※10月号よりリニューアルしました。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 2004年11月号    =====☆                    ☆=====   =====★   月 刊  児 童 文 学 翻 訳   ★=====    =====☆   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ☆=====                                  No.64 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ◆児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、電子メール版情報誌◆ ◆http://www.yamaneko.org/                        ◆ ◆編集部:mgzn@yamaneko.org     2004年11月15日発行 配信数 2350 無料◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●2004年11月号もくじ● ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◎プロに訊く:第24回 小竹由美子さん(翻訳家) ◎注目の本(邦訳読み物):『ダストビン・ベイビー』              ジャクリーン・ウィルソン作/小竹由美子訳 ◎注目の本(未訳読み物):"Dragonkeeper" キャロル・ウィルキンソン作 ◎賞速報 ◎イベント速報 ◎世界のお祭り:第1回 ガイ・フォークス・デー(イギリス) ◎読者の広場:読者の方からのメールをご紹介します。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●プロに訊く●第24回 小竹由美子さん(翻訳家) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  ジャクリーン・ウィルソンの新刊2冊『タトゥーママ』『ダストビン・ベイビー』 (いずれも偕成社)、そして『猫に名前はいらない』(A・N・ウィルソン作/白水 社)と続けて訳書を上梓され、ご活躍中の小竹由美子さんにお話をうかがいました。 メーリングリストでインタビューを行ったのですが、質問に対する丁寧なご回答から 翻訳者としての姿勢、パワーが強くうかがえ、参加したメンバーの翻訳学習意欲に火 がついたほど。お時間を割いてくださった小竹さんに深く感謝いたします。 【小竹由美子(こたけ ゆみこ)さん】 +――――――――――――――――――――――――――――――――――――+ |1954年、東京生まれ。早稲田大学法学部卒業。偕成社の『みそっかすなんていわ| |せない』(ジャクリーン・ウィルソン作/ニック・シャラット絵)で翻訳家デビ| |ュー。現在は、児童書のみならず、YA、一般書など、幅広い分野で活躍してい| |る。香川県在住。                            | +――――――――――――――――――――――――――――――――――――+ 【小竹由美子さん訳書リスト】(11月15日公開)  http://www.yamaneko.org/bookdb/int/ls/ykotake.htm 【小竹由美子さんインタビュー ロングバージョン】(11月15日公開)  http://www.yamaneko.org/bookdb/int/ykotake.htm Q★デビュー作が刊行されたいきさつを教えていただけますか。 A☆ビギナーズ・ラックです(笑)。書店で何気なく "The Left-Outs"(『みそっか すなんていわせない』)のペーパーバックを買って読んでみると、これがすごく面白 い! 勢いで全訳し、すぐ出版社に持ち込みをしたのがデビュー作になりました。イ ギリスでも注目されていたジャクリーン・ウィルソンの作品を、ちょうど出版社サイ ドでも検討していたところだったようで、非常に幸運だったと思います。ウィルソン の作品は基本的にすべて好きなので、その好きな作家の作品で、翻訳のキャリアをは じめられたのはとにかくラッキーでした。 Q★全訳されて持ち込みというのもすごいですね。いつごろから翻訳家を目指された のですか。 A☆翻訳をやりたいと思ったのはそれほど早い時期ではありません。私は、大学を卒 業後、すぐに結婚して夫の郷里の香川に住むようになりました。子どもも生まれ、専 業主婦で子育てをしていたんです。そのころ、地域情報誌で英語サークルの存在を知 り、もともと香川に友人もいませんでしたので、おしゃべり会のように楽しんで通い はじめました。子どももその後に2人生まれ、毎日が育児中心でした。ところが、英 語サークルのひとりに、「本気で勉強したいなら」と、自治体が行っている語学クラ スに誘われたんです。講師の先生がすばらしい授業を展開してくださったおかげで、 英語の力がめきめきついていきました。子どもに手がかからなくなったころには、英 語を活かして予備校の非常勤講師の職を得ることもできました。もともと、翻訳に興 味があったこともあり、原書がすらすらと読めるようになると共に、自分が惚れ込ん だ作品を訳したいという気持ちを持つようになり、そのころから、雑誌の翻訳コンテ ストに応募を始めたのです。 Q★翻訳コンテストは、やまねこ翻訳クラブでも挑戦しているメンバーが多いです。 結果はいかがでしたか。 A☆なかなか入賞するところまでいきませんでした。それでも2年ほど応募は続けて いたんです。そんな時、友人が偕成社を紹介してくれました。編集者の方に、何か訳 したものを見せてほしいと言われ、絵本の翻訳をお見せしました。「いい作品を見つ けたら見せてください」と声をかけてくださったので、"The Left-Outs" と出会った 時に「ええいっ!」と全訳したものをお送りしました。決定のお返事までに数か月か かりましたが、決まった時は本当に天にものぼる心地でした! Q★一般書も児童書でデビューされてから2年後に刊行されています。この作品も持 ち込みがきっかけですか。 A☆純粋な持ち込みではないのですが、持ち込みがきっかけでお話をいただけました。 ビギナーズ・ラックに気を良くした私は、よしっとばかり、これはと思う本を探し出 しては、カラーの合いそうな出版社に送りはじめました。児童書だけではなく、一般 書もです。音沙汰もないのがほとんどなので、たまに編集者から手書きの断り状が届 くと、それだけで嬉しくなったほどです。ドロシー・アリスンは惚れ込んだ作家のひ とりですが、彼女の作品を送った時に、励ますような一言をくださったひとりが晶文 社の編集者でした。その方から後に連絡をいただいたのが、『なにもかも話してあげ る』。なんと作家はドロシー・アリスンではありませんか! 思いがけない偶然(編 集者の方は気づかれてなかった)に小躍りしました。 Q★作品の持ち込みを通して、編集者の方々とつながりができていったのですね。ご 自身にとって印象に残る作品はどんなものがありますか。 A☆初めての出版社と仕事をした作品はどれも印象に残っています。白水社とのご縁 も全訳の持ち込みでした(笑)。結局、その作品の企画は通らなかったのですが、訳 文は気に入っていただけて、リーディングを依頼されるようになりました。『嵐をつ かまえて』(ティム・ボウラー作)は作者にメールを出して版権が売れていないこと を確認し、持ち込みしたところ企画が通りました。ティム・ボウラーさんの作品はど れも大好きです。  そして作品はもちろんのこと、最初に出会った偕成社の編集者の方は、翻訳者とし ての私を育ててくれた大恩人です。デビュー作もこの方のおかげで世に出ました。そ の後も自社で通らなかった作品でも良いと思ったものは、別の出版社に話をいれてく ださったこともあります。おかげさまで、次の出会いが生まれ、つながりができてい きました。とてもありがたいです。 Q★どのようなペースで翻訳をされていますか。また、よろしければお使いの辞書な ど環境を教えてください。 A☆だいたい自分で予定をたてて翻訳をしています。たとえば、ウィルソン作品だと、 1日10ページは進みます。一般書だと5ページくらいでしょうか。おおざっぱに予定 をたて、できなかった日は翌日に取り戻すようにしています。予定よりは早めに仕上 げて練り上げに時間をかけるようにしているんです。インターネットが常時接続にな り、調べ物に費やす時間がずいぶん減りました。シノプシス作成だと、そうですね、 他の予定が何も入っていなければYA作品なら朝から読んで1日で仕上げることはで きます。  英和辞書はパソコンにリーダーズとリーダーズ・プラス、英英辞書はコウビルドで すね。それに平凡社の百科事典をいれています。常時立ち上げているのはリーダーズ と、あとネット上のアルクの英辞郎(これは文例が豊富で便利!)。最近教えていた だいたオンラインのスラング辞書、http://www.urbandictionary.com/ も優れもので す。英英は http://www.onelook.com/ をよく使っていますね。それから何といって も必要不可欠なのは検索エンジンの Google です。調べ物だけじゃなく、私はよく辞 書代わりに使っています。あと、翻訳原稿はワープロソフト Word で仕上げています。 Q★話は変わりますが、ロンドンに行かれた時、ジャクリーン・ウィルソンさんにお 会いになられたそうですね。 A☆はい! 私は海外経験がほとんどなく、新婚旅行でハワイに行ったことと、9年 前に住んでいる町の姉妹都市に行ったことぐらいしかありません。いつかロンドンに 行きたいと思っていて2年ほど前に出かけました。その時、ウィルソンさんにお手紙 を出したところ、滞在中に1日だけ空いている日があり、お会いできました。英語が うまく話せないことを手紙でお伝えしたのですが、「あーら、私なんて、日本語は片 言もできませんよ」というお返事が来ました(笑)。そのお返事の印象どおり、終始 にこにことなさって、ゆっくり言葉を選んでお話ししてくださり、とてもリラックス しておしゃべりを楽しめました。いつか日本にも来ていただきたいです。 Q★本当ですね! では最後に翻訳学習者にアドバイスをお願いします。 A☆英語力はもちろんとして、やはり大事なのは日本語力だと思っています。英語力 も受験英語はあなどれません。予備校講師の仕事をしていたころ、必要に迫られて文 法をきっちり勉強したのですが、翻訳をする上でとても役立ちました。日本語は、日 ごろから言葉を蓄積しておくのがいいのではと思います。小説、テレビ、マンガ、道 端での会話、そしてインターネット。あらゆる場で渦巻いているさまざまな言葉に常 にアンテナをはっておくことは大事です。バラエティー番組なども、会話を訳すのに 役立ったりするんです。それから、好きな作家をじっくり訳す、というのはとてもい い勉強になります。いまも私は時間があればそうしていますし、いつか自分が訳した いと思っていた本が刊行された時はざっくりとつきあわせをして、あ、ここは私のほ うがいいぞ(笑)とか、訳しにくかったこの部分、なるほどこうきたか、とこれもま た勉強になります。翻訳者志望の方は、ぜひぜひあきらめずに、愛する作品の訳者と なれる日を目指してください。 ■■これから刊行される小竹由美子さんの翻訳書■■ 『シークレッツ(仮題)』(ジャクリーン・ウィルソン作/偕成社) 『プロジェクトX(仮題)』(ジム・シェパード作/白水社) 『ナターシャ(仮題)』(デイヴィッド・ベズモーズギス作/新潮社)                           (取材・構成/林さかな) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●注目の本(邦訳読み物)●ごみ箱から始まる人生なんて!? ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 『ダストビン・ベイビー』 ジャクリーン・ウィルソン作/ニック・シャラット絵/ 小竹由美子訳 偕成社 定価1,470円(税込) 2004.08 222ページ ISBN:4037267004 "Dustbin Baby" text by Jacqueline Wilson, illustrations by Nick Sharratt Doubleday, a division of Transworld Publishers Ltd, 2001  エイプリルは、生まれた直後にピザ屋の裏のごみ箱に捨てられていた「ダストビン ・ベイビー」。そんな彼女にとって、誕生日は、自分がごみ箱に捨てられていたこと を再認識する辛い日でしかない。そして、今日は14歳の誕生日。里親からの誕生祝い は、みんなが持っている念願の携帯電話ではなかった。このことをきっかけに、エイ プリルはその日学校へは向かわず、自分の歴史をたどる小さな旅に出る決心をする。  物語は、エイプリルが、これまで関係のあった人たちを順番に訪問していきながら、 そのころの自分を語るという形で進められていく。一旦は養父母に引き取られたもの の、その後施設と里親の間を転々とする形で育ったエイプリルは、運にも恵まれずい ろいろな事件に巻き込まれ、生い立ちには、汚点ばかりが積み重なる。  エイプリル自身が、赤ん坊だったころのことを覚えているわけもなく、知っている のはどれも、自分が拾われたときの新聞記事で読んだ話や、養父母から繰り返し聞か せてもらったことばかり。エイプリルには、どこまでが真実でどこからが自分の思い 込みなのか、判断がつかない。  ある程度大きくなってからのことは自分で覚えているものの、やはり想いは、「赤 ん坊だったころの自分」へ戻っていってしまう。ほんとうのお母さんはどうしてわた しを産んだのだろう? なぜごみ箱に捨ててしまったんだろう? 今どうしているん だろう? 「産みの母」を想うエイプリルの気持ちが、痛いほどに伝わってくる。人 間はやはり、自分のルーツがわからないと、今の自分を受け入れることができないの だな、としみじみ感じさせられる。どんなに現在の友だちや里親が愛してくれても、 過去がわからないエイプリルは現在の自分に自信が持てないのだ。  作者ウィルソンには、「辛い境遇におかれた子ども」を取り上げた作品が多い。本 作もかなり辛い境遇の子どもが主人公であるが、明るいユーモアも随所にちりばめら れ、エンディングには奇跡的な出会いも用意されているので、読者としても救われた 思いがする。また、邦訳も、今時の子どもの口調がふんだんに取り入れられている。 悩みながらも懸命に生きていく子どもたちの様子が、原書そのままに伝わってくる。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【文】ジャクリーン・ウィルソン(Jacqueline Wilson):1945年、イギリスのバー スに生まれる。ジャーナリストを経て、作家活動を開始。子どもの抱える悩みを子ど もの目線で描いた多数の作品は、イギリスの子どもたちの絶大な支持を得ている。本 作と同時に邦訳発表された『タトゥーママ』は、ガーディアン賞を受賞し、カーネギ ー賞HC、子どもの本賞候補作品にも選ばれた。 【訳】小竹由美子(こたけ ゆみこ):本誌今月号「プロに訊く」参照。 【参考】 ▼英国 Randomhouse サイト内 ジャクリーン・ウィルソン公認ウェブサイト http://www.kidsatrandomhouse.co.uk/jacquelinewilson/ ▽ジャクリーン・ウィルソン作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/author/w/jwlsn.htm                                 (村上利佳) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●注目の本(未訳読み物)●古代中国を舞台にした異色ファンタジー ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 『龍守(も)りの少女』(仮題) キャロル・ウィルキンソン作 "Dragonkeeper" by Carole Wilkinson Black Dog Books 2003, ISBN 1876372192 343pp. ★2004年オーストラリア児童図書賞低学年向け部門受賞作  舞台は前漢時代の中国。帝国の辺境にある領主館で、11歳の少女は物心ついたころ から奴隷として暮らしていた。身寄りもなく自分の名前すら知らない。横暴な主人に 仕える生活はつらいことも多かったが、明るく前向きな少女は日々の小さな楽しみを 大切に生きていた。  少女の主人は、皇帝から「龍守(も)り」を任されており、館では年老いた龍が飼 われていた。初めはぞんざいながらも自分で世話をしていた主人だが、やがてすべて を少女に押し付けるようになる。劣悪な環境で弱っていく龍のために、少女はおそれ る気持ちを抑えて、できる限りのことをしようと心を砕くのだった。  ある日少女は、邪悪な目的で龍を狙う狩人の存在を知り、何かに導かれるかのよう に龍を連れて館から逃げ出した。すると龍は、ある目的のため、さいはての地にある 「海」へ行きたいという。こうして奴隷の少女の、冒険の日々が始まった。  孤独な少女と龍が幾多の困難を乗り越えて旅をする、ファンタジーの王道ともいえ るストーリーだが、古代中国を舞台にしたことでひと味違った世界を楽しめる。物語 はじょじょに加速し、後半では文字通り息もつかせぬ展開に引きこまれるように読ん だ。もともとは子ども向けノンフィクション作品を多く書いている作者だけに、細部 にも調査の行き渡った丁寧な作品作りがされているところも好ましい。また、孤高の 存在として描かれがちな龍という生き物が、本作では飄々としているところあり、い たずら心あり、同時に深遠な言葉で少女を導くという魅力的なキャラクターになって いる。テンポの速い展開の中で、少女の生真面目さと龍のしたたかさが絶妙なバラン スを見せる。  人には運命というものが決められていて、誰もがみなその枠の中で生きているとい う考え方がある。それでもその運命を自覚して生きることと、自覚しないまま生きる ことでは大きな違いがあるだろう。少女がたどる冒険の道は、自分の運命を知り、受 け入れ、せいいっぱい生き抜くためのものだった。  エンタテインメントとメッセージ、両方に胸が熱くなる、密度の濃い物語だ。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【作】Carole Wilkinson(キャロル・ウィルキンソン):1950年、英国ダービーシャ ー生まれ。現在はオーストラリアのメルボルン在住。生物化学研究所での研究助手を 経て、40歳を前に作家を目指して大学に再入学。歴史をテーマにしたノンフィクショ ン作品を数多く発表している。主な著作に "Black Snake: The Daring of Ned Kelly"(2003年オーストラリア児童図書賞ノンフィクション部門オナー作)、 "Alexander the Great: Reckless Conqueror" など。 【参考】 ▼キャロル・ウィルキンソン公式ウェブサイト http://home.iprimus.com.au/carolew/index.html ▽オーストラリア児童図書賞受賞作リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/award/au/cbca/index.htm                                 (森久里子) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●賞速報● ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★2004年全米図書賞(児童書部門)候補作発表(受賞作の発表は11月17日) ★2004年カナダ総督文学賞(英語作品)候補作発表(受賞作の発表は11月15日) ★2004年度ウィットブレッド児童文学賞候補作発表(受賞作の発表は2005年1月6日)  海外児童文学賞の書誌情報を随時掲載しています。「速報(海外児童文学賞)」を ご覧ください。 http://www.yamaneko.org/award/index.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●イベント速報● ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★展示会情報 軽井沢絵本の森美術館 「愛の絵本展〜家族、友達、恋…描かれた愛の形をめぐって〜」他 ★セミナー・講演会情報 JBBY児童文学講座 さくまゆみこ氏・こだまともこ氏対談 「子どもの本・翻訳のおもしろさとむずかしさ」他 ★イベント情報 ベルギーフランドル交流センター 「オランダ語文学のアフタヌーン(朗読と音楽の会)」他  詳細やその他のイベント情報は、「速報(イベント情報)」をご覧ください。なお、 空席状況については各自ご確認願います。 http://www.yamaneko.org/event/                       (井原美穂/笹山裕子/清水陽子) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●世界のお祭り●第1回 ガイ・フォークス・デー(イギリス) 11月5日 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  ご好評いただいておりました「世界の児童文学賞」は前回をもって終了し、今月よ り新コーナー「世界のお祭り」を開始します。これからは「世界のお祭り」と「お菓 子の旅」を交互に連載していきます。  さて、海外文学を読んでいると、耳慣れないお祭りがでてきますね。このコーナー では、どんなお祭りなのか、その起源やお祝いのしかたなどをご紹介していく予定で す。  ************************************************************************* 「ガイ・フォークス・デー(Guy Fawkes Day)」の起源は、1605年までさかのぼりま す。当時のイングランド王ジェームズ1世は、カトリックと清教徒を排除し、英国国 教会を維持していくことを宣言します。これに不満を抱いたカトリック教徒のガイ・ フォークスらは、議会の開会式に臨席する予定の国王と皇太子の暗殺を謀って、国会 議事堂を爆破しようと計画しました。しかし、開会式の前日、11月5日に計画は発覚 し、逮捕されたガイ・フォークスらは翌年処刑されました。爆破計画を失敗に終わら せ、大事件を未然に防ぐことができたのを記念して行われるようになったのが、ガイ ・フォークス・デーのお祭りです。  この日が別名、「花火の夕べ(Fireworks' Night)」「焚き火の夕べ(Bonfire Night)」とも呼ばれるのは、花火を打ち上げ、大きな焚き火をたいてガイ・フォー クスの人形を焼くという、このお祭りの祝い方に関係があります。子どもたちは、ぼ ろ布で作ったガイ・フォークス人形を引き車などに乗せて通りを練り歩き、「ガイの ために小銭を(Penny for the Guy?)」と、通行人にねだります。そうして得たお金 で、子どもたちは、自宅や公園で使う花火を購入します。また花火大会では、ガイた ちが企てた陰謀に火薬が使われたことを忘れないようにと、夜空に大輪の花火が打ち 上げられ、大がかりな移動遊園地や、的当て、輪投げのような出店も並びます。  そして、このお祝いに欠かせない食べ物が、焼いた皮付きポテトにチーズなどをト ッピングした「ジャケットポテト」や糖蜜タフィーなど。ソーセージやマシュマロも 「焼いて食べる」のがこの日のやり方です。クライマックスには大きなガイ人形が焚 き火にくべられ、祭りは終焉を迎えます。  ガイ・フォークス・デーはいろいろな物語の中に登場してきます。等身大の人形た ちが人間と同じように命を持って日常生活を送る「メニム一家の物語」シリーズ第2 巻『荒野のコーマス屋敷』(シルヴィア・ウォー作/こだまともこ訳/講談社)には、 こんなくだりが出てきます。 *〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜* 「燃やすに決まってるじゃん」ジョーはいう。「おまえ、こわくなったのかよ。ガイ ・フォークスの人形ってのは、燃やすためにあるんだぞ」  スービーはくたっと横になったままでいた。もし略奪者の手から家族を救おうと思 ったら、自分が恐ろしいたき火の上で生きたまま焼かれるよりほかない。 *〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*  他にも、「パディントン」シリーズの第2巻『パディントンのクリスマス』(マイ ケル・ボンド作/松岡享子訳/福音館書店)や、『鏡の国のアリス』(ルイス・キャ ロル作)にも出てきます。また、マザーグースや『魔法使いはだれだ』(ダイアナ・ ウィン・ジョーンズ作/野口絵美訳/徳間書店)には、元となった火薬陰謀事件が出 てきます。イギリスの人々にとって、なじみのあるお祭りであり、事件なんですね。 ★参考ウェブサイト 大好きマザーグース 歳時唄 http://www2u.biglobe.ne.jp/~torisan/fawkes1.html Guy Fawkes and Bonfire Night http://www.bonfirenight.net/index.php                            (村上利佳/笹山裕子) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●読者の広場●海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  今月はペンネーム、とあ丸さんからいただいたメールをご紹介します。どうもあり がとうございました。 +――――――――――――――――――――――――――――――――――――+ | こんにちは、初めてメールします、とあ丸です。私は学生のころ創作絵本を何| |冊か作ったのをきっかけに、絵本に興味を持ち、いつしか絵本の翻訳をしたいと| |夢をもちはじめました。2年ほど前に胸を打たれた素敵な台湾の絵本にも出会 | |い、それから北京語も勉強し始めました。英語と北京語、話せるようになったけ| |れど、私の絵本翻訳の夢は物凄く遠い気がします。これからいったいどうやって| |翻訳の道に進めばいいのか、どうやって、どのくらい能力をつければいいのかま| |ったく分かりません。誰かの胸にぎゅっと抱きしめられるようなそんな絵本をい| |つか私の手で翻訳したい!という思いだけが空回りしてます。        | +――――――――――――――――――――――――――――――――――――+ 【編集部から】  本誌でも何度か翻訳家になるにはどうしたらよいかという特集を組んだことがあ ります。翻訳家のみなさんや、出版社のインタビューもありますので、バックナン バーも参考になるのではないでしょうか。どの出版社から、どんな台湾の絵本がす でに日本で紹介されているかといった情報収集も必要ですね。読者のみなさまから のアドバイスもお待ちしています。 ▽「月刊児童文学翻訳」バックナンバー コーナー別インデックス http://www.yamaneko.org/mgzn/bncorner.htm#a ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  このコーナーでは、海外児童書にまつわるお話、ご質問、ご意見等を募集していま す。mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せください。 ※メールはなるべく400字以内で、ペンネームをつけてお送りください。 ※タイトルには必ず「読者の広場」とお入れください。 ※掲載時には、趣旨を変えない範囲で文章を改変させていただく場合があります。 ※回答も読者のみなさまから募集し、こちらに掲載させていただきます。原則的に編 集部からメールでの回答はいたしませんので、ご了承ください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●お知らせ●  本誌でご紹介した本を、各種のインターネット書店で簡単に参照していただけます。 こちらの「やまねこ翻訳クラブ オンライン書店」よりお入りください。 http://www.yamaneko.org/info/order.htm  本号の html 版を11月18日に公開予定です。以下の URL よりお入りください。 http://www.yamaneko.org/mgzn/bncorner.htm#html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▽▲▽▲▽   海外児童書のシノプシス作成・書評執筆を承ります   ▽▲▽▲▽    やまねこ翻訳クラブ(info@yamaneko.org)までお気軽にご相談ください。 PR━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ☆☆ FOSSIL 〜 Made in USA のカジュアルウオッチ ☆☆ 「FOSSILは化石って意味でしょ?レトロ調の時計なの?」。いえいえ、これは創業者 の父親がFOSSIL(石頭、がんこ者)というあだ名だったことから誕生したブランド名。 オーソドックスからユニークまで様々なテイストの時計がいずれもお手頃価格で揃い ます。レトロといえば、時計のパッケージにブリキの缶をお付けすることでしょうか。 数十種類の絵柄からお好きなものをその場で選んでいただけます。選ぶ楽しさも2倍 のフォッシルです。 TEL 03-5428-3701 http://www.fossil.com/       (株)フォッシルジャパン:やまねこ賞協賛会社 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。           吉田真澄の児童書紹介メールマガジン              「子どもの本だより」      http://www.litrans.net/maplestreet/kodomo/info/index.htm  。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。 PR━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★☆       出版翻訳ネットワーク・メープルストリート       ☆★         http://www.litrans.net/maplestreet/index.htm 新刊情報・イベント情報などを掲載いたします。詳細はmaple2003@litrans.netまで。        出版翻訳ネットワークは出版翻訳のポータルサイトです ★☆★☆★☆★☆★☆★☆ http://www.litrans.net/ ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ =- PR -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=      ★☆メールマガジン『海外ミステリ通信』 毎月15日発行☆★                http://www.litrans.net/whodunit/mag/           未訳書から邦訳新刊まで、あらゆる海外ミステリの情報を厳選して紹介。翻訳家や 編集者の方々へのインタビューもあります!    〈フーダニット翻訳倶楽部〉 =-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=- PR -= ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ *=*=*=*=*=*= やまねこ翻訳クラブ発行メールマガジン&ウェブジン =*=*=*=*=*=* ★やまねこActivator(毎月20日発行/無料)   やまねこ翻訳クラブのHOTな話題をご提供します!                  http://www.yamaneko.org/mgzn/acti/index.htm ★月刊児童文学翻訳あるふぁ(毎月5日発行/月100円)   洋書ビギナーにおすすめの、楽しく読める未訳書ガイド                      http://www.yamaneko.org/mgzn/alfa/ ★英文ウェブジン "Japanese Children's Books (Quarterly)"   英語圏に日本の児童文学情報を発信! 自由閲覧です!                  http://www.yamaneko.org/mgzn/eng/index.htm *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=* ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆次号予告は毎月10日頃、やまねこ翻訳クラブHPメニューページに掲載します。◆         http://www.yamaneko.org/info/index.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●編集後記●インタビューに参加して、翻訳学習意欲に火がついたひとりです。ロン グバージョンもぜひご覧ください。(た) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発 行 やまねこ翻訳クラブ 発行人 杉本詠美(やまねこ翻訳クラブ 会長) 編集人 竹内みどり/赤塚きょう子(やまねこ翻訳クラブ スタッフ) 企 画 井原美穂 蒲池由佳 笹山裕子 清水陽子 早川有加 林さかな 村上利佳     森久里子 協 力 出版翻訳ネットワーク 管理人 小野仙内     ながさわくにお ハイタカ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ・このメールマガジンは、「まぐまぐ」( http://www.mag2.com/ )を利用して配信 しています。購読のお申し込み、解除もこちらからどうぞ。 ・バックナンバーは、http://www.yamaneko.org/mgzn/ でご覧いただけます。 ・ご意見・ご感想は mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せください。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ◆無断転載を禁じます。