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月刊児童文学翻訳

─2002年1月 号外─

児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、
電子メール版情報誌<HP版>
http://www.yamaneko.org/mgzn/
編集部:mgzn@yamaneko.org
2002年01月24日発行 配信数 2,390


「どんぐりとやまねこ」

     M E N U

◎速報1
2002年 ニューベリー賞/コールデコット賞/プリンツ賞発表!!

◎速報2
2001年度 ウィットブレッド賞発表!!

◎セミナー・講演会情報
びすたーり 講演会「2001年の子どもの本をふり返る」



速報

―― 2002年 ニューベリー賞/コールデコット賞/プリンツ賞発表!! ――

 

 現地時間の1月21日、アメリカで最も権威ある児童文学賞、ニューベリー賞/コールデコット賞の発表が行われた。これらの賞は、米国図書館協会(ALA―American Library Association)が、昨年米国で出版された子どもの本の中で、最も優れた作品に対して贈るものである。受賞作、および次点(オナー)は以下の通り。

 

【ニューベリー賞】(作家対象)

★Winner
"A Single Shard"
by Linda Sue Park (Clarion Books/Houghton Mifflin)
☆Honor Books(2作)

"Everything on a Waffle"
by Polly Horvath (Farrar, Straus & Giroux)

"Carver: A Life in Poems"
by Marilyn Nelson (Front Street)

 

 ニューベリー賞を受賞したリンダ・スー・パク(韓国系アメリカ人2世)の "A Single Shard" は、12世紀の韓国が舞台となった物語。橋の下に住む孤児の少年が陶芸に魅せられ、名人の元で修行を積んでいく。困難に耐えながら、勇気と誇りを忘れずに夢を追い続け、芸術に打ち込む少年の姿が描かれている。

 次点となったポリー・ホーヴァートの "Everything on a Waffle" は、嵐の日に両親が海から戻らずひとりぼっちになった少女と、彼女をとりまく大人たちの騒動が、少女の視点で綴られている。ホーヴァートらしいひねりのきいたユーモラスな筆づかいで、おかしさにあふれながらも芯のある作品。ボストングローブ・ホーンブック賞の次点にもなった。マリリン・ネルソンの "Carver: A Life in Poems" は、農化学者・教育者だったジョージ・ワシントン・カーヴァー(1860-1943) の生涯を59編の詩で綴った異色の伝記。彼の業績と生き方が見事に描き出されている。この作品は、ボストングローブ・ホーンブック賞(フィクションと詩部門)受賞。また、全米図書賞の最終審査にも残った。ネルソンはコネチカット大学の教授でもある。

(植村わらび)

 

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【コールデコット賞】(画家対象)

★Winner
"The Three Pigs" by David Wiesner (Clarion/Houghton Mifflin)
☆Honor Books(3作)

"The Dinosaurs of Waterhouse Hawkins"
illustrated by Brian Selznick
text by Barbara Kerley (Scholastic)

"Martin's Big Words: the Life of Dr. Martin Luther King, Jr."
illustrated by Bryan Collier
text by Doreen Rappoport (Jump at the Sun/Hyperion)

"The Stray Dog" by Marc Simont (HarperCollins)

 

 コールデコット賞に輝いたデイヴィッド・ウィーズナーは、1992年の "Tuesday"(『かようびのよる』当麻ゆか訳/徳間書店)につづく2回目の大賞受賞となった。また、"Free Fall"(『フリーフォール』BL出版)、"Sector 7"(『セクター7』BL出版)の2作品で同賞オナー(次点)にも選ばれている。今回の作品はだれもが知っているイギリスの昔話『3びきのこぶた』をウィーズナー風にアレンジしたもの。奇想天外なストーリーと写実的な絵が特徴の作者にあろうことか、物語は古きよき時代を思わせる水彩画に定番の語り口で始まる。ところがウィーズナーは次第に読者をはぐらかし、いつのまにか作者の遊びの世界に引きずり込んでしまう。その奇抜な発想には相変わらずうならされる。特に絵本の世界からリアルに変身したブタが抜け出してくるページは、さながら3D映像のようだと評判だ。

 コールデコット賞オナー(次点)のうち2作品は伝記だった。ブライアン・セルズニックが描くのは、ヴィクトリア時代のイギリスの芸術家、ウォーターハウス・ホーキンスの偉業。彼は当時まだ発掘数も少なかった恐竜の化石から全体像を想像し、実物大の姿を再現した初めての人だ。ほとんど無名だったこの人物について、綿密な調査を元にした事実が語られている。一方、ブライアン・コリアーの作品にはアメリカの公民権運動の指導者、マーティン・ルーサー・キングの一生が描かれている。含蓄のある言葉を多数残し、最後は暗殺された黒人牧師。その顔だけが肖像画のように配された表紙が印象的だ。そして、最後は『木はいいなあ』(西園寺祥子訳/岩波書店)で1957年にコールデコット賞を受けているマーク・シーモント。今回の受賞作は『のら犬ウィリー』(みはらいずみ訳/あすなろ書房)の邦題で既に日本でも紹介されている。ピクニックにいった先で出会った小犬と家族とのふれあいを描いた、あたたかい話だ。

 これらの作品については、順次、本誌書評編で取り上げていく予定。

(大塚典子)

◆『のら犬ウィリー』のレビュー

 

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 上記2賞の発表と同時に、マイケル・L・プリンツ賞の発表も行われた。この賞はヤングアダルト(YA)作品を対象とし、米国図書館協会(ALA)のヤングアダルト部門(YALSA)が主催するものである。受賞作、および次点(オナー)は以下の通り。

【プリンツ賞】(YA作品対象)

★Winner
"A Step from Heaven" by An Na (Front Street)
☆Honor Books(4作)
"Heart to Heart: New Poems Inspired by Twentieth-Century American Art"
by Jan Greenberg (Abrams)
"Freewill" by Chris Lynch (HarperCollins)

"True Believer" by Virginia Euwer Wolff (Atheneum)
(本誌増刊号No.1「ヴァージニア・E・ウルフ特集号」にレビュー掲載)

 

 受賞作の "A Step from Heaven" は、韓国系移民の少女の物語。幼いときに家族とともにアメリカに移り住み、傷つき悩みながら成長し、やがて将来に希望を見い出して高校卒業を迎える少女の心情が、リリカルな一人称で語られている。作者の An Naは、主人公と同様、韓国で生まれてアメリカで育った。この作品がデビュー作である。

 次点の "The Ropemaker" は、自分たちの住む谷を守ってくれる魔法使いを探して少女とその祖母らが旅をする冒険ファンタジー。本国イギリスではカーネギー賞やウィットブレッド賞の受賞歴を持つ、ピーター・ディッキンソンの作品だ。"Heart toHeart: New Poems Inspired by Twentieth-Century American Art" は、ナンシー・ウィラードをはじめとする多くの作家が20世紀のアメリカの芸術作品にインスピレーションを得て詩を書き、編者の Jan Greenberg がまとめたもの。"Freewill" は、父やおじの死によって心を閉ざしている17歳の少年が、内なる声に導かれ、自分の心の中の深い闇を見つめる物語。ヴァージニア・ユウアー・ウルフの "True Believer" は、『レモネードをつくろう』(こだまともこ訳/徳間書店)の続編で、昨年11月に投票の行われた第4回やまねこ賞未訳部門で第4位に入賞している。

(生方頼子)

 

◆"True Believer" のレビュー
(本誌増刊号No.1「ヴァージニア・E・ウルフ特集号」)

【参考】
◇各賞公式ページ
http://www.ala.org/alsc/newbery.html(ニューベリー賞)
http://www.ala.org/alsc/caldecott.html(コールデコット賞)
http://www.ala.org/ala/yalsa/booklistsawards/printzaward/Printz.cfm(プリンツ賞)

◆やまねこ翻訳クラブ作成 ニューベリー賞/コールデコット賞リスト
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/us/newbery/
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/us/caldecot/

 

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速報

―― 2001年度 ウィットブレッド賞発表!! ――

 

 現地時間の1月22日、2001年度ウィットブレッド児童文学賞の発表が行われた。この賞は、英国の企業ウィットブレッド社の主催により、英国とアイルランドに居住する作家によって書かれた子ども向けの作品の中で、最も優れた一作に贈られるもの。本年度から協賛団体が増え、賞金額も増した。また、児童文学を含め5つある部門の受賞作の中から選ばれる overall winner が同時に発表され、本年は児童文学賞受賞作がその栄誉を受けた。児童書が最優秀受賞作となるのは、ウィットブレッド賞史上初めて。受賞作、および候補作は以下のとおり。

 

2001 Whitbread Children's Book of the Year
&
2001 Whitbread Book of the Year

★Winner
"The Amber Spyglass"
by Philip Pullman (Scholastic)
(本誌2001年6月号書評編にレビュー掲載)
☆shortlist
"Artemis Fowl"
by Eoin Colfer (Penguin)

"The Lady and the Squire"
by Terry Jones (Pavilion Books)
"Journey to the River Sea"
by Eva Ibbotson (Macmillan)
(本誌2001年11月号書評編にレビュー掲載)

 

 ウィットブレッド児童文学賞を受賞した"The Amber Spyglass" は、昨年カーネギー賞候補になった作品。シリーズ3巻目で、重厚な世界が完結した。近々邦訳『琥珀の望遠鏡』(大久保寛訳/新潮社)も出版予定。

 候補作の "Artemis Fowl" はアイルランドの作家が描く、スピーディーで愉快なファンタジー。ユニークな妖精やゴブリン、ドワーフたちがたくさん出てくるようだ。作者はこの作品まで、フルタイムで教師をしながら執筆を続けていたが、現在は休職し、次作に専念しているらしい。"Journey to the River Sea" は、昨年スマーティーズ賞を受賞した人気作品。エヴァ・イボットソンは今年77歳になるが、楽しい作品を書き続けている。邦訳作品には、『アレックスとゆうれいたち』(野沢佳織訳/徳間書店)がある。"The Lady and the Squire" を書いたテリー・ジョーンズは、モンティ・パイソンのメンバーとして有名。映画やTVの脚本を書き、監督するほか、児童文学作品も手がけ、『エリック・ザ・バイキング』(山岡洋一訳/日本放送出版協会)で、子どもの本賞の受賞経験もある。今回の作品は中世のフランスを舞台にし、前作 "The Knight and the Squire" に続くシリーズもの。

(菊池由美)

 

◆"The Amber Spyglass" のレビュー
本誌2001年6月号書評編特集「カーネギー賞候補作レビュー」)

◆"Journey to the River Sea" のレビュー
(本誌2001年11月号書評編「注目の本」)

【参考】
◇ウィットブレッド賞公式ページ
(2006年度よりコスタ賞に変更:2008年3月追記)

 

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セミナー・講演会情報

―― セミナー・講演会情報 ――

 

◎びすたーり 講演会「2001年の子どもの本をふり返る」
講 師: 野上暁(評論家、作家、編集者)
場 所: 北沢タウンホール(東京都世田谷区北沢2-8-18)11階
日 時: 平成14年2月6日(水)18:30〜20:00
参加費: 一般 1,800円 学生 1,300円
申 込: 「びすたーり」事務所まで。(TEL/FAX 03-3439-9675 e-mail g-mama@cam.hi-ho.ne.jp)
詳 細: http://www.cam.hi-ho.ne.jp/g-mama/(絵本の樹美術館&グランまま社)

 

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