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月刊児童文学翻訳

─2002年12月号(No. 46 書評編)─

※こちらは「書評編」です。「情報編」もお見逃しなく!!

児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、
電子メール版情報誌<HP版>
http://www.yamaneko.org/mgzn/
編集部:mgzn@yamaneko.org
2002年12月15日発行 配信数 2,620


「どんぐりとやまねこ」

     M E N U

◎特集
第5回やまねこ賞――会員が選んだ、今年の邦訳児童書ベスト5は?
読み物部門
絵本部門
未訳部門
オールタイム部門

◎賞情報1
2002年 全米図書賞発表

◎賞情報2
2002年 スマーティーズ賞発表

◎Chicoco の親ばか絵本日誌
第20回「楽しみクリスマス」(よしいちよこ)


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アメリカ生まれのフォッシル・ウオッチは、世界90カ国以上で愛されている人気ブランド。オーソドックスなラインはもちろん、文字盤にドラゴンが現れたり、炎がメラメラ燃えたり、漢字が描かれたりするユニークな時計もいろいろ揃っています。11月には待望の「ハリー・ポッターと秘密の部屋」ウオッチも発売。蛇のレリーフ付きパッケージが迫力の数量限定品(!)です。

TEL 03-5428-3701

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★フォッシルジャパン:やまねこ賞協賛会社

 

特集 協賛:(株)フォッシルジャパン

―― 第5回やまねこ賞 ――

 

 過日、やまねこ翻訳クラブで、昨年11月から今年10月までに出版された邦訳児童書、および、過去に海外で出版された未訳児童書を対象に、ベスト5の投票が行われました。以下にその結果をご報告します。大賞に輝いた邦訳作品の翻訳家の方には、賞状と副賞が贈られます。なお、前回に引き続き、株式会社フォッシルジャパン(前社名エス・エフ・ジェイ)より、副賞の時計をご提供いただきました。 副賞 [ARKITEKT]
副賞 [ARKITEKT]
副賞 [Signature]
副賞 [Signature]

「読み物」「絵本」の分類については、原則として(株)図書館流通センター(TRC)による分類種別に準拠していますが、一部の本については、当クラブの判断で種別を変更しています。
 記事中に記載した、本誌の過去のレビューについては、やまねこ翻訳クラブサイトに掲載のバックナンバーをご参照ください。
http://www.yamaneko.org/mgzn/
 なお、すべての投票と感想はこちらでごらんいただけます。
http://www.yamaneko.org/yn_award/index.htm

 

★☆★☆【2002年 第5回やまねこ賞 読み物部門】☆★☆★

 

★大賞
『琥珀の望遠鏡』
フィリップ・プルマン作 大久保寛訳 新潮社
 真理計を手に探索の旅を続けるライラとウィル。しかし幾度となく危機が二人を襲う。二人の運命やいかに。そしてライラたちを執拗に追う、教会の企みとは? 謎に包まれていたダストや神秘の短剣など、すべての秘密が今解き明かされる。「ライラの冒険」シリーズ完結扁。2001年度ウィットブレッド賞最優秀賞・児童文学賞受賞。
『琥珀の望遠鏡』表紙
   ©新潮社

本誌2001年6月号書評編「注目の本」のレビューをご参照ください)

 

 

【受賞のことば】 翻訳家 大久保寛さん

 じつは、うちの小学6年生の長女が『黄金の羅針盤』を読みはじめましたが、途中で挫折してしまい(『ハリー・ポッター』は3年生で読破したくせに!)、ガッカリしていたら、この前、小学6年生の男の子から「おもしろかったです」というかわいい手紙をもらい、やっぱり訳してよかった、と思っていたところです。
 それに続く今回の受賞も、たいへん大きな喜びで、元気づけられました。やまねこ翻訳クラブのみなさん、本当にありがとうございます。

 

◆2位
『影の王』表紙
『影の王』
スーザン・クーパー作 井辻朱美訳 偕成社
 シェークスピア劇の公演のため、ロンドンを訪れた少年俳優のナット。しかし朝目覚めてみると、なんとそこは16世紀のロンドンだった。ナットは本物のシェークスピアと出会い、彼とともに「真夏の夜の夢」の舞台に立つことに。ロンドンのグローブ座を舞台に描いたタイムファンタジー。ボストングローブ・ホーンブック賞オナー(次点)作品。

本誌2000年7月号書評編「注目の本」のレビューをご参照ください)

 

 

◆3位
『ライディング・フリーダム 嵐の中をかけぬけて』
パム・M・ライアン作 こだまともこ訳 ポプラ社
 12歳のシャーロットは自分の牧場をもつという夢を胸に、孤児院を脱走。男装して駅馬車の御者として働きながら、夢に向かってつき進む。19世紀のアメリカで男性として生きた実在の人物、シャーロット・ダーギー・パークハーストの半生を描いた物語。
『ライディング・フリーダム 嵐の中をかけぬけて』表紙

 

 

◆4位
『シャングリラをあとにして』表紙
『シャングリラをあとにして』
マイケル・モーパーゴ作 永瀬比奈訳 徳間書店
 一度も会ったことのなかったおじいちゃんが、突然セシーの家にやってきた。でもパパはなぜかおじいちゃんに冷たい。そんな折、おじいちゃんが病気で記憶をなくしてしまい……。おじいちゃんの過去を縦糸に、父と息子、祖父と孫娘の絆を温かな筆致で描いた、心に染みる物語。

 

 

◆5位
『ローワンと伝説の水晶』
エミリー・ロッダ作 さくまゆみこ訳 あすなろ書房
 3つの氏族が反目する海辺の国マリス。その国の使者から、ローワンは自分の家系が受け継いできた驚くべき役目を知らされる。重責を背負ってマリスに向かったローワンだが、そこでは恐ろしい出来事が待ちうけていた……。臆病なごく普通の少年ローワンが、村のため、家族のために難局に立ち向かっていく姿を描いた冒険ファンタジー。シリーズ第3作。
『ローワンと伝説の水晶』表紙

 

 

◆6位以下の作品
《6位》 《7位(2作同点)》 《7位(2作同点)》 《9位》

『家なき鳥』表紙

『家なき鳥』
グロリア・ウィーラン作
代田亜香子訳
白水社

『ふたりのアーサー1 予言の石』表紙

『ふたりのアーサー1
予言の石』
ケビン・クロスリー=
ホランド作
亀井よし子訳
ソニー・マガジンズ

『トニーノの歌う魔法』表紙

『トニーノの歌う魔法』
ダイアナ・ウィン・
ジョーンズ作
野口絵美訳
佐竹美保絵
徳間書店

『ジェイミーが消えた庭』表紙

『ジェイミーが消えた庭』
キース・グレイ作
野沢佳織訳
徳間書店
《10位(4作同点)》 《10位(4作同点)》 《10位(4作同点)》 《10位(4作同点)》

『モスフラワーの森』表紙

『モスフラワーの森』
ブライアン・ジェイクス作
ゲリー・チョーク挿絵
西郷容子訳
徳間書店

『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』表紙

『ハリー・ポッターと
炎のゴブレット』
J・K・ローリング作
松岡佑子訳
ダン・シュレシンジャー絵
静山社 (*)

『天国までもう一歩』表紙

『天国までもう一歩』
アン・ナ作
代田亜香子訳
白水社

『心やさしく』表紙

『心やさしく』
ロバート・コーミア作
真野明裕訳
徳間書店

(*) Copyright(c) Cover Dan Schlesinger 2002
    Copyright(c) Cover Layout Jun Koseki 2002
    Copyright(c) Say-zan-sha Publications Ltd. Tokyo 2002
    Illustrated by Dan Schlesinger

 

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★☆★☆【2002年 第5回やまねこ賞 絵本部門】☆★☆★

 

★大賞
『コッケモーモー!』表紙
『コッケモーモー!』
ジュリエット・ダラス=コンテ文 アリソン・バートレット絵 たなかあきこ訳 徳間書店
 ある朝、目を覚ましたおんどりくんが鳴こうとして、出てきたことばは「コッケモーモー」。鳴き声を忘れてしまったおんどりは……。鮮やかな絵と楽しい物語はおはなし会で大好評。

本誌2001年12月号情報編「新人応援!」の訳者インタビュー記事をご参照ください)

 

 

【受賞のことば】 翻訳家 田中亜希子さん

 すばらしい絵本に巡りあえた幸運に、ただただ感謝!です。それにしても、やまねこ翻訳クラブ誕生5周年の年に、会員のわたしがここにいるなんて、すごいことではないでしょうか(と僭越ながら思いました)。今、自分がたくさんの方々にいろんな意味で助けていただいていることを実感しています。その方々の中にはもちろん、大切なやまねこの仲間たちがいます! みなさん、本当にありがとうございました。

 

◆2位
『とどまることなく――奴隷解放につくした黒人女性ソジャーナ・トゥルース――』表紙
『とどまることなく――奴隷解放につくした黒人女性ソジャーナ・トゥルース――』
アン・ロックウェル作 グレゴリー・クリスティー絵 もりうちすみこ訳 国土社
 奴隷として生まれたひとりの女性が、解放されたことをきっかけに、学び、自らの奴隷生活を語り始める。彼女の言葉は人びとのこころをとらえ、奴隷廃止へとつながっていく。力強い文章と絵で19世紀のアメリカを生きた黒人女性の半生を描いた物語。

本誌2002年7月号書評編「注目の本」のレビューをご参照ください)

 

 

◆3位
『あたまにつまった石ころが』
キャロル・オーティス・ハースト文 ジェイムズ・スティーブンソン絵 千葉茂樹訳 光村教育図書
 石を集めるのが好きだった少年は、大人になっても、大恐慌で仕事を失ってもその情熱を燃やしつづけた。2001年度ボストングローブ・ホーンブック賞ノンフィクション部門オナー(次点)作品。
『あたまにつまった石ころが』表紙

本誌2002年9月号書評編「注目の本」のレビューをご参照ください)

 

 

◆4位
『ありがとう、フォルカーせんせい』表紙
『ありがとう、フォルカーせんせい』
パトリシア・ポラッコ作 香咲弥須子訳 岩崎書店
 トリシャは本が大好きなのに、なかなか読めるようにならない。みんなにからかわれ学校に行くのもつらくなった5年生のとき、新しい担任のフォルカー先生は、絵の才能を認めてほめてくれた。

 

 

◆5位
『ぼく、もうなかないよ』
サイモン・パトック文 アリソン・バートレット絵 ないとうふみこ訳 徳間書店
 かばのおばあさんから、毎日楽しいお話を聞かせてもらい、さるは幸せだった。ある日、死期を悟ったかばは、別れをつげてジャングルの奥へと消えていく。残されたさるは毎日泣いてしまい……。
『ぼく、もうなかないよ』表紙

本誌2002年4月号書評編「注目の本」のレビューをご参照ください)

 

 


◆6位以下の作品
《6位》 《7位》
『ぜったいたべないからね』表紙

『ぜったいたべないからね』
ローレン・チャイルド作
木坂涼訳
フレーベル館
『人生の最初の思い出』表紙

『人生の最初の思い出』
パトリシア・マクラクラン作
バリー・モーザー絵
長田弘訳
みすず書房
《8位》 《9位(2作同点)》 《9位(2作同点)》
『ナイトシミー 元気になる魔法』表紙

『ナイトシミー 元気になる魔法』
グエン・ストラウス文
アンソニー・ブラウン絵
灰島かり訳
平凡社
『あたし クラリス・ビーン』表紙

『あたし クラリス・ビーン』
ローレン・チャイルド作
木坂涼訳
フレーベル館
『ハエをのみこんだおばあさん』表紙

『ハエをのみこんだおばあさん』
シムズ・タバック作
木坂 涼訳
フレーベル館

 

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★☆★☆【2002年 第5回やまねこ賞 未訳部門】☆★☆★

 

★大賞
"Mean Margaret" by Tor Seidler, Pictures by Jon Agee
(1997年 アメリカ)
 社会風刺童話を得意とするサイドラーが、今までで最も楽しんで書いたという作品。エイジーの表情豊かな絵がさらに華をそえる。

 

 

◆2位
"Duck on a Bike" by David Shannon
(2002年 アメリカ)
 やまねこ会員たちがこよなく愛するシャノン。"No, David!"(『だめよ、デイビッド!』/小川仁央訳/評論社)は第2回やまねこ賞の未訳部門でも2位となった。今回の新作絵本は、いたずら坊主デイビッドの代わりに、元気でめげないアヒルと1台の真っ赤な自転車が主人公。現在、コールデコット賞の有力候補とも噂されている。

 

 

◆3位
"Time Stops for No Mouse: A Hermux Tantamoq Adventure" by Michael Hoeye
(1996年 アメリカ)
 Detectives come in all shapes and sizes.そしてこの作品の名探偵は題名に察する通りの姿。M・シャープ作、「ミス・ビアンカ」シリーズのバーナードとどことなく似た親しみやすい性格。続編も期待できそう。

 

 

◆4位
"True Believer" by Virginia Euwer Wolff
(2001年 アメリカ: プリンツ賞次点、全米図書賞)
 昨年の4位に引き続き、今年も入賞。ラヴォーンのはじめての恋、愛そして成長はなんど読んでもいい。

 

 

◆5位
"Amazing Maurice and his Educated Rodents" by Terry Pratchett
(2001年 イギリス: カーネギー賞)
 世界中に熱烈なファンをもつディスクワールド・シリーズの初めての児童向け作品。

本誌2002年6月号書評編『カーネギー賞・グリーナウェイ賞候補作』のレビューをご参照ください)

 

 

◆5位
"Carver: A Life in Poems" by Marilyn Nelson
(2001年 アメリカ: ボストングローブ・ホーンブック賞、ニューベリー賞次点)
 貧しい黒人農民の救済のために一生をささげたジョージ・ワシントン・カーバー。アフリカ系アメリカ人版宮澤賢治といえよう(文学者ではなかったが)。そのカーバーの人柄と生涯を、詩人である作者が詩集の形でつづる。

本誌2002年4月号書評編『注目の本』のレビューをご参照ください)

 

 

◆7位以下の作品
《7位》 《8位》 《9位》

"Antonio S and
the Mystery of
Theodore Guzman"
by Odo Hirsch

"Baloney (Henry P.)"
Jon Scieszka文
Lane Smith絵

"Love That Dog"
Sharon Creech作

 

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★☆★☆【番外編 第5回やまねこ賞 オールタイム部門】☆★☆★

 

 出版年を問わず、過去1年間にやまねこ翻訳クラブ会員が読んだ児童書の中から、ベスト6を選出しました。さて、本年度の傾向は――

 

《1位》 《2位》 《3位》

『新版 指輪物語〈1〉/旅の仲間〈上〉』表紙

『指輪物語』
J・R・R・トールキン作
瀬田貞二/田中明子訳
寺島龍一挿絵
評論社 1972〜75



『ホビットの冒険』
J・R・R・トールキン作
瀬田貞二訳
岩波書店 1965

『預言の子ラノッホ』表紙

『預言の子ラノッホ』
デイヴィッド・クレメント・
デイヴィーズ作
多賀京子訳
徳間書店 2001
《4位(3作同点)》 《4位(3作同点)》 《4位(3作同点)》

『緋色の皇女アンナ』表紙

『緋色の皇女アンナ』
トレーシー・バレット作
山内智恵子訳
徳間書店 2001

『青い丘のメイゾン』表紙

『青い丘のメイゾン』
ジャクリーン・ウッドソン作
さくまゆみこ訳
ポプラ社 2001

『ディア ノーバディ』表紙

『ディア ノーバディ』
バーリー・ドハティ作
中川千尋訳
新潮社 1994

 

 当クラブ「ファンタジー作品読破マラソン」企画や映画公開の影響が大きかったようだ。1、2位はトールキンの名作、「今年は映画化や復刊を機に前から好きな本をじっくりと読んで、結局トールキンとクーパー(「闇の戦い」シリーズ)の年となりました」(Blue Jay)、「こんな終わり方だったんですね。最後はしみじみしました」(えみりい)と新旧のファン。3位には昨年10月末発行のため1日違いで読み物部門の対象からはずれた『預言の子ラノッホ』が入った。「この厚さを夢中で読みました。完璧な世界観に圧倒されます」(くるり)などの熱いコメントが寄せられた。

 4位3作品のうち、『緋色の皇女アンナ』は昨年やまねこ賞第2位。「重厚な歴史物でしたが内容はスリルがあり面白かったです」(ゆま) 『青い丘のメイゾン』、『ディア ノーバディ』はともにティーンの心の問題を扱った作品。後者は、一昨年も同部門入賞と根強い人気がある(当クラブ1998年6月のおすすめの本)。

 復刊、新訳にからむコメントも目立った。「子どもとして生きることのせつなさが、ひじょうに繊細な文章で語られています」(Gelsomina)と評された『夜のパパ』(マリア・グリーペ/偕成社/1980)は現在品切中、復刊を望む声が高い。『魔女と暮らせば』(ダイアナ・ウィン・ジョーンズ/徳間書店/2001)と『魔女集会通り26番地』(偕成社/1985)は同じ原書から訳された本で、それぞれに票が投じられた。得点を合計すれば上位入賞だが、訳の違いを重んじて別作品として扱った。

やまねこ翻訳クラブおすすめの本 レビュー集
http://www.yamaneko.org/dokusho/shohyo/osusume/index.htm

(蒲池由佳/竹内みどり/池上小湖/河原まこ)

 

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賞情報1

―― 2002年 全米図書賞発表 ――

 

 11月20日、全米図書賞が発表された。この賞は、1950年に全米出版協会により創設され、米国在住の作家が米国で出版した作品が対象となる。当初は詩、フィクション、ノンフィクションの3部門であったが、1969年に児童書部門が加えられた。本誌では児童書部門のみ取り上げた。受賞者は以下の通り。

 

The National Book Award

★児童書部門(Young People's Literature)

"The House of the Scorpion"
by Nancy Farmer (A Richard Jackson Book/Atheneum Books for Young Readers)

 栄光に輝いたのは、過去2回ニューベリー賞のオナーブックに選ばれた経験のあるナンシー・ファーマーだった。受賞作品はアメリカとメキシコの間につくられた大麻王国が舞台となっている。クローン人間という難しいテーマを描いた近未来小説。

(西薗房枝)

【参考】

◇この賞を主催する The National Book Foundation の発表記事

◆Nancy Farmer 作品リスト(やまねこ翻訳クラブ データベース)

 

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賞情報2

―― 2002年 スマーティーズ賞発表 ――

 

 12月5日、英国で最大規模の児童文学賞、第18回スマーティーズ賞の結果が発表された。この賞は英国に住む11歳以下の子ども達の中から選ばれた、約6千人の審査員が、大人の審査員があらかじめ選出したリストをもとに投票で決定する。対象年齢別の、各部門の受賞者は下記の通り。

 

The Nestle(´) Smarties Book Prize 2002
※アクサン・テギュ(´) は、直前の文字の上につく。


★Gold Award★
【5 and under】 【6-8】 【9-11】
"Jazzy in the Jungle"
by Lucy Cousins
(Walker Books)
"That Pesky Rat"
by Lauren Child
(Orchard Books)
"Mortal Engine"
by Philip Reeve
(Scholastic)

◆Silver Award◆
【5 and under】 【6-8】 【9-11】
"Pizza Kittens"
by Charlotte Voake
(Walker Books)
"Pirate Diary
- The Journal of Jake Carpenter"
by Richard Platt,
illustrated by Chris Riddell
(Walker)
"Cold Tom"
by Sally Prue
(Oxford University Press)

◆Bronze Award◆
【5 and under】 【6-8】 【9-11】
"Oscar and Arabella"
by Neal Layton
(Hodder)
"The Last Wolf"
by Michael Morpurgo,
illustrated by Michael Foreman
(Doubleday)
"Stop the Train"
by Geraldine McCaughrean
(Oxford University Press)

◆Kids' Clubs Network Special Award◆
"That Pesky Rat" by Lauren Child (Orchard)

 

 金賞を受賞した作家のうち、ルーシー・カズンズは、「メイシーちゃんのしかけ絵本」でお馴染み。受賞作 "Jazzy in the Jungle" は、すでに『ベイビー・ジャジーのかくれんぼジャングル』(なぎともこ訳/偕成社)として出版されている。ローレン・チャイルドは、今年も昨年同様、キッズ・ネットワーク特別賞も併せて受賞した。人気の高さが伺われる。なおチャイルドについては、本誌増刊号第3号で特集し、受賞作のレビューも掲載しているので、ぜひご一読いただきたい。フィリップ・リーブは、銀賞を受賞したサリー・プルーと本年のブランフォード・ボウズ賞を争った。その時栄冠を射止めたのはプルーであったが、本賞では逆転する結果となった。受賞作はリーブの初作品で、今後の活躍が期待される。

 銀賞を受賞のシャーロット・ヴォークは、1997年にグリーナウェイ賞の最終候補に挙がった。そのときの作品は、『ねこのジンジャー』(小島希里訳/偕成社)として出版されている。"Pirate Diary" は、今年のグリーナウェイ賞を受賞した作品(本誌7月号にレビュー)。また、同じプラットとリデルの作品 "Castle Diary" は、1999年、カート・マシュラー賞の候補となっている。

 銅賞のニール・レイトンは、派手な色使いで楽しい絵柄だが、邦訳はまだ『宇宙人のしゃしん』(まつかわまゆみ訳/評論社)のみ。今後、他の作品も邦訳が出版されることを期待する。マイケル・モーパーゴは、ウィットブレッド賞など数多く受賞している作家である。今年も "Out of the Ashes" でチルドレンズ・ブック賞を受賞した。今年9月には、2000年のチルドレンズ・ブック賞に輝いた作品『ケンスケの王国』(佐藤未果夢訳/評論社)が出版されている。ジェラルディン・マコーリアンの受賞作品は、今年のカーネギー賞の最終候補作となったもの(本誌6月号にレビュー)。

(西薗房枝)

 

【参考】

◇この賞を主催するブックトラストの発表記事

◆"That Pesky Rat" のレビュー(本誌増刊号 NO.3 ローレン・チャイルド特集)

◇"Pirate Diary- The Journal of Jake Carpenter" のレビュー
(本誌2002年7月号書評編)

◆"Stop the Train" のレビュー(本誌2002年6月号書評編)

 

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Chicocoの親ばか絵本日誌 第20回 よしいちよこ

――「楽しみクリスマス」  ――

『サンタクロースのいそがしい日』(ジュリー・サイクス文/ティム・ワーンズ絵/うぶかたよりこ訳/文溪堂)は、サンタが準備をするところから始まり、プレゼントを配って北極に帰ってくるまでの忙しい1日を描いた楽しいしかけ絵本です。どのページにも子どもの指で開くのにぴったりな扉がたくさん隠れています。しゅんは、つぎつぎパタパタとめくって大喜びです。わたしが先にめくると、「ぼくがしたかったのに!」と半べそ。しゅんは小さなものが大好きで、とくにねずみがお気に入りです。長靴のなかのねずみを見つけると、目を細めて「ねずみちゃん、かわいい〜」と声が高くなります。本を読んだあと、ねずみちゃんごっこをしようといいだしました。しゅんがねずみで、わたしは絵本に出てきた車のおもちゃの役。「ねずみくん、ドライブしようよ」という台詞を何度も何度もいわされました。

『急行「北極号」』(クリス・ヴァン・オールズバーグ作/村上春樹訳/河出書房新社)をいっしょに読みました。〈僕〉は、家の前にとまった汽車に乗って、街をこえ、森をぬけ、山をのぼり、北極点に行き、これから世界中の子どもたちにプレゼントを配りに行くサンタに会います。今年のプレゼント第一号をもらうのは、汽車に乗った子どものなかの誰かです。しゅんは、自分も汽車に乗ってきたような気分になっていて、「ぼく! ぼくが一番!」と叫びます。サンタが〈僕〉を選び、「君はクリスマスに何がほしいかね?」とたずねると、しゅんは「ぼくやったらな、仮面ライダーのおもちゃ」と鼻をふくらませていいます。〈僕〉の望むプレゼントがサンタの袋のなかにないというところで、「えー、どうしてないの?」。自分のほしいプレゼントもはいってなかったらどうしようと思っているのでしょう。しゅんは本を閉じるといつも、目に見えない鈴をふり、「おかあさん、きこえる?」とききます。わたしが「聞こえない」とこたえると、しゅんは得意げな顔で「ぼくはきこえる!」といい、また、わたしには見えない鈴をふります。いつまでも鈴の音が聞こえるといいね、しゅん。

 

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●お詫び●

11月号で、以下の誤りがありました。お詫びして訂正いたします。 

◆賞情報 「2002年 カナダ総督文学賞発表」の記事中、"Parvana's Journey" by Deborah Ellis の邦訳を『生きのびるために』(デボラ・エリス作/もりうちすみこ訳/さ・え・ら書房)としましたが、"Parvana's Journey" は『生きのびるために』(原題 "The Breadwinner")の続編でした。こちらの邦訳も、同じくさ・え・ら書房から来春刊行予定です。


●お知らせ●

 本誌でご紹介した本を、各種のインターネット書店で簡単に参照していただけます。こちらの「やまねこ翻訳クラブ オンライン書店」のよりお入りください。


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やまねこ翻訳クラブ(info@yamaneko.org)までお気軽にご相談ください。


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洋書ビギナーにおすすめの、楽しく読める未訳書ガイド。クイズに答えてポイントをためると、プレゼントももらえます。

詳細&購読申し込みはこちらから。

http://www.yamaneko.org/mgzn/alfa/

(第15号は2月5日発行。申し込み手続きは前日までにおすませください。)


●編集後記●

今月号で書評編の編集人が交替することになり、わたしが編集後記を書くのはこれで最後です。書評編の発行開始以来3年半もの間、ご支援くださった読者の皆様に心から感謝いたします。今後も新しく発展し続ける「月刊児童文学翻訳」のご愛読をよろしくお願いします。いつも支えてくれたスタッフの皆にも感謝!(き)


発 行: やまねこ翻訳クラブ
発行人: 吉村有加(やまねこ翻訳クラブ 会長)
編集人: 菊池由美(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
企 画: 蒼子 河まこ キャトル きら くるり こべに さかな 小湖 Gelsomina sky SUGO Chicoco ちゃぴ つー 月彦 どんぐり なおみ NON ぱんち みーこ みるか 麦わら MOMO YUU ゆま yoshiyu りり ワラビ わんちゅく
協 力: 出版翻訳ネットワーク 管理人 小野仙内
ながさわくにお


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