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※8月は定期休刊です。次回は2020年9月号になります。どうぞお楽しみに!

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2020年7月号
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  =====★   月 刊  児 童 文 学 翻 訳   ★=====
   =====☆   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ☆=====
                                No.200
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児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、電子メール版情報誌
http://www.yamaneko.org                         
編集部:mgzn@yamaneko.org     2020年7月15日発行 配信数 2500 無料
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●2020年7月号もくじ●
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◎巻頭メッセージ:創刊22年、200号発行の節目を迎えて
◎賞情報:2020年カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞発表!
 ケイト・グリーナウェイ賞受賞作品レビュー:"Tales from the Inner City"
                            ショーン・タン文・絵
◎賞情報:2020年国際アンデルセン賞発表!
◎世界の本棚(イタリア語):"Ridere come gli uomini"
                     ファブリッツィオ・アルティエーリ作
◎賞速報
◎イベント速報:★やまねこ翻訳クラブ協力企画のお知らせあり★
◎読者の広場

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●巻頭メッセージ●創刊22年、200号発行の節目を迎えて
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■200号発行のご挨拶■

 いつも「月刊児童文学翻訳」をご購読くださりありがとうございます。

 おかげさまをもちまして、本誌は今月号で創刊200号を迎えることができました。
ご愛読くださる読者のみなさまをはじめ、取材にご協力くださったみなさま、本誌に
かかわってくださったすべての方に、編集部一同、心より感謝申し上げます。
 1998年8月に創刊号を発行して以来、海外の児童文学に関する情報をお届けし、そ
の中で、世界各国で子どもたちのために力を尽くし活動する方々を紹介してまいりま
した。22年が経ち、今ではそのころの子どもたちが大人になり、活動の担い手となっ
てきています。これからも、1号、1号を大切に、世代を超えて読み継がれていくメ
ールマガジンとなるように、海外の素晴らしい児童文学を紹介してまいります。
 今後とも「月刊児童文学翻訳」をよろしくお願いいたします。

 末尾となりましたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によりお亡くなりに
なられた方々に謹んでお悔やみ申し上げますとともに、罹患された方々には心よりお
見舞い申し上げます。あわせて、医療や社会活動の維持に尽力いただいているみなさ
まに、深く感謝いたします。

             メールマガジン「月刊児童文学翻訳」編集長 三好美香

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●賞情報●2020年カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞発表!
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 英国図書館・情報専門家協会(CILIP: The Chartered Institute of Library and
Information Professionals)が主催する、イギリスで最も権威ある児童文学賞、カ
ーネギー賞およびケイト・グリーナウェイ賞が6月17日に発表された。本号では、両
賞の受賞作品を紹介するとともに、ケイト・グリーナウェイ賞受賞作品のレビューを
お届けする。
 なお、各候補作品を読んだ子どもたちが図書館や学校などの読書グループを通じて
投票するシャドワーズ・チョイス賞は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、
投票期間が延長された。結果は10月9日に発表される予定。

▼カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞公式ウェブサイト
http://www.carnegiegreenaway.org.uk/

▼同ウェブサイト内、2020年受賞作品発表ページ
https://carnegiegreenaway.org.uk/cilip-carnegie-and-kate-greenaway-medal-
winners-2020/

▼同ウェブサイト内、2020年受賞者スピーチ(動画)
https://carnegiegreenaway.org.uk/the-2020-cilip-carnegie-and-kate-greenaway-
medal-winners/

▽カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞について
               (本誌1999年7月号情報編「世界の児童文学賞」)
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/1999/07a.htm#a1bungaku

【カーネギー賞】(作家対象)

★The CILIP Carnegie Medal 2020 Winner

  "Lark" by Anthony McGowan (Barrington Stoke)

 今年のカーネギー賞に輝いた "Lark" は、Anthony McGowan(アンソニー・マゴー
ワン)による "The Truth of Things" 4部作の完結編だ。第1巻の "Brock" が2014
年の本賞ロングリスト、第3巻の "Rook" が2018年の本賞ショートリストに選ばれ、
今回最終巻で見事初めての受賞を果たした。ヨークシャーを舞台に、脳に障害がある
兄 Kenny とそんな兄を支える弟 Nicky がさまざまな困難を乗り越え、成長する姿が
描かれてきた同シリーズ。各巻のタイトルには野生動物の名前がつけられ、人と自然
とのかかわりも重要なテーマのひとつになっている。本作では、ヒバリを探して荒野
に出かけた兄弟が、突然の猛吹雪に見舞われ、身動きがとれなくなってしまう……。
ストーリーや登場人物の魅力に加え、人に驚きと喜びをもたらす反面、脅威にもなり
うる自然界の描写も高く評価されての受賞となった。マゴーワンはマンチェスター出
身の作家で、児童書から大人向けの小説まで幅広く手がける。2006年に、"Henry
Tumour" でブックトラスト・ティーンエイジ賞を受賞。邦訳に「アニマル・アドベン
チャー」シリーズ(西本かおる訳/静山社)がある。

【ケイト・グリーナウェイ賞】(画家対象)

★The CILIP Kate Greenaway Medal 2020 Winner

  "Tales from the Inner City" by Shaun Tan (Walker Books)

 今年のケイト・グリーナウェイ賞は、オーストラリアのイラストレーター Shaun
Tan(ショーン・タン)が手がけた "Tales from the Inner City" が受賞した。64年
の歴史を持つ本賞の受賞者はこれまですべて白人画家であったため、中国とマレーシ
アにルーツがあるタンの受賞は、社会的出来事としても注目されている。2011年の米
国アカデミー賞短編アニメーション賞受賞で、映像作家として脚光を浴びたタンは、
同じ年にアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を受賞するなど、絵本作家として
も数々の賞に輝いてきた。本作は2008年に刊行された "Tales from Outer Suburbia"
(『遠い町から来た話』岸本佐知子訳/河出書房新社)の姉妹編にあたる。人と動物
が織りなす不思議な世界が、25編の物語でつづられ、美しいイラストとともに収めら
れている。作品の内容については、本誌今月号のレビューをご覧いただきたい。

※邦訳がある作家、画家については初出の際に片仮名表記を併記しています。

【参考】
▼Anthony McGowan 公式ウェブサイト
http://anthonymcgowan.com/anewsite/

▼Shaun Tan 公式ウェブサイト
http://www.shauntan.net/

▽カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞受賞作品リスト
                        (やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/uk/carnegie/
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/uk/greenawy/

▽ショートリスト(最終候補作品)紹介記事(本誌2020年4月号「賞情報」)
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2020/04.htm#sokuho

                                (平野麻紗)


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★2020年ケイト・グリーナウェイ賞受賞作品

"Tales from the Inner City" 『都会の奥から来た話』(仮題)
by Shaun Tan ショーン・タン文・絵
Arthur A. Levine Books, 2018, 219pp. ISBN 978-1338298406 (HB)
Amazonで検索する:ISBN  Amazonで検索する:書名と作者名

 きみは2歳。夜、都市から家へ帰る車の中、お父さんはハンドルを握り、お母さん
の耳にはイヤリングが光る。突然、きみは叫ぶ。「馬がいる!」窓の外、大人たちに
は見えない馬の姿が、きみの目にははっきりと映っている。馬たちは高速道路に沿っ
て走り、家々の屋根を飛び越え、空中に張られた電線の上を駆けながら、きみにお話
を聞かせてくれる。はるか昔、この都市がつくられた頃、鉄や石炭など都市を動かす
のに必要な物資も、人間も、すべて馬たちが運んでいたこと。やがて馬は必要とされ
なくなったが、彼らの魂は緑の野を求めて走り続けていること――。
 これは、本作で語られる25編の詩や短編のうちのひとつ、馬をテーマとする物語だ。
"Inner City"(都会の内側、都心)の話、と名づけられた本作は、2008年の作品
"Tales from Outer Suburbia"(『遠い町から来た話』岸本佐知子訳/河出書房新社)
と対をなす。『遠い町〜』がどこかわからない離れた場所、つまり外部のお話だった
のに対し、今回の物語はどれも、都市の内部、わたしたちの身近にどこにでもありそ
うな街角で起こる。けれども、人間の築いた都市を舞台としながら、人間はわき役に
すぎず、主役はあくまでも動物たちだ。それぞれの動物の物語は読みごたえがあり、
200ページを超える本作は短編集と呼んでもよいほどだ。
 謎めいた内容にもかかわらず突拍子もない印象を受けないのは、圧倒的な存在感を
放つ絵の力だろう。挿絵のない真っ白なページに文章が綴られ、ひとつひとつのお話
の途中や最後に見開きで油絵が現れる。どれも宝石のように美しい絵は、ときに繊細
に、ときに力強く、作品の内容を表現している。数ページにわたって絵が続く箇所も
あり、まるで画集をひもとくかのようだ。気づけば幻想的な世界にどっぷり浸りなが
ら、不思議と懐かしさを覚えた。誰しも心の奥底に秘めている、遠い日の記憶や夢が
手触りもそのままによみがえるようだ。全編を通して漂う切なさは、大人になり、子
どもの頃に見ていた景色と同じものを見られない悲しみのせいかもしれない。幼い日
の澄んだまなざしを失うことなく素晴らしい作品へと昇華させた作者に、心からの敬
意を表したい。

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【文・絵】Shaun Tan(ショーン・タン):1974年オーストラリア生まれ。イラスト
レーターや映像作家としても活動する傍ら、社会的なテーマを扱った絵本を発表し、
邦訳も多数。特に移民を題材にした文字のない絵本『アライバル』(河出書房新社)
は多くの国で出版され、幅広い世代に親しまれている。2011年、アストリッド・リン
ドグレーン記念文学賞を受賞。メルボルン在住。

【参考】
▼ショーン・タン公式ウェブサイト
http://www.shauntan.net/

                                (山本みき)

※本作の邦訳は下記タイトルで8月に刊行が予定されています。
『内なる町から来た話』(岸本佐知子訳/河出書房新社)

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●賞情報●2020年国際アンデルセン賞発表!
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 5月4日、2020年国際アンデルセン賞の受賞者が発表された。この賞は、児童文学
に貢献してきた作家/画家の全業績を称え、国際児童図書評議会(IBBY)が2年
に1度、西暦偶数年に発表するものである。今年度のショートリストには、各国から
推薦された候補者の中から作家賞6名、画家賞6名が選ばれ、1月20日に発表されて
いた。当初は、イタリアのボローニャ・ブックフェアの会場で3月30日に受賞者が発
表される予定だったが、新型コロナウイルスの影響によりブックフェアが中止になり、
インターネット上での発表となった。授賞式は、2021年9月に延期になったIBBY
世界大会(ロシアのモスクワで開催予定)にてとりおこなわれる。
 本号では、作家賞と画家賞の受賞者を紹介する。

※候補者の日本語読みは、日本国際児童図書評議会(JBBY)の発表に準ずる。

▼国際児童図書評議会(IBBY)公式ウェブサイト
http://www.ibby.org/

▼上記ウェブサイト内、2020年国際アンデルセン賞のページ
https://www.ibby.org/awards-activities/awards/hans-christian-andersen-awards/
hans-christian-andersen-award-2020

▽国際アンデルセン賞について(本誌1999年10月号情報編「世界の児童文学賞」)
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/1999/10a.htm#a1bungaku

▽国際アンデルセン賞受賞者リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/andersen/index.htm

▽ショートリスト一覧(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/andersen/nomin_au2.htm#au_2020
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/andersen/nomin_il2.htm#il_2020

■作家賞■ 〜 The Hans Christian Andersen Author Award 2020 〜

 ★Winner
 Jacqueline Woodson ジャクリーン・ウッドソン(アメリカ)

 2020年作家賞に輝いたジャクリーン・ウッドソンは、アフリカ系アメリカ人の児童
文学作家。2014年の同賞ショートリストに選ばれ、2018年にアストリッド・リンドグ
レーン記念文学賞を受賞した実力を持つ。1963年にアメリカのオハイオ州コロンバス
に生まれ、幼少期をサウスカロライナ州の母方の祖父母の下で過ごし、7歳からニュ
ーヨークのブルックリンで暮らす。大学で学んだ後、編集アシスタントを経て、
"Last Summer with Maizon"(『マディソン通りの少女たち1 マーガレットとメイ
ゾン』さくまゆみこ訳/ポプラ社)で1990年にデビューした。以来、精力的に創作活
動を続け、自身の経験をもとに、アフリカ系アメリカ人がこれまでどのように扱われ
ていたかを描いた自伝的作品 "Brown Girl Dreaming"(未訳)で、2014年全米図書賞
児童書部門、2015年コレッタ・スコット・キング賞作家賞を受賞し、2015年ニューベ
リー賞オナーに選ばれた。絵本からYA小説まで幅広く手がけ、人種差別や、薬物依
存、LGBT、証人保護プログラムなどをテーマに、生きづらさを抱えた人々に光を
当てた作品を多く発表している。これらを通じて、背景にある社会や歴史を明らかに
した功績は大きい。創作に加えて、青少年への読書推進の活動でも知られ、第6代児
童文学大使(National Ambassador for Young People's Literature)を、2018年か
ら2年間務めていた。

【参考】
▼ジャクリーン・ウッドソン公式ウェブサイト
https://www.jacquelinewoodson.com/

▽ジャクリーン・ウッドソン作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/author/w/jwdsn.htm

■画家賞■ 〜 The Hans Christian Andersen Illustrator Award 2020 〜

 ★Winner
 Albertine アルベルティーヌ(スイス)

 2020年画家賞は、2018年の同賞ショートリストにも選ばれた、スイスのアルベルテ
ィーヌ(アルバータイン)に贈られた。1967年、スイスのジュネーブ近郊、ダルダニ
ーに生まれ、大学で美術を学んだ後、1991年からイラストレーターとして活動を始め
た。画家のみならず、アニメーションのグラフィックデザイナーや作家としても高く
評価されている。ストーリーをイメージさせる力のある絵を描くことでも知られ、
2014年に刊行した文字なし絵本 "Bimbi"(未訳)では、鉛筆で描いた絵だけを用いて
親子の日常を見事に表現した。柔らかな線で細部まで丁寧に描いた、ユーモアのセン
スあふれる絵が持ち味だ。本誌2018年3月号「2018年国際アンデルセン賞ショートリ
スト発表」(以下のリンク)もご参照いただきたい。
▽本誌バックナンバー(2018年3月号)
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2018/03.htm#sokuho

【参考】
▼アルベルティーヌ公式ウェブサイト(フランス語)
http://www.albertine.ch/

                                (三好美香)

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●世界の本棚(イタリア語)●〈生きるに値しない命〉とは?
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『人間のように笑う』(仮題) ファブリッツィオ・アルティエーリ作
"Ridere come gli uomini" by Fabrizio Altieri
Edizioni Piemme, 2018, 205pp. ISBN 978-8856662849 (Italy)
★2019年IBBY障害児図書資料センター推薦図書
Amazonで検索する:ISBN  Amazonで検索する:書名と作者名

 子どもふたりが犬を連れて、トスカーナの森の中を逃げている。兄フランチェスコ
と妹ドナータ、ジャーマンシェパード犬のウルフ。子どもたちの両親を殺したSS
(ナチス親衛隊)はドナータの命も狙っていた。ダウン症候群のドナータは〈生きる
に値しない命〉らしい。ときは1944年、イタリア北部はムッソリーニを傀儡とするナ
チスの支配下にあったが、シチリアから上陸して北上を続ける連合軍はすでにイタリ
ア中部トスカーナまで到達していた。フランチェスコとドナータが生き延びるために
は、なんとしてもアメリカ兵たちがいるところまでたどり着かなくてはならない。
 森に入ってすぐ、凶暴なイノシシに襲われる。立ち寄った町では、教会の神父から、
近くの村で住民がナチスに皆殺しにされたと聞かされる。行く先々で過酷な状況が待
ち受けているが、爆弾を作っている一家や、石切場にひとり残されて彫刻を仕上げて
いる男性、地雷を踏んでしまった少年兵などに出会い、助けられながら逃亡を続ける。
 両親の遺体がさらされているのを子どもたちが発見するという、衝撃的な場面から
始まる本書は、フランチェスコを主人公とする三人称の部分と、ジャーマンシェパー
ド犬ウルフの語りからなる部分で構成されている。ウルフは仔犬のとき、目の前で母
犬ときょうだい犬をSSに殺され、その後、脱走者を見つけて襲うよう、訓練を受け
て育った。犬たちのリーダー格として頭角を現すが、脱走者を追って森の中にいると
き、兵舎に戻らないことを選ぶ。ナチスの兵士に銃を向けられているドナータを偶然
見つけて助けたのが縁で、フランチェスコたちと行動をともにすることになる。
 残酷な出来事が次々と起こり、読み進めるのはつらい。第2次大戦末期にはイタリ
ア各地で戦闘が繰り広げられ、ナチスの手で全滅させられた村も実際にある。小学生
くらいの子どもふたりが――しかも、妹はダウン症候群で、兄が思うようには動いて
くれないというのに――そう簡単に逃げられるはずがない。そんな時代に、したたか
に生きる人たちや、困っている他者に無償で手を差し伸べる人たちがいたことも描か
れているのが救いだ。なお、脱走者を見つけて襲うように訓練された軍用犬という設
定は作者の創作であることを、全ジャーマンシェパード犬のために書き添えておく。

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【作】Fabrizio Altieri(ファブリッツィオ・アルティエーリ):1965年、イタリア
・トスカーナ州のピサに生まれる。機械工学で学士号を取り、現在は工業専門学校で
教鞭をとる。2006年に児童文学作家としてデビュー。作品は低学年向けから中学生向
けまで多岐にわたる。邦訳された作品はまだない。

【参考】
▼ファブリッツィオ・アルティエーリ公式ウェブサイト(イタリア語)
https://www.fabrizioaltieri.it/wordpress/

                              (赤塚きょう子)

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●賞速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★2020年チルドレンズ・ブック賞ショートリスト発表
                     (受賞作品の発表は10月10日の予定)

 海外児童文学賞の書誌情報を随時掲載しています。「速報(海外児童文学賞)」を
ご覧ください。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=award

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●イベント速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★展示会情報
 新潟市新津美術館「不思議の国のアリス展」
 芳澤ガーデンギャラリー「柚木沙弥郎『絵本の仕事』展」
 森の中の家 安野光雅館
  「和久傳150周年・森の中の家開館3周年記念展示『物語を愉しむ』」
 三菱地所アルティアム「絵本原画ニャー!mini 猫が歩く絵本の世界」 など

★講座・講演会情報
 グリムの森 連続講座「現代に生きるグリム童話」 など

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、イベントは中止や延期になる場合がありま
す。また、事前予約など、入場の条件が通常とは違う場合がありますので、詳しくは
「児童書関連イベント情報掲示板」掲載の各参考ウェブサイトでご確認ください。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=event

★★やまねこ翻訳クラブ協力企画のお知らせ★★

「読書探偵作文コンクール2020」
  主催 読書探偵作文コンクール事務局
  協力 翻訳ミステリー大賞シンジケート、やまねこ翻訳クラブ

 いつも「読書探偵作文コンクール」にご協力いただき、ありがとうございます。
 小学生部門、中高生部門ともに、今年も募集を開始いたしました。
 応募締切は★9月30日★です。詳細は、各部門の公式ウェブサイトをご覧ください。
 公式ツイッター、フェイスブックページでも随時最新情報をお伝えしていますので、
どうぞご利用ください。

▼「読書探偵作文コンクール」小学生部門 公式ウェブサイト
http://dokushotantei.seesaa.net/

▼「読書探偵作文コンクール」中高生部門 公式ウェブサイト
https://dokutanchuko.jimdo.com/

▼「読書探偵作文コンクール」公式ツイッター
https://twitter.com/Dokusho_Tantei

▼「読書探偵作文コンクール」公式フェイスブックページ
https://www.facebook.com/dokushotantei

 お子さんに、お友だちに、お知り合いに、ぜひお知らせください!

 過去の受賞作をもとに2017年に出版した『外国の本っておもしろい! 子どもの作
文から生まれた翻訳書ガイドブック』(サウザンブックス社)も、引き続きよろしく
お願いいたします。
http://thousandsofbooks.jp/project/dokutan/

                          (山本真奈美/冬木恵子)

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●読者の広場●海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ!
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 このコーナーでは、本誌に対するご感想・ご質問をはじめ、海外児童書にまつわる
お話、ご質問、ご意見等を募集しています。mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せ
ください。

※メールはなるべく400字以内で、ペンネームをつけてお送りください。
※タイトルには必ず「読者の広場」とお入れください。
※掲載時には、趣旨を変えない範囲で文章を改変させていただく場合があります。
※質問に対するお返事は、こちらに掲載させていただくことがあります。原則的に編
集部からメールでの回答はいたしませんので、ご了承ください。

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●お知らせ●

 本誌でご紹介した本を、各種のインターネット書店で簡単に参照していただけます。
こちらの「やまねこ翻訳クラブ オンライン書店」よりお入りください。
http://www.yamaneko.org/info/order.htm
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           ・☆・〜 次 号 予 告 〜・☆・

 詳細は10日ごろ「やまねこ翻訳クラブ・喫茶室掲示板」に掲載します。お楽しみに!
    http://www.yamaneko.or.tv/open/c-board/c-board.cgi?id=kissa

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▽▲▽▲▽   海外児童書のシノプシス作成・書評執筆を承ります   ▽▲▽▲▽

 やまねこ翻訳クラブ( yagisan@yamaneko.org )までお気軽にご相談ください。

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          http://honyakuwhod.blog.shinobi.jp/
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編集者の方々へのインタビューもあります!    〈フーダニット翻訳倶楽部〉
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●編集後記●通算200号。先輩方が積み上げてきたものの大きさを改めて感じていま
す。引き続き、児童文学の素晴らしさをお届けできるよう、頑張ります! 来月はお
休みをいただき、次回は9月号になります。次号もお楽しみに。(も)
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発 行 やまねこ翻訳クラブ
編集人 森井理沙/平野麻紗/三好美香(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
企 画 赤塚きょう子 尾被ほっぽ かまだゆうこ 蒲池由佳 小島明子 冬木恵子
    安田冬子 山本真奈美 山本みき
協 力 出版翻訳ネットワーク 管理人 小野仙内
    からくっこ ながさわくにお みちこ
    html版担当 ayo
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・このメールマガジンは、「まぐまぐ」( http://www.mag2.com/ )を利用して配信
しています。購読のお申し込み、解除は下記のページからお手続きください。
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・バックナンバーは、http://www.yamaneko.org/mgzn/ でご覧いただけます。
・ご意見・ご感想は mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せください。
・無断転載を禁じます。
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