※1月は定期休刊です。号外を1月下旬に発行予定です。どうぞお楽しみに! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 2021年12月号    =====☆                    ☆=====   =====★   月 刊  児 童 文 学 翻 訳   ★=====    =====☆   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ☆=====                                 No.210 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ◆児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、電子メール版情報誌◆ ◆http://www.yamaneko.org                         ◆ ◆編集部:mgzn@yamaneko.org     2021年12月15日発行 配信数 2480 無料◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●2021年12月号もくじ● ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◎特集:第24回やまねこ賞──会員が選んだ、今年の児童書ベスト5は? ◎訳者が語る! 注目の本(邦訳読み物):『詩人になりたいわたしX』                    エリザベス・アセヴェド作/田中亜希子訳 ◎注目の本(邦訳読み物):『アリスとふたりのおかしな冒険』            ナターシャ・ファラント作/佐竹美保絵/ないとうふみこ訳 ◎賞情報:2021年全米図書賞児童書部門発表!  受賞作品レビュー:"Last Night at the Telegraph Club" マリンダ・ロー作 ◎mikiron の親ばか絵本日誌:第6回 『ツリーハウスがほしいなら』 ◎賞速報 ◎イベント速報 ◎読者の広場 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●特集●第24回やまねこ賞 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  さる11月1日から17日までの間、やまねこ翻訳クラブ恒例のやまねこ賞の投票が、 オンラインで開催されました。やまねこ賞は、前年10月から本年9月までに出版され た邦訳児童書を対象に、会員がベスト5を選び、大賞作品を決定するものです(読み 物部門、絵本部門)。両部門の大賞に輝いた作品の翻訳者には、当クラブより賞状と 副賞の図書カードをお贈りします。  また、会員が過去1年間に読んだ原書と、新刊以外の邦訳児童書を対象とする、別 賞(原書部門、オールタイム部門)も設けています。別賞の集計は行わず順位もつけ ませんが、例年、会員の幅広い読書傾向を反映して、バラエティー豊かな作品が並ぶ 投票結果となっています。  なお、投票のあった全作品のタイトルを、やまねこ賞ポータルページ(下記)から 部門別にご覧いただけます。 ▽やまねこ賞ポータルページ http://www.yamaneko.org/yn_award/index.htm ※本号に掲載しているコメントは、投票時に任意で寄せられたものの一部で、原則と して投票時のままです。投票の様子は「これまでのあゆみ ( http://www.yamaneko.org/yn_award/index.htm#ayumi )」の「過去の投票の様子」 をご覧ください。 「読み物」「絵本」の分類については、原則として各出版社、書店などの種別を参考 に、当クラブの判断で決定しています。  やまねこ翻訳クラブは、会員・非会員を問わず、海外児童書を主とした本の話題が 書き込める「読書室掲示板」を運営しています。 http://www.yamaneko.org/dokusho/index.htm      ★☆★☆【2021年 第24回やまねこ賞 読み物部門】☆★☆★ ★大賞 『詩人になりたいわたしX』                エリザベス・アセヴェド作 田中亜希子訳 小学館  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ニューヨークのハーレムで暮らす、15歳の女の子シオマラ。さまざまな悩みを抱え るなか、詩のパフォーマンス〈スポークンワードポエトリー〉と、その競技会〈スラ ム〉に出あう。詩を中心に、シオマラが思いをつづった日記として書かれ、2018年全 米図書賞児童書部門ほか数多くの賞を受賞した話題作。 (本誌今月号「訳者が語る! 注目の本」をご参照ください) ◎規範に収まるようにしつけてくる母や宗教への反発、思春期のもやもや、恋心、女 であり、そのようにみられること……。自分が自分であるためにことばで戦おうとす るシオマラのパワフルさにしびれた。(shoko) ◎抑圧的な母のもとで、それでもまっすぐに成長するシオマラの強さ。詩という表現 方法を知って、燃える思いを吐露していく。憑依したかのような訳がすごい。(BUN) ◎自分らしい生き方を模索する主人公の気持ちがダイレクトに伝わってくる。今まで 言葉にならなかった苦しみや喜びを詩で表現できるようになる過程に引き込まれる。 10代の子が読んだら「これ、わたしのこと!」と深く共感できるのでは。(maika) ◎ポエトリー・スラムって、言葉をつかった格闘技のようだ。(hanemi) ◎自分らしく生きるために闘うシオマラの言葉がページから流れ出し、心に染み入っ てくるようでした。素直で、でも複雑な気持ちに自然と共感させられました。(mya) ☆~~~~~~~~~~~~~~~【受賞のことば】 翻訳家 田中亜希子さん ~~~~~~~~~~~~~~~☆ |                                    | | 日本では注目されにくい詩のYAを、支持してくださったやまねこのみなさ | |ま、本当にありがとうございます! いくつもの詩が集まって一つの物語になっ| |ているこの作品では、詩を通して主人公の怒りや悲しみや喜びが、ときには繊細| |に、ときには力強く語られていきます。その瑞々しさといったら! 夢中になっ| |て読んだ本ですが、訳は一気にとはいかず、推敲をぎりぎりまで重ねることにな| |りました。この場をお借りして、お世話になったみなさまにも、お礼を申し上げ| |ます。                                 | ☆                                    ☆  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ◆2位(2作同点) 『海を見た日』M・G・ヘネシー作 杉田七重訳 鈴木出版  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ロサンゼルスのとある里親家庭に預けられた、血のつながらない3人の子どもたち。 それぞれに事情があり、仲良しとはほど遠い。養母も夫を亡くしてふさぎこみ、自分 のことでせいいっぱいだ。そこへ新たに自閉症の男の子が預けられる。男の子が入院 中の母親に会いたがっていると知り、子どもたちは……。LAの里親制度をよく知る 作者の思いがこめられた作品。 ◎同じ家に住みながら、気持ちも行動もバラバラだった子どもたちが、1つの冒険を きっかけに、きょうだい、家族となる。爽やかで心地いい展開だった。(ゆま) ◎みんなひっしで生きている。せつなくて、あったかくて、ちからづよい話。(NON) ◎里親養育を受ける4人の子どもたちがそれぞれに魅力的。おとな(養母)の弱さや 成長する姿が描かれているのもいい。(しほ) ◎子どもたち4人とも愛おしくて抱きしめたくなりました。読後感のよさが今年一番 でした。(匿名希望) ◎米国の里親制度の実態がよくわかったが、それ以上に物語が抜群に面白い。(ちゃ ぴ) ◆2位(2作同点) 『ミシシッピ冒険記 ぼくらが3ドルで大金持ちになったわけ』                ダヴィデ・モロジノット作 中村智子訳 岩崎書店  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  20世紀初頭の米国南部。4人の子どもたちは沼地で3ドルを拾い、カタログ通信販 売で銃を注文する。ところが何の手違いか、届いたのはいわくつきの壊れた懐中時計 だった! 時計を返品して大金を手に入れようと、4人は大都会シカゴを目指す。イ タリア人作家が米国の「ほら話」の伝統をヒントにつむぎだす、スリル満点の物語。 2017年イタリア・アンデルセン賞受賞作品。 ◎展開の速さと次々現れる怪しげな人物。4人の子供たちの痛快な冒険物語。辛いこ とも数々起こりはするけれど、大金持ちへと続く旅は止まらない。(おちゃわん) ◎「ハックルベリー・フィン」へのオマージュらしく、ミシシッピ川を内陸に遡る子 どもたち。20世紀初頭を舞台としたクラシックな冒険談に、現代作家の問題意識が織 り込まれ、とても読みごたえのある作品だった。(キジトラ) ◎童心にかえって、ハラハラドキドキしっぱなし! カタログや新聞のイラストも楽 しくて、目を皿のようにして見てしまった。(匿名希望) ◎冒険記に差別や貧困の問題、ミステリー要素が盛り込まれ一気読み。時代がかった 本の作りもステキ。(おとむとむ) ◆4位 『アリスとふたりのおかしな冒険』       ナターシャ・ファラント作 佐竹美保絵 ないとうふみこ訳 徳間書店  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  裏切りと友情。悲しい過去と新たな出会い。謎の手紙と、怪しい追っ手。ワクワク する冒険の要素がこれでもかと詰め込まれた旅の果てに、アリスがたどりついたほん とうの「勇敢さ」とは――。現代スコットランドで繰り広げられる、心おどる冒険譚。 邦訳には生き生きとした挿絵がふんだんに盛り込まれ、物語を引き立てる。 (本誌今月号「注目の本」をご参照ください) ◎寄宿学校という魅力的な舞台に、スコットランドの自然。古典的な雰囲気をただよ わせつつ、冒険はハラハラドキドキ。3人の子どもたちの心情と成長がしっかりと描 かれているのもいい。(いけだ) ◎ロマン溢れる時に無謀な冒険物語にハラハラドキドキ。海鳥天国スコットランドの 景色も綺麗。型破りな主人公と型破りな寄宿学校が好み。家族のあり方という“型” をも破ろうとする作者の意欲を感じました。(mipo) ◎最後の最後で作品に対する印象ががらりと変わった。そうか、そういう話だったの か!!!(匿名希望) ◆5位 『ダリウスは今日も生きづらい』                  アディーブ・コラーム作 三辺律子訳 集英社  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  お茶と『スター・トレック』をこよなく愛するダリウスは、イラン出身の母親と白 人の父親を持つ、アメリカ生まれの16歳の男の子。いじめ、うつ病、父親との関係な ど、悩みは尽きない。そんななか、初めてイランを訪れることになり――。ユーモア あふれる語り口に切実な思いをにじませ、深い感動を与えてくれるYA小説。原書は 続編も刊行されており、邦訳が待たれる。 ◎いろいろ複雑に抱え込んでいるダリウスの生きづらさは彼だけのもので、まったく 同じ状況の読者はいないだろう。でも、そこを飛び越えて共感をおぼえる。この物語 に救われる読者(特にYA世代)がきっといる。(からくっこ) ◎イランの暮らしや文化がとても新鮮でした。ダリウスの生きづらい理由に少しも共 通項はないのに、なぜか共感。(コアラン) ◎イランでのダリウスの場所が、そこの誰にとっても手ばなしがたくなっていくよう に、からっぽだったダリウスの心が満たされていくさまにイランのお茶のようなあた たかさを感じた。(Incisor) ◆6位以下の作品 6位『オール・アメリカン・ボーイズ』   『オマルとハッサン 4歳で難民になったぼくと弟の15年』『ヤーガの走る家』                                 (3作同点) 9位『彼方の光』 10位『ぼくはおじいちゃんと戦争した』       ★☆★☆【2021年 第24回やまねこ賞 絵本部門】☆★☆★ ★大賞 『ぼくは川のように話す』         ジョーダン・スコット文 シドニー・スミス絵 原田勝訳 偕成社  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ぼくのまわりは、ことばの音だらけ。でもぼくには、うまく発音できない音がある。 吃音のせいで内向きになりがちな少年が、父親のひとことで自分を受け入れ、前を向 きはじめる過程が、主人公の心情を見事に表す絵とともに描かれている。2021年シュ ナイダー・ファミリーブック賞子ども向け部門等受賞多数。 ◎画力と物語の調和がダントツ1位でした。川辺で父と子が並んだ後ろ姿にほろり。 そして何と言っても、パノラマを開いた時の感動が忘れられません。(mipo) ◎お父さんの言葉がきっかけでぼくの世界がぱっと開けた瞬間がとても印象的。 (asayaka) ◎「おまえは、川のように話してるんだ」というお父さんの言葉と、きらきら光る川 面の絵に鳥肌が立ちました。(コアラン) ◎文章を担当したジョーダン・スコットの自伝的な絵本。シドニー・スミスの絵もい い(ぼやけたクラスメートたちの顔も、泡立って流れていく川も)。(hanemi) ◎こんなに感情がゆさぶられた絵本はないかもしれないと思うほど素晴らしい絵本だ と思った。少年の苦悩する表情、父親の言葉に救われたときに自分を解放する姿、水 の動きなど、大胆な筆使いと写真のようにも見える繊細な表現力を見せる絵に圧倒さ れた。(匿名希望) ☆~~~~~~~~~~~~~~~~~【受賞のことば】 翻訳家 原田勝さん ~~~~~~~~~~~~~~~~~☆ |                                    | | 『ペーパーボーイ』、『コピーボーイ』に続いて、吃音者が主人公の作品での| |受賞となりました。今回は絵本、しかも原作者が詩人なので、少ない言葉をどう| |翻訳するか、編集者さんと詰めていく過程がとてもスリリングでした。また、テ| |ーマが吃音ということもあって、言葉をあやつることのむずかしさ、大切さを再| |認識する仕事となりました。やまねこのみなさんにも評価していただき、とても| |うれしい。ありがとうございました!                   | ☆                                    ☆  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ◆2位 『くらやみきんしの国』        エミリー・ハワース=ブース文・絵 おおつかのりこ訳 あかね書房  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  夜が怖い王さまは、くらやみを禁止にすることを思いつく。だが、一方的に国民に 命令してもうまくいくとは思えない。そこで、うわさを流して国民自らがくらやみを きらうよう仕向けるが、思わぬ問題が起き……。黒と黄色(闇と光)を大胆に使った、 親しみやすい絵にのせて、ぴりっと辛い社会風刺的なテーマが語られている作品。 ◎「自分で考えて行動したつもりのことが、実は誰かに誘導されたことなのかもしれ ない」という可能性があることを、子どもにも一度示してあげることは、実は大事な ことなのではと、この本を読んで気付かされました。(なおじ) ◎「じぶんたちで きめたと おもいこませる」方法。うわさに、情報操作。怖いね。 あかりけいさつも怖いね。「ひそひそ」作戦って、実際はこう上手くいくだろうか? (おちゃわん) ◎よく考えれば信じられないことなのに、報道や宣伝のせいでみんながそれを正しい と信じてしまう。こんなことはどこかでもよくありそう。やわらかな雰囲気のイラス トなのに風刺がぴりっときいている。ラストがすてき。(shoko) ◆3位 『地球のことをおしえてあげる』              ソフィー・ブラッコール文・絵 横山和江訳 鈴木出版  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  宇宙からくるだれかのために、住む家、家族の形、着る服、気候、交通手段、勉強、 仕事など、地球上のあらゆることを説明するという壮大な絵本。どの分野においても、 多様性がキーワードになっており、絵にもその配慮が行き届いている。「地球人」で あることを誇りに思わせてくれる一冊。 ◎宇宙人に地球のことを教えてあげるという設定だが、あらためて私たちの周りのす べてが多様性に富んでいるということに気づかされるすばらしい内容。そして、ソフ ィー・ブラッコールさんの絵がすみずみまで美しい。(いけだ) ◎地球のすばらしさ、生きていることの奇跡が詰まった宝箱のような絵本。(おとむ とむ) ◎地球外の誰かに話しかけるという発想がユニーク。地球についてのあれこれにも、 考えさせられた。(ゆま) ◎優しい語り口に導かれて美しい絵を眺めていると、地球っていいところだなあとい う気持ちになる。(しほ) ◆4位 『このまちのどこかに』シドニー・スミス文・絵 せなあいこ訳 評論社  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ひとりバスに乗り、大都会に降り立った小さな子ども。まわりは、知らない人ばか り。こんなところで、「きみ」はどんなに心細いだろう。「ちいさなもの」への愛情 が、二重構造になっていることがわかるラストが秀逸。主人公の高まる不安を具現化 したような雪の絵も印象に残る。2021年ケイト・グリーナウェイ賞等受賞多数。 ◎この心細さ、この悲しみ。小さな者の気持ちを、子どもはよく知っている。すべて の絵にその心情があらわれていて、心を大きく揺さぶられた。(キジトラ) ◎だれに語りかけているのか、気づいたところから涙腺が……。やるせない気持ちに なるので、ちっちゃいこ向きではないかもしれないけど。どうか無事に帰ってきてね。 (BUN) ◎都会の冬の寒さ、さみしさ、切なさが五感に伝わってくるような絵に、あたたかく、 どこまでも優しいことばがこだまして、いとしいものの名前を大声で叫びたくなる。 すいこまれそうな吹雪が印象的。(Incisor) ◆5位 『そらからおちてきてん』            ジョン・クラッセン文・絵 長谷川義史訳 クレヨンハウス  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  大人気「ぼうし」シリーズの作者による待望の新作。作者いわく「空から落ちてく る大きな岩と宇宙人、タイムトラベルのお話」(!)が5つ入っている。絵が語るこ とは文は語らず、文が語ることは絵は語らない。まさに絵本の真骨頂。愛らしい登場 人物が繰り広げるシュールでコミカルなザ・クラッセンワールド! ◎絵も文もストーリーもすごくシンプルなのに、飽きるどころか何度でも読みたくな ります。絶妙な緊張感とユーモア、それに、声に出して読みたくなる訳文が魅力的。 (mya) ◎ジョン・クラッセンの独特な絵と、大阪弁の訳が絶妙に合っています。特に「しら んけど」のところで笑いました。(mikiron) ◎怖いけどあったかい。大阪弁はさりげない優しさを伝えるのにピッタリ。(匿名希 望) ◆6位以下の作品 6位『エイドリアンはぜったいウソをついている』 7位『おじいちゃんのたびじたく』   『子どもの本で平和をつくる イエラ・レップマンの目ざしたこと』(2作同点) 9位『アパートのひとたち』『いえのなかといえのそとで』(2作同点)  見事大賞に輝かれました田中亜希子さん、原田勝さん、おめでとうございます! お忙しいところ、快く「受賞のことば」をお寄せくださったおふたりに、心から感謝 申し上げます。  今年のやまねこ賞では、読み物部門51作品、絵本部門69作品に投票がありました。 本誌に掲載したタイトルは10位までですが、「これまでのあゆみ ( http://www.yamaneko.org/yn_award/index.htm#ayumi )」の「過去の投票の様子」 で、投票があった全作品のタイトルをご確認いただけます。別賞(原書部門、オール タイム部門)もあわせて、ぜひご覧ください。 【参考】 ▽やまねこ賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/award/yn/index.htm ▽やまねこ賞大賞受賞作品一覧(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/award/yn/ichiran.htm                            (相良倫子/綿谷志穂) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●訳者が語る! 注目の本(邦訳読み物)●『詩人になりたいわたしX』 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  本コーナーでは、やまねこ翻訳クラブ会員である訳者本人が、訳した作品の魅力や 翻訳にまつわるエピソードを語ります。  今回の執筆者は田中亜希子さん。取り上げるのは、第24回やまねこ賞「読み物部門」 大賞に輝いた作品です。 **************************************************************************** 『詩人になりたいわたしX』 エリザベス・アセヴェド作/田中亜希子訳 小学館 定価1,600円(本体) 2021.01 416ページ ISBN 978-4092905887 "The Poet X" by Elizabeth Acevedo HarperCollins Children's Books, 2018  15歳の女の子シオマラは、NYのハーレムに住むドミニカ移民二世。父をパピ、母 をマミ、とスペイン語で呼ぶなど、その暮らしにはドミニカ文化が入りこんでいます。 シオマラは、信仰やジェンダーについて自分の価値観を押しつけてくるマミとうまく いっていません。女らしい体つきのことを周囲にあれこれいわれるようになってから は、限られた人としか話さなくなりました。心の内を吐き出す唯一の場所が、ノート。 気持ちを詩にして書いていたのです。自分のために詩を作り続けていたシオマラです が、ある日、スポークンワードポエトリー(SWP)に出あいます。詩を覚えて人前 で語るというこのパフォーマンスアートに、どんどんひかれ……! 『詩人になりたいわたしX』は、詩でつづられたYAです。物語は、シオマラが書い た短い詩がいくつも並ぶ形で時系列に進みます。最初の詩は夏、シオマラが自分の住 むアパートの段々に座ってまわりをながめているところから始まります。おばちゃん たちがドミニカ・スペイン語でペチャクチャしゃべり、おやじたちが道端のドミノ勝 ち抜き戦で騒ぎ、タクシーからはラテン音楽が流れ……! 音の聞こえる独特の風景 が、シオマラの目をとおして、シオマラの言葉で、どんどん立ち上がっていくのです。 その鮮やかさ、瑞々しさ。作者の技が冴え渡ります。それもそのはず、この作品はS WPの競技〈スラム〉の全米大会優勝者が書いたものなのです。  SWPとは、詩を覚えて、パフォーマンスによって最大限に表現しようとするアー トです。声や身ぶりを使って観客の前で詩を語ります。観客の心をつかむ技を心得て いる作者は、最初の詩から見事に読者を物語にひきこんでくれます。なお、作者は自 身の朗読で、原書 "The Poet X" のオーディオブックを出しているほか、本に収録さ れているいくつかの詩のパフォーマンスを YouTube で動画配信しています。私は発 音の確認などのために両方を視聴したのですが、圧巻の内容に、目的を忘れて聴きほ れてしまいました。滑らかで美しいスペイン語の箇所にはうっとり。おすすめです。  母娘、信仰、恋といった悩みを抱えた女の子が、新しい世界と出あい、変わってい きます。キーワードは「言葉の力」。YAの王道をいく物語をぜひご堪能ください。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【作】エリザベス・アセヴェド(Elizabeth Acevedo):米国の詩人、作家。両親は ドミニカ共和国からの移民で自身はNY出身。スポークンワードポエトリーの〈スラ ム〉全米大会優勝者でもある。2冊目の著書にあたる本書で、全米図書賞、カーネギ ー賞、ボストングローブ・ホーンブック賞、マイケル・L・プリンツ賞等、英米児童 文学賞を総なめにした。現在、近刊もカーネギー賞のショートリストに入っている。 【訳】田中亜希子(たなか あきこ):英米児童文学翻訳者。読み聞かせの活動もし ている。訳書に絵本『コッケモーモー!』(ジュリエット・ダラス=コンテ文/アリ ソン・バートレット絵/徳間書店)、児童読み物「妖精ハウス」シリーズ(ケリー・ マケイン作/ポプラ社)、YA『目覚めの森の美女 森と水の14の物語』(ディアド ラ・サリヴァン作/東京創元社)など。やまねこ翻訳クラブ会員。 【参考】 ▼作者による作品紹介・詩のパフォーマンス動画                    (YouTube 内 Epic Reads のチャンネル) https://www.youtube.com/playlist?list=PLGTBqhN4e5ITK5r-T20wf5mxvXr7yH2pp                                (田中亜希子) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●注目の本(邦訳読み物)●スリル満点の型破りな冒険物語 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 『アリスとふたりのおかしな冒険』 ナターシャ・ファラント作/佐竹美保絵/ないとうふみこ訳 徳間書店 定価1,900円(本体) 2021.09 392ページ ISBN 978-4198653446 "The Children of Castle Rock" by Natasha Farrant Faber & Faber, 2018  主人公アリスは11歳。4年前に母を亡くしてから、部屋にこもって空想ばかりして いた。ある日、思い出のつまった屋敷を離れ、スコットランドの寄宿学校〈嵐の湖学 園〉に入ることになる。売れない俳優の父は、ツアーに出ると言ってどこかに行って しまった。アリスは、父にまた会いたいと願いながら、新生活を始めるのだった。  アリスは、そこで、内気できまじめなジェシーと、規則破りの頭脳派ファーガスの 2人の少年に出会う。3人は学校行事の「大オリエンテーリング大会」で同じ班にな った。イベント当日、3人はコースを外れ、パフィン(海鳥)の群れがいる天国のよ うな島をめざす。というのも数日前に、アリスは父から手紙をもらい、謎の小包を預 かることになったからだ。それを父に届けに行くのだが、無事に到着できるかがわか らないばかりか、父の狙いや、本当に姿を見せるのかも不明だ。しまいには、危険な 連中に追跡されるはめになり、スリル満点の展開になる。  3人組、寄宿学校、寮生活ときて、すぐに思い出すのは「ハリー・ポッター」シリ ーズだ。アリス自身、シリーズに登場する全寮制の魔法学校を連想し、そこで荒々し いスポーツが行われたり、魔法で石にされたりすると恐れるのだ。 〈嵐の湖学園〉は魔法学校ではない。けれど、そこは大自然という、心を解放する力 があった。山と湖、ヒースとシダの野原という別世界に足を踏み入れたとたん、アリ スの中で「めんどうを起こす才能」がめざめるのだ。アリスは、胸をおどらせ気持ち の高ぶるまま、せきを切ったように突飛な行動を重ねるので目が離せなくなる。冒険 物語といえば、主人公の、恐れを乗りこえる勇敢さが肝だが、本作のアリスは、勇敢 なのか、むこうみずなのかが最後までわからず、はらはらのしどおしだった。  あまりにも思いつきで行動するアリスに、「少しわきまえて」と言いたくなる自分 がいたが、それは型にはまることを覚えた大人の見方だろう。スリル満点で型破りな 冒険をする3人を見て、改めて気づいた。冒険に焦がれる子ども時代に、こうすべき という型なんてなかったはずだ。自分の物語を生きようとひたすら前に進むアリスは 勇敢だ。本作は、家族の型についても問いかける意欲作である。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【作】ナターシャ・ファラント(Natasha Farrant):ロンドン生まれロンドン育ち。 英国、フランス、オランダにルーツを持つ。6歳の頃初めて一人で物語を読み、本の 世界に没頭した時に作家になる決意をする。2008年に一般書でデビュー。本作が初邦 訳作品となる。2020年に発表した "Voyage of the Sparrowhawk" でコスタ賞児童書 部門を受賞したほか、2022年カーネギー賞にもノミネートされている。 【絵】佐竹美保(さたけ みほ):画家・イラストレーター。SFやファンタジー作 品の表紙や挿絵を手がける第一人者。やまねこ翻訳クラブにもファンが多い。新装版 「ハリー・ポッター」シリーズ(J・K・ローリング作/松岡佑子訳/静山社)のイ ラストが話題になったことは記憶に新しい。今年の刊行作に『きけんなゲーム』(マ ロリー・ブラックマン作/もりうちすみこ訳/文研出版)などがある。 【訳】ないとう ふみこ(内藤文子):英米文学翻訳者。訳書に、『ハヤクさん一家 とかしこいねこ』(マイケル・ローゼン作/トニー・ロス絵/徳間書店)、『貸出禁 止の本をすくえ!』(アラン・グラッツ作/ほるぷ出版)、『ゴースト』(ジェイソ ン・レノルズ作/小峰書店)など多数。各種コンテストの審査員、翻訳講座の講師な ども務める。やまねこ翻訳クラブ会員。 【参考】 ▼ナターシャ・ファラント公式ウェブサイト https://www.natashafarrant.com/ ▼ないとうふみこ訳書リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/int/ls/fnaito.htm                                 (小原美穂) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●賞情報●2021年全米図書賞児童書部門発表! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  11月17日、2021年全米図書賞の受賞作品が発表された。本号では、全5部門のうち 児童書部門の受賞作品を紹介するとともに、そのレビューをお届けする。なお、同部 門のファイナリストおよびロングリストに選ばれた作品は、本誌2021年10月号「賞情 報:速報! 2021年全米図書賞児童書部門 ファイナリスト発表!」を参照のこと。 The National Book Awards 2021 Winner ★児童書部門(Young People's Literature) "Last Night at the Telegraph Club" by Malinda Lo                       (Dutton Books for Young Readers)  2021年全米図書賞児童書部門は、中国系アメリカ人作家 Malinda Lo が手がけた "Last Night at the Telegraph Club" が受賞した。詳しくは、本誌今月号のレビュ ーをご参照いただきたい。 【参考】 ▼2021年全米図書賞発表ページ(National Book Foundation ウェブサイト内) https://www.nationalbook.org/awards-prizes/national-book-awards-2021/ ▼上記ウェブサイト内、児童書部門発表ページ https://www.nationalbook.org/awards-prizes/national-book-awards-2021/?cat=ypl ▽全米図書賞児童書部門について(本誌2003年12月号情報編「世界の児童文学賞」) http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2003/12a.htm#bungaku ▽本誌バックナンバー(2021年10月号)     「賞情報:速報! 2021年全米図書賞児童書部門 ファイナリスト発表!」 http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2021/10.htm#sokuho ▽全米図書賞児童書部門受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/award/us/nba/index.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★2021年全米図書賞児童書部門受賞作品 "Last Night at the Telegraph Club" 『あの夜、テレグラフ・クラブで』(仮題) by Malinda Lo マリンダ・ロー作 Dutton Books for Young Readers, 2021, ISBN 978-0525555261 (EPUB) Dutton Books for Young Readers, 2021, 416pp. ISBN 978-0525555254 (HB) (このレビューは電子書籍版を参照して書かれています)  1954年、サンフランシスコにはマッカーシズムの波が押し寄せ、共産主義と関係の ない中国系移民までもが強制送還の危険に脅かされていた。チャイナタウンで暮らす 17歳の少女リリー(麗麗)も、よけいな疑いを招かないようにと両親に厳しく言い渡 される。控えめでおとなしい性格のリリーだが、規範から外れることを良しとしない 家族や幼なじみたちには言えない秘密もあった。将来ロケット開発者になりたいこと、 そして、自分の恋愛対象が女性かもしれないことだ。  ただひとり、リリーが本音で話せる相手がいた。同級生のキャスだ。イタリア系の 女の子で、親しくなったばかりだが、パイロットになる夢を熱く語る姿にリリーは心 惹かれていた。ある夜、リリーはキャスに誘われ、男装の歌手がステージに立つ〈テ レグラフ・クラブ〉を訪れる。クラブに通い、客のレズビアンたちと交流するうちに、 リリーははっきりと自覚する――自分はキャスに恋しているのだと。しかし、同性愛 者も厳しく弾圧される時代、大きな試練がふたりを待ち受けていた。  本作の最大の魅力は、その細やかな描写にある。リリーの性の目覚めのきっかけと なるロマンス小説の内容から、クラブの内装や音楽まで、豊かなディテールが当時の レズビアン文化に命を吹き込み、本を閉じた後も、煙草やカクテルの残り香が漂って いるような気がするほどだ。おかげで、繊細な心理描写や切ない恋模様もより真実味 を帯び、リリーたちが身近に感じられる。レズビアンで元ジャーナリストの作者が資 料を調査し時代考証にこだわったのは、黙殺されてきた同性愛者の存在を書き残すた めでもあるだろう。受賞スピーチでは、今もLGBTQ文学が一部の学校で排除され ていることに触れ、そのような「消去」を許してはならないと強く訴えている。  もうひとつ作者が注力したのが、自身のルーツでもある中国系移民の歴史をふりか えることだ。物語にリリーの両親や叔母の回想を織り交ぜ、戦前から戦後という長い 射程で移民の姿を描きだす。一部の台詞は漢字を使い、中国語で書かれている。差別 や偏見にさらされながらも、よき中国人、よき米国市民であろうとした人々の思いに 光を当てた本作の受賞は、コロナ禍の今、いっそう大きな意義を持つにちがいない。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【作】Malinda Lo(マリンダ・ロー):中国生まれの米国の作家。幼少期に渡米し、 現在はマサチューセッツ州でパートナーと暮らす。2009年に『シンデレラ』をフェミ ニズム的視点で再解釈した "Ash" でデビュー。以降、主にYA読者を対象にファン タジー・SFなど幅広いジャンルの作品を手がける。2022年には、本作の姉妹編で現 代が舞台の新作 "A Scatter of Light" を刊行予定。邦訳はまだない。 【参考】 ▼マリンダ・ロー公式ウェブサイト https://www.malindalo.com/                                 (綿谷志穂) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●mikiron の親ばか絵本日誌●第6回『ツリーハウスがほしいなら』 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  本コーナーでは、わたくし mikiron が親ばかを承知のうえで、5歳の息子「青 (しょう)ちゃん」との日常を記しつつ、お気に入りの絵本をご紹介していきます。 どうぞおつきあいくださいませ。  本号では、やまねこ翻訳クラブ恒例のやまねこ賞を取り上げています。実はこのや まねこ賞、投票した会員の中から抽選を行い、当選者には大賞受賞の本がプレゼント されるという、楽しい企画も用意されています。わたしにとってやまねこ賞の思い出 は、2018年の第21回やまねこ賞で運よく当選し、『ツリーハウスがほしいなら』(カ ーター・ヒギンズ文/エミリー・ヒューズ絵/千葉茂樹訳/ブロンズ新社)をプレゼ ントしていただいたことです。しかも、千葉茂樹さんの素敵なサイン入り! まさか 当たると思っていなかったので、嬉しくて小躍りしたのを覚えています。当時、まだ 2歳の青ちゃんには理解するのが難しいかなと思い、(大切な絵本を汚されたくない 気持ちもあって)棚の奥にしまってはときどき手にとって眺めていました。成長とと もに、いろいろなお話に興味を示しはじめたので読んであげたところ、みごと、お気 に入りの絵本の仲間入り。今では寝る前に読む絵本の定番となりました。 「ツリーハウスが ほしいなら まずは ゆったり あわてずに さあ そらを み あげよう」という一文ではじまるこの絵本では、種類もさまざまな木の上につくられ た家がたくさん登場します。見上げるように高い木の上のツリーハウス、本でいっぱ いの図書館みたいなツリーハウス、星に手が届きそうなツリーハウス……。どれも魅 力的で、子どもはもちろん大人の心もくすぐります。おやつを食べては海賊ごっこを したり、寝袋にもぐってお泊りしたり、友だち同士で秘密の話をしたり、わくわくす る要素が盛りだくさんの一冊です。  先日、久しぶりに実家に帰省した際、わたしが昔よく遊んだ川原へ青ちゃんを連れ て行きました。自分の頭ほどもある大きな石を持ち上げては川に放り込み、水しぶき を浴びてはしゃいでいた青ちゃん。一緒に石を投げながら、子どもの頃、川原にある 巨大な岩をお城に見立てて遊んでいたことをふと思い出しました。ツリーハウスや秘 密基地のような感覚です。今では筋金入りのインドア派のわたしですが、そういえば 当時は木登りも得意で、木の枝にまたがって想像をふくらませていました。外遊びで 自然に触れる経験から得る学びは、本を読んで身につく知識とはまたちがった、特別 なもの。絵本に出てくるようなツリーハウスをつくることは難しいけれど、親子で一 緒に、まずは空を見上げようと思います。できることなら、木登りも……? 【参考】 ▽本誌バックナンバー「親ばか絵本日誌」コーナー http://www.yamaneko.org/mgzn/corner/oyabaka.htm                                 (山本みき) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●賞速報● ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★2022年度アストリッド・リンドグレーン記念文学賞候補者発表                    (受賞者の発表は2022年3月22日の予定) ★2021年ドイツ児童文学賞発表 ★2022年カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞ノミネート作品発表    (ロングリストの発表は2022年2月16日、ショートリストの発表は3月16日、                       受賞作品の発表は6月16日の予定) ★2021年コスタ賞児童書部門ショートリスト発表      (受賞作品の発表は2022年1月4日、最優秀賞の発表は2月1日の予定)  海外児童文学賞の書誌情報を随時掲載しています。「速報(海外児童文学賞)」を ご覧ください。 http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=award ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●イベント速報● ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★展示会情報  板橋区立美術館「つくる・つながる・ポール・コックス展」  太田市美術館・図書館「2021イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」 など ★講座・講演会情報  第4回JBBY子どもの本の翻訳フォーラム   「子どもの本・日本と世界〜視野の違いを探る」@オンライン  大阪国際児童文学振興財団講演会「シンデレラ話の多様な世界を楽しもう」 など ★イベント情報  紀伊國屋ホール「人形劇団プーク公演『オッペルと象―おとなの童話―』」 など  新型コロナウイルス感染拡大の影響で、イベントは中止や延期になる場合がありま す。最新の開催情報は「児童書関連イベント情報掲示板」掲載の各参考ウェブサイト でご確認ください。 http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=event  ツイッターアカウントでも最新情報を提供していますので、どうぞご注目ください。 ▽やまねこ翻訳クラブ*イベント情報 Twitter https://twitter.com/YamanekoEvent                           (冬木恵子/山本真奈美) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●読者の広場●海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  このコーナーでは、本誌に対するご感想・ご質問をはじめ、海外児童書にまつわる お話、ご質問、ご意見等を募集しています。mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せ ください。 ※メールはなるべく400字以内で、ペンネームをつけてお送りください。 ※タイトルには必ず「読者の広場」とお入れください。 ※掲載時には、趣旨を変えない範囲で文章を改変させていただく場合があります。 ※質問に対するお返事は、こちらに掲載させていただくことがあります。原則的に編 集部からメールでの回答はいたしませんので、ご了承ください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●読者のみなさまへ●  ご愛読いただきまして、ありがとうございます。当メールマガジンは、来年も発行 月を3月、4月、6月、7月、9月、10月、12月の年7回とさせていただきます。ま た、1月には号外を発行する予定です。毎月の発行とはなりませんが、毎号、充実し た内容でお届けできるよう、編集部一同、努力してまいります。今後ともご愛読のほ ど、よろしくお願い申し上げます。                          「月刊児童文学翻訳」編集部 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●お知らせ●  本誌でご紹介した本を、各種のインターネット書店で簡単に参照していただけます。 こちらの「やまねこ翻訳クラブ オンライン書店」よりお入りください。 http://www.yamaneko.org/info/order.htm  本号の html 版を12月18日に公開予定です。以下の URL よりお入りください。 http://www.yamaneko.org/mgzn/bncorner.htm#html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━            ・☆・〜 次 号 予 告 〜・☆・  ニューベリー賞・コールデコット賞・プリンツ賞の発表にともなう号外を1月下旬 に発行する予定です。どうぞお楽しみに! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ =- PR -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=      ★☆メールマガジン『海外ミステリ通信』 隔月15日発行☆★           http://honyakuwhod.blog.shinobi.jp/ 未訳書から邦訳新刊まで、あらゆる海外ミステリの情報を厳選して紹介。翻訳家や 編集者の方々へのインタビューもあります!    〈フーダニット翻訳倶楽部〉 =-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=- PR -= ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=    ◇各掲示板の話題やクラブの動きなど、HOT な情報をご紹介しています◇ ★やまねこ翻訳クラブ Facebook ページ https://www.facebook.com/yamaneko1997/ ★やまねこ翻訳クラブ Twitter  やまねこアクチベーター       https://twitter.com/YActivator  やまねこ翻訳クラブ☆ゆる猫ツイート https://twitter.com/yamanekohonyaku  やまねこ翻訳クラブ*イベント情報  https://twitter.com/YamanekoEvent  巷で見かけたやまねこたち      https://twitter.com/ChimataYamaneko *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●編集後記●今月号でお届けした第24回やまねこ賞。幅広いジャンルの魅力あふれる 作品がならびました。気になった作品がありましたら、冬休みに手にとってみてくだ さい。今年もご愛読くださりありがとうございました。これからも、読者のみなさま に最新の情報をお届けできるよう努力してまいります。2022年も「月刊児童文学翻訳」 をどうぞよろしくお願いします。次号は1月号外です。お楽しみに。(み) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発 行 やまねこ翻訳クラブ 編集人 三好美香/森井理沙/平野麻紗(やまねこ翻訳クラブ スタッフ) 企 画 赤塚きょう子 尾被ほっぽ かまだゆうこ 蒲池由佳 小島明子 小原美穂     相良倫子 佐藤淑子 田中亜希子 冬木恵子 古市真由美 安田冬子     山本真奈美 山本みき 横山和江 綿谷志穂 協 力 出版翻訳ネットワーク 管理人 小野仙内     ながさわくにお ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ・このメールマガジンは、「まぐまぐ」( http://www.mag2.com/ )を利用して配信 しています。購読のお申し込み、解除は下記のページからお手続きください。 http://www.mag2.com/m/0000013198.html ・バックナンバーは、http://www.yamaneko.org/mgzn/ でご覧いただけます。 ・ご意見・ご感想は mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せください。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ◆無断転載を禁じます。