2008年 岩波書店新刊情報

2008年9月刊行

★2007年(2006年度)カーネギー賞ノミネート(Long List)★
★2006-07ビスト最優秀児童図書賞★
★2008年ドイツ児童文学賞青少年審査員賞ノミネート★

縞模様のパジャマの少年:表紙  縞模様のパジャマの少年
The Boy in the Striped Pyjamas


ジョン・ボイン作
千葉茂樹訳


ISBN 978-4-00-115623-2
定価 本体1800円+税

ナチスによるホロコーストを背景にたくさんの物語が書かれてきました。
1971年のアイルランド生まれの作家ジョン・ボインも、そのひとりになったのです、この作品によって。
アウシュヴィッツ収容所のまわりにめぐらされたフェンス、そのこちら側とあちら側にいた少年2人が出会った物語を、淡々と――。

歴史をすでに知っている読者にとっては、読んでいてどんどん落ち着かない気持ちにさせられます。
9歳のブルーノがお金に不自由することなく、楽しく暮らしていたベルリンから、周りには子どもが住んでいない、そして今まで住んでいた家と比べるとひじょうに狭い家に生活しなくてはならなくなります。いつかベルリンに戻りたいと思っていたけれど、子どものブルーノにとっては、何もできません。そのうち生活になじみ、以前よくやっていた探検をこの地でもこころみます。探検でみつけたものは何だったでしょう。偶然にも誕生日が同じ少年です。同年代の友人ができ、うれしいブルーノ。縞模様のパジャマを着ている少年シュムエルとは、一緒に走り回ったり探検したりはできないけれど、たくさんのおしゃべりをし、フェンスごしに手にふれたりします。

ふっくらとしたブルーノは食べ物にこまることはありません。シュムエルはいつもおなかをすかせているので、ブルーノは家からせっせと差し入れします。しかし、フェンスまでは遠いので、もってきた食べ物を自分が全部食べてしまうこともあるほど。いつもおなかをすかせ、顔色が悪く、時はあざをつくっているシュムエル。ブルーノはいつかシュムエルの力になりたいと願います……。


訳者あとがきにも書かれているように、現実にはこんなゆるいフェンスはおそらく存在していなかったでしょう。しかし、フェンスごしに友情をはぐくんでいるふたりは、とてもリアルです。

そして、このふたりの行方を私はきっと忘れません。

ジョン・ボイン(John Boyne)
1971年、アイルランドのダブリンに生まれる。トリニティ・カレッジで英文学を、イースト・アングリア大学で創作を学ぶ。小説として4作目にあたる本作品は、アイルランドで長期間ベストセラーとなって話題をよび、カーネギー賞の候補にも選ばれた。30か国以上で翻訳出版され、映画化もされている。

千葉茂樹
1959年、北海道生まれ。国際基督教大学卒業後、児童書編集者を経て、現在は翻訳家として活躍。訳書に『秘密の道をぬけて』(あすなろ書房)、『スター・ガール』(理論社)、『ディナモ ナチスに消されたフットボーラー』(晶文社)、絵本に『国境を越えて 戦禍を生きのびたユダヤ人家族の物語』(BL出版)、『メアリー・スミス』(光村教育図書)、『アンジェロ』(ほるぷ出版)など多数。


2008年1月刊行

あかいはなさいた:表紙 物語が生きる力を育てる:表紙
あかいはな さいた

タク ヘジョン 文・絵
かみや にじ 訳

ISBN 978-4-00-111208-5
定価 本体1400円+税
物語が生きる力を育てる


脇 明子 著

ISBN 978-4-00-025301-7
定価 本体1600円+税
白い色を背景に、13種類の花が見開きいっぱいに咲きほこっている。チューリップは花びらの質感がまるでさわれるかのような、さわったら、そのふくふくとした花びらをさわれるかのように思えるほどの美しさ。

それらの花に添えられているのは、シンプルな短い詩。たとえばおきなぐさはこんな感じ。
おもいに ふけるおきなぐさ
 はるの ひざしに うとうとと
表紙の花はまつばぼたん。
みんな にっこり まつばぼたん
 まいあさ そろって まあるい えがお
花と言葉をたっぷり楽しめる絵本です。
ダイジェストにまとめることができないくらい濃密に物語の力について語られている。かといって、重たい内容ではない。3年前に『読む力は生きる力』を刊行し、その後さまざまな現場で見聞き、調べたことをもとに、「本を読まれること自体が大切ではない」という気持ちになったという。そこまでの思考をたどるのは、子どもたちが好む昔話の魅力をさぐっていくことでもあった。試行錯誤しながら、思考を深めた著者の言葉は、かろやかでいて深い。

物語に力のある本を子どもに手渡そうという著者の気持ちが強く伝わってくる。

物語に興味のある人にはおすすめしたい一冊。
タク ヘジョン
1975年、ソウルに生まれる。大学でイラストレーションと西洋画を専攻。現在は、子どもたちに絵を教えながら、フリーのイラストレーターとして活躍している。水彩画を好んで描き、はじめての絵本作品『ネコのまつ階段』で、2003年イ ゥギョン賞を受賞した。

かみや にじ(神谷丹路)
1958年、東京に生まれる。国際基督教大学卒業。韓国に留学した後、韓国の歴史や文化を紹介する仕事にたずさわっている。子どもの本の訳書に『だまされたトッケビ』『あかてぬぐいのおくさんと7にんのなかま』『よじはん よじはん』(以上、福音館書店)、『仙女ときこり』(岩崎書店)、『パンチョギ』(少年写真新聞社)などがある。
脇 明子
1948年生まれ、東京大学大学院人文科学研究科修了(比較文学)。現在、ノートルダム清心女子大学教授。「岡山子どもの本の会」代表。岡山県子ども読書活動推進会議会長。著書に『読む力は生きる力』(岩波書店)、『幻想の論理』『ファンタジーの秘密』(以上、沖積舎)、絵本に『おかぐら』(福音館書店)など。訳書は、マクドナルド『お姫さまとゴブリンの物語』、デ・ラ・メア『ムルガーのはるかな旅』、キャロル『不思議の国のアリス』、ハーン『雪女 夏の日の夢』(以上、岩波少年文庫)など多数。


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Last Modified: 2008/09/22
担当:さかな
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