※こちらは「情報編」です。「書評編」もお見逃しなく!! ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 2000年6月号(情報編) =====☆ ☆===== =====★ 月 刊 児 童 文 学 翻 訳 ★===== =====☆  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ☆===== No.21 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、電子メール版情報誌■ ■http://www.nifty.ne.jp/forum/flitrans/yamaneko/mgzn/      ■ ■編集部:yamaneko-mgzn@office-ono.com 2000年6月15日発行 配信数1,700 無料■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●2000年6月号(情報編)もくじ● ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◎出版社研究:第8回 あすなろ書房 ◎特別企画:「バベル絵本翻訳コンテスト特別講義」レポート ◎コンテスト情報:「遊学館」外国絵本翻訳コンクール ◎展示会情報:大丸ミュージアムKOBE「ブラティスラヴァ世界絵本原画展」他 ◎セミナー・講演会情報:中川李枝子「子どもの本と向きあって半世紀」他 ◎お菓子の旅:第10回 マーマレードは“夏みかん”のジャム? 〜英国の保存食〜 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●出版社研究●第8回 あすなろ書房 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  出版社研究第8回は、絵本『木を植えた男』などでおなじみの「あすなろ書房」。 最近ではヤングアダルト向けの翻訳読み物や、名作の復刊にも力を入れている。今回 は東京・早稲田のオフィスを訪ね、社長兼編集長の山浦真一氏にお話をうかがった。 ★会社概要 〜家庭教育書から多彩な翻訳児童書まで〜  あすなろ書房の創業者は、山浦真一氏の父、山浦常克氏。日本で初めての児童書専 門店を開いた後、編集者として出版社に入社し、1961年に独立した。『母と子の20分 間読書』(椋鳩十著)の出版で実質的なスタートを切り、その後は「お母さんが賢く ならなければ、子どもの幸せはありえない」という信念から、『私の育てた三人の子』 (羽仁説子著)や『親でなければできない教育』(品川孝子著)などの家庭教育書と、 日本の創作読み物や絵本を出版してきた。 「若いうちから責任ある仕事を」という創業者の意向から、1989年、当時31歳の山浦 真一氏(以下、山浦氏)が会社を引き継ぐ。そのほぼ同時期に、山浦氏は電機メーカ ーに勤める友人から、「こちらでバックというアニメーション作家の作品をビデオ化 するから、そちらで絵本を同時発売してくれないか」という誘いを受けた。そのとき に作ったのが、『クラック!』(フレデリック・バック作/山下明生訳)という絵本。 これが翻訳書を出していくきっかけとなった。2年後には、バックの次作『木を植え た男』(ジャン・ジオノ文/フレデリック・バック絵/寺岡襄訳)を出版。これは今 も版を重ねるロングセラーとなっている。  1993年には翻訳読み物『ぼくが絵本作家になったわけ』(ビル・ピート作/ゆあさ ふみえ訳)を出した。以後、絵本と並行して、『ナゲキバト』(ラリー・バークダル 作/片岡しのぶ訳)や『種をまく人』(ポール・フライシュマン作/片岡しのぶ訳) など、読み物の点数を増やしていく。その流れの中で、本を紹介してくれるエージェ ントや訳者と信頼関係を多数築いてきた。それが今の実績につながり、毎月ほぼ1冊 の割合で翻訳書の新刊を出すまでとなった。 ★出版傾向 〜長く読み継がれる本を目指して〜  編集部のスタッフが少ないこともあり、本づくりの半分ほどは社外スタッフの助け を借りている。翻訳書の選定に関しては、信頼できる翻訳者やフリーの編集者に原書 を読んでもらい、意見を求めることが少なくない。原書は、エージェントから紹介し てもらったり、山浦氏が自ら海外のブックフェアやカタログで探したりしている。本 選びの基準は、「小学6年生と幼稚園児になる自分の娘たちが読んで喜びそうな本か どうか、またはふたりに読んでほしい本かどうか」、「長く読み継がれていくような 作品かどうか」の2点。そのためか、ラインアップは多彩だ。ここにあすなろ書房の 翻訳書を、ほんの一部だがご紹介する。   『ひとしずくの水』(ウォルター・ウィック写真と文/林田康一訳) 【写真絵本】 『人体透視図鑑』 (スティーブン・ビースティー画             /リチャード・プラット文/吉田秀樹訳) 【科学の本】 『いろいろ1ねん』(レオ・レオーニ作/谷川俊太郎訳)        【絵本】 『フレネ学校「愛」について』(フレネ学校の子供たち絵と文/武者小路実昭訳)                      【南フランスの子供たちによる絵本】 『風が吹くとき』 (R・ブリッグズ作/さくまゆみこ訳)  【復刊絵本・新訳】 『地獄の悪魔アスモデウス』(ウルフ・スタルク作/アンナ・ヘグルンド絵                  /菱木晃子訳)         【絵物語】 『風をつむぐ少年』(ポール・フライシュマン文/片岡しのぶ訳)                   【読み物・第47回産経児童出版文化賞推薦】  最近、あすなろ書房が特に力を入れているのが「復刊」だ。さまざまな事情で品切 れ状態となっている名作を掘り起こし、新訳をつけ、あらたに出版している。2000年 5月下旬には、『アウトサイダーズ』(S・E・ヒントン作/唐沢則幸訳)と『スチ ュアートの大ぼうけん』(E・B・ホワイト作/さくまゆみこ訳)をたてつづけに出 した。他にもすでに復刊予定の作品がいくつかある。これからもロングセラーを目指 して、今の時代にも通用する作品を積極的に探していく意気込みだ。  最も思い入れのある本として山浦氏が挙げたのは、『あなたがもし奴隷だったら・ ・・』(ジュリアス・レスター文/ロッド・ブラウン絵/片岡しのぶ訳)。「娘たち にもぜひ知ってほしかった」と語るこの作品は、アフリカの黒人たちが、奴隷船の劣 悪な条件のもと、アメリカに運ばれ、南北戦争後に解放されるまでを描いた絵本。優 れた児童文学作品として、先日、第47回産経児童出版文化賞大賞を受賞した。「人間 としてどう生きたらいいか。宗教とはなにか。“人間”を考えていくうえでのいろん な要素が、この作品には入っています。いろんな価値観や考え方を、児童書を通して 声高ではなく、淡々と語りかけていけたらと考えています」(山浦氏) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~【訳者に求めたいこと】~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「求める」というほどのことではないのですが、しいていえば、こちらのスタンスを 知っていただいたうえで、お互いに気持ちよく仕事をしたいということですね。訳者 だけでなく、フリー編集者、ブックデザイナー、画家といった、本づくりにかかわる 人たちと、率直に話し合える信頼関係を築き、前向きに、気持ちよく仕事をする。そ して、売るための工夫や努力を精一杯する、というのがうちの方針です。翻訳に関し ては、訳者の領域を侵さないように注意しています。つまり、こちらはあくまで「提 案」するだけで、最終的には訳者の判断に任せるということです。訳文の著作権は訳 者のものですから。お互いに信頼関係を築いて、よりよいものを作り上げていきたい ですね。(山浦氏) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ★今後の出版予定 6月『金鉱町のルーシー』   カレン・クシュマン作/柳井薫訳(読み物) 7月『ローワンと魔法の地図』 エミリー・ロッダ作/さくまゆみこ訳(読み物) 8月『トビアと天使』     スザンナ・タマーロ作/高畠恵美子訳(読み物)   『ぞうのさんすう』    ヘルメ・ハイネ作/いとうひろし訳(絵本) 『金鉱町のルーシー』は、ニューベリー賞受賞作『アリスの見習い物語』(カレン・ クシュマン作/柳井薫訳/中村悦子絵/あすなろ書房)の作家による作品。『ローワ ンと魔法の地図』は、オーストラリア児童文学賞受賞作。他にも、E・B・ホワイト の復刊作品や、故バーバラ・クーニーの最後の絵本、ドイツの作家による長編ファン タジーなど、続々刊行の予定だ。 +――――――――――――――――――――――――――――――――――――+ | 株式会社あすなろ書房                        | |        住 所  〒162-0041 東京都新宿区早稲田鶴巻町551-4   | |        電 話  (03)3203-3350 (代) F A X (03)3202-3952 | +――――――――――――――――――――――――――――――――――――+ ※参考:やまねこ翻訳クラブ作成 あすなろ書房翻訳作品リスト  http://www.nifty.ne.jp/forum/flitrans/yamaneko/mgzn/list/asnaro.htm                           (取材・文 田中亜希子) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●特別企画●「バベル絵本翻訳コンテスト特別講義」レポート ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  去る5月21日、東京の有明にて、バベル・プレス主催の「絵本翻訳コンテスト特別 講義」が催された。絵本翻訳コンテストは、同社が月刊『翻訳の世界(現:eとらん す)』を通じて実施しているもので、今回で8回目になる。特別講義はコンテストの 開催記念として、表彰式をかねて行われた。以下に、コンテストの概要と講義当日の 模様を紹介する。 ★これまでのコンテストの流れ 〜第1回〜第7回までを振り返って〜  第1回の課題作が発表されたのは『翻訳の世界』93年7月号。同誌が大きく誌面刷 新したころで、コンテストにも「リニューアル記念」と銘打たれていた。これが大き な反響を呼び、以来同誌では名物コンテストのひとつになった。課題発表号では、毎 回、絵本や子どもの本関連の特集が組まれるのも話題を呼んでいる。  出題形式にもさまざまな変遷があり、一般部門と学生部門に分かれての応募や、課 題作が2作品という場合もあった。また、課題箇所が部分訳か全訳かも回によって異 なるが、現在、課題は1作品、部門分けはなく、部分訳となるのが通例である。  これまでの課題作の傾向をみると、第5回までは、ネズミやゾウなど動物を主人公 としたかわいらしい雰囲気のものが続いていたが、第6回の"The Ghost of Nicholas Greebe"ではガラリとイメージを変えた。以降、課題作はバラエティにとんだものと なっている。 ★第8回課題作について 〜なまけ者がスターになるお話 "Pierre's Dream"〜  第8回の課題作は"Pierre's Dream"(Jennifer Armstrong作、Susan Gaber絵)。 いつも居眠りばかりしている村のなまけ者が、1日にしてサーカスの大スターになっ てしまうお話だ。課題箇所は、主人公のピエールがあっと驚く芸当を次から次へと披 露する、作品の山場となる部分。サーカスの臨場感をどう表わすかが難しいところだ が、訳しがいのある場面でもあった。『翻訳の世界』5月号での発表によると、第8 回コンテストの応募総数は803編。受賞者は以下の方々。 【金の歌賞(最優秀賞)】大谷真弓 【銀の調べ賞(優秀賞)】森内寿美子、森久里子 【努力賞】大間知知子、亀井千雅、川崎永子、神田浩美 【敢闘賞】加藤恵子 【佳作】岡田まゆみ、小林淳子、近藤美陽子、中村由美子、寄宗千恵、渡辺素子                                  (敬称略) ★会場の様子と表彰式 〜参加者の拍手に包まれて〜  コンテスト審査員による「特別講義」は、第6回から実施されている。今回は、移 転したばかりのバベル・プレスのオフィスがある、有明のTFTビルで行われた。最 寄り駅は、ゆりかもめの「国際展示場正門」駅。当日は、この国際展示場(東京ビッ グサイト)で大きな催しが行われていたらしく、駅は若者たちでごったがえしていた。  だが、会場のほうはうってかわって落ち着いた雰囲気。関係者を除いて女性ばかり、 約50名の参加者が、審査員であり翻訳家でもある井辻朱美さんと金原瑞人さんの到着 を緊張した面持ちで待っていた。  Tシャツにジーンズという若々しい姿の金原さんと、黒を基調としたシックな装い の井辻さんが現れると、さっそく表彰式が始まった。受賞者の名前がひと通り読み上 げられたあと、代表として、金の歌賞(最優秀賞)と銀の調べ賞(優秀賞)の受賞者 から感想が述べられた。それぞれのコメントからは、率直な驚きや喜び、勉強を続け てきてよかったという思いが伝わってきた。このあと、井辻さんと金原さんから、参 加した受賞者全員に賞状が手渡されると、参加者から大きな拍手がおこった。 ★講義内容(1) 〜語り手の存在を意識した訳〜  表彰式が終わると、いよいよ特別講義。最初に井辻さんから、「物語の語り手(地 の文)の存在を意識して訳してみる」ということについてお話があった。地の文を透 明に訳すか(つまり俗に言う「神の視点」から訳すか)、語り手としてキャラクター 性を持たせて訳すか、それによって雰囲気がどのぐらい違ってくるかを、訳例を挙げ て示された。なるほど、地の文にキャラクターを持たせると、物語が立ち上がってく るのがわかる。「語りの本」ともいわれる絵本においては特に効果的だ。実際、今回 入賞した方の訳文は、地の文にキャラクター性があるものが多く、語り手がひとつの キャラクターとして動いていて読みやすい感じがしたとのこと。また、「絵と文のバ ランスを考えて訳す」必要性についても語られた。絵が具象的か抽象的かなどによっ て、訳し方も変わってくる。絵を見て、文章を合わせる、あるいは少し引いた立場か らとらえるなど、「絵と一緒にデュエット」して訳をつくる必要があるとのことだっ た。 ★講義内容(2) 〜文体や視点を考えて訳そう〜  休憩をはさんで、金原さんが、日本語の小説と英語の小説の違いについてお話しさ れた。ひとつ目の違いは、会話文と地の文の「文体」。日本語は英語ほど言文一致し ておらず、会話文と地の文では使われる言葉が分かれているとのことだった。ふたつ 目の違いは、地の文の「視点」。英語の小説の場合、地の文の視点が主人公に寄った り急に離れたりと、移動することがあるが、日本語の小説の場合は、地の文の視点が 動くことはほとんどないという。そのことから、翻訳をするときも、会話文や地の文 の「文体」をどうするか、「視点」をどうそろえるかを考えて訳さなければならない と指摘された。最後にコンテストのことに触れて、「応募原稿は全体的に文体が均質 化されていて、表現のおもしろさを審査することができなかったのが残念。遊び心を もって文体を考えてみてほしい」とのアドバイスがあった。 ★質疑応答 〜参加者からの質問に答えて〜  それぞれの講義のあと、質問の時間が設けられ、「視点をどこに置いて訳したらよ いか?」「絵本を訳すときの注意点は?」などの質問が出された。視点については 「(映画を撮影する)カメラだと思ってほしい。カメラがどこにあるか決めて訳すこ と」、注意点については「ページをめくったところで、どういう言葉で始まるか、耳 で聞いてどうかを考えること」など、丁寧な回答があった。最後に、講師のお二人と ともに参加者全員で記念撮影。2時間半にわたった特別講義はお開きとなった。 ★終わりに 〜次のコンテストに向けて〜  また今年もコンテストの時期が近づいてきた。夏から秋にかけては、バベルのコン テストのほかに、「山形県『遊学館』外国絵本翻訳コンクール」、「いたばし国際絵 本翻訳大賞」なども実施される予定だ。絵本の翻訳は難しい。でも言葉を紡ぐのは楽 しいものだ。特別講義の参加者たちは、今回の講義の内容をしっかり自分のものにし て、また応募しようと思っていることだろう。コンテスト未経験の方も、今年こそト ライしてみては?              (レポーター 蒲池由佳/ながさわくにお/宮坂宏美) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●コンテスト情報● ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◎「遊学館」外国絵本翻訳コンクール  課 題:"Stripe" by Joanne Partis      "HOME Before DARK" by Ian Beck  締 切:平成12年10月31日(火)当日消印有効  問合せ:山形市緑町1-2-36「遊学館」内「外国絵本翻訳コンクール」係      TEL 023-631-2523(山形県立図書館) 625-6411(県生涯学習センター)  詳 細:http://www.yugakukan.or.jp/topics/topics6.html                                (中野伊都子) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●展示会情報● ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◎宮城県美術館「オリニの世界から――韓国絵本原画展」  所在地:宮城県仙台市青葉区川内元支倉34−1  電 話:022-221-2111  会 期:平成12年6月25日まで  休館日:月曜日(祝日は開館)  入場料:一般300円、大学生・高校生150円、小・中学生70円  内 容:『マンヒのいえ』(セーラー出版)など、韓国の絵本25作品の原画を      200点以上展示。 ◎伊勢丹美術館「ちひろと世界の絵本画家たち」  所在地:東京都新宿区新宿3−14−1 伊勢丹新宿店新館8階  電 話:03-3352-1111  会 期:平成12年7月1日から7月30日まで  休館日:会期中無休  入場料:一般800円、大学生・高校生500円、小・中学生300円  内 容:ちひろ美術館のコレクション18,000点の中から、選りすぐりの作品 180点を紹介。 ◎プラザイースト「瀬田貞二の世界」  所在地:埼玉県浦和市中尾1440−8  電 話:048-875-9933  会 期:平成12年6月18日から25日まで  休館日:会期中無休  入場料:無料  内 容:『指輪物語』『ホビットの冒険』『三びきのやぎのがらがらどん』などの 訳者として知られる瀬田貞二氏の展示会。 ◎大丸ミュージアムKOBE「ブラティスラヴァ世界絵本原画展(BIB)」  所在地:神戸市中央区明石町40番地 大丸神戸店 9階  電 話:078-331-8121  会 期:平成12年6月15日から6月27日まで  休館日:会期中無休  入場料:一般700円、大学生・高校生500円、中学生以下無料  内 容:世界中のブラティスラヴァ賞(BIB賞)歴代受賞作家たちの名作を中心      に、日本の受賞作品などあわせて約150点を紹介。                                (瀬尾友子) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●セミナー・講演会情報● ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◎東京都児童会館・子どもの本の店共催  作家との集い「子どもの本と向きあって半世紀」  講 師:中川李枝子  日 時:平成12年7月1日(土)14:00〜16:00  場 所:東京都児童会館 4階講堂      (〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-18-24 TEL 03-3409-6361)  定 員:100名(先着順)  参加費:無料  内 容:作家の中川李枝子さんが、子どもの頃に夢中になって読んだ本、子どもた      ちと一緒に楽しんだ本、また自身の作品について語る。  申込先:子どもの本の店(TEL 03-3400-2723) ◎本の探偵 赤木かん子講演会「子どもに読んであげたい本」  講 師:赤木かん子  日 時:平成12年7月1日(土)10:30〜12:30  場 所:山形市立図書館 2階集会室      (〒990-0035 山形市小荷駄町7-12 TEL 023-624-0822)  定 員:50名  参加費:無料  申込先:山形市立図書館 ◎入門・絵本翻訳講座  講 師:灰島かり  日 時:平成12年7月1日〜9月30日(全11回)      毎土曜 13:00〜14:30  場 所:朝日カルチャーセンター・横浜      (〒220-0011 横浜市西区高島2-16-1 ルミネ横浜8階)  受講料:36,300円(入会金5,000円)*消費税別  内 容:名作絵本を英語と日本語両方で読み比べるとともに、未訳絵本を実際に翻      訳して互いに批評しあう。  申込先:朝日カルチャーセンター・横浜(TEL 045-453-1122)                                 (横山和江) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●お菓子の旅●第10回 マーマレードは“夏みかん”のジャム? 〜英国の保存食〜 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ "Oh, Paddington!" Mrs. Brown looked despairingly at him. "Do you have to bring sandwiches to the theatre?"    Michael Bond "A Bear Called Paddington" (1985) Chancellor Press    ※上記は同題名の物語を含む5編のオムニバス。同題名の本の初版は1958年。 *-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-* 「マーマレード」と聞くと、くまのパディントンを思い浮かべる方も多いでしょう。 パディントンはマーマレードが大好き。ブラウンさんの家でやっかいになることに決 めたのも、「毎朝マーマレードをあげるわよ」という奥さんの一言からでした。 ところで、みなさんはマーマレードが「オレンジ」のジャムだけではないことをご 存じでしょうか。マーマレードとは「“柑橘類”のジャムで、果肉と果皮を含むもの」 を指します。ですから、グレープフルーツのマーマレードもあれば、夏みかんのマー マレードもあるわけです。 なお、「マーマレード」の語は、フランスでは果実の煮つぶしたものを、スペイン ではリンゴの煮つぶしたものをいうそうです。語源は、ポルトガル語の「マルメロ」 であるといわれています。マルメロは中央アジア原産の香りの強い果物で、ヨーロッ パではジャムによく使われます(本誌2000年2月号の「お菓子の旅」参照)。  ジャムはもともと果物や野菜の保存のために作られたもの。イギリスでは、保存食 というと、「ジャム」のほかに「プリザーブ」「ゼリー」がポピュラー。今回は、こ の3つと「チャツネ」について簡単にご説明します。 ★ジャム JAM  果実や野菜を裏ごしするか、煮つぶすかして、砂糖を加えて煮詰めたもの。果物や 野菜の原形はほとんどありません。 ★プリザーブ PRESERVE  プレザーブともいい、果実や野菜の原形を残したまま砂糖煮したもの。ジャムに果 物や野菜がごろごろ入っている状態です。 ★ゼリー JELLY  果汁などを、ゼラチンや寒天等で固めたもの。透き通っているのが特徴です。デザ ート菓子として用いられる甘いもののほかに、ソース代わりに添えられる、甘みの少 ないハーブの香りのものがあります。ローズマリーゼリーやミントゼリーなどがそう で、りんごジュースがベースになっています。子羊の肉などによく合わせます。 ★チャツネ CHUTNEY  マンゴーなどの果物や野菜にさまざまな香辛料、酢、砂糖などを加えて、ジャム状 に煮詰めたもの。カレーやドレッシングなどによく使われます。 ※ジャム類の分類の仕方は国や本によって違います。たとえば、日本農林規格(JA S)ではジャム類を「ジャム、ミックスジャム、マーマレード、ゼリー」の4つに分 類しています。本誌では、イギリスで一般的と思われる分類の仕方を参考にしました。  今回は、今が旬の「夏みかん」のマーマレードの作り方をご紹介します。 *-* 夏みかんのマーマレードの作り方 *-*  材料:夏みかん(無農薬か低農薬のもの) 2個    砂糖 300g   レモン汁 1/2個分   水 2カップ 1.夏みかんをよく洗って皮をむき、長さ1cmの千切りにする。水をはったボールに  千切りにした皮を入れ、2、3時間つけておく。その間、水は2、3度替える。 2.2個分の実は、それぞれ袋からはずし、ばらしておく。 3.たっぷりの熱湯に1の皮を入れ、3回ゆでこぼし、そのつど冷水に放す。 4.ほうろう鍋に3の皮、2の実、水を加え、15〜20分中火から弱火で煮る。砂糖を  3度に分けて入れ、レモン汁も加える。あくがでてきたら、まめに取り除く。30分  ほど煮詰める。 5.出来上がったジャムは熱いうちに温めたびんに入れ、密封する。 ★参考文献 『くまのパディントン』M・ボンド作 松岡享子訳 福音館書店 『イギリスのお話は、おいしい。』『続 イギリスのお話は、おいしい。』白泉社 『百菓辞典』山本候充編 東京堂出版 『料理食材大事典』主婦の友社 『手作りジャム』レディブティックシリーズNo.731 ブティック社 『ジャムとプリザーヴ』ジル・ノーマン著 甲斐明子訳 同朋舎出版 『世界大百科事典』平凡社 "EPICURIOUS FOOD" (http://www.epicurious.com/e_eating/e04_xmas/euro.html) オーヴンHOTKITCHEN!(http://www.ohbun.co.jp/hot/index.shtml)                           (田中亜希子/森久里子) PR━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆◇◆◇◆◇◆◇◆  やまねこ翻訳クラブ(会員数186名)  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ やまねこ翻訳クラブは、@nifty文芸翻訳フォーラム内にある児童書専門サークルで、 海外の子どもの本に関する情報交換、翻訳・レジュメ自主勉強会などを行っています。 児童書に興味のある方でしたらどなたでも入会できますので、ぜひお気軽にご参加く ださい。   ――ニューベリー賞読破マラソン、オランダ児童書読書会、開催中!―― ◆◇◆◇ http://www.nifty.ne.jp/forum/flitrans/yamaneko/index.htm ◇◆◇◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●編集後記●バベルの絵本コン講義に参加するために、初めて「ゆりかもめ」に乗り ました。無人運転だし、空中を走っているみたいな感じだし……こわかった。(み) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発 行 やまねこ翻訳クラブ 発行人 林さかな(やまねこ翻訳クラブ 会長) 編集人 宮坂宏美(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)   企 画 河まこ キャトル くるり 小湖 Chicoco どんぐり BUN ベス YUU   りり ワラビ MOMO つー さかな こべに みーこ きら Rinko SUGO わんちゅく みるか NON 協 力 @nifty 文芸翻訳フォーラム      小野仙内 ながさわくにお Mkwaju ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ・このメールマガジンは、「まぐまぐ」( http://www.mag2.com/ )を利用して配信 しています。購読のお申し込み、解除もこちらからどうぞ。 ・ご意見・ご感想はyamaneko-mgzn@office-ono.comまでお気軽にお寄せください。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■無断転載を禁じます。