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 やまねこ10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」レビュー集

アストリッド・ リンドグレーン賞(スウェーデン) レビュー集
Rabén & Sjögren Astrid Lindgren priset
 

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最終更新日 2009/03/06 新規公開 

参考ページ

アストリッド・リンドグレーン賞の概要
Raben & Sjogren Astrid Lindgren priset 〔Rabén & Sjögren Astrid Lindgren priset〕

 リンドグレーンが長年勤めた児童書出版社 Rabén & Sjögren が、リンドグレーン60歳の誕生日を記念して1967年に設けた賞。毎年、リンドグレーンの誕生日 (11月14日)に、子どもの本に貢献した作家(フィンランドのスウェーデン語作家を含む)へおくられる。

 なお、名前の似た賞に、Literaturpriset till Astrid Lindgrens minne (The Astrid Lindgren Memorial Award/アストリッド・リンドグレーン記念文学賞)と、De Nios Astrid Lindgren-pris(九人協会のアストリッド・リンドグレーン賞)がある。 「アストリッド・リンドグレーン記念文学賞」は、スウェーデン政府主催の賞で、2002年に創設、第1回の授与は2003年 だった。2005年には荒井良二氏が受賞している。もう一方の「九人協会のアストリッド・リンドグレーン賞」 は、リンドグレーン90歳の1997年に創設された賞で、Samfundet De Nio(九人協会) という文学アカデミーを通して授与される。

(参考:国立国会図書館国際子ども図書館展示会 『北欧からのおくりもの 子どもの本のあゆみ』
Northern gifts - Children's books from the Nordic countries
平成18年7月10日 発行 編集・発行 国立国会図書館国際子ども図書館)

このレビュー集について
 10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」においてやまねこ会員が個々に書いたレビューを、各児童文学賞ごとにまとめました。メ ールマガジン「月刊児童文学翻訳」「やまねこのおすすめ」などに掲載してきた〈やまねこ公式レビュー〉とは異なる、バラエティーあふれるレビューをお楽しみください。
 なお、レビューは注記のある場合を除き、邦訳の出ている作品については邦訳を参照して、邦訳の出ていない作品については原作を参照して書かれています。


 Rose Lagercrantz ローセ・ラーゲルクランツ(リンク) / Barbro Lindgren バルブロ・リンドグレン(リンク) / Eva Eriksson エヴァ・エリクソン(リンク) /  Ulf Stark (ウルフ・スタルク)

 


1979年アストリッド・リンドグレーン賞受賞

Rose Lagercrantz ローセ・ラーゲルクランツ
"Den langa, langa resan 〔Den långa, långa resan〕" (1995) Ilon Wikland イロン・ヴィークランド絵、Rose Lagercrantz ローセ・ラーゲルクランツ文 (スウェーデン語) 
『ながいながい旅』 石井登志子訳 岩波書店 2008.05

このレビューについては、エルサ・ベスコフ賞レビュー集を参照のこと


1973年アストリッド・リンドグレーン賞受賞
 
Barbro Lindgren (バルブロ・リンドグレン)
"Mamman och den vilda bebin"(1980)
  Eva Eriksson エヴァ・エリクソン絵、Barbro Lindgren バルブロ・リンドグレン文 (スウェーデン語)
『ママときかんぼぼうや』 小野寺百合子訳 佑学社 1981年
その他の受賞作
1981年エクスプレッセン・ヘッファクルンペン賞(スウェーデン)
1981年、"Mamman och den vilda bebin" に対しエルサ・ベスコフ賞

このレビューについては、エルサ・ベスコフ賞レビュー集を参照のこと

2001年アストリッド・リンドグレーン賞受賞

Eva Eriksson(エヴァ・エリクソン)
"Mamman och den vilda bebin"(1980)
  Eva Eriksson エヴァ・エリクソン絵、Barbro Lindgren バルブロ・リンドグレン文 (スウェーデン語)
『ママときかんぼぼうや』 小野寺百合子訳 佑学社 1981年(邦訳絵本)
その他の受賞作
1981年エクスプレッセン・ヘッファクルンペン賞(スウェーデン)
1981年、"Mamman och den vilda bebin"でエルサ・ベスコフ賞

このレビューについては、エルサ・ベスコフ賞レビュー集を参照のこと


"Alla doda sma djur 〔Alla döda små djur 〕"(2006) (未訳絵本)
 by Ulf Nilsson ウルフ・ニルソン、illustrations by Eva Eriksson エヴァ・エリクソン
その他の受賞作
2007年ドイツ児童文学賞 児童書部門ノミネート作品
・2006年アウグスト賞児童書部門ノミネート作品

このレビューについては、ドイツ児童文学賞レビュー集を参照のこと

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1993年アストリッド・リンドグレーン賞受賞

Ulf Stark (ウルフ・スタルク) その他の受賞 
 
"LAT ISBJORNARNA DANSA 〔 LÅT ISBJÖRNARNA DANSA 〕"(1986)
『シロクマたちのダンス』 菱木晃子訳 佑学社 1994年/偕成社 1996年
その他の受賞歴 

 ラッセととうさんは、言葉がなくてもわかりあえた。とうさんは、いつだってシロクマのような大きな腕でラッセを優しく包み込んでくれる。しかし、かあさんが他の男の子どもを宿しているとわかり、両親は離婚。大好きなとうさんとは別々に暮らすことになってしまった。かあさんの恋人は金持ちの歯医者で、ラッセを優等生にしようと躍起になる。おまけにその娘は何かにつけ、ラッセをいじめる。それでも、どうにか新しい環境になじんでいくラッセ。人が変わってしまった彼にかつての友は背を向け、ラッセ自身も自分の変化に疑問を抱き思い悩むようになる。成長の過程で誰もが経験する「自分探し」の物語。

 勉強が苦手で、学校でも問題児のラッセが、周囲の大人たちの価値観にふりまわされ、優等生にかわっていく姿がなんとも哀れである。いつしか「すごいやつ」と言われる優越感にも慣れてしまったころ、自分を見失っていることに気が付いた彼の複雑な気持ち。ラッセの一人称で語られるがゆえに、すっかり感情移入していたこちらの心の中にまで、変わってしまった自分に対するとまどいと嫌悪感がわっと広がってくるようだった。だからこそ、その心の中に芽生えた「自分」を求める気持ちも痛いほど伝わってきた。
 家庭の崩壊や新しい家族とのあつれきなど、主人公が経験するのは胸の痛むような出来事ばかり。だが、不思議と重苦しさや暗さは感じられない。むしろ、淡々としてあたたかく、明るささえ感じとれる。子どもの心に寄り添った、スタルクの優しいまなざし、彼の軽妙かつユーモアあふれる文章のおかげだろう。言葉少ないラッセととうさんの気持ちを表すエルビス・プレスリーの曲の数々も、作品にしゃれた趣を添えている。読後は、天をふりあおぎ澄みきった空をながめるようなさわやかさの残る作品である。

(加賀田睦美) 2009年3月公開

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