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月刊児童文学翻訳

─2000年7月号(No.22 情報編)─

※こちらは「情報編」です。「書評編」もお見逃しなく!!

児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、
電子メール版情報誌<HP版>
http://www.yamaneko.org/mgzn/
編集部:mgzn@yamaneko.org
2000年7月15日発行 配信数 1,750


「どんぐりとやまねこ」

     M E N U

【オランダ特集】

◎特別企画
オランダをもっと知ろう〜日蘭交流400周年に寄せて

◎プロに訊く
第13回 野坂悦子さん(翻訳家)

◎コンテスト情報
「遊学館」外国絵本翻訳コンクール

◎展示会情報
Art Project Dejima2000「日蘭交流400周年記念現代絵画展」他

◎セミナー・講演会情報
クレヨンハウス「レイチェル・カーソンの贈りもの」

◎世界の児童文学賞
第11回 金・銀の石筆賞/金・銀の絵筆賞(オランダ)

◎お菓子の旅
第11回 オランダの年の瀬に欠かせないお菓子 〜オーリボレン〜



特別企画

―― オランダをもっと知ろう ――
〜日蘭交流400周年に寄せて〜

 

 西暦2000年の今年は、日本とオランダの交流がはじまって400年にあたる。オランダは、幕末の日本の文化や科学技術の発達にも大きな影響を与えた、日本にとって最もなじみ深い国のひとつである。このコーナーでは、日蘭両国の交流の歴史やオランダの児童文学について、簡単に紹介したい。

 

●リーフデ号漂着 〜日蘭交流のはじまり

 日本とオランダの交流は、1600年(慶長5年)、オランダの交易船リーフデ号(博愛号)が九州の豊後に漂着したことからはじまった。その後、二百数十年にわたる鎖国時代においても、日本は長崎や平戸を通じてオランダと外交・貿易関係を保ち続けた。出島のオランダ商館には、オランダがナポレオン率いるフランスに占領されていた期間も、亡国オランダの三色旗が掲げられていたという。佐久間象山、勝海舟、福沢諭吉ら幕末の開国思想家はオランダ語を学ぶことにより西洋文明へ目をひらき、榎本武揚、西周らはオランダに留学して学んだ知識を生かして、明治国家建設に貢献した。残念ながら、第二次大戦中は敵国同士であり、両国の関係が歴史上ずっと友好だったわけではないが、長い歴史を通し、日本とオランダの関係ははかりしれないほど深いといえる。


●交流400周年を迎えて 〜各地で行われるさまざまなイベント

 日蘭交流400周年を迎える今年、日本とオランダ両国では各種のイベントが目白押しだ。長崎県は西暦2000年を“ながさき阿蘭陀年”と名づけ、県をあげて、この記念すべき年を祝っている。また、オランダ国際球根協会は、昨年、日本に総数約110万球以上の球根を贈呈した(贈呈された球根はオランダとゆかりのある各都市で、オランダ生まれの人気キャラクター「ミッフィー」を模して植付けされた)。4月に行われた東京国際ブックフェアでは、オランダ・パビリオンが特別に設けられ、ゲストとして招聘された小説家・児童文学作家等が講演を行ったり、日本の作家と対談をしたりした。交流400周を冠するこうした様々な行事は、来年のはじめ頃まで各地で行われる予定である。


●オランダの児童文学 〜近年の流れ

◎50年代〜60年代
 オランダ語文化圏から生まれた作品のなかで、最も多くの国で翻訳され、またオランダ国内でも読み継がれているのは『アンネの日記』だという。第二次大戦中、アンネを含むオランダ国内のユダヤ人10万人以上を死に至らしめたドイツ軍は、オランダを5年間にわたって占領した。他国の占領下にあった事実がオランダ人の心に残した傷跡は大きく、1950年代初期のオランダ児童文学には戦争やレジスタンス活動を描いた愛国的な物語が数多く見られる。
 だが、60年代、沈鬱な時代のなかで明るい笑いを求める読者に応えるかのように、アニー・M・G・シュミット、ハンス・アンドレウス、パウル・ビーヘル等の作家により、軽妙で陽気な作品が出版されるようになった。特にシュミットは、国家復興への貢献や同朋愛の重要性を説くそれまでの児童書とは一線を画し、子どもたちが心から楽しめる作品を数多く書いた。彼女の遊び心に満ちた作品は、のちのフース・コイヤー、ヨーク・ファン・リューベン、リンデルト・クロムハウト、クラース・ファン・アッセン等に影響を与えている。

◎70年代〜80年代
 70年代にはいると、当時の世相を反映して、児童書の世界にも体制への反抗をテーマにした作品があらわれてくる。ヤン・テルラウ、ヤン・デ・ツァンガーらは平和、軍縮、環境、男女平等などの社会問題を児童書の領域に持ち込むことを試みた。だが、80年代に、フース・コイヤーが“作家は子どもたちに大人の世界の現実を知らせる義務はない”と主張し、子どもたちの想像の世界や子どもたちの言葉に対して目を向けはじめるようになる。インメ・ドロス、ヘイマンス姉妹、エルス・ペルフロム、トーン・テレヘン等がこれにならい、子どもの心の底にあるものに触れる作品を書きはじめた。こうした作家たちの活動により、現実の世界を描いた作品のみならず、ファンタジーにも優れた作品が多く生まれ、児童書が文学の一分野として確固たる地位を占めるようになった。


●発信するオランダ文学 〜優れた作品を世界へ

 オランダの児童文学は、現在、英語、仏語、独語等各国語に翻訳され、より注目を浴びつつある。日本でも、ここ数年、優れた翻訳者の活躍や読者・出版社の関心の高まりを背景に、次々と作品が刊行されているようだ。アムステルダムにあるオランダ文学制作・翻訳基金は、オランダ語で書かれた良質の文学を世界に広めるため、各国の出版社に助成金を授けたり、「翻訳家の家」(注:オランダ国内に滞在して、言葉や文化に対する知識を深めたいと希望する翻訳者を受け入れる施設)を運営したりするなどのさまざまな支援活動を行っている。今後、どのような作家や作品が紹介されるのか、大いに期待したい。

(柳田利枝)


※参照:やまねこ翻訳クラブ作成 オランダ邦訳児童書リスト

※参考文献
『オランダからの本』
(東京国際ブックフェア配布小冊子)
オランダ文学制作・翻訳基金
『ニュースレター』第一号 蘭日交流400周年実行委員会
『週刊 読書人』2000.4.21 読書人
『Nice to meet you』
Joke Linders & Marita de Sterck
Dutch Trade Publishers Association

 

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プロに訊く 第13回

―― 野坂悦子さん(翻訳家) ――

 

 今年は日蘭交流400周年の年。本コーナーでは、オランダ児童書の翻訳で活躍されている野坂悦子さんにご登場願いました。オランダ人作家の相次ぐ来日でお忙しいなか、快くインタビューを受けてくださった野坂さんに、心からお礼申し上げます。

 

【野坂悦子(のざか えつこ)さん】

 東京都生まれ。早稲田大学第一文学部に進学し、英文学を専攻。1985年より5年間、オランダとフランスで暮らす。現在は、英語とオランダ語の児童書の翻訳を手がけている。主な訳書に『赤い糸のなぞ』(メインデルツ作/偕成社)、『ハンナのひみつの庭』(アネミー&マルフリート・ヘイマンス作/岩波書店)などがある。

『ハンナのひみつの庭』表紙

【野坂悦子さん訳書リスト】

【野坂悦子さんインタビュー ロングバージョン】
※作家ペルフロムさんのお話など、話題満載です。ぜひご覧ください!

 

★オランダ語との出会いについてお聞かせください。

 大学卒業後、転職を経て、外国に日本の本を紹介するエージェントに勤めだしたのですが、1年も経たないうちに、夫の転勤でたまたまオランダへ行くことが決まったんです。大学の専攻も英語でしたし、オランダ語は全く知りませんでした。そのときの私のオランダに対するイメージといったら、風車に木靴の女の子くらい(笑)。オランダには2年8か月いまして、そのあいだに、育児と家事の合間をぬって勉強しました。


★オランダ児童書の翻訳をされるようになったきっかけは何ですか。

 オランダ生活の終わるころ、ハリエット・ヴァン・レーク作の"De Avonturen van Lena Lena"というおもしろい絵本を見つけたのがきっかけです。日本の友人に送ったところ、友人が出版社に持って行ってくれました。出版社も本を気に入ってくれて、オランダ語翻訳者がいないから野坂さんの訳でいきましょう、ということになって。1989年にフランスで娘を出産したのですが、邦訳出版された『レナレナ』(リブロポート)は、ちょうど病院のベッドの上で受け取りました。看護婦さんに「私が訳したのよ」なんて言って見せたんですよ。


★オランダ滞在のあと、フランスにも2年半ほど住んでいらしたそうですが、フランス語ではなくオランダ語の翻訳を多く手がけていらっしゃる理由は何でしょうか。

 フランス語の翻訳は、私がやらなくても、他にもっとできる方がいらっしゃいますよね。最初はオランダ語に関しても、誰かがきっと始めるだろうと考えていました。けれども、ずっと待っていたのに誰も始めてくれなかったので、それなら私がと思ったんです。よく作家が「自分が読みたいものがないから書きだした」と答えることがありますが、私がオランダ語を始めたのも、翻訳を始めたのも、誰もやってくれなかったから、という部分が大きいのです。


★野坂さんは、シリアスな作品だけではなく、ユーモアに満ちた作品もお好きなようですね。

 ユーモア路線は、私の地です(笑)。ナンセンスなおかしさでいっぱいの絵本『動物たちのひとりごと』(イダ・ファン・ベルクム作/あすなろ書房)は、まさに私の好み。等身大で訳せました。

 それと、俳句をやっていたこともあって、言葉遊びなど、文章のリズムを作っていくのは好きですね。絵本の翻訳は特に楽しみながらできる仕事です。


『第八森の子どもたち』表紙

★今年4月に出た『第八森の子どもたち』(エルス・ペルフロム作/福音館書店)は長編ですし、訳されるのも大変だったと思います。苦労話などありましたらお聞かせください。

 この本は作者ペルフロムさんご自身の戦争体験をもとに、農村に疎開した少女ノーチェの日常をつづったものです。重い作品ではありますが、伝えたいことがバランスよく書けていて、私たちの知らない世界を映画のように見せてくれます。この本の翻訳はとても意義のある仕事だと思いました。

 実際の翻訳作業は、おっしゃる通り大変でした。1日に2ページ訳すのがやっとで、3ぺージ進むと「今日はたくさん訳せたな」という感じ。オランダ語のわからない編集者が原稿の突き合わせをするためにフランス語と英語のテキストも取り寄せていたのですが、これは、訳に困ったとき、発想を切り替えるヒントになりました。ようやくできあがったときは、達成感でいっぱいでしたね。そのあと、しばらく脱力感をおぼえましたが。


『小さなソフィーとのっぽのパタパタ』表紙

★オランダの作品をたくさん翻訳されているなかで、何か共通する特色のようなものは感じますか。

 オランダの児童書は、ナンセンスで不思議な雰囲気の絵本『レナレナ』のような、冒険的作品がわりあい多いかもしれません。作品に芸術的なおもしろさや新しさがあると、財団や国から資金援助を受けられるので、非常に個性的な本でも出しやすいんです。また、その一方で、ブルーナの「ミッフィー(うさこちゃん)」シリーズのように、オーソドックスな絵本も親から子、子から孫へと読み継がれています。そういえば、夜寝る前の読み聞かせは日本よりさかんで、しかも読むのはお父さんの役目というのが比較的定着しているんですよ。そんなふうですから、児童文学に対する社会的な関心は、少しずつ高まっています。日本の現状と比べると、生活にゆとりがある分、子どもに目を向ける時間があって、本も大切に読まれている気がします。


★最後に、翻訳家をめざしている読者にアドバイスをお願いします。

 こういうタイプの本が好きとか、こういう文体だとうまくいくとか、自分の好みをある程度把握して、それに合った作品を見つけるといいと思います。あとはひたすら読んで、探すだけですね。大事なのは、夢を捨てないこと。私も10年後に本が出ればいいなと、翻訳を始めました。それが、思いがけず早く出た、という形です。夢や希望を長いスタンスで持ち続けてください。


★野坂さんの今後の出版予定★

 英語からの翻訳作品では、絵本『火にきをつけて、ドラゴンくん』(ジーン・ペンジウォル文/マルティーヌ・グルボー絵/PHP研究所)が8月に、読み物『四つの小さな石(仮題)』(リラ・パール&マリオン・ブルーメンタール・ラーザン作/あすなろ書房)が年内に出版されます。また、オランダ語からの翻訳作品では、絵本『フィーンチェとフェルナンデスさん(仮題)』(ペッチイ・バックス作/BL出版)がおそらく年末に、絵本『わらって、リッキ』(ヒド・ファン・ヘネヒテン作/フレーベル館)が2001年1月に出ます。ほかにも何冊か企画が進行しているそうです。楽しみですね。

(インタビュアー:田中亜希子)

 

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コンテスト/展示会/セミナー・講演会情報

―― コンテスト情報 ――

 

◎「遊学館」外国絵本翻訳コンクール
課 題: "Stripe" by Joanne Partis
"HOME Before DARK" by Ian Beck
締 切: 平成12年10月31日(火)当日消印有効
問合せ: 山形市緑町1-2-36「遊学館」内「外国絵本翻訳コンクール」係
TEL 023-631-2523(山形県立図書館)
        625-6411(県生涯学習センター)
詳 細: http://www.yugakukan.or.jp/

(中野伊都子)

 

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―― 展示会情報 ――

 

◎Art Project Dejima2000「日蘭交流400周年記念現代絵画展」
所在地: 大阪府大阪市北区梅田1−1 大阪駅前第3ビル2F70号
電 話: 06-6440-1626
会 期: 平成12年7月3日から8月31日まで(8月14日から18日まで休館)
入場料: 無料
内 容: 日蘭交流400年を記念して行われる展覧会。山本薫、ユリアン・ヴァン・ホール、ゲイズ・ダンカーなど、現代美術作家の絵画作品38点を展示。
 
◎思文閣美術館「日本の絵本100年展」
所在地: 京都市左京区田中関田町2−7
電 話: 075-751-1777
会 期: 平成12年6月24日から7月23日まで(会期中無休)
入場料: 一般800円、大学生・高校生600円、小・中学生300円
内 容: 明治から現在までの絵本の初版本約230点と現代の絵本作家約30名の作品を紹介。
 
◎栃尾市美術館/玉川高島屋アレーナホール「東欧絵本の世界展」
所在地: 栃尾市美術館:新潟県栃尾市上の原町1−13(TEL:0258-53-6300)
玉川高島屋 :東京都世田谷区玉川3−17−1
       玉川高島屋西館アレーナホール(TEL:03-3709-2222)
会 期: 栃尾市美術館:平成12年7月22日から9月3日まで(月曜休館)
玉川高島屋 :平成12年9月7日から9月12日まで(会期中無休)
入場料: 栃尾市美術館:一般200円、大学生・高校生150円、小・中学生100円
玉川高島屋 :高校生以上600円、小・中学生300円
内 容: ヨゼフ・ウィルコン、マイケル・グレイニエツなどの作家の絵本の原画約100点を展示。
 
◎大阪新梅田シティ「遊ぼう! 絵本・えほんカーニバル 2000」
所在地: 大阪府大阪市北区大淀中1−1−88
梅田スカイビル・タワーウエスト 18階(入場口)・17階・12階
電 話: 06-6357-8500(絵本カーニバル事務局)
会 期: 平成12年8月4日から27日まで(会期中無休)
入場料: 大人(18歳以上)1100円、小人500円、幼児(3才以上)200円
内 容: 絵本を多数展示。自由に手にとれる。イベントなどの予定もあり。
 
◎四季の森 絵本美術館 夏休み企画「冒険・探検絵本原画展」
所在地: 群馬県沼田市玉原高原口(上発知町350)
電 話: 0278-23-9080
会 期: 平成12年6月9日から9月11日まで(火曜休館/ただし8月は無休)
入場料: 一般〜中学生500円、小学生300円
内 容: 葉祥明『ジェイクのむぎわらぼうし』など、絵本の原画約70点を展示。
 
◎世田谷文学館「谷川俊太郎 絵本の仕事展」
所在地: 東京都世田谷区南烏山1−10−10
電 話: 03-5374-9111
会 期: 平成12年7月8日から8月27日まで(月曜休館)
入場料: 一般300円、大学生・高校生200円、小・中学生100円
内 容: 『ことばあそびうた』『もこもこもこ』などの絵本14作品の原画約200点を展示する他、構想メモも紹介。

(瀬尾友子)

 

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―― セミナー・講演会情報 ――

 

◎クレヨンハウス 子どもの本の学校「レイチェル・カーソンの贈りもの」
講 師: 上遠恵子(『センス・オブ・ワンダー』翻訳者)
場 所: クレヨンハウス(東京 港区北青山3-8-15 大阪 吹田市江ノ木町5-3)
日 時: 東京 平成12年9月2日 大阪 平成12年9月9日(いずれも土曜)16:00〜17:30(15:30開場)
参加費: 非会員 2,500円 会員は無料(年会費に含まれる)
問合せ: クレヨンハウス(東京 03-3406-6492 大阪 06-6330-8071)
その他: 非会員は、当日の朝11時から子どもの本売場にて販売される当日券を購入。会員のみで定員に達した場合は立ち見になることもあり。

(中野伊都子)

 

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世界の児童文学賞 第11回

―― 金・銀の石筆賞/金・銀の絵筆賞(オランダ) ――
〜オランダで最も歴史と権威のある児童文学賞〜

 

■概要
名 称 : 金の石筆賞/銀の石筆賞(Gouden Griffel / Zilveren Griffel)
金の絵筆賞/銀の絵筆賞(Gouden Penseel / Zilveren Penseel)
対 象 : オランダの作品(金)/オランダの作品および翻訳作品(銀)
部 門 : 物語(石筆賞)/絵(絵筆賞)
創 設 : 1955年/1970年
選 考 : オランダ図書宣伝協会(Collectieve Propaganda van het Nederlands Boek)
関連サイト: http://www.cpnb.nl/autoload.asp?doel=gp/gp.html

 

 賞の主催、選考を行う「オランダ図書宣伝協会」(CPNB)は、国民の読書および図書購入の促進を目的とする団体。審査は、協会が選出した専門の審査団により、主に作品の文学性や芸術性を基準に行われる。

 石筆賞は、CPNBが毎年秋に行う「子どもの本週間」の企画のひとつとして、1955年に創設された(当時の名称はHet Kinderboek van het Jaar:年間児童書賞)。71年には、国内作品に贈られる「金の石筆賞」(Gouden Griffel) と 、国内および翻訳作品に贈られる「銀の石筆賞」(Zilveren Griffel)が設立されて、現在の形となった。97年以降は、審査対象を12歳以下の子ども向け作品のみとし、金は1作品、銀は5〜8作品を選出している。

 一方、絵に贈られる賞としては、70年にKinderkijkboekenprijs(子ども絵本賞)が創設された。これが73年に国内作品を対象とした「金の絵筆賞」(Gouden Penseel)と名を変えて受け継がれ、81年には国内および翻訳作品を対象とした「銀の絵筆賞」(Zilveren Penseel)も設立された。金は1作品、銀は複数作品が選ばれる。なお、審査にはGrafische Vormgevers Nederland(オランダ画家協会)も参加する。

 

■主な受賞作家

●金の石筆賞● Paul Biegel(パウル・ビーヘル/ポール・ビーゲル)
 72年に『小さな船長の大ぼうけん』(上野瞭訳/あかね書房)、93年に『夜物語』(野坂悦子訳/徳間書店)で受賞。銀の石筆賞も4度の受賞歴がある。邦訳はほかに『赤姫さまの冒険』(野坂悦子訳/徳間書店)など。

○銀の石筆賞○ Aidan Chambers(エイダン・チェンバーズ/英国)
 94年"The Toll Bridge"で、また85年、86年には2年連続で受賞。邦訳に『俺の墓で踊れ』(浅羽莢子訳/徳間書店/"Dance on My Grave")がある。先日、"Postcards from No Man's Land"で、本年度の英国・カーネギー賞受賞が決まった。

●金の絵筆賞● Max Velthuijs(マックス・ベルジュイス)
 77年、86年、93年、97年と4度受賞。また石筆賞でも、金、銀あわせて3度の受賞歴を持つ。セーラー出版より出版されている「かえるくん」「こびとくん」シリーズ(いずれも受賞作品含む)は日本でも人気が高い。

○銀の絵筆賞○ 安野光雅(日本)
 81年『天動説の絵本』(福音館書店)で受賞。84年には国際アンデルセン賞も受賞するなど、日本を代表する絵本作家として、国際的に高い評価を受けている。

(森久里子/植村わらび)

 

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お菓子の旅 第11回

―― オランダの年の瀬に欠かせないお菓子 ――
〜オーリボレン〜

 

'Ha,het ruikt hier goed! En ik rammel van de honger', zei Lange Wapper en stapte recht op een oliebollenkraam af. De vette damp van de oliebollen maakte Sofie bijna misselijk. Toch liep het water haar in de mond.

"Kein Sofie en Lange Wapper" by Els Pelgrom (1984)
Em. Querido's Uitgeverij B.V.
(邦題:『小さなソフィーとのっぽのパタパタ』)

 

 今月号は、オランダの代表的なお菓子のひとつ、「オーリボレン」をご紹介します。『小さなソフィーとのっぽのパタパタ』(本号書評編参照)でも、主人公のソフィーたちが、市場でオーリボレンの屋台を見つけ、大喜びする場面があります。

 オーリボレン(oliebollen)とは、oil(olie) ball(bollen/bolの複数形)の意味。その名の通り、まるい形をしたドーナツのような揚げ菓子のことです。オランダでは、大晦日の夜、大量のお酒を飲み、山ほどオーリボレンを食べるのが習慣。年の瀬が迫ると、町中のケーキ屋台やスーパーで売り出され、多くの家庭でも作られるため、レシピにはかなりのバリエーションがあるようです。お好みで中に入れる果物などを調整して下さい。

 

*-* 材料 *-*

オーリボレン(20個分)
小麦粉 250g ドライイースト 12g
牛乳 150cc 溶き卵 半個分
リンゴ 1/2個 レモンピール 25g
レーズンとカランツ あわせて120g 少々
サラダ油 適量 粉砂糖 適量
オーリボレン

 

*-* 作り方 *-*

  1. リンゴとレモンピールを、5mm角ほどのみじん切りにしておく。

  2. 150ccの牛乳を人肌に温め、小さじ1ぱいほど使って、イーストを湿らせる。

  3. 塩と小麦粉をいっしょにボールにふるい入れ、真ん中にくぼみを作り、2を入れて混ぜる。溶き卵、残りの牛乳を少しずつ加え、まとまるまでしっかりとこねる。

  4. 1のリンゴとレモンピール、レーズン、カランツを3の生地に加え、全体にゆきわたるようによく混ぜる。

  5. 4の生地の上に固く絞ったふきんなどをかけ、温度が30度くらいの場所で30〜40分ほど休ませて、2倍ほどに膨らむまで発酵させる(お湯をはった蒸し器などに入れてもよい)。発酵が済んだら、大さじ1杯ずつとって、ボール状にまるめる。

  6. 5を高温の油できつね色になるまで揚げる。少しおいてから、粉砂糖をふる。

 

★参考文献

"日本(語)のオランダ" "MARINA'S RECEPTEN PAGINA"
"THE GUMBO PAGE" "HOLL@ND PAGE"

(森久里子/田中亜希子)

 

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やまねこ翻訳クラブ(会員数190名)

 やまねこ翻訳クラブは、海外の子どもの本に関する情報交換、翻訳・シノプシス自主勉強会などを行っている児童書専門サークルです。翻訳と子どもの本に興味のある方でしたらどなたでも入会できますので、ぜひお気軽にご参加ください。

――ニューベリー賞読破マラソン開催中!――


●編集後記●

 オランダ特集、いかがでしたか? 記事を書いてくれたライターさんは慣れないオランダ語に苦戦したようですが、お陰でとても勉強になりました!(み)


発 行: やまねこ翻訳クラブ
発行人: 林さかな(やまねこ翻訳クラブ 会長)
編集人: 宮坂宏美(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
企 画: 河まこ キャトル くるり 小湖 Chicoco どんぐり BUN ベス YUU りり ワラビ MOMO つー さかな こべに みーこ きら Rinko SUGO わんちゅく みるか NON
協 力: @nifty 文芸翻訳フォーラム
小野仙内 ながさわくにお Mkwaju


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