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2012年2月号
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  =====★   月 刊  児 童 文 学 翻 訳   ★=====
   =====☆   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ☆=====
                                No.137
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児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、電子メール版情報誌
http://www.yamaneko.org                         
編集部:mgzn@yamaneko.org     2012年2月15日発行 配信数 2360 無料 
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●2012年2月号もくじ●
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◎注目の本(未訳絵本):"Mirror" ジーニー・ベイカー作
◎賞速報
◎イベント速報
◎世界のお祭り:第27回 グラウンドホッグ・デー(アメリカ・カナダ)
◎読者の広場

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●注目の本(未訳絵本)●遠く離れた場所を隣同士で比べてみると──
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『きみとぼくの住むところ』(仮題) ジーニー・ベイカー作
"Mirror" by Jeannie Baker
Walker Books, 2010 ISBN 978-1406309140
36pp.
★2011年オーストラリア児童図書賞絵本部門受賞作品
★2012年ケイト・グリーナウェイ賞ロングリスト作品
Amazonで詳細を見る

 精密な技と卓越した美的感覚にあふれるレリーフ・コラージュで、多くの人を魅了
するジーニー・ベイカー。今回は本の作り自体に斬新なアイディアを取り入れ、今ま
でとは一味違った興味深い作品を生み出した。
 表紙には、インディゴの空に満月が輝く町。屋根の波と狭い路地の向こうに高層ビ
ルが立ち並び、その景色をひとりの少年が窓から眺めている。本を裏返してみると、
そこにも同じ色の空と満月があり、窓辺に同じ年頃の少年がひとり。まるで鏡に映し
たような左右対称の構図だが、彼が見ているのは町ではない。川と緑の畑、遠くに見
える砂色の小山と集落以外は何もない、静寂な村の風景だ。このふたつの場所が、物
語の出発点になる。
 本を開くと、ページが左右両側から綴じられた観音開き状のユニークな作りになっ
ている。最初の2ページには、左側に英語、右側にアラビア語で、ふたりがオースト
ラリアとモロッコに住んでいるという説明がある。さらにそれぞれ外側にめくると今
度は4ページが同時に開き、まるで絵本を2冊並べたような形になる。この先は一切
文字がない。左側にオーストラリア、右側にモロッコの1日がコラージュだけで描か
れ、最初から最後まで左右対称の構図を用いることによって、文化や習慣の違いが見
事に浮き彫りになっていく。実際にモロッコを訪れた作者が再現したオアシスの風景
は、赤みを帯びた土の色やごつごつした山肌、乾いた緑の色、市場に並ぶ数々の野菜、
荷物をしばる紐にいたるまで、驚くほど綿密で美しい。砂、土、粘土、紙、布、ブリ
キ、プラスチックなど多種多様な素材を幾重にも重ねて出来上がったミニチュアの世
界は、色彩も質感も含め、まさに芸術作品だ。
 一見何の類似点もないふたつの家族だが、一家団らんの空気や親子の結びつきとい
う目に見えないものを比べるとき、そのイメージは不思議なほどぴったりと重なり合
う。絵の中に「あるもの」を登場させ、彼らが実は暮らしの中でつながっていること
を伝えるところにも、作者のストーリーテラーとしてのセンスのよさがうかがえる。

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【作】Jeannie Baker(ジーニー・ベイカー):1950年、英国に生まれる。アート・
カレッジ卒業後、1975年に渡豪。コラージュ・アーティストとしても高い評価を得て
おり、オーストラリアをはじめ、ロンドンやニューヨークでも個展を開いている。邦
訳に『ひみつのもり』(さくまゆみこ訳/光村教育図書)、『森と海のであうところ』
(百々佑利子訳/佑学社)がある。シドニー在住。

【参考】
▼ジーニー・ベイカー公式ウェブサイト
http://www.jeanniebaker.com/

▽オーストラリア児童図書賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/au/cbca/index.htm

▽ケイト・グリーナウェイ賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/uk/greenawy/index.htm

                              (かまだゆうこ)

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●賞速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★2012年コレッタ・スコット・キング賞発表

 海外児童文学賞の書誌情報を随時掲載しています。「速報(海外児童文学賞)」を
ご覧ください。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=award

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●イベント速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★展示会情報
 和歌山県立近代美術館「ホックニーのグリム童話」
 木城えほんの郷「いせひでこ絵本原画展&講演会」 など

★講座・講演会情報
 板橋区立美術館「絵本への道」
 下関市立美術館「リンドグレーンからの贈りもの」 など

★イベント情報
 国際子ども図書館ホール「子どものための絵本と音楽の会」 など

★震災関連チャリティイベント情報
 丸善日本橋店「こどもの本の画家たち展」
 穂高交流学習センター「みらい」「ゴーシュの夢を乗せて 届け東北へ」 など

 詳細やその他のイベント情報は、「速報(イベント情報)」をご覧ください。なお、
空席状況については各自ご確認願います。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=event

                           (冬木恵子/笹山裕子)

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●世界のお祭り●第27回 グラウンドホッグ・デー(アメリカ・カナダ) 2月2日
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 毎年2月2日──日本が節分を迎えるころ──アメリカやカナダでは「グラウンド
ホッグ・デー」を迎えます。その日、巣穴から出てきたグラウンドホッグ(ウッドチ
ャックとも呼ばれる大型のリスの一種)が、自分の影を見て驚いて巣穴に戻ったら、
北米全土で冬がさらに6週間続き、影を見ずにそのまま外にいれば春はすぐそこまで
来ている、という天候予測のお祭りです。
 もともと2月2日は、聖燭祭(キャンドルマス)と呼ばれるキリスト教のお祭りの
日で、古代より、この日が晴天だと冬はまだ続くという言い伝えがありました。イン
グランドやスコットランドの古い歌にも、「キャンドルマスの日が晴れだったら、冬
がまた来る。曇りだったら、冬は去る」と歌われているほどです。また、古代ローマ
人も、2月初めの数日間でハリネズミを使って天候予測ができると考えていました。
晴天が続いた2月初めの月夜の晩に、巣穴から出てきたハリネズミが影を落とせば、
あと6週間冬が続くと信じていたそうです。
 古代ローマ帝国が現在のドイツを征服したおり、これらキリスト教と古代ローマの
慣習がドイツで融合し、その後ペンシルベニア州に移住したドイツ人移民によってア
メリカに持ち込まれたといわれています。アメリカにはハリネズミがいなかったため、
代わりにグラウンドホッグを使うようになりました。
 さて、この行事はアメリカおよびカナダ各地に定着していますが、その中でもとり
わけ有名な、ペンシルベニア州パンクサトーニーのお祭りの様子をご紹介しましょう。
パンクサトーニーの郊外に、ゴブラーズ・ノブという森があり、その森の中の広場に
木の切り株を模した特設の巣があります。2月2日の朝、その巣からフィルという名
前の1匹のグラウンドホッグが出てきます。フィルは、1887年に初めてこの祭りの主
役をつとめて以来、毎年天候予測をしています。なんと、今年で実に126回目! ち
なみに、一般的なグラウンドホッグの寿命は6〜10年程度。フィルの長寿の秘密(?)
は、毎年夏に行われるという〈グラウンドホッグ・ピクニック〉の場でフィルが飲む
不老不死の薬にあるといわれていますが、フィルがその薬を飲んでいるところを見た
ことがある人はいないとか……。さて、この町には、フィルの世話をする名誉ある
〈パンクサトーニー・グラウンドホッグ・クラブ〉というサークルがあり、祭り当日、
サークルメンバーはシルクハットに燕尾服という正装でフィルを出迎えます。フィル
は“グラウンドホッグ語”で、このサークルの会長に予報の結果を告げ、会長がその
言葉を“翻訳”してみんなに伝えるというわけです。人口わずか6500人程度のこの町
に、多いときには4万人もの観光客がやってくるというから驚きですね。
 パンクサトーニー・グラウンドホッグ・クラブによると、“公式な天候予測グラウ
ンドホッグ”は〈パンクサトーニーのフィル〉だけ、とのことですが、ほかにもニュ
ーヨーク州には〈スタテンアイランドのチャック〉、オハイオ州には〈バッカイのチ
ャック〉、カナダのオンタリオ州には〈ワイアートンのウィリー〉、同じくカナダの
ノバスコシア州には〈シュベナカディのサム〉など、北米各地でたくさんのグラウン
ドホッグが活躍しており、この日はニュースもこの話題で盛り上がります。
 アメリカの児童書、『ウサギが丘のきびしい冬』(ロバート・ローソン作/三原泉
訳/あすなろ書房)には、いつもよりきびしい冬に見舞われた動物たちが、グラウン
ドホッグ・デーを待ち望む様子が描かれています。ここは、主人公ウサギのジョージ
ーの家。とてもつつましい量の干し草の夕ごはんを食べながら、父さんがこう話し始
めました。

*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*
「知ってのとおり、二月の二日は、グラウンドホッグ・デーだ。ウッドチャック、別
名グラウンドホッグが影をおとすかどうかで、春のおとずれをうらなう、だいじな日
なわけだが。毎年、おおいなる関心をもってこの日をまちのぞんできたけれども、こ
としのように不安な思いでむかえることは、かつてないといえよう。
 ポーキーがその日、巣穴からすがたを見せたとき、影がなかったら──ないことを
いのるが──めでたく冬がおわる証となり、われらの苦難もおわりとなる。
 だが、太陽が出ていて、くっきりと影がおちたなら、感謝祭からつづいているこの
みじめな季節が、さらに六週間つづくことの予報となる。
*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*

 さて、今年の冬はこの後どうなるのでしょう? どうやらフィルは自分の影を見て
しまったらしく、冬はあと6週間、3月半ばまで続くと予測しました。一方、カナダ
のウィリーは影を見なかったようで、春はもうすぐと宣言しています。どちらの予測
が当たるのでしょうか。
 なお、下記にご紹介したペンシルベニア州やパンクサトーニーの公式ウェブサイト
からは、森に集まったたくさんの人々が見守るなか、フィルが天候予測をする様子を
見ることができます。ぜひ一度ご覧ください。

★参考文献・ウェブサイト
"Encyclopaedia Britannica"
"Encyclopedia Americana"
ペンシルベニア州観光局公式ウェブサイト(グラウンドホッグ・デー紹介ページ)
http://www.visitpa.com/groundhog-day
パンクサトーニーのフィル公式ウェブサイト
http://www.groundhog.org/
ワイアートンのウィリー公式ウェブサイト
http://www.wiartonwilliefestival.com/

                           (村上利佳/笹山裕子)

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●読者の広場● 海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ!
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 このコーナーでは、本誌に対するご感想・ご質問をはじめ、海外児童書にまつわる
お話、ご質問、ご意見等を募集しています。mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せ
ください。

※メールはなるべく400字以内で、ペンネームをつけてお送りください。
※タイトルには必ず「読者の広場」とお入れください。
※掲載時には、趣旨を変えない範囲で文章を改変させていただく場合があります。
※質問に対するお返事は、こちらに掲載させていただくことがあります。原則的に編
集部からメールでの回答はいたしませんので、ご了承ください。

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●お知らせ●

 本誌でご紹介した本を、各種のインターネット書店で簡単に参照していただけます。
こちらの「やまねこ翻訳クラブ オンライン書店」よりお入りください。
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           ・☆・〜 次 号 予 告 〜・☆・

 詳細は10日頃、やまねこ翻訳クラブHPメニューページに掲載します。
          http://www.yamaneko.org/info/index.htm
 どうぞお楽しみに!

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からフォーマルなシーンにも使える「CERAMIC」など、年間300種類以上のモデルを発
売し続けています。またフォッシル直営店では、時計以外にもレザーバッグ、革小物、
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新刊情報・イベント情報などを掲載いたします。詳細はmaple2003@litrans.netまで。

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●編集後記●「1月号外」明けの今月号は、ショートバージョンでお届けしました。
「世界のお祭り」でご紹介したフィルの予測通り、今年の冬はまだ続きそうです。3
月号をお届けする頃には、少し暖かくなっているといいですね。お身体、ご自愛くだ
さい。(う)
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発行人 井原美穂(やまねこ翻訳クラブ 会長)
編集人 植村わらび/大作道子(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
企 画 尾被ほっぽ 加賀田睦美 かまだゆうこ 蒲池由佳 児玉敦子 笹山裕子
    冬木恵子 村上利佳 森井理沙 脇田茉莉
協 力 出版翻訳ネットワーク 管理人 小野仙内
    ながさわくにお
    html版担当 ぐりぐら
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