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月刊児童文学翻訳 増刊号 No.5

〜映像化された児童文学「魔女編」〜

2002年11月12日発行


 ここ数年、「ハリー・ポッター」シリーズが火付け役となり、世界的なファンタジー・ブームが続いています。本誌では2001年11月号の情報編で、新刊ファンタジーを一挙にまとめる特集記事を掲載。その後もやまねこ翻訳クラブのウェブサイトでは関連情報が随時更新されています。
 ファンタジー・ブームは本の世界にとどまりません。日本では海外のファンタジー作品を原作とする長編映画やテレビシリーズが相次いでビデオ及びDVD化されています。これら一連の作品には、不思議な能力を持つ人間から空想上の動物まで様々なキャラクターが登場します。
 そんな映像世界の登場人物の中から、この増刊号で取り上げたのは《魔女》。魅力的な2人の女の子、「ハリー・ポッター」シリーズのハーマイオニーと「ミルドレッドの魔女学校」シリーズの主人公ミルドレッドを紹介します。2人は共にイギリス出身、普通の人間の家庭に育った新人魔女ですが、その生活ぶりは正反対。物語の背景を交えながら、彼女達の魅力に迫ります。

★関連URL
月刊児童文学翻訳 2001年11月号(No.35 書評編)
◎特別企画:今をときめくファンタジー作品群を見渡す
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2001/11b.htm#kikaku
◎邦訳ファンタジー作品リスト
http://www.yamaneko.org/bookdb/gen/fntsy/fntsy.htm

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もくじ

レビュー
「がんばれハーマイオニー!――ガリ勉優等生からの脱却」
「ドジでおてんばな見習い魔女ミルドレッドが大活躍!」
チェックしてみよう!
「あなたのハーマイオニー度、ミルドレッド度は?/注目の結果発表」
映像化された児童文学


レビュー

がんばれハーマイオニー!――ガリ勉優等生からの脱却

「ハリー・ポッターと賢者の石」
発売・販売 ワーナー・ホーム・ビデオ
ビデオ版/DVD版2002年5月15日発売(本体2,980円)本編152分
"Harry Potter and the Philosopher's Stone"(英国版)
"Harry Potter and the Sorcerer's Stone"(米国版)

 ハーマイオニー・グレンジャーは、ハリーと一緒に魔法学校ホグワーツに入学した、ちょっぴりおませで勝気な魔女。ホグワーツに向かう列車の中でハリーたちのコンパートメントに現れて、いきなり「早く制服に着替えた方がいいわよ」とおせっかいをやき、入学後も、ことあるごとに優等生ぶりを見せつけて、クラスメートから「ちょっとムカつく、変なヤツ」と思われている。はじめはハリーの友人、ロンとも折り合いが悪く、ロンの発音の間違いをしつこく指摘して「だから友達ができないんだ」という反撃を食らい、半日トイレで泣き続ける。
 ところが、このトイレ引きこもりの最中に、怪物トロールに襲われた彼女をハリーとロンが助けた事件をきっかけにして、“死ぬより退学が怖い”ハーマイオニーの価値観は大きく変化していく。友情に目覚めたハーマイオニーは、クィディッチの試合で劣勢のハリーを救うためスネイプ先生のマントに魔法で火をつけたり、真夜中に立ち入り禁止の場所に足を踏み入れて罰を受けたりと、めざましい勢いで優等生からの脱却を果たしていく。
 彼女の魅力を一言でいうなら、ずばり“ギャップ”。強気の中にのぞく繊細さ、ガリ勉優等生から友情に厚い規則破りの常習犯への変身、かわいい顔で次々と繰り出す辛らつな発言と大胆な行動などなど。いとも簡単に私たちの期待を裏切ってくれる、この“ギャップ”がたまらないのだ。自分たちの行く手を阻むネビルを何のためらいもなく石に変えたハーマイオニーを見て、「君って時々怖いよね」と思わずロンが感嘆する場面に大ウケした人は多いだろう。
 数々の困難を乗り越えた後、ホグワーツを危機から救った勇者の1人として讃えられた彼女の顔には、もはや頭でっかちのガリ勉の面影は微塵もなく、かわりに真の友情と勇気を知った歓びがあふれていた。優等生から脱却し、ひとまわり大きくなったハーマイオニーが次にどんな活躍を見せてくれるのか、映画化第2弾『ハリーポッターと秘密の部屋』の公開が待ちきれない。

(豊倉省子)

●原作本について
『ハリー・ポッターと賢者の石』
(Harry Potter and the Philosopher's Stone 1997.7)(英国版)
(Harry Potter and the Sorcerer's Stone 1998.9)(米国版)
『ハリー・ポッターと秘密の部屋』
(Harry Potter and the Chamber of Secrets 1999.2)(英国版)
(Harry Potter and the Chamber of Secrets 2000.8)(米国版)
『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』
(Harry Potter and the Prisoner of Azkaban 2000.9)(英国版・米国版)
『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』
(Harry Potter and the Goblet of Fire 2001.6)(英国版)
(Harry Potter and the Goblet of Fire 2002.7)(米国版)
すべてJ・K・ローリング著 松岡佑子訳 静山社
by J.K.Rowling, Bloomsbury Publishing Plc.
●映画の公式サイトはこちら↓
http://harrypotter.jp.warnerbros.com/home.html


ドジでおてんばな見習い魔女ミルドレッドが大活躍!


「ミルドレッドの魔女学校」1〜9巻
発売・販売 エースデュースエンタテインメント
ビデオ版2002年6月21日より順次発売(本体16,000円)各90分
DVD版10月25日より順次発売(本体2,800円)各90分
"The Worst Witch" by Jill Murphy


 ミルドレッド・ハブルは伝統あるカックル魔女学校の1年生。といっても彼女は人間の家庭に生まれ育った女の子だ。魔女の家系でない子供を受け入れる「特別枠」の入学試験に見事合格し、晴れて魔女学校の生徒となったのだった。
 しかし、これがすべての騒動の発端だった。何と言っても彼女、かなりドジでおてんばでイタズラ好き。そのうえ注意力散漫で勉強は苦手、高所恐怖症で暗い場所が大嫌いなのだ。入学式当日、遅刻したばかりか使い慣れないホウキに乗って大失敗する始末。オニ教頭のハードブルーム先生からは、すっかり目をつけられてしまう。
 その後もミルドレッドの受難は続く。なんと入学式早々、ホウキ乗りの適性試験が実施されるというのだ。不合格者は即刻退学、しかも試験官はハードブルーム先生だ。早くもミルドレッドは大ピンチ!
 イギリスで20年以上に渡り愛され続け、日本でも根強い人気を持つ「ドジ魔女ミルドレッド」シリーズがテレビの世界に飛びだした。ミルドレッドや友人のモード、宿敵のエセルなどが生き生きと描かれ、毎回目を離せない展開が続く。
 本作で一番注目したいのは登場人物の描き方。人間の力を超越した「魔女」が主人公の作品でありながら、死者が出ることはおろか、激しい暴力描写が一切ないのがポイントだ。勧善懲悪型のハデなアクションで展開するゲームやアニメーション作品が氾濫する現在、全編に渡りほのぼのとした視点で描かれる同シリーズはとても新鮮。悪い魔女やオニ教師、イジワルな同級生など「悪役(ヒール)」の一端を担う登場人物も皆、どことなく愛嬌があり憎めない。予想外の表情を見せる彼女達に思わずホロリとさせられる場面もしばしばだ。
 また、重厚な画面構成や音楽にも注目。歴史を感じさせる古城や森といったシチュエーションもさることながら、魔法の表現がよく工夫されており好感が持てる。また、テーマソングとなっている校歌のコーラスはまさに「天使の歌声」。透明感あふれる歌声に心が癒される。良質な絵本や児童書が読む年齢ごとに新たな感動を与えてくれるのと同様、本シリーズも大人から子どもまで楽しめる作品となっている。

(瀬尾友子)

●原作本について
『魔女学校の一年生』(The Worst Witch 1978.11)
『魔女学校の転校生』(The Worst Witch Strikes Again 1981.05)
『どじ魔女ミルの大てがら』(A Bad Spell for the Worst Witch 1983.07)
『魔女学校、海へいく』(The Worst Witch All at Sea 1994.08)
すべてジル・マーフィー文・絵 松川真弓訳 評論社
by Jill Murphy HC: Viking Children's Books/PB: Puffin Books
※『魔女学校の転校生』『魔女学校の一年生』については、てのり文庫(1995.04)もあり


チェックしてみよう! 〜あなたのハーマイオニー度、ミルドレッド度は?〜

 対照的な2人の魔女、ハーマイオニーとミルドレッド。さて、あなたはどっちのタイプかな?

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「ハーマイオニー度」チェックシート
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マグルの家系出身だ
11
学校で成績優秀者である
私は女の子 12 親友と呼べる男の友達が2人以上いる
自分はロングヘアーで巻き毛だ 13 呪文を覚えるのが得意だ
勇気がある 14 たまに「コウルサイ」と言われる
まじめである 15 勇敢な行いを表彰された事がある
時々大胆な行動に出る 16 いざという時に頼りにされる
ねばり強い 17 優等生ゆえに誤解された事がある
意外と泣き虫だ 18 ほうきの授業はゆううつだ
学校が大好き 19 親友の危機を救ったことがある
10 私は魔女だ 20 怪物トロールに遭遇したことがある


━━━━━━━━━━━━注目の結果発表!━━━━━━━━━━━━

●0点〜5点 「なんちゃってハーマイオニー」
一見、優秀な魔女のようだけど、先生たちの目はだませない。このままではせっかくの素質がむだになってしまう。今からでも遅くはないから、本気を出してがんばろう。うわべだけ真似していたって、いざというときに魔法が使えないのでは何にもならないよ。とんでもない危険にさらされる可能性だってあるのだから……。
●6点〜16点 「プチ・ハーマイオニー」
あと一歩! なかなかいい線行ってるけれど、今の君に欠けているのは自信。これまで頑張ってきたことを糧に思い切って行動しよう。魔法のことに限らず、学校行事の実行委員をやってみたり、近所の集まりに参加したり……。君が活躍できる場所はホグワーツでなくてもたくさんあるんだ。
●17点〜20点 「ハーマイオニーのライバル」
おめでとう! 君はハーマイオニーに匹敵する勇気と知性を備えた優秀な魔女だ。世界の魔女が君に一目おいてるのは間違いない。ただし1つだけ気をつけて。授業で発音の間違いをしつこく指摘しないこと。そうすれば友達も今以上にどんどん増えること間違いなし!

(須田直美/瀬尾友子)

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「ミルドレッド度」チェックシート
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ドジである
11
親友と呼べる女友達が2人はいる
高所恐怖症 12 学校のピンチを救った事がある
暗い所が苦手 13 担任の先生(教頭先生)のイニシャルはHBだ
トラ猫を飼ってる 14 思いつきで作り話をしてしまう
勉強が苦手 15 試験勉強に歌を使って暗記した事がある
運動が苦手 16 困っている人を(カエルも)放っておけない
よく先生に怒られる 17 古城に行った事がある
勇気がある 18 ヘアスタイルは三つ編みが多い
天敵がいる 19 朝が弱い
10 笑い上戸 20 動物が好きである


━━━━━━━━━━━━注目の結果発表!━━━━━━━━━━━━

●0点〜7点 「ドジのドの字もみあたらない、あなたはスゴ魔女」
あなたは優等生すぎるのでは? 時には規則にも友達にも縛られず、自分のしたいように突き進んでいってみてはどうかな。でも、あなたのその思慮深さ、ミルドレッドにぜひわけてやってほしいなあ。
●8点〜15点 「あともう少し、ドジ魔女見習いってとこかな」
惜しい。ハードブルーム先生に向かっていくのにはちょっとパワーが足りないみたい。考えてみよう。あなたに必要なのは、向こう見ずで大胆な行動? それとも、どんな時にもくじけない前向きな姿勢? はたまた、図太い神経かな?
●16点〜20点 「えへん!文句なしのドジ魔女に決定」
おめでとう! あなたは立派なドジ魔女だ。その天真爛漫な心と、あくなき好奇心をずっと持ち続け、周囲の人をハラハラドキドキ、時にほっこり心温かくしてあげよう。ただし、ホウキに乗る練習はおこたらないこと!

(大塚典子/瀬尾友子)


映像化された児童文学

 映像化された児童文学作品はもちろんファンタジーだけではありません。昔から読み継がれている古典文学から、近年発表された絵本に至るまで、多くの児童書が映像化されています。ご存じでしたか? CGの動物が大暴れするパニック映画も、名優の女装が印象的だったドラマも、実は児童書が原作なんです。
 このたび、やまねこ翻訳クラブでは映像化された児童文学作品のリストをウェブサイトで一挙公開。といっても、これで全部ではありません。映像化された児童文学はまだまだ沢山あります。サイトは随時更新予定ですので、どうぞお楽しみに。

◎映像化された児童文学URL
http://www.yamaneko.org/bookdb/gen/eiga/

(瀬尾友子)


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編集後記
 「ハリー・ポッターと秘密の部屋」が11月23日より公開されます。とても楽しみです。(せ)


発 行  やまねこ翻訳クラブ http://www.yamaneko.org/
発行人  赤間美和子(やまねこ翻訳クラブ 会長)
企 画  河原まこ
編 集  瀬尾友子
編集協力 大塚典子 豊倉省子 須田直美 さかな SUGO みーこ みるか 
     yoshiyu
協 力  出版翻訳ネットワーク管理人 小野仙内


・増刊号へのご意見・ご感想は mgzn@yamaneko.org までお願いします。

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