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2013年5月号
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  =====★   月 刊  児 童 文 学 翻 訳   ★=====
   =====☆   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ☆=====
                                No.148
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児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、電子メール版情報誌
http://www.yamaneko.org                         
編集部:mgzn@yamaneko.org     2013年5月15日発行 配信数 2370 無料 
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●2013年5月号もくじ●
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◎プロに訊く:第36回 伏見操さん(翻訳家)
◎プロに訊く連動レビュー:『えのはなし』
                   ポール・コックス文・絵/ふしみみさを訳
◎注目の本(未訳読み物):"Gadget Girl: The Art of Being Invisible"
                             スザンヌ・カマタ作
◎賞速報
◎イベント速報
◎読者の広場

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●プロに訊く●第36回 伏見操さん(翻訳家)
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 2012年やまねこ賞で絵本部門大賞に輝いた『トラのじゅうたんになりたかったトラ』
(ジェラルド・ローズ文・絵/岩波書店)の翻訳者である伏見操さんに、お話を伺い
ました。フランスからの一時帰国中に、複数の出版社との打ち合わせの合間を縫って
インタビューにこたえてくださった伏見さんに、心から感謝いたします。

【伏見操(ふしみ みさを)さん】
+────────────────────────────────────+
|1970年埼玉県生まれ。上智大学仏文科卒業。洋書絵本卸会社に勤務した後、フリ|
|ーの翻訳者をめざして、作品の持ち込みを始める。初めての訳書は、1999年出版|
|の『モモ、しゃしんをとる』(ナジャ文・絵/文化出版局)。フランス語と英語|
|の絵本を中心に、100冊以上の訳書がある。新刊に、『ゾウの家にやってきた赤 |
|アリ』(カタリーナ・ヴァルクス文・絵/文研出版)、『あるひ ぼくは かみ|
|さまと』(キティ・クローザー文・絵/講談社)など。フランス在住。    |
+────────────────────────────────────+

※『トラのじゅうたんになりたかったトラ』は、本誌2012年12月号にレビュー掲載。
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2012/12.htm#hehon

【伏見操さん訳書リスト】
http://www.yamaneko.org/bookdb/int/ls/mfushimi.htm

【伏見操さんインタビュー ロングバージョン】
http://www.yamaneko.org/bookdb/int/mfushimi.htm

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Q★まず、『トラのじゅうたんになりたかったトラ』の原書との出会いについて教え
てください。これは持ち込みだったのですか?

A☆ローズのほかの作品は私の持ち込みなのですが、これは岩波書店の編集者さんが
見つけてきてくれました。1979年に初版が出て、いったん絶版になり、2011年に再版
されたものです。ところが、この版の表紙の絵はローズらしくなくて、いかにも画像
処理ソフトで切り貼りしたようなものだったんです。それで、オリジナルは違うはず
だからさがしてくださいと、お願いしました。しばらく時間はかかりましたが、最終
的には見つかって、オリジナルの表紙で邦訳を出すことができました。

Q★表紙のトラの絵にはとても惹かれます。オリジナルが見つかってよかったですね。

A☆そうですね。表紙の絵だけで、イメージもだいぶ違ってくると思います。タイト
ルもそうですね。原書では "The Tiger-skin Rug" というのですが、このトラはとて
もなさけなくて、じゅうたんになりたいぐらいプライドがないトラなので、そのおも
しろさを出したいなと思って邦題を考えました。

Q★伏見さんは持ち込みで成功されているイメージが強いのですが、依頼されること
も多いのですか? また、持ち込む作品はどのようにさがしていらっしゃいますか?

A☆最初はほとんど持ち込みでしたが、最近は半々ぐらいでしょうか。頼まれること
のほうが多いかもしれません。作品さがしについては、大学を卒業後、洋書絵本の卸
会社に勤めていた頃に始まっていました。小さな会社だったので、仕入れ、営業、ト
イレ掃除などなんでもやったのですが、言語としてはフランス語の担当でした。その
ときに、現地では売れているのに、邦訳されていないものもたくさんあることに気づ
いたんです。卸なので情報は豊富でした。新刊情報も早いです。カタログを見て、気
に入ると自分で買っていたので、フランス語の絵本をたくさん持っていたのです。そ
こから持ち込みをするようになりました。初めて訳した『モモ、しゃしんをとる』や、
『うんちっち』(ステファニー・ブレイク文・絵/あすなろ書房)などはその頃に出
会った絵本です。せっかく原書を買ってもはずれることは多々ありましたが、だんだ
ん目が肥えてきたり、売れる作家がわかってきたりすると、それほどはずれないよう
になりました。

Q★翻訳の勉強はどのようにされたのですか?

A☆勉強してないです(笑)。講座を受けたこともありません。メルマガの読者のみ
なさんをがっかりさせてしまうかもしれませんが、私は消去法で翻訳を始めたのです。
会社勤めではなく、フリーで仕事をしたいという希望がまずありました。その中で、
自分の好きなものと、できることのすりあわせをしたら、翻訳だなということになっ
たのです。たくさん持っていた原書の中から、気に入った作品を訳して、それを持ち
込みし始めました。洋書卸会社では、書店への営業もやっていて、実際に絵本を見せ
ながら中身を紹介していたんですね。翻訳家をめざすようになってからは、それと同
じことを出版社の人向けにやるようになりました。営業の経験が生きています。だか
ら、無駄なことって、ないのかもしれませんね。

Q★持ち込みするときは、送付するのではなく、持参して見てもらうのですか?

A☆そうです。ただ、今はフランス在住なので、メールで送ります。アマゾンで画像
も見てもらえますからね。そして今回のように帰国したときに、出版社を回るように
しています。最初のうちは、コピーに訳をつけて送っていました。持ち込みを始めた
ばかりの頃は、インターネットにも頼れなかったので、マスコミ電話帳で出版社の電
話番号を調べて、こういう本があるのですが見ていただけますかと訊いていました。
そうすると、おおかた門前払いか、コピーを送ってくださいと言われるかでした。

Q★門前払いもたくさん経験されたのですね。持ち込みの苦労話などありますか?

A☆私はそもそも外に出て人に会うのが苦手なので、持っていくだけで緊張するんで
すよ。電話をかけるのも、時計の針がゼロになったら電話しよう、いや、15分になっ
たらにしよう、またゼロになっちゃったからお茶しちゃおうという感じで(笑)。で
も、とにかくフリーで仕事をしたかったので、やるしかないんですね。思い切って電
話をかけて、用件を伝えたら、「よし、終わった!」となるんです。

Q★絵本を訳すときに特に気をつけているのは、どういったことでしょうか?

A☆いいすぎないことですね。もともと文字の少ないものなので、できるだけシンプ
ルに。加えて加えて装飾していくのではなく、そぎ落としてそぎ落としてエッセンス
だけにした言葉で語るのが絵本だと思います。リズムも大切ですね。お話の場合は、
ストーリーがよく流れるように訳します。読んでいてつっかえたり、戻って読み直し
たりすることは絶対にないように。ストーリーに入り込んだまま最後まで進めるよう
にすることが大事だと思います。

Q★いろいろな作家さんと親交があるとのことですが、エピソードなどがありました
ら聞かせてください。

A☆フリーになったばかりの頃、あまりにも仕事がなくて、どうにかしなくちゃと思
っていたときに、好きな作家に翻訳の独占権をもらったらどうかと、誰かに勧められ
たんです。それはいい考えだと思って、10人以上の作家に手紙を書き、フランスの出
版社に送ったら、全部本人に届けてもらえて、結局全員に会えました。すでに知り合
いだったゲルダ・ミューラーという大好きな作家が家に泊めてくれて、そこからほか
の作家に会いにいきました。遠くから訪ねていくと、役得ですよね。みなさんいい人
で、よくしてもらいました。「独占権あげるよ」「やったー!」なんてやりとりもし
たのですが、全部、口約束のままです(笑)。私のほうも、会えただけで大満足で、
独占権のことなど忘れてしまいました。そんなことがきっかけで、今もほとんどの方
とおつきあいが続いています。

Q★フランスの児童文学についてお訊きします。どんな作品が人気なのでしょう?

A☆好きなものばかり見てきたので、フランス児童文学全体の流れを把握しているわ
けではないのですが、良書だなと思うのは、フラマリオンという出版社が出している
「ペール・カストール」のシリーズですね。ぺらぺらの紙で、小さい判型でそろえた
廉価版の絵本。福音館書店の「こどものとも」は、これを参考にしているそうです。
ペンギンブックスなどでもそういうものを出していますが、その走りが「ペール・カ
ストール」なんです。いい本を安くというポリシーで売り始め、今でも読まれていま
す。ほかには、そうですね、寓話もたくさんありますし。

Q★フランスの作品と日本の作品との傾向の違いは、どんなところにありますか?

A☆フランスでは、オチのない話も本になっていますね。また、日本では大人っぽす
ぎるかなと思うような絵のものもあります。哲学を授業でやる国らしく、観念的なス
トーリーもあります。移民が多くて差別問題があること、離婚率が非常に高いことな
ども、日本との違いですね。そういったテーマの本が多いというわけではなく、要素
としてストーリーの中に入ってくることが、日本の児童書と比べて多いと思います。

Q★伏見さんは、本のデザインにも積極的に関わっていらっしゃいますね。

A☆そうですね。デザインの仕事も少しやったことがあるんです。フリーになったあ
とにアルバイトのつもりで入った会社で、描画ソフトの使い方もおぼえました。出版
社との打ち合わせで、デザインのことを話すこともあります。帯をこうしましょうか
とか、原書にはない見返しをつける必要があるときは、こんなふうにしたらどうです
かとか。いい本を作るために、気づいたことはどんどん言い合うべきだと思うんです
ね。文とデザインを分業にすることはもちろんいいと思うし、まかせるところはまか
せますが、思いついたことはだれが提案してもいいと思います。

Q★児童文学の翻訳学習者へ、アドバイスをお願いします。

A☆月並みかもしれませんが、たくさんたくさん本を読むことが大切だと思います。
子どもの本でも大人の本でも、洋書でも和書でも、何でもかまいません。翻訳者にな
るにはどうしたらいいかという質問に答えるのは、とても難しいんですよね。翻訳者
になろうとしてなった人は意外と少ないという話も聞きます。私の場合は消去法だし
……(笑)。ただ、いろいろなやり方があると思うんですね。きちんと学校に行って
勉強するのもいいことでしょうし、自分に合ったやり方があると思います。出版社の
傾向は、書店の棚やカタログを見ることで案外簡単にわかるので、それに合わせて持
ち込みしたほうが確率は高くなると思います。

Q★日本で売れそうな作品がなかなか見つからなくて、苦労しているのですが。

A☆日本で売れるだろうかというのは、あまり考えずに、気に入った本を見つけてい
けばいいと思います。売れるかどうかは、出してみないとわかりませんからね。わか
ればヒットばかりになるはずですもん。だから、状況が許すのであれば、ほんとうに
気に入ったものを紹介していくという姿勢でいいのではないでしょうか。

Q★今後やってみたいことは?

A☆エッセイを持ち込もうと思って、書き始めています。門前払いだと思いますけど
(笑)。創作も考えていますが、翻訳と違って、作者になると自分が出ちゃうのが恥
ずかしいですね。

 *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** ***

 自分なりのやり方で道を切り開いてきた伏見さんのお話には、悩みながら翻訳家修
業を続ける者として、とても励まされ、刺激されました。勇気をふりしぼって持ち込
みの電話をかけるところからスタートし、今では多くの出版社から引っ張りだこの伏
見さん。ざっくばらんで謙虚な話しぶりの中に、強いプロ意識と、作品への愛が感じ
られました。

                           (取材・文/大作道子)

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●特別企画連動レビュー●ぺらぺらだって、いいじゃない?
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『えのはなし』 ポール・コックス文・絵/ふしみみさを訳
青山出版社 定価2,625円(税込) 2008.01 174ページ ISBN 978-4899980858
"Histoire de l'art" by Paul Cox
Editions du Seuil, 1999
Amazonで詳細を見る  hontoで詳細を見る

 はだかの王さまが、クレオパトラ風の古代エジプト美女をスーツケースとおぼしき
ものに乗せて運んでいる? 表紙絵の突拍子のなさに、手に取らずにはいられないこ
の本。誘われるようにページをめくると、期待どおりのナンセンスな世界が全編を通
して展開される。衝撃的なほどに、ゆるーい童話絵本なのだ。
 貧乏画家のルコ・ポックスは、アトリエの窓から見えるお姫さまに恋をしていた。
お姫さまもまた、窓の向こうのルコに恋をしていた。だが、お姫さまは意地悪な父王
にお城に閉じ込められていて、ふたりは互いに思いを伝えることすらできないのだっ
た。そんなある晩、ルコは不思議なおじいさんに出会い、魔法の絵筆を手にした。こ
の筆で描いた絵は、カンバスを抜け出して自由に動きはじめる。ところが、絵から抜
け出た「はだかの王さま」や「冒険家」は紙製で、厚みがなくぺらぺら! ある時は
くるくる丸めて保管され、またある時は鉄格子から難なく抜け出す。そんな「はだか
の王さま」たちが、ルコとお姫さまの味方になってくれる。はたして、ふたりの恋の
行方は?
 筋立て自体はクラシックなのに、魔法のリンゴが八百屋で売られていたり、近所の
店でカラーコピーをしたりと、現代的な設定がおかしさを際立たせる。悪役の王さま
も、アイスクリーム中毒の小心者で憎めない。だがなんと言っても、本書の一番の魅
力は、全ページを飾るユーモアたっぷりのイラストだ。「はだかの王さま」のにやけ
顔ときたら! 訳者自身が手掛けた本文の手書き文字も絶妙な一体感をみせ、半端で
はない脱力感をかもしだしている。
 突っこみどころ満載で、ついつい何度も読み返してしまう異色作だ。純粋無垢な幼
児から、俗塵にまみれた大人まで、そろって楽しめることだろう。きゅうくつな毎日
に肩がこっている方には、特にお勧め。ふっと力が抜け、自然と笑みが浮かぶ、和み
のひと時を味わってほしい。

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【文・絵】ポール・コックス(Paul Cox):1959年、パリ生まれ。英語教師の職を経
て、独学で創作活動に入る。画家、グラフィックデザイナー、絵本作家として幅広く
活躍している。本書で1999年ボローニャ・ラガッツィ賞フィクションYA部門を受賞。
「コアラの探偵・アーチボルド」シリーズはテレビアニメ化され、日本でも放映され
た。

【訳】ふしみ みさを(伏見操):本誌今月号「プロに訊く」参照。

【参考】
▼ポール・コックス公式ブログ(フランス語)
http://www.paulcox.centrepompidou.fr/

▼ポール・コックスのフォト・エッセイ「日々の暮らし、日々の芸術。」
      第1回「ラウンド・テーブル」2008年8月1日(朝日新聞デジタル内)
http://www.asahi.com/la/paul1.html

▼ポール・コックス紹介ページ(ユトレヒト内)
http://www.utrecht.jp/person/?p=289

                                (小島明子)

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●注目の本(未訳読み物)●光の都パリで自らの輝きに目覚めた少女
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『ガジェット・ガール 透明になりたい少女』(仮題)
"Gadget Girl: The Art of Being Invisible" by Suzanne Kamata
GemmaMedia, 2013 ISBN 978-1936846382
228pp.
Amazonで詳細を見る

 藍子はアメリカ人の母とミシガン州で暮らす15歳の少女。日本人の父には会った記
憶がなく、四国で藍を栽培していること以外は母から聞かせてもらえない。小児まひ
による障害をもつ藍子は、幼い頃から母がつくる彫刻のモデルで、ミューズとして世
間に広く知られていることを最近では負担に感じていた。彼女は父に近づきたい気持
ちから藍の苗を育て、日本の漫画をむさぼり読み、自らも描く。『ガジェット・ガー
ル』と題したそのシリーズの主人公は好きな男の子の危機を救うスーパーガールなの
だ。ほかの子と違う自分が恥ずかしくて、いっそ黒子のように見えなくなりたいと思
う藍子は、匿名で作品を描いていた。
 彫刻の受賞を機に、母が展覧会を開くため、親子はしばらくパリに滞在することに
なった。本当は父が住む日本に行きたかった藍子だが、パリでは好青年エルヴェと親
しくなり、ふたりは漫画の話題で盛り上がる。こんな身体の自分にも素敵な恋があり
うるのだろうか? 16歳の誕生日に母から出生の話を聞きショックを受けた藍子は、
フランス南部の「ルルドの泉」でひとつの「奇跡」を経験することに……。
 本書は自伝的な要素が多い作品だ。著者は、自身のミューズである、車いすに乗る
娘と、長年の夢だったパリ旅行を今年の春に果たしている。近い将来、娘が母に対し
て抱くかもしれない感情を想像して代筆したのではないかという印象を受けた。だが
同時に、藍子は著者自身でもあるのだろう。著者が暮らす徳島の農村では昔ながらの
日本が生きつづけ、外国人はいやでも目立つ。著者自身も透明になりたいと感じたこ
とがあるのではなかろうか。だが、藍子が気づいた通り、人は闇にとけ込むことでは
なく、光の中で自分らしく輝くことで救われる。他者への、自分への愛で満たされて
輝くのだ。啓蒙思想発祥の地パリで、悟性の光をあびて。
 ふたつ以上の文化に挟まれた若者は悩みが深い。ただでさえ、思春期はアイデンテ
ィティを築く戦いだ。目にみえる違いがあれば、もっと苦戦する。運命がもたらした
ものを克服して自らを受け入れ、誇りをもって自分らしい生き方を見いだす。こんな
感動的な旅路は、全ての若者が経験しうる。いや、ぜひ経験してもらいたいものだ。

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【作】Suzanne Kamata(スザンヌ・カマタ):米国のミシガン州生まれ。一般小説
"Losing Kei" や短編集に続き、本書が初のYA小説となった。数多くの媒体で短編
等を執筆し、雑誌のフィクション編集者としても活躍している。日本人の夫とふたご
の子どもとともに徳島で暮らし、妻として、母として、日本に住む外国人が抱えるさ
まざまな思いを作品に昇華させている。本書で2013年度 Paris Book Festival 賞を
受賞。

【参考】
▼スザンヌ・カマタ公式ウェブサイト
http://www.suzannekamata.com/

▼スザンヌ・カマタ公式ブログ
http://gaijinmama.wordpress.com/

▼スザンヌ・カマタのインタビュー(Japan Times 内)
http://tinyurl.com/ccxhn5q

▼2013年 Paris Book Festival 賞発表記事(Paris Book Festival 内)
http://www.parisbookfestival.com/winners2013.html          

                                (池上小湖)

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●賞速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★2013年オーストラリア児童図書賞候補作品発表(受賞作品の発表は8月16日の予定)
★2013年イタリア・アンデルセン賞候補作品発表(受賞作品の発表は5月25日の予定)
★第60回産経児童出版文化賞発表
★2013年MWA賞(エドガー賞)児童図書部門/ヤングアダルト小説部門発表
★2013年ブランフォード・ボウズ賞ショートリスト発表
                     (受賞作品の発表は7月11日の予定)
★2013年CBI最優秀児童図書賞(旧ビスト最優秀児童図書賞)発表
★2012年度アガサ賞児童書及びヤングアダルト部門受賞作品発表
★2013年ローカス賞ヤングアダルト部門最終候補作品発表
                   (受賞作品の発表は6月28〜30日の予定)

 海外児童文学賞の書誌情報を随時掲載しています。「速報(海外児童文学賞)」を
ご覧ください。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=award

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●イベント速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★展示会情報
 群馬県立近代美術館「グレゴワール・ソロタレフの世界展」
 安曇野ちひろ美術館「絵本『ブルムカの日記』原画展」 など

★講演会情報
 クレヨンハウス「和田誠さん、落合恵子さん対談」
 岡山こどもの本の会「田村和子さん講演会」 など

★コンクール情報
 インターカレッジ札幌「第10回翻訳コンクール」
 関西カタルーニャセンター「第8回絵本翻訳コンテスト」 など

★イベント情報
 東京消防会館 ニッショーホール「ムーミンの日の集い」 など

★東日本大震災チャリティイベント情報
 子どもたちへ〈あしたの本〉プロジェクト「チャリティ・オークション原画展」
                                   など

 詳細やその他のイベント情報は、「速報(イベント情報)」をご覧ください。なお、
空席状況については各自ご確認願います。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=event

                           (冬木恵子/笹山裕子)

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●読者の広場● 海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ!
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 このコーナーでは、本誌に対するご感想・ご質問をはじめ、海外児童書にまつわる
お話、ご質問、ご意見等を募集しています。mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せ
ください。

※メールはなるべく400字以内で、ペンネームをつけてお送りください。
※タイトルには必ず「読者の広場」とお入れください。
※掲載時には、趣旨を変えない範囲で文章を改変させていただく場合があります。
※質問に対するお返事は、こちらに掲載させていただくことがあります。原則的に編
集部からメールでの回答はいたしませんので、ご了承ください。

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●お知らせ●

 本誌でご紹介した本を、各種のインターネット書店で簡単に参照していただけます。
こちらの「やまねこ翻訳クラブ オンライン書店」よりお入りください。
http://www.yamaneko.org/info/order.htm
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           ・☆・〜 次 号 予 告 〜・☆・

 詳細は10日頃、出版翻訳ネットワーク内「やまねこ翻訳クラブ情報」のページに掲
載します。
          http://litrans.g.hatena.ne.jp/yamaneko1/

        ・☆・〜 150 号 記 念 号 予 告 〜・☆・

 本誌は7月号で150号を迎えます。当クラブではこれを記念し、5月中旬より絵本
のレビューコンテストを開催します。審査はやまねこ会員の投票にて行い、結果を7
月号で発表するとともに、最優秀レビューを掲載する予定です。どうぞお楽しみに!

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▽▲▽▲▽   海外児童書のシノプシス作成・書評執筆を承ります   ▽▲▽▲▽

  やまねこ翻訳クラブ(yagisan@yamaneko.org)までお気軽にご相談ください。

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     ☆☆ FOSSIL 〜 Made in USA のライフスタイルブランド ☆☆
 独創的なデザインで世界100ヶ国以上で愛用されているフォッシルはアメリカを代
表するライフスタイルブランドです。1984年、時計メーカーとして始まったフォッシ
ルは時計をファッションアクセサリーの一つと考え、カジュアルな「TREND」ライン
からフォーマルなシーンにも使える「CERAMIC」など、年間300種類以上のモデルを発
売し続けています。またフォッシル直営店では、時計以外にもレザーバッグ、革小物、
ファッションサングラスなどのラインも展開しています。
TEL 03-5992-4611
http://www.fossil.co.jp/     (株)フォッシルジャパン:やまねこ賞協賛会社
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●編集後記●フランスに住み、フランス語(と英語)を日本語に翻訳している伏見操
さん、そして日本に住み、英語で小説や記事を書いているスザンヌ・カマタさん。文
化の架け橋となっているお二人を、奇しくも同じ号でご紹介することになりました。
いかがだったでしょうか。異国の地での生活は、苦労も多いでしょうが、あこがれの
気持ちがおさえられません。(う)
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発 行 やまねこ翻訳クラブ
編集人 植村わらび/蒲池由佳/大作道子(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
企 画 池上小湖 尾被ほっぽ 加賀田睦美 かまだゆうこ 小島明子 笹山裕子
    高橋美江 武富博子 冬木恵子 村上利佳 森井理沙
協 力 出版翻訳ネットワーク 管理人 小野仙内
    asayaka あんこ からくっこ コアラン さかな shoko SUGO
    ながさわくにお hanemi ゆま
    html版担当 ぐりぐら
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