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2009年6月号
   =====☆                    ☆=====
  =====★   月 刊  児 童 文 学 翻 訳   ★=====
   =====☆   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ☆=====
                                No.111
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児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、電子メール版情報誌
http://www.yamaneko.org                         
編集部:mgzn@yamaneko.org     2009年6月15日発行 配信数 2340 無料
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●2009年6月号もくじ●
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◎注目の本(邦訳絵本):『オルガ ストロングボーイTシャツのはなし』
                    イリヤ・グリーン文・絵/ときありえ訳
◎注目の本(邦訳読み物):『13の理由』 ジェイ・アッシャー作/武富博子訳
◎注目の本(未訳読み物):"Ostrich Boys" キース・グレイ作
◎賞速報
◎イベント速報
◎世界のお祭り:第17回 ペンテコステ(キリスト教)
◎読者の広場

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●注目の本(邦訳絵本)●フランス発 ガキ大将の極意?
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『オルガ ストロングボーイTシャツのはなし』
イリヤ・グリーン文・絵/ときありえ訳
講談社 定価1,260円(税込) 2009.03 42ページ ISBN 978-4062830287
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"Strongboy: le tee-shirt de pouvoir" by Ilya Green
Didier Jeunesse, 2007

 幼かったころ、棒をふりまわしたり布きれを身にまとったりして、ヒーローやヒロ
インになった覚えはないだろうか? かくいうわたしは、頭に布をかぶりあこがれの
ロングヘアーに変身!? お姫様を気取って、満面の笑みを浮かべた写真がアルバム
に残っている。どこにでもある、なんでもない小道具で、あこがれの対象になれる。
イマジネーションの世界を自在に飛び回る。それは心に十分な広さと余裕があったか
らではなかったか。自分の想像した世界を体全体で表現するのが子どもではないか。
この本に登場する子どもたちは、そんなことを思い出させてくれる。
 真っ赤な本の表紙には「S」と描かれたTシャツを着た子(女の子?)が、ぐっと
にらみを利かせて立っている。握りこぶしも勇ましいこの子が主人公オルガ。着てい
るのはなんと「せかいに1まいしかない」Tシャツ。しかもこの「S」とは「ストロ
ングボーイじるし」だ。つまりこのTシャツを着たオルガは、世界でたった一人のス
トロングパワーの持ち主! 変身完了パワー全開。鉄のやかんを持ち上げ、カラテの
ポーズをきめ、仲間にじゃんじゃん命令をだす。ところがひょんなことから、ほかの
子どもたちも同じTシャツを手に入れ、同じように命令し始めたのだ。
 イリヤ・グリーンは鮮やかに子どもの生態を描いてみせる。子どもたちは黒い髪に
黒い瞳で、どの子もちょっと変わったおもしろい服装をしている。豊かな表情としぐ
さがとてもいい。困った顔をしたネコ、小さい体に元気満タンのコトリ、一個連隊を
組むアリたちと、子どもたちを囲む面々も魅力いっぱいだ。最後のオチに思わずにん
まり。読後には、散々遊んだあとの爽快感が読者にも伝わってくる。5月には続編
『ソフィー ちいさなレタスのはなし』(ときありえ訳/講談社)が出版され、ここ
でも子どもたちが元気いっぱいに活躍する。フランス生まれのエスプリがたっぷり、
おしゃれな絵本をぜひどうぞ。

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【文・絵】イリヤ・グリーン(Ilya Green):1975年南仏プロヴァンス生まれ。フラ
ンス新進気鋭のイラストレーター。現代文学を学びつつ、子どものための物語とイラ
ストも描き始める。自身で文も絵も手がけた作品には、本作品のほかに "Histoire
de l'oeuf" "Olga: arracheuse de marguerite" がある。2009年ボローニャ・ラガッ
ツィ賞ノンフィクション部門特別賞受賞作品 "Les Reves: racontes aux petits
curieux"(Reves の1つ目の e にアクサン・スィルコンフレックス、racontes の
e 上にアクセント)のイラストも描いている。マルセイユ在住。

【訳】とき ありえ:1951年東京生まれ。上智大学ドイツ文学専攻。パリ大学でフラ
ンス語を学ぶ。作家。翻訳家。1989年『のぞみとぞぞみちゃん』(理論社)で日本児
童文学者協会新人賞を受賞。最近の翻訳に『ひつじのラッセル』(ロブ・スコットン
文・絵/文化出版局)、『テレビがなかったころ』(イワン・ポモー文・絵/西村書
店)などがある。

【参考】
▼イリヤ・グリーン公式ウェブサイト
http://www.ilya-green.com/

▼イリヤ・グリーン紹介ページ(Didier Jeunesse 内、フランス語)
http://www.didierjeunesse.com/artistes/auteurs?view=auteur&lettre=G&id=133

                               (尾被ほっぽ)

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●注目の本(邦訳読み物)●少女がテープに残した「13の理由」とは?
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『13の理由』 ジェイ・アッシャー作/武富博子訳
講談社 定価1,680円(税込) 2009.03 337ページ ISBN 978-4062153225
Amazonで詳細を見る  bk1で詳細を見る
"Thirteen Reasons Why" by Jay Asher
Razorbill, 2007
Amazonで原書の詳細を見る

 高校3年生のクレイ・ジェンセンは、ある日差出人不明の荷物を受け取る。中身は
2週間前に自殺した同級生、ハンナ・ベイカーの声が録音された7本のカセットテー
プだった。テープの中でハンナは、自殺を決意する理由となった出来事、それにかか
わった13人にまつわる話を、ひとりに対しテープ1面、13個の面を使って語っていく。
そして、テープを番号順に最後まで聞いて次の人に回すようにと、話に登場する人物
たちに指示していた。自分がそのメンバーに入っていることが、クレイにはとても信
じられなかった。ハンナを傷つけるどころか好意すら持っていたのだから。いったい
自分がなにをしたのか、と不安な気持ちでクレイはハンナのテープを聞き始める。
 突然、同級生の自殺に自分がかかわっていると知らされたら、誰だってショックを
受けるだろう。それが好きな女の子であればなおさらだ。孤立していくハンナを助け
たいと思っていたのに、それができなかったばかりか、こんなテープを受け取るはめ
になってしまったクレイ。順々にテープを再生しながら、今度も自分の話ではなかっ
たと胸をなでおろすと同時に、いったいそれがいつ出てくるのかとびくびくする。も
し自分がクレイの立場だったらと考えるだけで背筋が寒くなる。
 テープから流れるハンナの声に、テープを聞くクレイの心の声を交えながら物語は
進んでいく。時間を超えて交わされるふたりの言葉はむなしくすれちがい、自ら死を
選んだ者とその周囲の者たちとの気持ちのずれを象徴しているようだ。
 ハンナはテープに登場する13人を責めているわけではない。ただ彼らのしたことが、
どんなふうにハンナの自殺に影響を及ぼしたかを知ってほしかったのだという。普段
のなにげない言動が思わぬ展開を見せ、予想もつかないところで誰かを傷つけること
もあるのか、と考えさせられる。ともすれば人間関係が怖くもなる。しかし、それを
恐れていては人とかかわれなくなってしまう。大事なのは周囲に関心を持つこと、そ
して、結局は相手を思いやる心に尽きるのだろうか。なにをしても死んだ女の子を生
きかえらせることはできない。やりきれない物語ではあるが、テープを聞き終わった
クレイが最後に取った行動に、ひとすじのあたたかい光を見たような気がする。

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【作】ジェイ・アッシャー(Jay Asher):1975年9月、米国カリフォルニア州生ま
れ。1993年高校を卒業後、クエスタ・カレッジとカリフォルニア州立工科大学サンル
イスオビスポ校で学ぶ。靴店や書店勤務を経て、現在は図書館で勤務しながら執筆活
動を行っている。2002年に結婚、妻とふたりでカリフォルニア州在住。本書はデビュ
ー作である。

【訳】武富博子(たけとみ ひろこ):東京生まれ。上智大学国際関係法学科卒業。
訳書は本書のほか『バレエなんて、きらい』『キャンプで、おおあわて』(以上「ウ
ィニー」シリーズ、ジェニファー・リチャード・ジェイコブソン作/講談社)、『ア
トリエから戸外へ 印象派の時代』(アントニー・メイソン作/国土社)などがある。

【参考】
▼『13の理由』作品公式ウェブサイト
http://www.thirteenreasonswhy.com/

                                (石井柚実)

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●注目の本(未訳読み物)●261マイルの旅は灰になった親友と一緒に
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『オーストリッチ・ボーイズ』(仮題) キース・グレイ作
"Ostrich Boys" by Keith Gray
Definitions, 2008 ISBN 978-0099456575
368pp.
Amazonで詳細を見る
★2008年コスタ賞児童書部門ショートリスト作品
★2009年カーネギー賞ロングリスト作品

 突然、親友のロスが死んだ。自転車に乗っていて、車にはねられたという。少年た
ちはここ数日の彼の様子から、運転手の証言すべてを信じるわけにはいかなかった。
厳粛な教会での葬式や、暗く狭い中で火葬されたことも受け入れられないうちに、ロ
スは小さな骨壷の中の灰になってしまった。少年たちは葬式の夜に計画を立て、翌朝、
ロスの自宅のキッチンで骨壷ごとリュックサックに押し込み、彼と同じ名前の町ロス
へ行くために最寄りのクリーソープス駅へ向かった。ロスを生前あきらめた自分探し
の旅に連れて行き、仲間だけの本当の葬式を挙げるために、そして死の真相を明らか
にするために。ブレイク、ケリー、シムそしてロス。これでいつもの仲間がそろった。
 本当に事故だったのか、それとも証言どおり故意なのかと、骨壷のロスと自分たち
自身に問いかけながら、幾多のアクシデントに見舞われながらも乗り越えていく261
マイルの道のり。心はひとつのはずだった。記憶をひもときながら3人が語るロスの
生前の言葉には、抱えきれない絶望感と、それをカムフラージュする大胆さが入り混
じっていた。もう二度と会えないことを受け入れた時、彼らは意外な事実に気がつき
始める……。
 ロスの死をきっかけに、今まで水面下に隠れて見えなかった関係が姿を現してくる。
彼とつながる人は多く、その糸は複雑に絡みあっていた。家族、先生、地域、ネット、
ガールフレンド、友達。細い糸や短い糸、闇へとつながる糸もあった。もつれた糸を
彼自身の力でときほぐせたならと思うとともに、本当は固く結ばれていなければなら
ない糸がほどけている彼の寂しさに胸が詰まった。思春期特有の仲間意識と、それと
は裏腹な人間への不信感。両極を大きなふり幅で行き来する少年の心を、ロスへつな
がるレールを軸に描き出す。作者はこの旅で、たとえ永遠の別れが来ようとも、心の
結びつきまで断ち切ることはできないと、少年たちへ生きることのすばらしさを教え
てくれる。なんて無謀な旅なんだろうと大人は思うかもしれない。しかし、この旅で
なければ、彼らを癒し、未来へ向かう力を与えることができなかっただろう。悲しみ
を昇華するには、時間と思い出が必要だから。

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【作】Keith Gray(キース・グレイ):1972年英国生まれ。スコットランドのエディ
ンバラ在住。大学中退後さまざまな職を転々としながら作家を志す。少年の心の奥を
描き出す作品を多く発表している児童文学の新鋭作家。邦訳作品に『家出の日』(ま
えざわあきえ訳/徳間書店)、『ジェイミーが消えた庭』『絶体絶命27時間』(いず
れも野沢佳織訳/徳間書店)がある。

【参考】
▼キース・グレイ公式ウェブサイト
http://keith-gray.com/index.htm

▽コスタ賞児童書部門受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/uk/whit/index.htm

▽カーネギー賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/uk/carnegie/index.htm

                                (三好美香)

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●賞速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★2009年ガーディアン賞ロングリスト発表(受賞作の発表は9月)
★2009年NZP児童書及びYA小説賞発表
★2009年ビスト最優秀児童図書賞受賞作発表
★2009年ボストングローブ・ホーンブック賞発表
★2009年チルドレンズ・ブック賞発表
★2009年ミソピーイク賞最終候補作発表(受賞作の発表は7月)
★2009年イタリア・アンデルセン賞発表
★The Children's Laureate 2009-2011 発表

 海外児童文学賞の書誌情報を随時掲載しています。「速報(海外児童文学賞)」を
ご覧ください。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=award

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●イベント速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★展示会情報
 美術館「えき」KYOTO「描かれた不思議な世界 ミヒャエル・ゾーヴァ展」
 イタリア文化会館東京「イタリア・アンデルセン賞 1982-2009」 など

★講座・講演会情報
 西宮市大学交流センター「日本イギリス児童文学会講演会」
 岡山コンベンションセンター「中・四国こども文化セミナー2009」 など

★イベント情報
 パナソニックセンター東京「ムーミンの日の集い」 など

 詳細やその他のイベント情報は、「速報(イベント情報)」をご覧ください。なお、
空席状況については各自ご確認願います。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=event

                           (冬木恵子/笹山裕子)

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●世界のお祭り●第17回 ペンテコステ(キリスト教) 今年は5月31日(注)
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 キリスト教において、クリスマス、復活祭とならんで重要な祭りが、今回ご紹介す
るペンテコステ、聖霊降臨祭です。教派によって、聖神降臨祭、五旬節、五旬祭など
とも訳されるこの祭りは、復活祭の日曜日を1日目と数えて、50日目にあたる日曜日
に祝われます。
 新約聖書には、復活したイエス・キリストが昇天した10日後、使徒たちが祈りを捧
げていると、突然激しい風のような音が聞こえ、天から炎のような舌(聖霊)が現れ
て、一人一人の上にとどまったと書かれています。こうして聖霊に満たされた使徒た
ちは、さまざまな国の言葉で語り始めました。このことが、世界への宣教の始まりを
暗に示しているといわれており、そのため「教会の誕生日」とも呼ばれています。
 ペンテコステとは、ギリシャ語で「50番目」という意味で、ユダヤ教の祭日である
「シャブオット」のギリシャ語訳にあたります。シャブオットというのは、本誌2007
年4月号の本コーナーでご紹介した「過越しの祭り」の50日後に祝われる祭りで、モ
ーセが十戒を授けられたことを記念する日ですが、もともとは春の収穫に感謝する収
穫祭でした。このシャブオットが、キリスト教によって聖霊降臨と結び付けられ、次
第にその意味合いが強くなり、収穫感謝の概念は失われていったようです。
 この日は教会にとって極めて重要な意味を持つため、教会ではさまざまな儀式が執
り行われます。ほかにもドイツでは、昔ながらの習慣にのっとり、白樺の小枝で教会
や家を飾ったり、前夜にかがり火を焚いて五月祭のように祝ったりするところもある
そうです。移動遊園地が出るところも多いといいます。また、チェコとの国境に近い
町ケッツィンクでは、1412年から続く宗教行事として、毎年聖霊降臨祭の翌月曜日に
騎馬行列が繰り広げられます。美しい民族衣装で正装した人々が、十字架を先頭に何
百頭もの馬に乗って行進し、観光に訪れる人も多いそうです。
 ルクセンブルクのエヒテルナッハでは、聖霊降臨祭の翌々日にあたる火曜日に、ダ
ンス祭りが行われ、老若男女が白いハンカチの端を隣の人と持ち合って踊ります。オ
ーストリアのガイタール地方では、クーフェンシュテッヒェンという祭りが聖霊降臨
祭の翌月曜日に開かれます。疾走する馬に乗った人が、ポールに据えられた桶に鉈で
切り口を入れる技を競い合い、勝者を中心にダンスが踊られるそうです。どれも郷土
のお祭りですが、人々が聖霊降臨祭を祝うと同時に、春の訪れを楽しんでいる様子が
伝わってきますね。
 中世ヨーロッパの伝説の英雄を描いた『アーサー王と円卓の騎士』(シドニー・ラ
ニア編/石井正之助訳/福音館書店)には、この聖霊降臨祭が何度も出てきます。強
く勇敢なアーサー王は、ラーンスロット、ガウェイン、トリスタンといったすばらし
い騎士たちとともに、大きな円卓を囲んで聖霊降臨祭の大祝宴を毎年開きましたが、
「危難の席」と呼ばれる席がひとつだけ空いていました。そこに座る定めの者以外が
座ると、生きてその席を立つことはできないといわれていたのです。しかし、ある年
の聖霊降臨祭の日、いよいよその席を埋める騎士が現れます。

*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*
「どうやらわたくしには、」とサー・ラーンスロットは言いだした。「この席は、き
ょうこの日に満たされることになるように思えます。というのは、きょうこそまさに、
四百五十四年後の聖霊降臨祭の祝祭日に当たっているのですから。もし、列席の皆さ
んの同意が得られましたら、わたくしは、この冒険を成し遂げる人が現れるまで、き
ょうは、ここに現れる文字の一字たりとも、見ないことにしたいと思います。」
*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*

 ドイツの児童文学作家プロイスラーも、代表作『クラバート』(中村浩三訳/偕成
社)で、キリスト教の三大祭を物語の展開に巧みに取り入れています。ぜひ一度読ん
でみてくださいね。

(注)この日付は西方教会の教会暦によるもので、東方教会では今年は6月7日です。

★参考文献・ウェブサイト
『世界大百科事典』平凡社
オーストリア政府観光局公式ウェブサイト
http://www.austria.info/jp/regions-and-federal-provinces/local-festivals-
1142715.html
ケッツィンク公式ウェブサイト
http://www.koetzting.de/

                           (村上利佳/笹山裕子)

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●読者の広場● 海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ!
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 このコーナーでは、本誌に対するご感想・ご質問をはじめ、海外児童書にまつわる
お話、ご質問、ご意見等を募集しています。mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せ
ください。

※メールはなるべく400字以内で、ペンネームをつけてお送りください。
※タイトルには必ず「読者の広場」とお入れください。
※掲載時には、趣旨を変えない範囲で文章を改変させていただく場合があります。
※質問に対するお返事は、こちらに掲載させていただくことがあります。原則的に編
集部からメールでの回答はいたしませんので、ご了承ください。

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●お知らせ●

 本誌でご紹介した本を、各種のインターネット書店で簡単に参照していただけます。
こちらの「やまねこ翻訳クラブ オンライン書店」よりお入りください。
http://www.yamaneko.org/info/order.htm
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           ・☆・〜 次 号 予 告 〜・☆・

 詳細は毎月10日頃、やまねこ翻訳クラブHPメニューページに掲載します。
          http://www.yamaneko.org/info/index.htm
 どうぞお楽しみに!

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●編集後記●2003年9月号を最後に編集から遠ざかっておりましたが、久しぶりに復
帰いたしました。ブランクはちょっと大きいですが、また楽しくがんばっていきたい
と思います。どうぞよろしくお願いいたします。(あ)
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発行人 武富博子(やまねこ翻訳クラブ 会長)
編集人 赤間美和子/井原美穂/植村わらび(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
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    三好美香 村上利佳
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    ながさわくにお えみりい コアラン 林檎
    html版担当 ぐりぐら
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