メニュー「月刊児童文学翻訳」バックナンバー>2015年2月号号外   オンライン書店


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号外
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  =====◆   月 刊  児 童 文 学 翻 訳   ◆=====
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                                     #23
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児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、電子メール版情報誌
http://www.yamaneko.org/                        
編集部:mgzn@yamaneko.org     2015年2月6日発行 配信数 2540 無料
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●号外 もくじ●
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◎速報1:2015年 ニューベリー賞コールデコット賞プリンツ賞発表!!
◎速報2:2014年度 コスタ賞児童書部門発表!!
◎賞速報
◎イベント速報

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●速報1●2015年 ニューベリー賞/コールデコット賞/プリンツ賞発表!!
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 2月2日朝8時(現地時間)よりシカゴにて、アメリカで最も権威ある児童文学賞、
ニューベリー賞/コールデコット賞の発表が行われた。これらの賞は、米国図書館協
会(ALA:American Library Association)が、前年にアメリカで出版された子どもの
本の中で、最も優れた作品に対して贈るものである。
 同時に、ヤングアダルト(YA)作品を対象とするマイケル・L・プリンツ賞の発
表も行われた。この賞の主催は米国図書館協会(ALA)のヤングアダルト部門
(YALSA: Young Adult Library Services Association)である。

▼ALA 公式ウェブサイト
http://www.ala.org/home/

▼YALSA 公式ウェブサイト
http://www.ala.org/yalsa/

▼各賞の受賞作品・オナー(次点)一覧ページ(ALA内)
http://www.ala.org/news/press-releases/2015/02/american-library-association-
announces-2015-youth-media-award-winners

▼ALA Youth Media Awards ウェブキャスト
           (発表の様子がオンタイムで流された。現在も視聴できる)
http://live.webcastinc.com/ala/2015/live/

 各賞の受賞作品、およびオナー作品は以下の通り。

【ニューベリー賞】(作家対象)

 ★Winner
 "The Crossover" by Kwame Alexander (Houghton Mifflin Harcourt)
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 ☆Honor Books(2作)
 "El Deafo" by Cece Bell (Amulet Books)
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 "Brown Girl Dreaming" by Jacqueline Woodson (Nancy Paulsen Books)
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 2015年ニューベリー賞の栄誉は、Kwame Alexander の "The Crossover" に贈られ
た。バスケットボールプレーヤーとして優れた才能を持つ双子の兄弟 Josh と
Jordan。12歳の Josh の独白で語られる本作は、バスケットボールの試合を軸に描か
れた家族の物語だ。バスケットコートの中と外で成長していく双子の姿を通し、ルー
ルを破ることで支払わなければならなかった大きな代償とその後の家族の再生を、ス
ポーツのもつ高揚感そのままにスリリングに描いている。タイトルのクロスオーバー
とはバスケット用語で、ディフェンスを抜き去るために、左右に揺さぶりをかける動
きであるが、ジャズやポップス、ロックなどのジャンルを超えて融合する音楽の意味
も持つ。型にとらわれないさまざまな様式の詩で物語を描きたかったという作者の思
いの通り、詩的で韻をふむ文体はラップのようなビートをつむぎ、普段は本を手に取
らないような若者たちからも多くの支持を集めた。Alexander は、脚本家としても活
躍。また、作家とアーティストの代表団として世界各地の学校を訪問し、ワークショ
ップを開くなど、その活動は多岐にわたる。
 オナーには2作品が選ばれた。Cece Bell の "El Deafo" は、ニューベリー賞とし
てはめずらしいグラフィックノベルでのオナー入選となった。El Deafo とは作者の
幼いころのあだ名であり、病気により聴力を失ったことを描いた自伝的作品だ。コミ
カルな画風の本作は、ウサギの耳のついた女の子が主人公となり、思春期の友情の難
しさや楽しさを親しみやすくリアルに伝えている。学校では大きな箱型の補聴器を首
から下げなくてはならない主人公。ただでさえ困難な友達作りは、一喜一憂、なかな
か一筋縄ではいかない。その素直で率直な心の動きには、聴こえる聴こえないにかか
わらず誰もが共感を寄せることだろう。前向きな生き方にエールを送るうち、気付け
ば勇気と大きなパワーをもらっている、そんな1作だ。
 "Brown Girl Dreaming" は、2014年全米図書賞児童書部門で受賞を果たした
Jacqueline Woodson の作品。作者の自伝的小説である本作は、まだ人種差別が色濃
く残る1960年代〜70年代に、アフリカ系米国人として大人になるということがどうい
うことかを、鮮やかな詩でつづったものだ。字を読むこともままならなかった少女は、
自分の居場所を探すうち、物語を書くことに出会う。作中の詩はどれも親しみやすく
情感にあふれ、才能ある作家と評される Woodson のはじまりを予感させる。物語を
愛する心は、いつの時も作者とともにあり、その人生を輝かせてきたことを教えてく
れる。
 今年選ばれた3作は、どれも、どう生きるかを問いかけるような力強いメッセージ
のつまったものが並んだ。今後、どの作品がどのような形で日本で紹介されていくの
か、出版動向が楽しみになるラインアップだ。

《参考》
▼ニューベリー賞公式ウェブサイト
http://www.ala.org/alsc/awardsgrants/bookmedia/newberymedal/newberymedal

▼Kwame Alexander 公式ウェブサイト
http://www.bookinaday.org/

▼Cece Bell 公式ウェブサイト
https://cecebell.wordpress.com/

▼Jacqueline Woodson 公式ウェブサイト
http://www.jacquelinewoodson.com/

▽ニューベリー賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/us/newbery/index.htm

▽ジャクリーン・ウッドソン作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/author/w/jwdsn.htm

                                (岡田衣央)


【コールデコット賞】(画家対象)

 ★Winner
 "The Adventures of Beekle: The Unimaginary Friend" by Dan Santat
                         (Little, Brown and Company)
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 ☆Honor Books(6作)
 "Nana in the City" by Lauren Castillo (Clarion Books)
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 "Sam & Dave Dig a Hole" illustrated by Jon Klassen, written by Mac Barnett
                             (Candlewick Press)
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 "The Noisy Paint Box: The Colors and Sounds of Kandinsky's Abstract Art"
     illustrated by Mary GrandPre(「e」の上にアクセント記号(´)がつく)
                written by Barb Rosenstock (Alfred A. Knopf)
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 "The Right Word: Roget and His Thesaurus"
             illustrated by Melissa Sweet, written by Jen Bryant
                     (Eerdmans Books for Young Readers)
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 "Viva Frida" by Yuyi Morales (Roaring Brook Press)
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 "This One Summer" illustrated by Jillian Tamaki, written by Mariko Tamaki
                               (First Second)
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 コールデコット賞は "The Adventures of Beekle: The Unimaginary Friend" が獲
得した。子どもたちはよく空想の友達を作り出して遊ぶ。この物語はその空想上の友
達がくらす島から始まる。そこで生まれた Beekle は現実の子どもたちに想像される
のを待っていた。想像されるとその子のところに行って友達になれるのだ。ずっと待
って待ちくたびれ、ついには自分で相手をさがそうと旅立った──。全てのページが、
よく吟味されて描き出された作品で、この少しややこしい世界観を子どもにすんなり
理解させ、話の中に引き込んでゆく。読み手は Beekle と一緒にがっかりしたり期待
したりして、最後は友達と楽しく過ごす満ちたりた心持ちになる。何度も読み返す子
どもが多い本だそうだが、納得である。作者の Dan Santat は日本ではあまり知られ
ていないが、米国では "The Guild of Geniuses" など多くの絵本を出版し、ディズ
ニーのテレビアニメ "The Replacements"(「ザ・リプレイス 大人とりかえ作戦」)
の制作も手がけた、活躍めざましいクリエイターだ。
 オナーは6作品が選ばれた。うち2作品が物語絵本、3作品が伝記絵本、1作品が
グラフィックノベルである。
 "Nana in the City" は、都会に住むおばあちゃんを訪ねる男の子のおはなしだ。
大都会の喧騒をこわがる男の子に、おばあちゃんは「明日はきっといい日になる」と
約束する。次の日、おばあちゃんの優しさと機転が男の子の心を後押しする。男の子
は都会とどう向き合うのだろう。作者の Lauren Castillo の輪郭のはっきりした素
朴な絵が、この小さな挑戦の物語に、安心感を添えている。この本を読んだ子どもた
ちが何かに挑戦するときにも、力を貸してくれそうだ。
 もうひとつの物語絵本 "Sam & Dave Dig a Hole"(『サムとデイブ、あなをほる』
(マック・バーネット文/なかがわちひろ訳/あすなろ書房)は、一昨年に本賞を受
賞した Jon Klassen による楽しい絵本だ。おじいちゃんの家の庭に穴を掘る Sam と
Dave。2人はただただ穴を掘っているのだが、彼らに見えない土の中の様子を、イラ
ストが読者に教えてくれる。すぐそばに宝石があるのに気づかない2人と気づいてい
る犬の対比など、子どもが喜びそうな物が、ふんだんにちりばめられている。文は
"Extra Yarn"(『アナベルとふしぎなけいと』なかがわちひろ訳/あすなろ書房)で
も Klassen とタッグを組んだ Mac Barnett が手がけている。
 続いて伝記絵本3作品を紹介する。
 "The Noisy Paint Box: The Colors and Sounds of Kandinsky" は、抽象絵画の創
始者とも言われる ワシリー・カンジンスキーが画家になってスタイルを確立するま
でを描いている。少年期に画材をもらってから、彼は音を聞くと色が見えると感じる
ようになる。そこで、聞こえた色から絵を描いてみるが、周囲には理解されず、絵か
ら遠ざかった。後に法律家になったが、オペラを聞いて色があふれ出す感覚をどうし
ても描きたくなり、再び絵筆をとる。Mary GrandPre は絵とコラージュを用いて、絵
と音の両方を見えるように表現している。カンジンスキーの生涯を伝えるだけでなく、
抽象画を味わうヒントをくれる作品だ。
 "The Right Word: Roget and His Thesaurus" はシソーラスをはじめて作ったピー
ター・マーク・ロジェの伝記絵本だ。リスト作りが大好きだったロジェは、自分の知
っていることや経験したことをリストにし、8歳でそれを本にした。やがて言葉を分
類してリストを作ることに熱中し、それがそのままライフワークとなる。医師になっ
てからも分類はずっと続き、やがて日の目を見ることとなる。イラストの Melissa
Sweet は本作品で立体的なコラージュを活用してロジェの知識のイメージを見せてい
る。広がりだけでなく、深い奥行をもって感じられ、圧倒される。
 "Viva Frida" はメキシコの画家、フリーダ・カーロをモチーフにした絵本で、彼
女の人生と作品を讃えるオマージュとなっている。散文詩のような言葉は、フリーダ
の視点で書かれており、彼女がその生涯で大切にしていた事柄を伝える。太いゴシッ
ク体の英語のテキストの背後に、うっすらとスペイン語が添えてある。Yuyi Morales
は人形を撮影した写真と絵を効果的に用いて、とても上品なページを作り上げた。こ
の本は、子どもが大切に扱う特別な1冊になることだろう。
 そして、"This One Summer" はYAのグラフィックノベルであり、本賞の対象とし
ては異例とも思える。その中でオナーを獲得した Jillian Tamaki の絵は雄弁だ。と
りわけ見開きで大きく表現されたページの迫力、訴えかけてくる力に驚かされる。な
お、本作はプリンツ賞のオナーにも選ばれている。物語の内容についてはこの後の記
事をお読みいただきたい。
 今年、選ばれた作品は内容もさまざまで、表現方法も絵やコラージュ、写真とバラ
エティに富んでいる。それぞれの本の特長が、絵本本来の素晴らしさはもちろん、新
しい可能性を示しているようで頼もしく感じられた。

《参考》
▼コールデコット賞公式ウェブサイト
http://www.ala.org/alsc/awardsgrants/bookmedia/caldecottmedal/caldecottmedal

▼Dan Santat 公式タンブラー
http://dansantat.tumblr.com/

▼Lauren Castillo 公式ウェブサイト
http://www.laurencastillo.com/

▼Jon Klassen 公式タンブラー
http://jonklassen.tumblr.com/

▼Mary GrandPre 公式ウェブサイト
http://www.marygrandpre.com/

▼Melissa Sweet 公式ウェブサイト
http://melissasweet.net/

▼Yuyi Morales 公式ウェブサイト
http://www.yuyimorales.com/

▼Jillian Tamaki 公式ウェブサイト
http://jilliantamaki.com/illustration/

▽コールデコット賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/us/caldecot/index.htm

▽ジョン・クラッセン作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/author/k/jklassen.htm

                              (くどうあきこ)


【プリンツ賞】(YA作品対象)

 ★Winner
 "I'll Give You the Sun" by Jandy Nelson (Dial Books)
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 ☆Honor Books(4作)
 "And We Stay" by Jenny Hubbard (Delacorte Press)
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 "The Carnival at Bray" by Jessie Ann Foley (Elephant Rock Books)
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 "Grasshopper Jungle" by Andrew Smith (Dutton Books)
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 "This One Summer" written by Mariko Tamaki, illustrated by Jillian Tamaki
                               (First Second)
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 プリンツ賞は、前年にアメリカで出版された優れたYA作品に贈られる賞で、作品
の分野や作者の居住地に制限はなく、過去に他国で出版された作品も対象となる。
 2015年のプリンツ賞に輝いたのは、Jandy Nelson の2作目のYA小説 "I'll Give
You the Sun" だ。2011年のデビュー作 "The Sky Is Everywhere" は、日本では未訳
ながら、すでに17か国語に翻訳されている。何をするにも一緒だった少女 Jude と双
子の兄 Noah は、成長するにつれ、親の愛や美術学校への入学をめぐって、競い合い、
ぶつかり合うようになる。そんな中、ある決定的な事件が起こり、2人の心は完全に
離れてしまう。この事件を13歳の Noah と、その3年後の16歳になった Jude の視点
から交互に描いた二重構造の作品。対照的な性格の2人が、それぞれの視点から語る
ことで、人生、芸術、家族、そして愛といったテーマがくっきりと浮かび上がり、物
語に奥行きを与えている。主人公たちはもう一度歩み寄り、心を通わせることができ
るのだろうか。刊行直後から話題を呼び、映画化の話も進行中だ。
 オナーには、今年も4作品が選ばれた。"And We Stay" は、2011年に "Paper
Covers Rock" でデビューした Jenny Hubbard の作品。詩人エミリー・ディキンソン
のゆかりの地、アマーストの寄宿学校を舞台にした物語。主人公 Emily がつづる詩
を通して、妊娠や恋人の自殺というつらい過去を乗り越え、未来へと足を踏み出すま
での心の軌跡が、抒情たっぷりに描かれている。
 "The Carnival at Bray" は、Jessie Ann Foley のデビュー作。16歳の少女
Maggie は、住み慣れたシカゴを離れ、アイルランドの小さな町で暮らすことになる。
新しい土地で、初恋や憧れの人の死を経験しながら成長していく Maggie の姿を、90
年代の人気ロックバンド、ニルヴァーナのコンサートを軸に描いた、音楽の魅力にあ
ふれる作品である。2作目の小説を執筆中という Foley の今後の活躍が期待される。
 カリフォルニア州在住のYA作家 Andrew Smith の "Grasshopper Jungle" は、巨
大カマキリがはびこり、人間が絶滅の危機に瀕する終末世界を描いたサイエンスフィ
クションである。アイオワ州のさびれた町を舞台に繰り広げられる奇想天外で壮大な
ストーリーの中で、ガールフレンドと親友 Robby のどちらが好きなのかわからず、
自分はゲイかもしれないという不安を抱えた主人公 Austin の等身大の姿が印象的だ。
2014年のボストングローブ・ホーンブック賞も受賞した話題作で、映画化も決まって
いる。
 "This One Summer" は、カナダ在住で戯曲なども手掛ける多才な作家 Mariko
Tamaki によるグラフィックノベル。イラストはいとこの Jillian Tamaki が描いて
おり、今年のコールデコット賞のオナーにも選ばれている。物語の舞台は、主人公
Rose が毎年夏休みを過ごすカナダのビーチ。楽しいはずの夏に、両親の不和が影を
落とす。芽生え始めた恋、性への好奇心から、Rose は少しずつ大人の世界へと足を
踏み入れるが、一方で、妹のような存在だった Windy との溝が深まっていく。ノス
タルジーを誘う青味を帯びた色調の絵が、思春期の揺れる心を繊細に描き出す力作だ。
 今年はグラフィックノベルやSFなど、バラエティに富んだラインアップとなった。
時代背景や舞台はさまざまだが、不安や挫折、心の傷を乗り越えていく主人公の姿を
描いた、読み応えのある作品が選ばれている。

《参考》
▼プリンツ賞公式ウェブサイト
http://www.ala.org/yalsa/printz/

▼Jandy Nelson 公式ウェブサイト
http://jandynelson.com/

▼Jenny Hubbard 公式ウェブサイト
http://www.jennyhubbard.com/

▼Jessie Ann Foley 公式ウェブサイト
http://jessieannfoley.com/

▼Andrew Smith 公式ウェブサイト
http://www.authorandrewsmith.com/Author_Andrew_Smith/Home.html

▼Mariko Tamaki 公式ブログ
http://marikotamaki.blogspot.jp/

▼Jillian Tamaki 公式ウェブサイト
http://jilliantamaki.com/illustration/

▽マイケル・L・プリンツ賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/us/printz/

                               (手嶋由美子)

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●速報2●2014年度 コスタ賞児童書部門発表!!
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 2015年1月5日、2014年度コスタ賞各部門の受賞作品が発表された。この賞は、英
国とアイルランドに居住する作家が書いた作品の中から、最も優れたものに贈られる。
児童書部門を含め、全5部門から成る。
 本年度の児童書部門受賞作品およびショートリスト作品は以下の通り。

2014 Costa Children's Book Award

 ★Winner
 "Five Children on the Western Front" by Kate Saunders (Faber & Faber)
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 ☆Shortlist
 "Running Girl" by Simon Mason (David Fickling Books)
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 "Listen to the Moon" by Michael Morpurgo (HarperCollins Children's Books)
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 "The Ghosts of Heaven" by Marcus Sedgwick (Indigo)
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 受賞作の "Five Children on the Western Front" は、イーディス・ネズビットの
名作『砂の妖精』(石井桃子訳/福音館書店)3部作の後日譚で、作者は「いたずら
魔女のノシーとマーム」シリーズ(相良倫子・陶浪亜希共訳/小峰書店)の Kate
Saunders。5人の兄弟姉妹が子どものころに出会った、願いを叶えてくれる砂の妖精
サミアドは、もはや過去の存在になっていたのだが、9年の時を経て、再び姿を現し
た。しかし魔法の力を失っていて、元いた砂漠に帰れない。子どもたちは力になろう
と奮闘するが、世は第1次世界大戦のさなかで、長男と次男は戦場へ行き、家族にも
戦争の影が忍び寄っていた。作者は魔法をめぐるファンタジーの名作『砂の妖精』を
生き生きとよみがえらせ、戦争の惨事との対比で家族の強い愛と友情を描きだしてい
る。執筆の前年に最愛の息子を亡くした作者は、子を失う親の心情に思いを重ね、生
きる勇気と希望を本作に記している。
 ショートリストに選ばれたのは、以下の3作品。
 家族愛を描くことを得意とする Simon Mason が、"Running Girl" で初めて探偵小
説に挑んだ。16歳の主人公 Garvie Smith は数学の天才で、Marsh Academy 校史上最
高のIQを有するが、授業の成績は散々。何事にもやる気を出せず、不良仲間と退屈
な時間を持て余していた。しかしかつてのガールフレンド、Chloe Dow が沼から遺体
で発見されると、警察顔負けの推理力で、事件のみならず、町に隠された秘密をも暴
いていく。一風変わったニヒルな高校生探偵が活躍する本書は、2015年カーネギー賞
にもノミネートされている。
 "Listen to the Moon" は、英国を代表する児童文学作家 Michael Morpurgo の作
品で、英国の小さな島から見た第1次世界大戦を描いている。1915年の5月、シリー
諸島で暮らす少年 Alfie と漁師の父は、無人島で衰弱した少女を見つける。記憶を
失った少女が話せるのは、「Lucy」という言葉だけ。音楽と月光を愛する少女の正体
は、人魚か、Uボートに撃沈された船の遭難者か、あるいは一部の島民が疑うように、
ドイツのスパイなのか。少女をめぐる人々の記憶が、ジグソーパズルを埋めるピース
のように断片的に語られ、最後まで読者の心をつかんで離さない。
 2014年に "Midwinterblood" でプリンツ賞に輝いた Marcus Sedgwick が、今作で
は「らせん」をテーマに "The Ghosts of Heaven" で異なる時代に暮らす4人の物語
をつづっている。旧石器時代に生きる少女を自由詩のかたちで描いた物語から始まり、
17世紀の魔女狩りで迫害を受ける Anna、1920年にニューヨークの精神科病棟で働く
不気味なセラピスト、そしてはるか遠い未来、別の惑星へ移住するために宇宙船で航
海する Keir Bowman の物語へと続いていく。貝殻、かたつむり、階段、水流など、
さまざまならせんのイメージが、4つの物語を結びつけている。
 今年度のコスタ賞は、オナーを含め、ベテランが名を連ねた。戦争や心の闇といっ
た難しいテーマを、ベテランならではの手腕で、重厚感のある骨太の作品に仕上げて
いる。なお、児童書部門を含む受賞作品の中から選ばれるコスタ文学賞(The Costa
Book of the Year 2014)には、Helen Macdonald の "H is for Hawk"(伝記部門)
が選ばれた。

《参考》
▼コスタ賞公式ウェブサイト
https://www.costa.co.uk/costa-book-awards/welcome/

▼Kate Saunders 紹介ページ(faber and faber 内)
http://www.faber.co.uk/author/kate-saunders/

▼Kate Saunders 紹介記事(The Telegraph 内)
http://www.telegraph.co.uk/culture/books/11325338/Costa-Prize-Winner-Kate-
Saunders-I-couldnt-have-written-this-book-if-I-hadnt-lost-my-own-boy.html

▼Simon Mason 紹介ページ(David Fickling Books 内)
http://www.davidficklingbooks.com/shop/AuthorDetails.php?authorID=24

▼Michael Morpurgo 公式ウェブサイト
http://www.michaelmorpurgo.com/

▼Marcus Sedgwick 公式ウェブサイト
http://www.marcussedgwick.com/

▽コスタ賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/uk/whit/index.htm

▽マイケル・モーパーゴ作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/author/m/mmorpu_j.htm

▽コスタ賞児童書部門(本誌1999年5月号情報編「世界の児童文学賞」)
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/1999/05.htm#a1bungaku

                               (山本真奈美)

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●賞速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★2015年MWA賞(児童図書部門/YA小説部門)候補作品発表
                     (受賞作品の発表は4月29日の予定)
★2015年ロバート・F・サイバート知識の本賞発表
★2015年ローラ・インガルス・ワイルダー賞発表
★2015年シュナイダー・ファミリーブック賞発表
★2015年セオドア・スース・ガイゼル賞発表
★2015年プーラ・ベルプレ賞発表
★2015年コレッタ・スコット・キング賞発表
★2015年スコット・オデール賞発表

 海外児童文学賞の書誌情報を随時掲載しています。「速報(海外児童文学賞)」を
ご覧ください。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=award

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●イベント速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★展示会情報
 新潟県立万代島美術館「生誕100周年 トーベ・ヤンソン展〜ムーミンと生きる〜」
 刈谷市美術館「いきものたちの絵本劇場」 など

★講演会情報
 教文館ナルニア国「野口絵美さん&田中薫子さんダブルトーク」 など

★イベント情報
 大阪市立中央図書館「おとなのための絵本ショー2015 絵本劇団 Playful」 など

 詳細やその他のイベント情報は、「速報(イベント情報)」をご覧ください。なお、
空席状況については各自ご確認願います。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=event

                           (笹山裕子/冬木恵子)

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●お知らせ●
 本誌でご紹介した本を、各種のインターネット書店で簡単に参照していただけます。
こちらの「やまねこ翻訳クラブ オンライン書店」よりお入りください。
http://www.yamaneko.org/info/order.htm
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    ☆☆ FOSSIL 〜 Made in USA のライフスタイルブランド ☆☆
 独創的なデザインで世界120ヶ国以上で愛用されているフォッシルはアメリカを代
表するライフスタイルブランドです。1984年、時計メーカーとして始まったフォッシ
ルは時計をファッションアクセサリーのひとつと考え、カジュアルでポップなライン
からフォーマルなシーンにも使えるアイテムまで、年間300種類以上のモデルを発売
し続けています。またフォッシル直営店では、時計以外にもレザーバッグ、革小物、
ファッションサングラスなどのラインを展開しています。
TEL 03-5992-4611
http://www.fossil.co.jp/     (株)フォッシルジャパン:やまねこ賞協賛会社
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発 行 やまねこ翻訳クラブ
編集人 蒲池由佳/大作道子(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
企 画 尾被ほっぽ 岡田衣央 加賀田睦美 かまだゆうこ 神原里枝
    くどうあきこ 小島明子 相良倫子 笹山裕子 手嶋由美子 冬木恵子
    村上利佳 森井理沙 安田冬子 山本真奈美
協 力 出版翻訳ネットワーク 管理人 小野仙内
    くらら コアラン shoko ながさわくにお ゆま ワラビ
    html版担当 ぐりぐら
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