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やまねこ10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」レビュー集> ケイト・グリーナウェイ賞レビュー集(その1)
 

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 やまねこ10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」レビュー集

ケイト・グリーナウェイ賞(イギリス) レビュー集
The Kate Greenaway Medal

(その1)
 

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最終更新日 2009/10/05 その2にレビューを1点追加  

2007年(2006年度)以前 その1 その2 / 2008年(2007年度) 「カ&グ賞候補作を読もう会」合同企画 / 2009年(2008年度) 「カ&グ賞候補作を読もう会」合同企画

ケイト・グリーナウェイ賞受賞作品リスト(やまねこ資料室) 
ケイト・グリーナウェイ賞の概要

このレビュー集について
 10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」においてやまねこ会員が個々に書いたレビューを、各児童文学賞ごとにまとめました。メ ールマガジン「月刊児童文学翻訳」「やまねこのおすすめ」などに掲載してきた〈やまねこ公式レビュー〉とは異なる、バラエティーあふれるレビューをお楽しみください。
 なお、レビューは注記のある場合を除き、邦訳の出ている作品については邦訳を参照して、邦訳の出ていない作品については原作を参照して書かれています。

*グリーナウェイ賞公式サイトにおいて、2007年より、年表記が、出版年度(前年)から授賞年に変わりましたので、 やまねこサイトでも順次改めていきます。2005年度(発表は2006年)以前の作品については、以前のまま作品が出版された年度で表示しています。


(ケイト・グリーナウェイ賞 2007年以前 その1 本ページ) "Snow White in New York"『スノーホワイト・イン・ニューヨーク』 * "Let's Get a Pup!"『いぬがかいた〜い!』(リンク)  * "One More Sheep"『サムさんと10ぴきのひつじ』 * "The Whales' Song"『くじらの歌ごえ』 * "Katje, the Windmill Cat"『風車小屋ねこカッチェ』 * "We're Going on a Bear Hunt"『きょうはみんなでクマがりだ』 * "Down the Back of the Chair"『みーんないすのすきまから』 * "The Three Poor Tailors" * "One-Eyed Jake" * "Mrs. Easter and The Storks"


(ケイト・グリーナウェイ賞 2007年以前 その2) "Borka"『ボルカ はねなしガチョウのぼうけん』 * "Charley, Charlotte and the Golden Canary"『しあわせどおりのカナリヤ』 * "Mrs. Cockle's Cat"『おばあさん空をとぶ』 * "Mr.Gumpy's Outing"『ガンピーさんのふなあそび』 * "The Dragon of an Ordinary Family"『 うちのペットはドラゴン』 * "Each Peach Pear Plum"『もものきなしのきプラムのき』←追加


1986年度 ケイト・グリーナウェイ賞

"Snow White in New York" (1986) by Fiona French フィオナ・フレンチ
『スノーホワイト・イン・ニューヨーク』 麻生圭子訳 河出書房新社 1988

その他の受賞歴 


(このレビューは、英語版を参照して書かれています)

 白雪姫のニューヨーク版。お父さんが再婚した相手は、魔女ならぬ暗黒街を取り仕切る女王だったからさあ大変! 白雪姫は名立たる殺し屋たちに命を狙われる羽目になる。場末のジャズクラブに逃れ、思わぬことから舞台に立つことになり、彼女の歌の才能が開花していく。目を留めた記者によって新聞に載ると、評判が人気を呼び、スターとして成功していくのだが……。もちろん継母がほっておくわけがないのだった。

 昔話のリメイク版とはとても思えない斬新で印象的な絵だ。ひと目でニューヨークの雰囲気に浸ることができる。物語はアップテンポで、小気味良いジャズのリズムが聞こえてきそうだ。継母、殺し屋、そのあとの展開。骨組みとしては何一つ、違いはないのだが、背景が違うと、物語とはこんなにも変わってしまうものなのか。感嘆の思いで見つめてしまう。最後の結末だけは、ニューヨーク版らしくゴージャスで、思わずニヤリ。

(尾被ほっぽ) 2008年6月公開

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2001年度 ケイト・グリーナウェイ賞ショートリスト

"Let's Get a Pup!" (2001)
 Bob Graham ボブ・グラハム作

(米国版タイトル)"'Let's Get a Pup!' Said Kate"

『いぬがかいた〜い!』 木坂涼訳 評論社 2006年
 やまねこ公式レビュー 月刊児童文学翻訳2002年6月号(原書)

その他の受賞歴  ・2002年オーストラリア児童図書賞幼年向け部門
 ・2002年ボストングローブ・ホーンブック賞絵本部門

 ・2001年 ASPCA Henry Bergh Children's Book Award〈アメリカ〉
 ・2001年 The Bulletin of the Center for Children's Books Blue Ribbon〈アメリカ〉絵本部門


オーストラリア児童図書賞のレビュー集を参照のこと

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2004年度 ケイト・グリーナウェイ賞 ショートリスト

"One More Sheep" (2004)
  by Russell Ayto ラッセル・エイト text by Mij Kelly ミジ・ケリー
『サムさんと10ぴきのひつじ』 まえざわあきえ訳 朔北社 2007

 やまねこ公式レビュー 月刊児童文学翻訳2005年5月号(原書)

その他の受賞歴


 さむいさむい、あらしのよるのこと。サムさんはだいじなひつじたちを家の中に入れ、ふかふかのベッドにねかせてやりました。サムさんのひつじはぜんぶで10匹。1匹でも外に残してきていたら、大変です。外にはおそろしいオオカミがいるんですから。そこで、サムさんはひつじの数を数え始めましたが、やっと4匹数えるころにはもう夢の中。と、そこへ玄関のドアを叩く音が! 出てみると、そこには1匹のひつじ。「さあ、はいんなさい」と両手を広げるサムさん。でも、それ、ほんとにサムさんのひつじなの?

 おひとよしで、ちょっとおとぼけのサムさんと表情豊かなひつじたちの、コミカルで軽快な絵本の邦訳。原書レビューで「職人的なサービス精神を感じるエンタテインメント絵本」と評しましたが、日本語訳もサービス精神にあふれています。思わずふきだすコミカルなせりふ回しは、読み聞かせるなら、ぜひノリノリで演じていただきたいところ。見た目はそっくりな10匹のひつじたちも、邦訳ではせりふに個性が光っています。また、原書と照らし合わせてみると、原作にはないテキストを補ったり、テキストの位置を変えたり、ちょっとした工夫をほどこして、作品の楽しさをいっそう引き出しているのがわかります。

(杉本詠美) 2008年6月公開

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1990年度 ケイト・グリーナウェイ賞 受賞作

"The Whales' Song" (1990)
 by Dyan Sheldon ダイアン・シェルダン、illustrations by Gary Blythe ゲイリー・ブライズ

『くじらの歌ごえ』 角野栄子訳 BL出版 1991

その他の受賞歴


「くじらって不思議な生き物よ」と、リリーに語りはじめたおばあちゃん。くじらに会って歌を聞かせてもらったことがあるという。そこへ割って入ってきたおじさんは、「くじらは人間の食料だ。ただそれだけだ」と言いきる。でもリリーは、おばあちゃんから聞いた話が忘れられない。その晩、夢の中にくじらがでてきて、リリーを呼んだ。

 くじらの歌声を耳にしたことがあるだろうか? どこかもの悲しく切ない、それでいていつまでも聴いていたいような、不思議な魅力をたたえた歌だ。
 シェルダンは、マグロ漁の際にイルカが混獲されて犠牲になることを知って怒りを覚え、それがこの作品を生みだす原動力になった、と語っている。ちなみに、イルカはクジラと同じくクジラ目に属し、分類学的に特別な差はないそうだ。
 捕鯨の是非は別としても、リリーとともにおばあちゃんを囲んで、数十億年にわたって続いてきた生命の鎖に思いをはせてみたい。太古のある日、海に帰ることを選んだ哺乳類たちがいた――現代の印象派のごときブライズの絵が心にしみ入り、原初的な記憶をよび覚ますことだろう。

(雲野 雨希) 2008年7月公開

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2001年度 ケイト・グリーナウェイ賞 ショートリスト

"Katje, the Windmill Cat" (2001)
  by Gretchen Woelfle グレッチェン・ウェルフレ
 illustrated by Nicola Bayley ニコラ・ベイリー

『風車小屋ねこカッチェ』 今江祥智・遠藤育枝訳 BL出版 2002

 やまねこ公式レビュー 月刊児童文学翻訳2002年 6月号(原書)

その他の受賞歴
 ・2002年チルドレンズ・ブック賞〈イギリス〉(幼年向け部門)ショートリスト
 ・2002年English 4-11 Book Awards〈イギリス〉最終候補作品


(このレビューは、英語版を参照して書かれています)

  ねずみ取りが得意な猫のカッチェは、粉屋のニコといいコンビ。けれども、ニコがお嫁さんを連れて帰ってきた日から、平穏な暮らしは一変する。毎晩ニコといっしょに眠っていたベッドから追いだされ、床に粉の足跡をつけたといってほうきで追いたてられ……。やがて夫婦に赤ちゃんが生まれた。カッチェと大の仲良しになるのだが、赤ちゃんに危害がおよぶのではないかと、お嫁さんは渋い顔。そんな生活が続いたある日のこと、嵐が一晩中吹きあれて、ついに堤防が決壊! 村はあっという間に水の流れに飲みこまれる。

 人間の赤ちゃんが生まれたとたんにペットをかえりみなくなるといったたぐいの話を聞くにつけ、胸がつぶれそうな思いに駆られてしまう。だが、この本のなかでは大団円が待っている。しかもそれが実話であるところに希望が宿る余地がありそうだ。作者ウェルフレは、1421年11月5日にオランダ南西部の村で起きた事件をもとに、想像の力で鮮やかに色づけした物語を紡ぎだした。動物と人間の間に生まれえる結びつきの尊さが、人どうしの結びつきの尊さに少しも劣らないことを伝えてくれる。
 イラストは、猫派の絵本好きならその名を知らぬ人がいないニコラ・ベイリー。写実性とデザイン性を巧みに溶けあわせた手法で、日常のひとコマや刻々と変化する天候を見事にとらえている。メインのイラストの横にデルフトタイル(フェルメールの絵画にも登場する、白地に青で彩色されたタイル)を模したミニチュアのイラストを配するなど、画の配置がページごとに非常によく練られていて、グラフィックアートとしても堪能できる。

(雲野 雨希) 2008年7月公開

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1989年度 ケイト・グリーナウェイ賞 特別推薦作品

"We're Going on a Bear Hunt" (1989)
  by Michael Rosen マイケル・ローゼン(再話)
 illustrations by Helen Oxenbury ヘレン・オクセンバリー

『きょうはみんなでクマがりだ』 山口文生訳 評論社 1991

 やまねこ公式レビュー 洋書でブレイク(原書)

その他の受賞歴
1989年スマーティーズ賞0〜5歳部門金賞&大賞
1991年絵本にっぽん賞〈日本〉特別賞


 今日はよく晴れたお出かけ日和。パパとママに、お兄ちゃんとお姉ちゃん、赤ちゃんとワンコの5人と1匹で、クマがりに出発だ。だだっ広い草原を越え、冷たい川を泳いで渡り、ぐちゃぐちゃのぬかるみに足を踏みいれ、暗い森にわけ入り、吹雪にさからって。早く出てこい、でっかいクマ!

 シュールな設定とリズミカルな文章が底抜けに楽しい。お子さんから「これ読んで」と何度もせがまれること間違いなし。わらべ歌をもとに書かれたお話とのことで、いかにも、と合点がいく。歌のほうは《(We're) Going on a Bear Hunt》《(The) Bear Hunt》などのタイトルで知られている。歌詞にもバリエーションがあるが、ワンフレーズずつ、おとなの後につづいていっせいに子どもたちが歌うスタイルになっている。
 絵の展開は心憎いばかり。前半は、言葉の律動に呼応するかのように、モノクロの場面とカラーの場面が交互に展開する。大づかみながら既視感に訴えかける美しい色調の風景に、デッサン力の確かさがうかがえるキャラクターをのせて、アニメーションのような世界をくり広げていく。
 加えて、山口文生氏の訳が秀逸。日本語の特徴を生かして擬音語を巧みに置きかえており、言葉の微妙なおもしろさをたっぷり味わえる。
 〈クマがり〉とはいっても、残酷なシーンは一切ないので、ナチュラリストの方もどうぞご安心を!

 なお、自宅にいながらマイケル・ローゼンによるストーリーテリングを聴く(見る)ことができる。興味のある方はウェブサイトYouTubeを訪れてみてほしい。

(雲野 雨希) 2008年7月公開

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2007年(2006年度)ケイト・グリーナウェイ賞 ロングリスト

"Down the Back of the Chair" (2006) 
  by Polly Dunbar ポリー・ダンバー、text by Margaret Mahy マーガレット・マーヒー

『みーんな いすの すきまから』 もとしたいづみ訳 フレーベル館 2007

 やまねこ公式レビュー 月刊児童文学翻訳2009年5月号( 邦訳)

その他の受賞歴
2008年やまねこ賞絵本部門大賞


 パパが車のかぎをなくしてしまい、仕事ができなくなった。うちの家族は暗〜い気分。でもその時、妹がこういったの。 「パパ、いすのすきまをさがしてみたら?」
 ひとりがけのアームソファー。げっそりやせたパパが、いすのすきまに手を突っこんでみたら……出てくる、出てくる、いろ〜んなものが。ひもやゴミだけでなく、動物やダイヤや、なんと、ふたごの赤ちゃんの片割れまで(え〜、ウッソォ〜)!? みんな、にこにこ。でも、まだまだ、まだまだ出てくるよ。

 おもしろ〜い! いすのすきまに、いろんな物が入りこんでいる、という発想もおもしろいけれど、それより何より、言葉遊びが最高! 頭韻、脚韻、それから駄洒落 。これを見事に訳したもとしたいづみさん って、本当に素晴らしい! ラップみたいな歌にして、是非、アニメーションにしてほしい。
 ごちゃごちゃした賑やかなストーリーに、ダンバーのコラージュがぴったり合っている。

(植村わらび) 2008年7月公開

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1965年度 ケイト・グリーナウェイ賞受賞作品

"The Three Poor Tailors" (1965) by Victor Ambrus ヴィクター・アンブラス (未訳絵本)

その他の受賞歴 


 三人の貧しい仕立て屋がいた。彼らは毎日、洋服作りに勤しみ、お客達の住むすぐ近くの町にすら出かけてみたことがなかった。そこである日、三人は彼らがたった1匹持っていた年老いたやぎに乗って出かけた。町は明るく美しく、存分に観光を楽しんだ三人は宿で飲めや、歌えやの大騒ぎ。ところが所持金が一円もない。慌てて逃げ出し、町中を逃げ回ったが、何しろ乗っているのが年老いたやぎなので、逃げ果せるわけはない。捕まり罰として町の人々の古いコートを直すことになった。

 仕事ばかりして何も知らない田舎者が、町で痛い目に会うが、ちっとも凹んだりしない。彼らはちゃんと次の計画を立てるのだ。これは古い民間伝承の話を再話したものらしい。作者はハンガリー生まれ。カラフルで楽しい絵本に仕上がっている。小太りで髭をはやしたおじさんと、のっぽで鼻の高いおじさんと、赤毛で鷲鼻のおじさん。この三人組が、ひょうひょうとした表情で巻き起こす騒動が面白い。対照的に三人に振り回される宿の亭主や、町の人たちの慌てふためく様子はユーモアたっぷりだ。

(尾被ほっぽ) 2008年9月公開

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1979年度 ケイト・グリーナウェイ賞推薦作品(Commended)

"One-Eyed Jake" (1979) by Pat Hutchins パット・ハッチンス   (未訳絵本)

その他の受賞歴 


 昔々のお話。その名を聞けば泣く子も黙る海賊片目のジャック。恐ろしい容貌に破れ鐘のような声、おまけにひどいかんしゃく持ちだった。船のコックと甲板長と、ボーイのジム、三人は彼が嫌いだったが、とても怖かったのだ。ジャックは目に付くあらゆる船を襲った。ちっぽけな漁船さえも! 略奪に次ぐ略奪に、ほとほと嫌気が差した三人は、船が盗んだものであふれかえるまで待った。とうとう宝石の重さで船が沈みそうになったとき、ジャックはコックを相手の客船に放り投げた! 貨物船を襲って、またもや船が沈みそうになったとき、今度は甲板長を貨物船に放り投げた。そして漁船を襲い、奪った魚で船が沈みそうになったとき、最後に残ったジムを放り投げた。でもジムはあるものをジャックに投げ返したのだった。

 恐ろしい船長をいかに上手くあしらうか! わき目もふらずに略奪に明け暮れる片目のジャックは、典型的な悪役だ。ブレーキの利かない壊れた暴走列車のようなジャック。その下でへいこら働かされながら、なんとか自分たちの夢を実現しようとする三人。そこへ思いもよらず、しかも労せずに期待通りの進路を手に入れてしまう痛快さ! 三人のネバリ勝ちってところ。最後にジムが見せる機転がピリッと効いている。彩色豊かに細かいところまで書き込んだ美しい絵のなかで、悪役ジャックは大暴れ。振り回される三人の情けない表情に、襲われた船の船員の驚いた顔。どれもが絵本の中で生き生きと活躍して、最後の場面では一緒に笑える楽しい絵本だ。

(尾被ほっぽ) 2008年9月公開 

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1957年度 ケイト・グリーナウェイ賞受賞作品

"Mrs. Easter and The Storks" (1957) by V. H. Drummond (未訳絵本)

その他の受賞歴 


 イースター夫人と甥のビリーは、デンマークの友だちのところへ遊びにいった。デンマークでは、どの家の煙突にもコウノトリが巣を作っていた。なかでも友人の家のコウノトリのつがいは、雌サリーのくちばしが光っていてとても美しかった。ところがサリーは、なにものかに連れ去られてしまう。失意の友人夫妻と雄のサムに見送られて、客船に乗り込んだイースター夫人とビリーは、なんとその船でグレイトシティ動物園のバートンが、サリーとともにいるのを見る。ビリーはサムに知らせるために船を飛び降りる。船はビリーを置いて出発してしまった。サムはビリーを背中にのせて、飛び立ち、サリー救出に向かった。

 光るくちばしをもったサリーもステキだけど、家々の煙突の上に巣がある絵もいい感じ。客船が入港するグレイトシティの夜景もステキ。絵はペン画で、赤、黄、青で彩色されたページと、黒一色のページが交互に続く。傘をもったイースター夫人はなんだかメリーポピンズみたい。(傘を開いて、風に飛ばされる場面もある)全般にのんびりとしたゆったりムードが漂うが、小さなビリーがコウノトリに乗せてもらって飛ぶあたりから、スリルとユーモアが加速する。ついにはイースター夫人までもサムにのり、サリー追跡劇が始まる。二人が到着するのはグレイトシティの王宮なのだ! ハチャメチャなスケールと、コミカルなイラスト。優しい王様に助けられて、ハッピーエンドを楽しむ物語。

(尾被ほっぽ) 2008年10月公開 

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