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2008年2月号
   =====☆                    ☆=====
  =====★   月 刊  児 童 文 学 翻 訳   ★=====
   =====☆   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ☆=====
         Yamaneko Honyaku Club 10th Anniversary
                                 No.97
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児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、電子メール版情報誌
http://www.yamaneko.org                         
編集部:mgzn@yamaneko.org     2008年2月15日発行 配信数 2500 無料
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●2008年2月号もくじ●
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◎注目の本(邦訳絵本):『タトゥとパトゥのへんてこマシン』
       アイノ・ハブカイネン、サミ・トイボネン文・絵/いながきみはる訳
◎注目の本(邦訳読み物):『ユゴーの不思議な発明』
                   ブライアン・セルズニック作/金原瑞人訳
◎注目の本(未訳読み物):"Eggs" ジェリー・スピネッリ作
◎世界の本棚(スペイン語):"Finis Mundi" ラウラ・ガジェゴ・ガルシア作
◎賞速報
◎イベント速報
◎世界のお祭り:第12回 カーニバル〈謝肉祭〉(世界各地)
◎読者の広場

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●注目の本(邦訳絵本)●こどもによる、こどものための大発明
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『タトゥとパトゥのへんてこマシン』
アイノ・ハブカイネン、サミ・トイボネン文・絵/いながきみはる訳
偕成社 定価1,260円(税込) 2007.10 32ページ ISBN 978-4033480206
Amazonで詳細を見る  bk1で詳細を見る
"Tatun ja Patun oudot kojeet" by Aino Havukainen and Sami Toivonen
Otava, 2005

「これは試してみたいぞ」。本書のページをめくりながら、この言葉が何度も私の口
から飛び出した。天才こども発明家、タトゥとパトゥが考え出した14個のおもしろマ
シンは、どれもとびきりユニークで、読者の好奇心をおおいに刺激してくれるのだ。
 たとえば「人ごみライフジャケット」。迷子になったら、ジャケットのレバーを引
けばいい。えりの部分から、こどもの顔に似せた巨大な風船が飛び出して、人込みの
中でも簡単に居場所を見つけてもらえる仕組みだ。大人のための迷子対策グッズと思
うなかれ。迎えを待つ間も退屈しないように、ジャケットには漫画本やお菓子を仕込
んでおく場所がちゃんとある。「こどもたちにとって快適で楽しいものを」、それが
タトゥとパトゥの発明品に共通する開発コンセプトなのである。
 この作者たちの特徴であるコミック風でポップな絵は、発明のおもしろさを表現す
るのにぴったりだ。どのページにも、発明品の解説図と使い方の実例が細かく描かれ
ていて、何度見ても新しい発見があり、読者はうれしくなってしまう。そして、自分
が実際にマシンを使うところを想像し、わくわくしてくる。
 体の毛を増やすマシン「増毛ヘルパー」は、鏡を見たパトゥが、つるつるの顔なん
てつまらないと考案したもの。体中を毛むくじゃらにして楽しめるし、ひげを生やせ
ば大人の会議に出て意見もいえる。国連の会議まで視野に入れつつ、愉快に遊んでし
まおうというアイディアには脱帽である。タトゥとパトゥのマシンは、「毎日、楽し
く遊びたい!」「もっとおもしろいことをしたい!」という世界中のこどもたちの願
いを形にしたものだ。楽しく生きることは、こどもにとって、そして大人にとっても、
いちばん大切なことだと、ユーモアたっぷりのこの本は思いださせてくれる。
 タトゥとパトゥの兄弟を主人公にした、フィンランドで高い人気を誇るシリーズの
初邦訳。シリーズ最新作が2007年のフィンランディア・ジュニア賞(下記参照)を受
賞し、タトゥとパトゥも、兄弟を生んだ作者2人も、ますます注目されている。今後、
両コンビの日本での活躍が楽しみだ。

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【文・絵】アイノ・ハブカイネン(Aino Havukainen)、サミ・トイボネン(Sami
Toivonen):妻のハブカイネン(1968年生まれ)と夫のトイボネン(1971年生まれ)
のコンビ。絵本、読み物の挿絵、グラフィックデザインなどさまざまな分野で、夫婦
の共同作業による作品を発表している。2001年に児童書の挿絵が対象のルドルフ・コ
イヴ賞(下記参照)を受賞した。本書が初の邦訳作品。

【訳】いながき みはる(稲垣美晴):1952年東京生まれ。東京芸術大学卒。『サン
タクロースと小人たち』(偕成社)をはじめ、フィンランドを代表する絵本作家マウ
リ・クンナスの作品を数多く翻訳している。訳書にはほかに『子うさぎヌップのふわ
ふわふとん』(タルリーサ・ヴァルスタ文・絵/あかね書房)など。主な著書に、留
学体験を綴ったエッセイ『フィンランド語は猫の言葉』(文化出版局)がある。

【参考】(▼はフィンランド語)
▼フィンランディア・ジュニア賞受賞作一覧
(フィンランド児童文学研究所 Suomen Nuorisokirjallisuuden Instituutti 内)
http://www.tampere.fi/kirjasto/sni/snpalk13.htm

▽フィンランディア・ジュニア賞について(本誌2007年12月号「世界の本棚」)
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2007/12.htm#bungaku1

▽ルドルフ・コイヴ賞について(本誌2007年2月号「世界の児童文学賞」番外編)
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2007/02.htm#kikaku

                               (古市真由美)

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●注目の本(邦訳読み物)●絵と文字による、かつてないコラボの形
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『ユゴーの不思議な発明』 ブライアン・セルズニック文・絵/金原瑞人訳
アスペクト 定価2,800円(税込) 2008.01 542ページ ISBN 978-4757214262
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"The Invention of Hugo Cabret" by Brian Selznick
Scholastic, 2007
Amazonで詳細を見る
★2008年コールデコット賞受賞作品
★2007年全米図書賞児童書部門最終候補作品

 絵本でもなく、挿絵つきの物語でもない、まったく新しい本が生まれた。
 物語は映画のフィルムをコマ送りしたような絵からはじまる。暗闇に昇る太陽、街、
駅、やがて駅の構内を走っていくひとりの少年が姿を現す。この物語の主人公ユゴー
だ。舞台は1930年代のパリ、12歳の孤児ユゴーは駅の中に隠れ住み、駅じゅうの時計
の管理をしている。仕事の傍ら、ユゴーはたびたび駅構内の売店からぜんまいじかけ
のおもちゃを盗み出す。悪いことだと知りながら、盗みをくりかえすには理由がある。
不慮の事故で亡くなった父親の形見である、からくり人形を修復するためだ。“から
くり男”を再び動かすことができれば、きっと父親のメッセージを伝えてくれるはず、
ユゴーはそう信じていた。そしてどういうわけか、売店の主人である偏狭な老人が作
るおもちゃの部品は、どれもからくり男にぴったりなのだ。だがある日、ユゴーはと
うとう老人につかまってしまう。はたしてからくり男は完成するのか? 父親のメッ
セージとは? 不思議な少女イザベルとの出会いの行方は? やがてさまざまな謎は、
売店の老主人の過去へとつながり、物語は思わぬ方向へ転がっていく。
 160ページあまりのテキストと350ページ以上の絵が、絵、絵、絵、文、文、絵、そ
してまた絵と、ランダムなリズムでつむぐ物語。ときにはテンポよく、ときにはゆっ
たりと。絵と文が混在するページは1枚もない。まるでふたつの異なる楽器が掛け合
いで演奏するかのように、両者はそれぞれのパートを交互に奏でながら、けっして
「読み」を分断することなく、見事なまでの一体感をもって、読者を物語の中へと引
きこんでいく。時計塔の上で夜のしじまにきらめくパリの街をみおろしながら、ユゴ
ーがイザベルに語る言葉が印象的だ――世界ってひとつの巨大な機械だと思わない?
機械にはひとつとしていらない部品なんかない。きみも、ぼくも何か理由があってこ
こにいるんだ……時はけっして止まらない。だれがどんなにのぞんでも。
 繊細なタッチで描かれた美しい鉛筆画、詩情あふれる文章を心ゆくまで堪能してほ
しい。児童文学に新境地を開いたブライアン・セルズニックに大きな拍手を!

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【文・絵】ブライアン・セルズニック(Brian Selznick):1966年、米国ニュージャ
ージー州生まれ。ロードアイランド・スクール・オブ・デザインに学び、卒業後、書
店で働きながら、創作活動をはじめる。邦訳作品に『アナベル・ドールの冒険』(ア
ン・M・マーティン&ローラ・ゴドウィン作/三原泉訳/偕成社)、『ウォーターハ
ウス・ホーキンズの恐竜』(バーバラ・ケアリー作/千葉茂樹訳/光村教育図書)が
ある。

【訳】金原瑞人(かねはら みずひと):1954年、岡山県生まれ。法政大学社会学部
教授、翻訳家。「バーティミアス」シリーズ(ジョナサン・ストラウド作/松山美保
共訳/理論社)、『火を喰うものたち』(デイヴィッド・アーモンド作/河出書房新
社)など、多数の邦訳作品がある。

【参考】
▼ブライアン・セルズニックへのインタビュー(Scholastic 内)
http://www.kidsreads.com/authors/au-selznick-brian.asp

▼"The Invention of Hugo Cabret" 作品公式ウェブサイト
http://www.theinventionofhugocabret.com/index.htm

▽ブライアン・セルズニック作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/author/s/bslznck.htm

▽金原瑞人訳書リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/int/ls/mkaneha9.htm

▽全米図書賞児童書部門受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/us/nba/index.htm

                                (相山夏奏)

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●注目の本(未訳読み物)●ハートウォーミングでパワフルな友情物語
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『エッグズ』(仮題) ジェリー・スピネッリ作
"Eggs" by Jerry Spinelli
Little, Brown and Company, 2007 ISBN 978-0316166461
220pp.
Amazonで詳細を見る

 表紙を見るとタイトルがない。あるのは作者の名前と卵の写真だけ。6つの卵が行
儀よく、青い紙パックの中にならんでいる。卵の話? そう、この本は卵のような少
年と少女の物語である。
 9歳のデイビッドは、母親を不慮の事故で亡くし、祖母の家に越してきたばかり。
心が荒れていて、祖母にはいたって反抗的だ。そんなデイビッドが、ひょんなことか
ら13歳のプリムローズと出会った。エネルギッシュなプリムローズは、自称霊能者で
シングルマザーの母親が疎ましくて仕方ない。プリムローズに挑発され、デイビッド
は夜な夜な無断外出するようになる。ゴミ収集所をまわってフリーマーケットで売れ
そうなものを拾ったり、修理工ジョンの家でテレビの深夜番組をみたり、はたまた大
ミミズ捕りに出かけたり。挙げ句の果てに、無謀な徒歩旅行まで! 年齢差も性差も
超えて、ふたりは友情を深めていく。
 家庭に問題を抱える主人公たちの心は、孤独と怒りといら立ちでいっぱいだ。デイ
ビッドの祖母に対する意地の悪さや、プリムローズの口の悪さには閉口する。だがふ
たりが発する不機嫌パワーは、ユーモラスな会話でうまく包みこまれ、暗さはみじん
もない。まるで姉弟のように憎まれ口をたたき合う様子には、思わず笑いがもれる。
心が痛むところもあれば、じわっと温かくなるところもあり、読後はさわやか、元気
のでる物語だ。
 卵といえば、もろく繊細、未来を秘めた生命の源である。デイビッドとプリムロー
ズは割れかけた卵だった。だがそれぞれの抱える孤独と痛みを共有することで、心の
傷は癒されていく。友情の力のなんと偉大なことか。また、ふたりを陰で支える修理
工ジョンの存在も大きい。家庭内に居場所のない主人公たちが、やすらぎを得られた
のは、ジョンが無条件で受け入れてくれたからだ。裏表紙にあるひび割れた卵には、
しっかりとばんそうこうが貼られている。少しくらい割れても、卵はちゃんと修復で
きるのだ。主人公たちのように、複雑な家庭環境の中で傷ついている子どもは、現実
にもたくさんいるだろう。願わくは、ひびの入った卵たちがすてきな「ばんそうこう」
に出会えますように。

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【作】Jerry Spinelli(ジェリー・スピネッリ):1941年米国ペンシルベニア州生ま
れ。1990年 "Maniac Magee"(『クレージー・マギーの伝説』菊島伊久栄訳/偕成社)
でニューベリー賞を受賞。ニューベリー賞オナーに選ばれた "The Wringer"(『ひね
り屋』千葉茂樹訳/理論社)、ゴールデン・カイト賞受賞の "Milkweed"(『ミルク
ウィード 天使の羽のように』千葉茂樹訳/理論社)など、多数の著書がある。

【参考】
▼ジェリー・スピネッリ公式ウェブサイト
http://www.jerryspinelli.com/

▼ジェリー・スピネッリへのインタビュー(Debbi Michiko Florence による)
http://www.debbimichikoflorence.com/author_interviews/2007/SpinelliUpdate07.html

▽ジェリー・スピネッリ作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/author/s/jspinell.htm

                                (佐藤淑子)

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●世界の本棚(スペイン語)●少年たちの勇気は、世界を闇から救えるか?
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『フィニス・ムンディ――世界の終わり――』(仮題)
ラウラ・ガジェゴ・ガルシア作
"Finis Mundi" by Laura Gallego Garcia
Ediciones SM, 1999 ISBN 978-8434870116(Spain)
252pp.
Amazonで詳細を見る

「〈黄金の町〉はどこか、知りませんか?」
 997年、吟遊詩人の青年マティウスは、法衣をまとった少年に尋ねられた。修行僧
のミシェルだと名乗る少年は、修道院で古書を書き写す仕事をしていた。そのとき見
た書物に、1000年に世界は終末を迎えると予言が書いてあったのだという。それを避
けるためには、ミレニアムを迎える前に「時の車輪」を支える「現在」「未来」「過
去」の3本の軸を集め、時の精霊を召還せねばならない。予言書によると、「現在」
の軸のありかが〈黄金の町〉なのだ。
 途方もない話にマティウスは戸惑い、世界の終末をただの噂だと否定しながらも、
ミシェルの言葉をヒントに、〈黄金の町〉は神聖ローマ帝国のアーヘンではないかと
推測する。修道院育ちで俗世をよく知らないミシェルを心配し、マティウスは同行す
ることにした。
 こうして始まった冒険の旅には、さまざまな危険が待ち受けていた。キリスト教世
界の滅亡を望む反キリスト教結社につけ狙われ、暗殺者が行く先々に現れる。盗賊や
ヨーロッパを侵略するイスラム教徒の一団にも襲われ、危機また危機が続く。そんな
中、ルシアという少女がマティウスに弟子入りし、心強い旅の仲間となるが、ミレニ
アムは刻一刻と近づいてくる。3人は、はたして世界の終末を阻むことができるのだ
ろうか。
 本書は歴史を下敷きにしたファンタジー小説だ。今から1000年以上も昔の中世ヨー
ロッパが舞台というと、古くさくて親しみにくい物語だと思われるかもしれない。し
かし、主人公たちの機知に富んだ行動や、そんな彼らを導くかのような、不思議な力
が見せるあっと驚く展開に、私はすっかり引き込まれてしまった。
 人知を超える使命を果たそうとしても、ミシェルたちは生身の人間だ。残忍な光景
を目の当たりにして何もできず、打ちひしがれて涙を流すこともある。「この世は美
しいものやいいことばかりではない。それでも救う価値があるのか?」という幾度か
の問いかけにも、ミシェルの信念は決して変わらない。その思いが現在も人々の心に
あるからこそ、今この世界が存在するのだと信じたい。

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【作】Laura Gallego Garcia(ラウラ・ガジェゴ・ガルシア):1977年スペイン、バ
レンシア近郊で生まれる。11歳から創作を始めた。バレンシア大学在学中に執筆した
本書で1998年のバルコ・デ・バポール賞(下記参照)を受賞し、作家としてデビュー。
現在に至るまで、数々の長編ファンタジー小説を発表し続け、スペインの子どもたち
の人気を集める。本年3月に、初の邦訳作品『漂泊の王の伝説』(松下直弘訳/偕成
社)が出版される予定。

【参考】
▼ラウラ・ガジェゴ・ガルシア公式ウェブサイト(スペイン語)
http://www.lauragallego.com/

                                (井原美穂)

【バルコ・デ・バポール賞(Premio barco de vapor)について】
 1978年にスペインの児童書出版社の SM 社(Ediciones SM)とサンタ・マリア財団
(Fundacion Santa Maria)により創設。作者の国籍や経歴は不問で、未発表かつ40
ページ以上の児童向けの物語を公募し、選出する。受賞作は主催の会社から出版され
る。歴代の受賞作家に、コンスエロ・アルミホ(1978年)、ジョアン・マヌエル・ジ
ズベルト(1990年、2000年)がいる。

【特殊文字】
「Garcia」:「i」の上にアクセント(')がつく
「Fundacion」:「o」の上にアクセント(')がつく
「Maria」:「i」の上にアクセント(')がつく

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●賞速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★2008年MWA賞(エドガー賞)児童図書部門/ヤングアダルト小説部門候補作発表
                         (受賞作の発表は5月1日)
★2007年度ローカス賞推薦作品発表
  (読者投票受付は4月15日迄、ファイナリスト発表は4月、受賞作発表は6月)
★2008年チルドレンズ・ブック賞候補作発表(受賞作の発表は5月30日)

 海外児童文学賞の書誌情報を随時掲載しています。「速報(海外児童文学賞)」を
ご覧ください。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=award

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●イベント速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★展示会情報
 大丸ミュージアム・東京「ジョン・バーニンガム絵本原画展」など

★講座・講演会情報
 出版文化産業振興財団主催「読書支援講座 10代の読書はおもしろい!」
 大阪国際児童文学館主催「10代の子どもの読書を考える」など

★イベント情報
 教文館 子どもの本のみせ ナルニア国「大人のためのアンデルセンおはなし会」
 国立国会図書館国際子ども図書館
「子どものための絵本と音楽の会 くるみわり人形」など

 詳細やその他のイベント情報は、「速報(イベント情報)」をご覧ください。なお、
空席状況については各自ご確認願います。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=event

                                (笹山裕子)

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●世界のお祭り●第12回 カーニバル〈謝肉祭〉(世界各地) 2月
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 冬の寒空を吹き飛ばすような華やかなカーニバルの様子が、今年も世界の各地から
伝えられるようになりました。カーニバルは、主にローマ・カトリックの国々で見ら
れるにぎやかなお祭りで、復活祭前の準備期間である四旬節の前に行われます。四旬
節は、日曜日をのぞく40日間、イエス・キリストの受難を思い起こし、派手なふるま
いや肉食を控える期間なので、その前に祝宴を開き肉を食べるようになったのが始ま
りだそうです。カーニバルという言葉はラテン語で肉を取り去るという意味の「カル
ネム・レウァーレ」が語源とされ、日本では「謝肉祭」と訳されています。
 カーニバルといえば、ブラジルのリオデジャネイロのものが有名ですが、それぞれ
の国で土着の農耕祭などと結びついたため、さまざまなバリエーションがあります。
身分に関係なくお祭りを楽しめるようにと、仮面をつけたり仮装したりすることが多
いようです。たとえば、アメリカのニューオーリンズでは、マルディ・グラと呼ばれ
る最終日に毎年世界じゅうから多くの観光客が集まり、派手なフロート(山車)や仮
装した人びとによるパレードを楽しみます。
 イタリアのベネチアでは、サンマルコ広場に大きなステージが設けられ、ショーが
繰り広げられるほか、仮面をつけた人びとが町じゅうを練り歩き、独特の雰囲気に包
まれます。一方、イタリア北部のイヴレーアという町では、馬車の上の兵士に向かっ
てオレンジを投げつける「オレンジ合戦」が3日間にわたって行われるそうです。
 イギリスでは、パンケーキを盛大に食べる「パンケーキ・デイ」があります。これ
は四旬節の前に卵や牛乳を食べつくすために始まったようです。ドイツのケルンのカ
ーニバルでは、おとぎの馬車などが繰り出して、集まった人びとにお菓子が投げられ
ます。
 いつもの町が夢のような世界に変わるカーニバルは、子どもたちにとっても楽しみ
なお祭りで、絵本や読み物にも多く登場します。時空を越え世界を旅する物語『スト
ラヴァガンザ――仮面の都』(メアリ・ホフマン作/乾侑美子訳/小学館)のエピロ
ーグは文字通り「カーニヴァル」と名づけられ、仮面をつけ、きらびやかな服を身に
つけた人びとが通りを踊り歩き、真夜中まで浮かれ騒ぐ様子が描かれています。
 また、レオ・レオニの絵本『みどりのしっぽのねずみ――かめんにとりつかれたね
ずみのはなし』(谷川俊太郎訳/好学社)では、森で平和に暮らしていた野ねずみた
ちが、町からやってきたねずみにマルディ・グラの話を聞いて、自分たちも仮面をか
ぶってパレードや舞踏会を開く、このような場面があります。

*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*
みんなは おどった、うたった、そしてたのしんだ、つきが そらの いちばん た
かい ところに のぼるまで。
それから みんな くらい しげみの なかに かくれ、かめんを つけた。きのみ
きや、いわの うしろから、おそろしい うなりごえや、さけびや、かなきりごえを
あげて、こわがらせあい、するどいはと きばで、おどしあった。
*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*

 この野ねずみたち、仮面をつけているうちに、いつしか本来の自分たちの姿を忘れ
てしまい、憎しみあい疑いあうようになってしまいます。ミステリアスでわくわくす
る仮面も、お祭りの間だけつけているからこそ、楽しいもののようですね。

★参考文献
『日本大百科全書』(小学館)
"Encyclopaedia Britannica"
『イタリア四季の旅』(田之倉稔著/東京書籍)
ベネチア市公式ウェブサイト(英語)
http://www.comune.venezia.it/flex/cm/pages/ServeBLOB.php/L/EN/IDPagina/1

                           (笹山裕子/村上利佳)

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●読者の広場●海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ!
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 このコーナーでは、本誌に対するご感想・ご質問をはじめ、海外児童書にまつわる
お話、ご質問、ご意見等を募集しています。mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せ
ください。

※メールはなるべく400字以内で、ペンネームをつけてお送りください。
※タイトルには必ず「読者の広場」とお入れください。
※掲載時には、趣旨を変えない範囲で文章を改変させていただく場合があります。
※質問に対するお返事は、こちらに掲載させていただくことがあります。原則的に編
集部からメールでの回答はいたしませんので、ご了承ください。

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 本誌でご紹介した本を、各種のインターネット書店で簡単に参照していただけます。
こちらの「やまねこ翻訳クラブ オンライン書店」よりお入りください。
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◆次号予告は毎月10日頃、やまねこ翻訳クラブHPメニューページに掲載します。◆
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●編集後記●『ユゴーの不思議な発明』は、絵本を対象とするコールデコット賞が、
初めて「読み物」作品に賞を授与したと話題になりました。スコセッシ監督による映
画化も決まり、原作の世界がどのように動き出すのか、完成が楽しみです。(お)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発行人 かまだゆうこ(やまねこ翻訳クラブ 会長)
編集人 大原慈省/井原美穂(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
企 画 相山夏奏 かまだゆうこ 児玉敦子 笹山裕子 佐藤淑子 冬木恵子
    古市真由美 村上利佳
協 力 出版翻訳ネットワーク 管理人 小野仙内
    さかな タイ ながさわくにお
    html版担当 ハイタカ
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