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カナダの賞レビュー集 一覧

ルース・シュワッツ児童図書賞  カナダ総督文学賞児童書部門

このレビュー集について 10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」においてやまねこ会員が個々に書いたレビューを、各児童文学賞ごとにまとめました。メルマガ「月刊児童文学翻訳」「やまねこのおすすめ」などに掲載してきた〈やまねこ公式レビュー〉とは異なる、バラエティーあふれるレビューをお楽しみください。
 なお、レビューは注記のある場合を除き、邦訳の出ている作品については邦訳を参照して、邦訳の出ていな作品については原作を参照して書かれています。



 やまねこ10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」レビュー集

ルース・シュワッツ児童図書賞( カナダ) レビュー集
Ruth and Sylvia Schwartz Children's Book Awards
 

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最終更新日 2008/08/01 新規公開

ルース・シュワッツ児童図書賞:参考ページ

★ルース・シュワッツ児童図書賞の概要
 トロントの書籍販売業ルース・シュワッツを記念して1976年に設立された、ルース・シュワッツ基金主宰の賞。1994年からは、絵本、YA読み物それぞれ1作品が選ばれている。カナダ書籍販売業協会 (the Canadian Booksellers Association)がショートリストを作成し、その中から、オンタリオ芸術委員会(the Ontario Arts Council)が選出した学校の児童生徒の投票によって受賞作が決定する。発表はカナダ・ブック・デイである4月23日。


"The Hunter's Moon"『妖精王の月』 * "The Book of Dreams"『夢の書』


1994年ルース・シュワッツ児童図書賞読み物部門受賞作

"The Hunter's Moon"(1993)→(改版 2005) by O.R. Melling O. R. メリング
『妖精王の月』 井辻朱美訳 講談社 1995

その他の受賞歴


 アイルランドに住むフィンダファーと、夏休みにカナダからやってきたグウェンは従姉妹どうし。親友ともいえるほど仲良しのふたりは、かねてから計画していた旅行に出かける。妖精伝説を信じるふたりにとっての聖地をめぐる旅だ。最後に訪ねるはずだったタラが、不思議な糸にひかれるように最初の訪問地となり、その丘で一夜を明かしたふたりは不思議な夢を見る。目覚めてみると、グウェンはひとり丘に残され、フィンダファーは消えていた……。

 妖精の存在を信じ、その世界にあこがれるティーンエイジャーふたり。ところがフィンダファーが消え、不思議な夢が夢ではなかったことに気がついたグウェンは、途中で出会う人々からの助けを得てなんとかフィンダファーと再会する。しかし、彼女は「さらわれた」わけではなく、自ら望んで妖精界の王の元に行ったのだった。
 プロローグから妖しく登場する妖精界の王は、いったい何の目的でフィンダファーを連れて行ったのか。フィンダファーはなぜ「自分の意志で」ついていってしまったのか。そして、原題「狩猟月」に隠された意味とは……。
 アイルランドにいまも息づく妖精伝説、そしてそれを信じる人々が不思議な縁で出会い、やがてその出会いが必然であったことがわかる。現実に起こっていることのような錯覚を覚えながら読んだ。
 原書は改版で大幅に筆が加えられているので、ぜひこちらにトライしていただきたい。

(冬木 恵子) 2008年8月公開

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シリーズ第1作『妖精王の月』がRuth and Sylvia Schwartz Children's Book Awards 読み物部門(カナダ)を1994年に受賞

"The Book of Dreams" (2003)  by O. R. Melling O. R. メリング
『夢の書』(上・下) 井辻朱美訳 講談社 2007

その他の受賞歴


 カナダ、トロント。22歳のグウェンは、大学院生のローレルを訪ねる。ふたりはそれぞれに、アイルランドの妖精国とのかかわりを持っていた。いま、妖精国を大きな災いが襲おうとしている。それを救えるのは、もうひとり、妖精国と特に深いかかわりを持つ少女、ダーナだけだということを、ふたりは知っていた。しかし、ダーナはまだ13歳。アイルランドで暮らしていたが、父の故郷カナダに移り住み、中等学校に通い始めたところだ。
 グウェン、ローレル、ダーナの3人はある日、別々の場所にいながら、同じ時間にそれぞれの大切な人、大切な場所についての不吉なヴィジョンを見る。それは、妖精国からのSOSだった……。

 『妖精王の月』にはじまった、メリングのケルトファンタジーシリーズ最終章。ここまで3作の登場人物たちがついに一堂に会する時が来た。アイルランドに残った者たちは、妖精界と人間界との交流を絶とうと暗躍する者の力によって、大きなダメージを受ける。これに対し、北米大陸に移ったものたちは、その大陸の守護者たちによって守られ、事無きを得て、妖精界と仲間たちを救うために奔走する。妖精といえばケルト、ケルトといえばアイルランドと、主人公からしてそういう観念を持っていたのに、それがみごとに打ち砕かれる。異界の者はどこの世界にも(どこの大陸にも、どこの島にも)いる。そして、だれがどこに属するかなど関係なく、守るべき者を守ってくれる。国境も出自も関係ない。そのことを、作者はみごとに表現した。
 人間は見たいものしか見ず、自分が信じたいものしか信じていないから、どこになにがいても気がつかない、あるいは気がつかないふりをしている。作者が登場人物たちに言わせたこのことばは、妖精や精霊のみならず、すべてについて言い得た言葉のように思えた。

(冬木 恵子) 2008年8月公開

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最終更新日 2008/08/01 新規公開

カナダ総督文学賞受賞作品リストり(やまねこ資料室)  カナダ総督文学賞概要


"Looking for X" 『Xをさがして』


2000年度カナダ総督文学賞児童書部門受賞作

"Looking for X"(1999) by Deborah Ellis デボラ・エリス
『Xをさがして』 もりうちすみこ訳 さ・え・ら書房 2001

その他の受賞歴


 わたしはカイバー。そう、アフガニスタンにあるという荒々しい峠の名前だ。親から貰った名は吐き気がするほど嫌い。今ではだれもがこの名で呼んでくれる。家族は元ストリッパーの母親と、双子の弟たち。双子は今のところしゃべりたいことがないから、しゃべらない。自分たちの頭の中に閉じこもっている。母さんは弟たちをひっぱり出す方法をさがしてる。とても貧しいけど四人でいれば楽しい。学校から帰ったら、毎日弟のどちらかを連れ、公園に遊びにいくし、夕食ではご機嫌なスープの歌をみんなで歌うのだ。 
 家族を精一杯愛し、周囲には思いっきり剣突を食らわすカイバー。弟たちを巡ってある事件が起きた次の日に、学校でも事件が持ち上がる。まずいことにその犯人の疑いがカイバーに向けられた。表題のXはカイバーが友人と呼ぶ住所不定の女性だ。カイバーは自身に向けられた疑いを晴らすために、Xに証人になってもらおうと彼女を探す。


 ハリネズミのように、いや、もっと高い盾を周囲にかまえて生きるカイバー。ハリネズミだって、いつも針山状態じゃないのに。学校で起きた事件の犯人の疑いが彼女に向けられたとき、日々の生活に疲れきった母親の心の隙間で、カイバーへの疑いが頭をもたげる。母親にも裏切られたと感じたカイバーは、夜の町へ飛び出していく。持ち前の才覚と図太さで、必死に生きるカイバーが、心のより所をどこにも見出せなくなり、行き場所に迷うのが切ない。自分の弱さと向き合い、終盤、カイバーが見せる涙は、とても温かくて、若干11歳の素顔をやっと見たような気がしてほっとする。

(尾被ほっぽ) 2008年8月公開

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