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月刊児童文学翻訳

─2005年5月号(No. 69)─

児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、
電子メール版情報誌<HP版+書店街>
http://www.yamaneko.org/
編集部:mgzn@yamaneko.org
2005年5月15日発行 配信数 2390

もくじ

 ◎賞情報:2004年度カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞候補作発表
 ◎注目の本(邦訳読み物):『バスの女運転手』 ヴァンサン・キュヴェリエ作
                  キャンディス・アヤット画/伏見操訳
 ◎注目の本(未訳絵本):"One More Sheep" ミジ・ケリー文/ラッセル・エイト絵
 ◎注目の本(未訳読み物):"Looking for JJ" アン・キャシディ作
 ◎賞速報
 ◎イベント速報
 ◎世界のお祭り:第3回 メーデー〈五月祭〉(イギリス) 5月1日
 ◎読者の広場:海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ!

●このページでは、書店名をクリックすると、各オンライン書店で詳しい情報を見たり、本を購入したりできます。

 


●賞情報●2004年度カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞候補作発表

 4月29日、カーネギー賞およびケイト・グリーナウェイ賞のショートリスト(最終候補作)が発表された。英国図書館協会が主催するこの賞は、 イギリスでは最も権威ある児童文学賞である。今年は3月4日にロングリストとしてカーネギー賞に49作品、ケイト・グリーナウェイ賞に34作品があがっていた。 受賞作の発表および、授賞式は7月8日。ショートリストは以下の通り。(ロングリストは、やまねこ翻訳クラブサイトの 「速報(海外児童文学賞)」コーナーに掲載中。


【カーネギー賞候補作】〜 Carnegie Medal 〜(作家対象)

"Looking for JJ" by Anne Cassidy (Scholastic Children's Books)

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"Al Capone Does My Shirts" by Gennifer Choldenko (Bloomsbury)

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"Millions" by Frank Cottrell Boyce (Macmillan)

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 (『ミリオンズ』)

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"Heartbeat" by Sharon Creech (Bloomsbury)

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"The Star of Kazan" by Eva Ibbotson (Macmillan)

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"The Scarecrow and His Servant" by Philip Pullman (Doubleday)

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 今年はロングリストにあがった作品数が非常に多かったが、結局、最終候補に残ったのは、各賞の常連作家の作品に加え、すでに他の賞にも名が挙がった作品ばかりであった。"Looking for JJ" は、ウィットブレッド賞の最終候補にも残った話題作。詳しくは今月号の「注目の本(未訳読み物)」を参照のこと。"Al Capone Does My Shirts" はアメリカの作品で、ニューベリー賞オナー(次点)作。レビューは本誌2005年2月号の「注目の本(未訳読み物)」を参照のこと。あすなろ書房から、こだまともこ訳で年内の邦訳刊行が予定されている。"Millions" は、ガーディアン賞のショートリストにも残った作品で、イギリスにユーロが導入されるという設定のもと、幼い兄弟のもとに突然降ってきたポンド紙幣の大金をめぐる騒動が描かれている。脚本家として有名な著者自身による脚本で映画化され、すでに英米では公開済み。日本でも今冬に公開される予定だ。邦訳は『ミリオンズ』(池田真紀子訳/新潮社)。"Heartbeat" は、一人称で描かれた散文詩形式の作品。裸足で走るのが大好きな12歳の少女が、身のまわりのさまざまな命を感じ、語っていく。"The Star of Kazan" は、19世紀末、ウィーンの教会に捨てられていた孤児アニカの数奇な運命を描いた、児童文学の王道といえる物語。スマーティーズ賞〈9歳〜11歳の部〉の銀賞を受賞し、現在チルドレンズ・ブック賞〈高学年向け部門〉の候補作にも残っている(受賞作の発表は6月11日)。1925年生まれの作家 Ibbotson の健筆ぶりは頼もしい限りだ。"The Scarecrow and His Servant" は、雷に打たれて命を持ったかかしと身寄りのない少年とのユニークな冒険物語。波乱万丈のふたりの珍道中がおとぎ話の形をとって描かれるが、そこは Pullman の作品らしく、現代に通じる問題もさりげなく盛り込まれている。理論社から金原瑞人訳で邦訳刊行予定とのこと。

【参考】
▼Anne Cassidy 公式ウェブサイト
http://www.annecassidy.com/

▼Gennifer Choldenko 公式ウェブサイト
http://www.choldenko.com/

▼Sharon Creech 公式ウェブサイト
http://www.sharoncreech.com/

▼Philip Pullman 公式ウェブサイト
http://www.philip-pullman.com/

▽シャロン・クリーチ作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/author/c/screech.htm

▽フィリップ・プルマン作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/author/p/ppllmn.htm

▽"Al Capone Does My Shirts" のレビュー(本誌2005年2月号「注目の本」)
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2005/02.htm#myomi

(菊池由美)

 

【ケイト・グリーナウェイ賞候補作】〜 Kate Greenaway Medal 〜(画家対象)

"The Boat" by Ian Andrew, text by Helen Ward (Templar Publishing)

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"One More Sheep" by Russell Ayto, text by Mij Kelly (Hodder Children's Books)

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"Dougal's Deep-sea Diary" by Simon Bartram (Templar Publishing)

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"Michael Rosen's Sad Book" by Quentin Blake, text by Michael Rosen (Walker Books)

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(『悲しい本』)

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"The Whisperer" by Nick Butterworth (HarperCollins)

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"Guess Who's Coming for Dinner?" by John Kelly, text by Cathy Tincknell (Templar Publishing)

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(US版タイトルは"The Mystery of Eatum Hall")

"Jonathan Swift's “Gulliver”" by Chris Riddell, text by Martin Jenkins (Walker Books)

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(『ガリヴァー旅行記―ヴィジュアル版』)

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 今年は、初ノミネートが2人、2度目のノミネートが3人、常連が2人という構成で、内容的には、なじみ深い物語や伝承をモチーフとした作品が多い。
 "The Boat" の Ian Andrew は、初ノミネート。ノアの箱舟から発想を得た作品で、少年が老人を洪水から救おうとする話。灰色を基調として、光と影が見事に描き出されている。
 Russell Ayto は、"The Witch's Children"(『魔女の子どもたち』みはらいずみ訳/あすなろ書房。2004年やまねこ賞受賞作)に続く2度目のノミネート。"The Witch's Children and the Queen" では、スマーティーズ賞を受賞している。"One More Sheep" の内容は、今月号の「注目の本(未訳絵本)」を参照のこと。
 Simon Bartram も2度目のノミネート。"Dougal's Deep-sea Diary" の主人公は、前回ノミネートされた作品 "Man on the Moon" の主人公のいとこにあたる。1週間休暇をとった Dougal がダイビングを楽しむようすが日記に綴られている。海に沈んだという伝説のアトランティスを探し当てたところ……。色鮮やかな海の世界を楽しめる。
 本賞のほか数々の賞を受賞している大御所の Quentin Blake。すでに邦訳がでている "Michael Rosen's Sad Book"(『悲しい本』谷川俊太郎訳/あかね書房)は、カーネギー賞のロングリストにも選ばれている。この作品は、文章を担当した Michael Rosen 自身の息子を失った悲しみが、真正面から描かれている。
 "The Whisperer" の Nick Butterworth もまた、2度目のノミネート。双方の親から交際を禁じられたネコたちの恋の行方が、皮肉たっぷりなネズミによって語られる、ネコ版ウエスト・サイド・ストーリー。映画を観ているような臨場感を味わえる。
 もうひとりの初ノミネートは、自宅にたくさんのコンピュータがあるという、John Kelly。"Guess Who's Coming for Dinner?" では、コンピュータを使って生き生きとした絵を描いている。食事に招待されたブタとガチョウに、はたしてなにが起こったのか?
 日本では「崖の国物語」シリーズ(ポール・スチュワート作/唐沢則幸訳/ポプラ社)の挿絵で有名な Chris Riddell は、本賞のほかにスマーティーズ賞も受賞している実力派。"Jonathan Swift's “Gulliver”"(『ガリヴァー旅行記―ヴィジュアル版』原田範行訳/岩波書店)は、144ページというボリュームで Chris Riddell の絵を堪能できる絵物語だ。

(横山和江)

【参考】
▼カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞サイト
http://www.carnegiegreenaway.org.uk/

▼Mij Kelly の公式ウェブサイト
http://www.mijinyork.dsl.pipex.com/index.htm

▼Quentin Blake の公式ウェブサイト
http://www.quentinblake.com/

▼Michael Rosen の公式ウェブサイト
http://www.michaelrosen.co.uk/

▽カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞について
               (本誌1999年7月号情報編「世界の児童文学賞」)
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/1999/07a.htm#a1bungaku

▽カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞受賞作品リスト
                        (やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/uk/carnegie/index.htm
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/uk/greenawy/index.htm


※編集部より
 当クラブでは、特設掲示板にて「カーネギー賞&ケイト・グリーナウェイ賞候補作を読もう会」を開催中です。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/c-board/c-board.cgi?cmd=tpc;id=cg2005



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●注目の本(邦訳読み物)●

―― こぼれ落ちた7つめの涙はあったかい ――

『バスの女運転手』
ヴァンサン・キュヴェリエ作/キャンディス・アヤット画/伏見操訳

くもん出版 定価1,050円(税込) 2005.02 96ページ ISBN 4774308641
"La Chauffeuse de Bus" by Vincent Cuvellier, illustrations by Candice Hayat
Rouergue, 2002

 よけいなお世話だと言いたくなるような出だしで物語がスタートする。

あいつはくさい。おまけにブスだ。
 そしてすぐ目に飛び込んでくる絵は、オオカミのようなとんがった爪をした足。この冒頭は相当にインパクトがある。
 くさくてブスだといわれているのは、物語の主人公ベンジャマンが、毎日通学に利用するバスの女運転手、イヴェットだ。ある日、ベンジャマンは風邪をひいて具合が悪く、バスで眠り込んでしまう。「あたしのバスで、終点までねてたやつは、はじめてだよ」という、たぶんお褒めの言葉をいただいたベンジャマン。結局、その日1日、イヴェットと過ごすことになる。
 どのページにも物語と絵が絶妙に配置され、黒一色の太いインクのような線画が、ベンジャマンとイヴェットの気持ちの変化をよく描いている。女だけど本当は男じゃないかと噂されているイヴェットを、ベンジャマンは最初は怖がっていた。しかし、1日一緒にいることで、今まで知らなかった面が見えてくる。やっぱり人はつきあってみないとわからない。自分の仕事の合間に、知り合いである老人のめんどうを見ていることも知るベンジャマン。手助けが必要な人にごく自然にできることをしているイヴェットの姿は清々しい。食事の世話や掃除をするのを一緒に手伝い、イヴェットのつくるおいしいご飯をベンジャマンはぺろりとたいらげた。だんだん2人の間に親密な空気が流れ、イヴェットの思い出話をしみじみ聞くことになる。それまでの粗暴なイヴェットと違い、静かな表情で思い出話をするくだりは、読み手の私までしんみりしてしまう。その時ついこぼれたイヴェットの涙を、ベンジャマンがどう受け止めたのか。このシーンは私がこの本で一番好きなところだ。
 わが家の子どもたちにこの本を読んだ時、イヴェットの口悪さをおもしろがり大笑いしていた。その子どもたちも、イヴェットが思い出話を語るところでは黙って聞き入り、物語を受け止めていた様子は印象的だった。
 風邪のおかげで友情がめばえた2人。こういう風邪ならたまにはいいかも。

(林さかな)

 

【画】キャンディス・アヤット(Candice Hayat)

1976年、フランスのパリに生まれる。5歳のとき家族に「絵かきと発明家になる」と宣言するほど絵を描くことが好きだった。その言葉通り、美術学校に進学し、画家になる。本や、新聞、雑誌、広告の分野でイラストを発表し活躍している。

【訳】伏見操(ふしみ みさを)

1970年、埼玉県に生まれる。洋書絵本の卸会社に勤めていた時にたくさんの原書を読んだことが、いまの仕事につながっているという。主な訳書に『モモ、いったいどうしたの?』(ナジャ作/文化出版局)、『うんちっち』(ステファニー・ブレイク作/PHP研究所)、『ローラ うまれてくるあなたへ』(ベネディクト・ゲティエ作/朔北社)など。

【参考】
▼ヴァンサン・キャヴェリエの公式ウェブサイト
http://vincentcuvellier.free.fr/

▼キャンディス・アヤットのページ(Lerouergue 内)
http://www.lerouergue.com/jeunesse/hayat.html

 

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●注目の本(未訳絵本)●

―― 眠くならない羊の数え方、教えます ――

『ひつじが1ぴき』(仮題)
 ミジ・ケリー文/ラッセル・エイト絵
"One More Sheep" text by Mij Kelly, illustrations by Russell Ayto
Hodder Children's Books 2005, ISBN 0340805862 (PB)
32pp.

★2004年度ケイト・グリーナウェイ賞ショートリスト作品

  ある嵐の晩のこと。サムさんは、大事な羊たちを家の中に入れ、そろいの帽子とソックスで暖かくしてやると、大きなベッドに1列に並べて寝かせてやった。だが、待てよ。外は、ビュービューすごい風。おまけに、腹ぺこオオカミがうろついている。そんなところに1匹だって残してきてたら、大変だ。ちゃんと10匹そろっているか、たしかめないといけないぞ。ところがサムさん、「羊が1匹、羊が2匹……」と数え始めたと思ったら、あっという間に夢の中。やれやれ、いつもこうなんだよねえ……と、突然「ドンドンドン!」と玄関の扉を叩く音! 扉を開けると、そこには――羊がもう1匹? サムさんは「さあ、お入り」と両手を広げたが、羊たちは大あわて。「ちょっと待ってよ。あいつを中に入れるのは、ぼくたちをちゃんと数えてからにして!」さて、サムさんは眠らずに羊の数を数えることができるだろうか……?
 韻を踏んだリズミカルな文章と、サムさんと羊たち、羊どうしのユーモラスなやりとりが、単純なモチーフを粋なコメディーに仕立てている。そして、これまた明るく楽しいラッセル・エイトの絵が、ストーリーを大いに盛りたてる。
 しゃれた色づかいや、思わずくすりと笑わせる表情豊かなキャラクターも目を楽しませてくれるが、感心するのは画面構成のうまさだ。画面の区切り方や配置に凝らされた工夫がアニメーションのような効果を与え、ストーリーの流れやキャラクターの動き、緩急の変化を実にうまく演出していることに、見れば見るほど気づかされる。
 また、昨年の候補作『魔女の子どもたち』で感じられた五感への働きかけも、この作品では一層磨きがかけられているようだ。吹きすさぶ風の冷たさ、ふんわりとして暖かい布団の感触。ドンドン!と扉を叩く音には、こちらまで一緒に飛び上がりそうになる。
 職人的なサービス精神を感じるエンタテインメント絵本。ちょっとした〈仕掛け〉がついているのも、またうれしい。

(杉本詠美)

 

【文】Mij Kelly(ミジ・ケリー)

イギリス生まれ。ヨーク大学とスターリング大学で学び、辞書編集者、口述歴史の筆録者、コミュニティ新聞の編集者、人工知能専のジャーナリストなどさまざまな職業を経て、絵本を手がけるようになる。作品に、"William and the Night Train"(illustrations by Alison Jay)、"I Hate Everyone"(illustrations by Ruth Palmer)などがある。邦訳はまだない。

【絵】Russell Ayto(ラッセル・エイト)

イギリス生まれ。在学中は美術だけでなく科学にも興味があり、動物学者を目指していた。卒業後、いったんは臨床検査技師として病院に勤務したが、再び美術への関心が高まり、大学でグラフィックデザインを学びなおす。雑誌や一般書の表紙画などの仕事を経て、児童書の挿し絵を描くようになった。代表作は本誌今月号ケイト・グリーナウェイ賞候補作記事を参照のこと。

 

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●注目の本(未訳読み物)●

―― 殺人を犯してしまった少女の未来は ――

『JJは今』(仮題)
 アン・キャシディ作
"Looking for JJ" by Anne Cassidy
Scholastic Press 2004, ISBN 0439977126
304pp.

★2004年度カーネギー賞ショートリスト作品
★2004年ウィットブレッド賞児童書部門候補作
★2004年ブックトラスト・ティーンエイジ賞受賞作

  「ジェニファー・ジョーンズ(JJ)が釈放される」新聞は毎日のようにこのニュースを書きたてていた。10歳のときに同級生を殺害してしまったJJが、事件から6年たった今、違う名前を与えられ、別人として更正施設から出てくることが決まった。しかし、世間は彼女をそっと迎え入れてはくれなかった。マスコミをはじめ多くの人々が出所後のJJの居所を暴こうとしていた。
 クロイドンの町に住むアリスもJJのニュースを必ず読んでいる1人だった。大学入学も決まり、素敵な彼氏もいるごく普通の少女アリス。そんな彼女はなぜJJのニュースをそこまで気にするのだろうか。それには誰にもいえないアリスの秘密が関係していた。
 物語はJJの現在と過去が交互に語られる形で進んでいく。現在では、いつ正体がばれるのかという不安を抱えながら普通の生活をおくろうとするJJの姿が、過去では、寂しい少女時代と殺人にいたるまでの経緯が語られる。その内容はあまりに重く、読み続けるのが辛くなるほどだ。しかし、JJがどうなってしまうのか、過去にいったい何があったのかが知りたくて、途中で本を置くことはできなかった。
 作者は実際にあった10歳の少女が人を殺してしまった事件を覚えていて、幼いときに加害者になった子どもがその後どのような心理状態で暮らしているかに興味を持ち、この作品を書いたそうだ。被害者でなく加害者に焦点をあわせた内容のため、批判を受けたこともあったという。しかし、私は作者が加害者の心理を同情的に描いているとは感じなかった。あくまでも客観的に、罪を犯した少女が自分の重い過去を抱えながらも懸命に生きていこうとする姿を描いていると思えた。そこからは、犯した罪の大きさと過去への苦しみがより強く感じられた。だがそれと同時に、どんな過去を背負っていても未来は変えることができる、そんなメッセージも受け取った。
 子どもの犯罪のニュースを聞くことも増えた最近では、この作品はとても現実的で考えさせられる内容である。しかし、そんな今だからこそ多くの人に読んでもらいたいと思う作品だ。

(奈良久子)

 

【文】Anne Cassidy(アン・キャシディ)

銀行員や教師として働いた経験を持つ。30歳をすぎたころから執筆活動を始め、ティーンエージャー向けの作品を17冊ほど出版している。邦訳作品はまだない。イギリスのロンドンで、夫と一人息子と暮らしている。

 

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●賞速報●

★2004-2005年ビスト最優秀児童図書賞ショートリスト発表(受賞作の発表は6月2日)
★2005年金・銀のキス賞受賞作発表
★2005年MWA賞(エドガー賞)受賞作発表
★2005年ブランフォード・ボウズ賞ショートリスト発表(受賞作の発表は6月30日)
★2005年アガサ賞受賞作発表

海外児童文学賞の書誌情報を随時掲載しています。「速報(海外児童文学賞)」をご覧ください。



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●イベント速報●

★展示会、イベント情報

教文館 子どもの本のみせ ナルニア国「佐竹美保 原画展&サイン会」他
 

★セミナー・講演会情報

大阪YWCA専門学校「2005年度 子どもと子どもの本の講座」他
 
 
  詳細やその他の展示会・セミナー・講演会情報は、「速報(イベント情報)」をご覧ください。なお、空席状況については各自ご確認願います。

(清水陽子/井原美穂/笹山裕子)



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●世界のお祭り●第3回 メーデー〈五月祭〉(イギリス)
5月1日

 日本では労働者の日と知られている5月1日の「メーデー(May Day)」ですが、イギリスでは〈五月祭〉という春の祭典です。古代より人々は、この日、春の到来を祝い、無病息災と豊穣を願ってきました。起源については諸説があり、古代ローマの女神 Flora を讃える祭りが始まりだという説もあれば、アイルランドの守護神だった女神 Bride を祀るベルテンの祭りが始まりだという説もあります。どちらも自然の恵みや豊穣を祈るというだけでなく、若さや新しい生命の息吹を祝い、結婚や出産といった人間の性を礼賛した祭りでもありました。
 しかし、祭りの前夜に若い男女が森の中で日の出まで過ごし、供え物の花輪を作ってくるという儀式にみられるような「人間の性を礼賛した」部分が、ピューリタンによって厳しく非難されました。そのため、現在ではそのようなことは行われなくなり、子どもを中心としたお祭りになっています。子どもたちが、花を摘んで教会や石像に供えたり、メイポール(Maypole)と呼ばれる柱の周りでダンスをしたりする習慣などが受け継がれています。女の子たちの中からメイクィーン(May Queen)を選ぶこともあります。また、この日行われるモリスダンス(Morris Dance)も有名です。このダンスは、古くから英国の男子が行ってきた仮装舞踏の一種で、くるぶし飾りや腕輪などにつけた鈴で拍子をとって音楽に合わせて踊ります。だれもが楽しく遊び、おいしいものを一緒に食べて春をお祝いする日なのですね。
 では、五月祭が出てくる児童書にはどのようなものがあるのでしょうか。本を読んでもらうことで命を吹き込まれた人形が、人間とともに帆船で冒険の旅に出るお話、『ふしぎをのせたアリエル号』(リチャード・ケネディ作/中川千尋訳・絵/徳間書店)では、孤児院の子どもたちが、楽しそうな五月祭のピクニックをする様子が描かれています。

*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*

 五月のはじまりの日、五月祭のことです。聖アンナこどもの家の、日ざしがまぶしくふりそそぐ庭でも、こどもたちがうたったりおどったりして、メイポールのまわりをまわっていました。長いリボンの先をもって、わらったりぶつかったりしながら、くるりくるりまわっていくと、メイポールはしだいに、色とりどりのリボンをおりあげたうつくしい柱にかわります。

*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*

 このあと、子どもたちが食べるピクニックのごちそうは、読むだけでよだれが出そうなくらい魅力的です。また、『ジャッコ・グリーンの伝説』(ジュラルディン・マコーリアン作/金原瑞人訳/偕成社)に出てくるジャッコ・グリーンは、イギリスで五月祭のシンボルのひとつと考えられている「ジャック・イン・ザ・グリーン」のことです。この本には、他にも、五月祭の古い慣習がいろいろ出てきます。日本のメーデーとまったく違う五月祭をぜひ、児童書の中で楽しんでみてください。

(村上利佳/笹山裕子)

★参考ウェブサイト
ウィキペディア
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%83%87%E3%83%BC
OneStopEnglish.com(Festivals and Celebrations)
http://www.onestopenglish.com/Culture/festivals/may.htm#mayday

『ふしぎをのせたアリエル号』の情報をオンライン書店でみる

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●読者の広場●海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ!

このコーナーでは、海外児童書にまつわるお話、ご質問、ご意見等を募集しています。mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せください。
  • メールはなるべく400字以内で、ペンネームをつけてお送りください。
  • タイトルには必ず「読者の広場」とお入れください。
  • 掲載時には、趣旨を変えない範囲で文章を改変させていただく場合があります。
  • 回答も読者のみなさまから募集し、こちらに掲載させていただきます。編集部からメールでの回答はいたしませんので、ご了承ください。


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◆次号予告は毎月10日頃、やまねこ翻訳クラブHPメニューページに掲載します。◆

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●編集後記●

今月はたくさんの児童文学賞の発表がありました。当クラブではこれから7月のカーネギー賞とケイト・グリーナウェイ賞発表まで、受賞作予想で盛り上がりそうです。ぜひ特設掲示板にもお越しください。(た)

発 行: やまねこ翻訳クラブ
発行人: 井原美穂(やまねこ翻訳クラブ 会長)
編集人: 竹内みどり/赤塚きょう子(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
企 画: 井原美穂 蒲池由佳 菊池由美 笹山裕子 清水陽子 杉本詠美 
奈良久子 早川有加 林さかな 村上利佳 横山和江
協 力: 出版翻訳ネットワーク 管理人 小野仙内
ながさわくにお
html版担当 ワラビ

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