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やまねこ10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」レビュー集> ドイツ児童文学賞(絵本・児童書部門)
 

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 やまねこ10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」レビュー集

ドイツ児童文学賞( ドイツ) レビュー集
Deutscher Jugendliteraturpreis 

(絵本・児童書部門)
 

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最終更新日 2008/11/01 レビューを1点、リンクを1点追加 

絵本・児童書部門レビュー集 / ヤングアダルト ・ ノンフィクション部門レビュー集 / 青少年審査員賞・特別賞レビュー集

ドイツ児童文学賞リスト(やまねこ資料室)   
ドイツ児童文学賞の概要

このレビュー集について
 10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」においてやまねこ会員が個々に書いたレビューを、各児童文学賞ごとにまとめました。メ ールマガジン「月刊児童文学翻訳」「やまねこのおすすめ」などに掲載してきた〈やまねこ公式レビュー〉とは異なる、バラエティーあふれるレビューをお楽しみください。
 なお、レビューは注記のある場合を除き、邦訳の出ている作品については邦訳を参照して、邦訳の出ていない作品については原作を参照して書かれています。


"Pikko, die Hexe"『小さな小さな魔女ピッキ』 * "Samuraisommer" * "Die besten Beerdigungen der Welt" * "Ente, Tod und Tulpe"『死神さんとアヒルさん』(リンク) * "Die Torte ist weg! Eine spannende Verfolgungsjagd"『ケーキをさがせ!』(リンク ) * "35 kilos d'espoir"『トトの勇気』 * "Deesje macht das schon"『デージェだっていちにんまえ』(リンク)←追加  * "Herr Eichhorn und der Mond "『リスとお月さま』←追加


2007年ドイツ児童文学賞絵本部門ノミネート作品

ドイツ語タイトル:"Pikko, die Hexe" (2006)
   
by Marit Tornqvist [Marit Törnqvist] マリット・テルンクヴィスト
   text by Toon Tellegen トーン・テレヘン
オランダ語 "Pikkuhenki" (2005) からの翻訳 
邦訳:『小さな小さな魔女ピッキ』 長山さき訳 徳間書店 2006

その他の受賞歴 2006年金の絵筆賞


 むかしむかし、遠い遠い国の草の葉のかげ、砂粒の下に、小さな小さな魔女ピッキが住んでいました。あんまり小さくて姿が見えないので、動物も人間も、そして他の魔女たちも、誰もピッキのことを知りません。そして、自分が魔法を使えるのかどうか、ピッキにもわかりません。そこでピッキは、ほうきをつくり、空を飛んだり魔法を使ったりしてみることにしました。小さな小さなピッキが、農家の犬や広場で見せ物になっているクマの頭の中に入り込むと、犬やクマの気持ちが見えてきます。ピッキが頭の中で命令すると、犬もクマも、命令通りに動いてしまいます。ピッキは自分の力を試そうと、好き勝手に命令をします。そのうち、この国の王様が、どうやら心根の悪い人らしいとわかった時、小さな男の子をみつけたピッキは……。  

 色づかいが昔話風の物語にぴったりあって、何ともいい。背景の色の変化やちょっとした表情に、その場の雰囲気と、動物や人の気持ちがよくあらわれている。
 自分の魔法の力を試すために、動物の頭の中に入り込むピッキ。頭の中で、ピッキにはその動物の気持ちが見える。けれども、そこでささやくピッキのことばは、「悪い魔女」の命令であることがほとんど。昔話風の極端なわるさや結末も見受けられ、ぎょっとさせられる。それはその動物にとって、まわりの人間にとって、いったいいいことなのか悪いことなのか。
 好き勝手に頭の中に入って突然出て行かれたら、その動物はどうなって、そのあとはどうなるか、そんなことはピッキには関係ない。いかにも「自分のことしか考えない悪い魔女」然としている。なのに、その身勝手な行動が、なぜかやがて人々を喜ばせてしまうのが、ピッキにとっていいことなのか悪いことなのか。ピッキはいったい、何がどうなればうれしかったのか。最後まで、読者は問いかけられている。
 子どもが読むにはちょっと難しそうな、大人のための絵本かもしれない。
 さて、小さな小さなピッキは、いったいどんな魔女なの? とページをめくり続けてみつかるその姿は……はい、読んでのお楽しみ。

(冬木 恵子) 2008年5月公開


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2007年ドイツ児童文学賞絵本部門ノミネート作品

ドイツ語タイトル:"Samuraisommer" (2006) by Ake Edwardson 〔Åke Edwardson〕
スウェーデン語原書 "Samurajsommar"(2005) (未訳読み物)からの翻訳 

その他の受賞歴


(このレビューは、スウェーデン語版を参照して書かれています)

『夏の侍』(仮題)

 侍になりたい12歳の少年ケニーは、子供サマーキャンプで今年の夏を送ることになった。何かと敵視してくるワイネや、ちょっとしたことで目くじらをたててくる先生をはじめ、サマーキャンプでの生活にはケニーの苛立ちの原因が山積みだ。ケニーの心のよりどころは、秘密の城づくりと、シャスティンへの恋だった。そんなある日、シャスティンは引率の先生の息子、クリスチャンから暴行を受け、キャンプ地を飛び出してしまう。クリスチャンと先生は、子供達を台所に閉じ込め、火をつけた。ケニーは皆を救うことができるのだろうか。

 侍をモチーフにした作品。アイディア自体は面白いものの、侍に関するエピソードを物語の中に組み込むのは少し無理があるように思えた。また、シャスティンが行方を眩ました場面を境に、本作はミステリーの様相を呈するようになるが、それまで青春小説の色合いが濃かった分、非常に唐突な印象を受けた。クリスチャンが子供達に暴行を働くようになった動機や、息子の悪行を見て見ぬふりをした引率の先生の心の内がほとんど描かれていなかったため、お話全体が説得力を欠いたものになってしまっていた。全体としては残念な点が目立つ作品ではあったものの、シャスティンが正義感の強い、優しい少女として魅力的に描かれていた点では、作者の力量を感じることができた。

(枇谷 玲子) 2008年5月公開


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2007年ドイツ児童文学賞 児童書部門ノミネート作品

ドイツ語タイトル:"Die besten Beerdigungen der Welt" (2006)
   
Ulf Nilsson ウルフ・ニルソン文/Eva Eriksson エヴァ・エリクソン絵
スウェーデン語原書 "Alla doda sma djur 〔Alla döda små djur 〕"(2006) (未訳絵本)からの翻訳

その他の受賞歴
 2006年アウグスト賞児童書部門ノミネート作品


(このレビューは、スウェーデン語版を参照して書かれています)

『死んでしまった小動物はみな』(仮題)

 ある日蜂の死体を見つけたぼくの友達エステルは、蜂をお墓に埋めるとこう言った。「かわいそうな蜂さん。でも人生は続いていくの」エステルは世の中の死んでしまった小動物たちを、自分達の手で天国に送り出してやろうと言いだした。動かない小動物を見て不思議がるエステルの弟のプッテに、ぼくらは生きとし生けるものは皆、いつかは死んでしまうということを教えてやった。ぼくらの目の前で、追いかけっこをしていたクロウタドリが窓にぶつかって死んだ。巣ではヒナ達が母さん鳥の帰りを待っているのかもしれない。ぼくらは泣きながらお墓をつくり、クロウタドリの冥福を祈った。明日もまた、ぼくらは死んでしまった小動物を天国に送り出してやるんだ。

 日本でも人気のあるエヴァ・エリクソンの叙情的なイラストが印象的な作品。子供たちに死というものは何かを教えてくれる。これほどまでに死というものに正面から向き合った作品は、日本の児童書には見られない。

 参考ページ
 http://www.bonniergroupagency.se/documents/textutdrag/1004.doc (英語全訳)
 http://www.bonniergroupagency.se/documents/uppslag/1004.pdf (絵本全ページ画像)

(枇谷 玲子) 2008年5月公開


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2007年ドイツ児童文学賞絵本部門ノミネート作品

"Ente, Tod und Tulpe" (2007)
   
by Wolf Erlbruch ヴォルフ・エァルブルッフ
邦訳:『死神さんとアヒルさん』 三浦美紀子訳 草土文化 2008.04 [Amazon] [bk1]

 やまねこ公式レビュー
レビュー(月刊児童文学翻訳2008年7月号)

その他の受賞歴
2008年オランダ吹流し(Vlag em Wimpel)賞(絵筆賞)
2008年オランダ銀の石筆賞


 ラリーから、月刊児童文学翻訳2008年7月号のレビューへと発展しました


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2007年ドイツ児童文学賞絵本部門ノミネート作品

ドイツ語タイトル:"Die Torte ist weg! Eine spannende Verfolgungsjagd" (2006)
   
by The Tjong-Khing 〔Thé Tjong-Khing〕 テー・チョン・キン
オランダ語 "Waar is de taart?" (2007) からの翻訳 
邦訳:『ケーキをさがせ!』 徳間書店 2008.04

その他の受賞歴 2005年銀の絵筆賞(オランダ)


 金・銀の絵筆賞ラリー集を参照のこと


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2005年ドイツ児童文学賞児童書部門ノミネート作品

"35 kilos d'espoir"(2002) by Anna Gavalda アンナ・ガヴァルダ
『トトの勇気』" 藤本泉訳 鈴木出版 2006 (邦訳読み物)

その他の受賞歴
・2003年(第15回)アンコリュプティブル賞(中学2・3年生の部)受賞作(フランス)


 アンコリュプティブル賞レビュー集を参照のこと

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1988年ドイツ児童文学賞児童書部門受賞作品

"Deesje macht das schon"(1987) by Joke Van Leeuwen ヨーク・ファン・リューベン 作・絵 ←追加
オランダ語 "Deesje"(1985) からの翻訳
『デージェだっていちにんまえ』 下田尾治郎訳 福音館書店 1991 (邦訳読み物)

その他の受賞歴
1986年オランダ銀の石筆賞 1986年 オランダ銀の絵筆賞


 オランダ金・銀の石筆賞レビュー集を参照のこと

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2007年ドイツ児童文学賞絵本部門ノミネート作品

"Herr Eichhorn und der Mond "(2006) by Sebastian Meschenmoser ゼバスティアン・メッシェンモーザー 
『リスとお月さま』 松永美穂訳 コンセル 2007 (邦訳絵本) 追加

その他の受賞歴


 リスの住む木の枝に、突然、お月さまが落ちてきた。リスは驚き、そして焦る。「ぼく、月を盗んだどろぼうだと思われて、牢屋に入れられちゃうよ!」月をどこかへ運 ぼうと苦心していたら、枝が折れ、お月さまはすぐ下にいたハリネズミの上に落ち、ハリネズミのとげとげにしっかりささってしまう。「やっぱり、ぼくは牢屋行きだ !」さらにヤギとネズミが登場して、話はどんどんこじれていく……。

 早合点のリスの妄想がどんどん膨らんでいくのが、最高におもしろい。そのリスが想像する牢屋の場面中は繰り返し出てくるのだが、部屋の描写がとてもリアル。人間の囚人(強面の男の人)がいて、なぜか刺繍をしている。 隣でリスも同じ囚人服を着ている。その対比がまるでコントのようで笑ってしまう。どんどんこじれていく現実のお月さま騒動のほうも、その状況の突拍子のなさとリスたちの真剣さの対比が、やはりたまらなくおかしい。
 絵は、お月さまだけはきれいな黄色で存在感があるが、白黒の鉛筆画にところどころ地味な彩色がほどこされた全体的に静かな雰囲気。でも、リアルに描かれた動物の動きには躍動感があって、やっぱりおかしい。作者はきっとユニークな人なんだろうと想像する。
 最初から丁寧に見ていけば、表紙裏やタイトルページでお月さまの正体がわかる。でも、その最初と最後の「おまんじゅうの薄皮」がなくても、中の「あんこ」だけで十分に楽しめる作品だ。2007年には本国ドイツで続編 "Herr Eichhorn und der erste Schnee" が発表され、 こちらはオランダで銀の絵筆賞を受賞している。

(植村わらび) 2008年11月公開


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