明』(続き) #1730〜 「パーシー・ジャクソン」3を読みました #1732〜 『エセルとアーネスト』(続き) #1722〜 『耳の聞こえない子がわたります』(続き) #1742〜 1月に読んだ本 #1749〜 【やまねこ工房】お知らせ(喫茶室掲示板#456、広場掲示板#2620にも      掲載) #1767〜 ローカス賞推薦作品発表! #1768〜 チルドレンズ・ブック賞ショートリスト発表!  賞関連の情報は、速報掲示板もご利用ください。 ▽「速報(海外児童文学賞)」掲示板 http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=award 【新刊読み物】 #1752〜『ワビシーネ農場のふしぎなガチョウ』(ディック・キング=スミス作/ 三原泉訳/あすなろ書房):ワビシーネ農場のスカンピンさんは、その名のとお り、わびしさいっぱい。ところが、金色をしたガチョウのヒナ〈ウレシーナ〉が 生まれてから、がらりと運が変わり……。ほわほわした幸せな気持ちになれる話。 ▽このほかにも、メープルストリートで紹介されている新刊書の話題などで盛り 上がっています。掲示板の「トピック表示」もどうぞご利用ください。 http://www.yamaneko.or.tv/open/c-board/c-board.cgi?cmd=tpc;id=dokusho                               (えみりい) ★喫茶室掲示板★ http://www.yamaneko.or.tv/open/c-board/c-board.cgi?id=kissa #446〜 映画になった児童文学(続き) #452〜 東京子ども図書館おしらせカレンダー更新 #456〜 【やまねこ工房】お知らせ #459〜 「月刊児童文学翻訳」2月号 html 版公開 ▽作品リストの更新情報などは「更新履歴」掲示板でどうぞ。 http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=rireki ▽リストに関する追加・訂正等の情報は「やまねこ資料室:メモ用掲示板」まで。 http://www.yamaneko.or.tv/open/c-board/c-board.cgi?id=siryo ▽「イベント情報掲示板」はこちら。 http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=event ★お菓子掲示板★ http://www.yamaneko.or.tv/open/c-board/c-board.cgi?id=okashi ★おはなし小部屋掲示板★ http://www.yamaneko.or.tv/open/c-board/c-board.cgi?id=ohanashi #151〜 エミリー・ロッダ作品 #154〜 小学校2年生のクラスで読んだ絵本(続き) #158〜 【新刊絵本】『小さなお城』 #158〜 【新刊絵本】『ぐーぐーぐー』 ★広場掲示板★(会員限定) http://www.yamaneko.or.tv/member/c-board/c-board.cgi?cmd=tre;id=hiroba #2523〜 山形オフのお誘い→ありがとうございました #2540〜 いたばし絵本翻訳コンテスト事後勉強会のお誘い #2542〜 オフのお誘い(東京)→ありがとうございました #2581〜 【10周年記念コンテスト】結果発表 #2610〜 【会員実績リスト】更新のお知らせ #2622〜 いたばし絵本翻訳コンテスト事後勉強会 参加表明 #2630〜 CLCDニュースレター2008年2月号 #2642〜 新会員の挨拶 #2668〜 【10周年記念ラリー】参加表明 #2669〜 3月の定例チャット #2671〜 新会員の挨拶 ▽現在進行中または予定されている勉強会の情報はこちらでどうぞ。 http://www.yamaneko.org/gakushu/open/index.htm(勉強会の予定) ▽非会員で、勉強会に興味のある方は入会案内ページへ。 http://www.yamaneko.org/info/guide.htm                                 (tommy) ------------------------------------------------------------------------ メープルストリート新刊情報 ------------------------------------------------------------------------ http://www.litrans.net/maplestreet/index.htm <アスペクト>new! http://www.litrans.net/maplestreet/p/aspect/index.html 『ユゴーの不思議な発明』(ブライアン・セルズニック作/金原瑞人訳):パリ に住む天涯孤独な少年ユゴーは、父の遺したノートを取り戻そうとするうちに、 イザベルという少女と出会うことになる。少女は敵か味方か? ノートに隠され た秘密とは? 絵本に与えられるコールデコット賞(2008年)を受賞した作品だ が、版型といい、分厚さといい、一見すると巷に出回るファンタジー系の読み物 のようである。だが、とびらをあけてみると、全500ページほどの半分以上をイ ラストページが占めている。イラスト部分はまるで、1ページ1ページがグラフ ィック・ノベルの1コマのように連続し、物語のワンシーンを描いているので、 ページを繰ると、粗いアニメのモノトーン映像を見ているような錯覚におちいる。 ざらりとした鉛筆画が動く挿絵となって、緻密な構成の物語にアクセントをつけ る。さらに、ときおり挿入されるインパクトあるスチール写真が、抑え気味の世 界に躍動感をあたえている。ぜひ一度「体験」してほしい絵本である。 <小峰書店> http://www.litrans.net/maplestreet/p/komine/index.htm 『オオカミ』(エミリー・グラヴェット作/ゆづきかやこ訳):図書館に新刊を 借りにいったウサギさん。オオカミがでてくるその本を、読みながら歩いている と……。表紙を開いたときから、閉じるまで、作者の遊び心が満載。グラヴェッ ト氏は絵本の可能性を存分に引き出すことに成功したといえる。さらに、ただ奇 抜に走ったのではなく、読書好きの人間の(いや、ウサギだけれど)心理をみご とに描いているのがすごい。2005年度ケイト・グリーナウェイ賞受賞作。 『ちーちゃい チーチャ』(パトリシア・マクラクラン、エミリー・マクラクラ ン文/ダン・ヤッカリーノ絵/青山南訳):犬のジュリアと猫のナイジェル、そ れに男と女の住む家に、なんだかちいちゃい奴がやってきた。ジュリアとナイジ ェルにとっては一大事。さて、この三人模様の結末は? 『のっぽのサラ』(金 原瑞人訳/徳間書店)のマクラクラン氏の物語に、あのヤッカリーノ氏がイラス トをつけたというだけでも食指が動くというもの。もちろん期待は裏切らない。 『ウォーリアーズ ファイヤハートの旅立ち』(エリン・ハンター作/金原瑞人、 高林由香子訳/小澤摩純絵):内なる野性の声に従って、人間の保護下でなく森 で生きることを選び、部族闘争に踏み入った猫のラスティー。今やファイヤハー トと名乗り族長となった彼の前に、大きな試練が立ちはだかる。ウォーリアーズ 1期最終巻。 <光村教育図書> http://www.litrans.net/maplestreet/p/mitumura/index.htm 『ぐーぐーぐー みんな おやすみ』(イルソン・ナ作/小島希里訳):夜にな ると、いろんな動物が、それぞれの寝方でぐーぐーぐー。見開きごとに大きく描 かれた動物たちの、さりげない色使いに作者のセンスが感じられる。 <さ・え・ら・書房> http://www.litrans.net/maplestreet/p/saera/index.htm 『リリー・モラハンのうそ』(パトリシア・ライリー・ギフ作/もりうちすみこ 訳/吉川聡子画):1944年、ニューヨーク郊外の避暑地で出あったリリーとアル バート。ふたりの夢は、大西洋を越えること。少女は父に会いたくて、少年は妹 に会いたくて、秘密の計画を立てた……。小説を書くのが好きなリリーの口から は、つぎつぎと、まことしとやかなうそがとびだす。そんな想像力に加えて行動 力もあるこのヒロインは、物語の最初から、読者の心をぐいぐい引っぱっていく。 戦争の悲劇を伝えながら、それでも全体に明るい光が感じられるのは、ベースに 戦争下の日常を過ごした作者の実体験があるからだろう。やさしい色調で描かれ た、吉川氏の手による表紙もいい。 <岩波書店> http://www.litrans.net/maplestreet/p/iwanami/index.htm 『あかいはな さいた』(タク・ヘジョン文・絵/かみやにじ訳):見開きにあ ふれるあかい花に、簡潔で潤いのある短い文がそえられている。優れた感性の結 晶でありながら、暮らしの中で花に目を留めたとき、ふと口をついて出てきそう な気もする言葉たち。一瞬、翻訳絵本であることを疑ってしまうほど、すべてが 日本人になじみのある花というのもうれしい。 『物語が生きる力を育てる』(脇明子著):『読む力は生きる力』に引き続き、 筆者が長年心を砕き、頭の中で構築してきた「子どもの本の役割」がわかりやす く解説されている。現代の子どもの本のありかたに一石を投じる脇氏の厳格な児 童書観に関係者は背すじが伸びることだろう。昔話に関する考察もかなり深いの で、興味のある方はぜひご一読を。                                  (NON) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ● 発行人 かまだゆうこ(やまねこ翻訳クラブ 会長) 編 集 えみりい/ち〜ず/tommy/NON/ラッテ 協 力 出版翻訳ネットワーク管理人 小野仙内(http://www.litrans.net/)  ただいま、毎年恒例、いたばし国際絵本翻訳大賞事後勉強会が開催中です。 やる気満々の新入会員さんたちのおかげで、これからも、どんどん勉強会が開 催される予感! 新しいネコさんたちに負けないように、もっともっとがんば らなくては〜(と自分に言い聞かせる今日この頃です)。(ち) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●