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やまねこ10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」レビュー集>BGHB賞絵本部門レビュー集 その2

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 やまねこ10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」レビュー集

ボストングローブ・ホーンブック賞(アメリカ) レビュー集
Boston Globe–Horn Book Award

(絵本部門 その2)
 

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最終更新日 2009/10/05 レビューを1点、リンクを1点追加 

フィクションと詩 部門 / 絵本部門  その1 その2 / ノンフィクション部門 と特別賞
BGBH賞リスト(やまねこ資料室) 
BGHB賞の概要

このレビュー集について
 10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」においてやまねこ会員が個々に書いたレビューを、各児童文学賞ごとにまとめました。メ ールマガジン「月刊児童文学翻訳」「やまねこのおすすめ」などに掲載してきた〈やまねこ公式レビュー〉とは異なる、バラエティーあふれるレビューをお楽しみください。
 なお、レビューは注記のある場合を除き、邦訳の出ている作品については邦訳を参照して、邦訳の出ていない作品については原作を参照して書かれています。


(ボストングローブ・ホーンブック賞絵本部門 その1)   "A Story Story"『おはなし おはなし』"(リンク) * "The Hello, Goodby Window『こんにちは・さようならのまど』(リンク) * "Owen"『いつもいっしょ』(リンク) * "Cross-Country Cat"『スキーをはいたねこのヘンリー』"(リンク) * "'Let's Get a Pup'"『いぬがかいた〜い!』(リンク) * "Un Jour, Un Chien"『アンジュール ―― ある犬の物語』 * "Paper Crane" * "The Tale of Mandarin Ducks" * "In the Rain with Baby Duck" * "A Couple of Boys Have the Best Week Ever" * "Seven Brave Women" * "Big Momma Makes the World" * "The Gray Lady and the Strawberry Snatcher"(リンク)


(ボストングローブ・ホーンブック賞絵本部門 その2 本ページ)  "Doctor DeSoto"『歯いしゃのチュー先生』(リンク) * "The Fortune-Tellers" * "Potato" * "A Visit to William Blake's Inn"(リンク) * "Lon Po Po"『ロンポポ』(リンク) * "Dog and Bear: Two Friends・Three Stories"『いぬとくま いつもふたりは』 * "On Market Street"『ABCのおかいもの』(リンク) * "At Night"『よぞらをみあげて』 * "The Boy of the Three-Year Nap"『さんねんねたろう』(リンク) 追加 * "Five Creatures"『わたしのいえはごにんかぞく』 追加 * 


1983年ボストングローブ・ホーンブック賞絵本部門オナーブック

"Doctor DeSoto"(1982) by William Steig ウィリアム・スタイグ
『歯いしゃのチュー先生』 内海まお訳 評論社 1991

その他の受賞歴
1983年ニュベリー賞オナーブック
1983年米国図書賞(The American Book Award)絵本ハードカバー部門
1984年 オランダ銀の絵筆賞


 ニューベリー賞ラリー集を参照のこと


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1993年ボストングローブ・ホーンブック賞絵本部門受賞作品

"The Fortune-Tellers" (1992)  (未訳絵本)
 Lloyd Alexander ロイド・アリグザンダー 文 Trine Schart Hyman トリーナ・シャート・ハイマン 絵

その他の受賞歴 
1992年ゴールデン・カイト賞絵本部門オナーブック

・1992年度ニューヨークタイムズ・ベストイラスト賞
・1992年度BCCBブルーリボン賞絵本部門


 若い大工がいた。毎日、毎日、安い賃金で朝から晩まで働くことにほとほと嫌気が差し、ある日、町に有名な占い師がいると聞いて、自分の将来を占って貰うことにした。占い師は大工が一言も話さないうちから、彼の富と、健康と、幸せな結婚と、長寿を約束した。有頂天になった大工は小躍りしながら、家路を急いだが、ものの半分もいかないうちに、もっとあれこれ聞きたくなり、あわてて道を引き返してきた。ところが部屋に入ってみると、占い師の姿はかき消え、彼のかぶっていた帽子と水晶球があるばかり。恐る恐るそれを触っていたら、家主の夫人がやってきた。「なんてこと! 今朝見たときはよれよれじいさんだったのにハンサムな青年に! なんてすごい魔力だ」どんなに大工が説明しても、聞いてくれない。若い大工の運命は回り始めた。

 画家のトリーナ・シャート・ハイマンは、何度もコ賞、コ賞オナーを受賞しているが、この絵本では娘のパートナーの母国であるカメルーンの美しさと強さ、素晴らしい景色と人々の多様さを、孫に伝えたいと思ったのだそうだ。その言葉通り、ここに描かれているのは、美しく装った褐色の肌の人々と、はるか遠くに山々をのぞむ素晴らしい景色と、そこに住むさまざまな生き物だ。
 人々の表情は豊かで、お話はユーモアたっぷり。そんな馬鹿なと、思う読者を尻目に、どんどん話は転がって、思わず知らず引き込まれる。まるで落語のようなお話だ。果たしてあの老いぼれ占い師はいったいどうしたのだろうか。その顛末もお話の後半で十分に描かれている。

(尾被ほっぽ) 2008年12月公開 


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1997年ボストングローブ・ホーンブック賞絵本部門オナーブック

"Potato" (1997) Kate Lied 文 Lisa Campbell Ernst 絵 (未訳絵本)

その他の受賞歴 


 この本は作者の祖父母が経験した大恐慌の話だ。祖父母が結婚して最初の子どもが生まれたとき、祖父は失職し家を失った。祖母の父とともに炭鉱で職を得たがそこもある日、閉鎖されてしまう。人々はあらゆる場所で仕事を探した。ある人からアイダホでじゃがいもの収穫の仕事があると聞き、一家はお金を借りアイオワへ向かう。ニ週間テントに寝起きし、広大な畑で一日中じゃがいもを拾った。農場主が許してくれたので、夜は掘り忘れのじゃがいもを集めた。そうしてニ週間後、屋根の上からトランクの上までのせられるとこにはどこにでもじゃがいも袋をのっけて、一家は戻ってくる。生活に必要なものはじゃがいもと物々交換したのだ。

 事の大変さを感じさせない明るい色彩にかわいいイラスト、まるでピクニックにでもいくような一家の様子。大恐慌の悲惨さが感じられないという評があったけど、今現在、株価の急激な下落をTVや新聞で見聞きしていると、案外渦中に生きるものはそんなものかもしれないと思う。情報として知ってはいても、日々の生活に追われ、何の準備もしていない。悲惨だったというのは、後の人が言うセリフだろう。我々だって、これから来るかもしれない大波小波を、その時々に必死で潜り抜けていこうとするに違いない。のちの作家はどんなものに事寄せて思い出を語るのだろうか。

(尾被ほっぽ) 2008年12月公開 


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 1982年ボストングローブ・ホーンブック賞絵本部門

"A Visit to William Blake's Inn" (1980) (未訳絵本)
by Nancy Willard ナンシー・ウィラード、 
illustrated by Alice and Martin Provensen アリス&マーティン・プロヴィンセン

 やまねこ公式レビュー レビュー(月刊児童文学翻訳1999年10月号)

その他の受賞歴 ・1982年ニューベリー賞オナーブック
1982年コールデコット賞オナーブック
1981年ゴールデンカイト賞フィクション部門HB


 ニューベリー賞レビュー集を参照のこと

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1990年ボストングローブ・ホーンブック賞絵本部門受賞作品

"Lon Po Po"(1989) by Ed Young エド・ヤング
『ロンポポ』 藤本朝巳訳 古今社 1999年
 
 やまねこ公式レビュー レビュー(月刊児童文学翻訳2000年3月号)

その他の受賞歴 1990年 コールデコット賞オナーブック


コールデコット賞レビュー集を参照のこと 


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2007年ボストングローブ・ホーンブック賞絵本部門

"Dog and Bear: Two Friends・Three Stories"(2007) by Laura Vaccaro Seeger ローラ・ヴァッカロ・シーガー
『いぬとくま いつもふたりは』 落合恵子訳 クレヨンハウス 2008年
 

その他の受賞歴 
2005年ボローニャ国際ブックフェアのベスト・イラストレーター展ノミネート


「いすのうえのくま」「ねえねえ、あそぼ! いっしょに あそぼ!」「いぬ なまえを かえる」の3編で構成された絵本。登場するのは、ぬいぐるみのくまと本物のいぬ(ダックスフンド)だけです。
 1つめのお話で、くまは高いスツールの上にすわっています。いぬが散歩にさそうのですが、くまはこわくてスツールからおりられません。いぬが、自分の長い体をすべりだいにしておりるように提案。さて、どうなるでしょうか? 2つめは、本を読んでいるくまに、いぬが遊ぼうとしつこく誘い続けます。3つめは、犬が「あきたから、ぼく名前を変える」と言い出します。

 いぬとくま、新しい名コンビの誕生。ふたりはどんな関係かなと、わくわくしながらページをめくっていきました。元気ないぬと、少しこわがりのくま? 無邪気ないぬと、しっかりもののくまかな? ふたりの会話には個性がにじみ出ていて、絶妙。3つの話それぞれにちゃんとおちもあって、楽しめます。
 シーガーは、2007年に発表した "First the Egg"で、2008年コールデコット賞オナーブック、2008年ドクター・スース賞オナーブック、2007年ニューヨークタイムズ・ベストイラストレイティッド・ブックに選ばれるなど、注目を集めている絵本作家です。2008年4月に当作の続編 "Dog and Bear: Two's Company" が出版され、日本では、1作目(本作)と2作目(『いぬとくま ずっとふたりは』)が同時刊行となりました。

(植村わらび) 2009年4月公開 


 1981年ボストングローブ・ホーンブック賞絵本部門オナーブック

"On Market Street"(1981) illustrated by Anita Lobel アニータ・ローベル、text by Arnold Lobel アーノルド・ローベル
『ABCのおかいもの』 偕成社編集部訳 偕成社 1985年
 

その他の受賞歴 1982年 コールデコット賞オナーブック


コールデコット賞レビュー集を参照のこと 


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2008年ボストングローブ・ホーンブック賞絵本部門受賞作品

"At Night"(2007) by Jonathan Bean ジョナサン・ビーン
『よぞらをみあげて』 さくまゆみこ訳 ほるぷ出版 2009年
 

その他の受賞歴 2008年シャーロット・ゾロトウ賞オナーブック


 わたしの家には、屋上があります。せんたくものを干したり、植木鉢をたくさん置いたり、テーブルでお茶を飲んだりできるすてきなところです。みんなねむったのに、わたしだけがねむれない夜、まくらとシーツとおふとんを持ってわたしは屋上にいきます。きょうは満月。月明かりのなかで夜空を見上げるのです。

 さりげない日常のひとこまから、非日常の素敵な時間をプレゼントしてくれる絵本。ああ、屋上のあるおうちに住んでみたいなあと、誰もがそう思うでしょう。実際の屋上からの目線では、建物とビルと空だけしか見えないはずですが、作者は読者のために、もう少し上からの目線の景色を特別に見せてくれます。月明かりに照ら された大きな川と、川をゆく船と、ビルのあかり……。心が穏やかになっていくのを感じました。
 先に邦訳が出た『パパがやいたアップルパイ』(ジョナサン・ビーン絵/ローレン・トンプソン文/谷川俊太郎訳/ほるぷ出版/2008年)の版画調の画風とは異なる、やわらかい線と色調の小ぶりの絵本です。

(植村わらび) 2009年7月公開 


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1988年ボストングローブ・ホーンブック賞絵本部門オナーブック

"The Boy of the Three-Year Nap" (1988)   illustrated by Allen Say アレン・セイ、text by Dianne Snyder ダイアン・スナイダー 追加
『さんねんねたろう』 もりたきよみ訳 新世研究 2000年
その他の受賞歴
1989年コールデコット賞オナーブック

コールデコット賞レビュー集を参照のこと 


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2001年ボストングローブ・ホーンブック賞絵本部門オナーブック

"Five Creatures" (2002) illustrated by Tomek Bogacki トメク・ボガツキ、text by Emily Jenkins エミリー・ジェンキンス
『わたしのいえはごにんかぞく』 木坂涼訳 講談社 2002年 (邦訳絵本)  追加

その他の受賞歴 


 赤い屋根の家に5人家族が住んでいる。人間3人。ネコ2人。背が高いのは2人。低いのは3人。髪の毛が長いのは2人。短いのは3人。オレンジ色が3人で、2人はグレー。
 4人は魚が大好き。3人はお風呂が嫌い。食器棚の戸をうまく開けられるのは4人。高い椅子に座ることができるのも4人。1人は夜おそく歌を歌い、朝になって歌いだすのも1人いる。日曜日になれば、3人は新聞といっしょに昼寝して、その横で2人は本を広げる。
 さてさてどれが人間で、どれがネコたち?それは絵本を見てのお楽しみ。パステルに水彩(たぶん)の温かな色合いで描かれた世界をのぞくと、丸い目をくるくる動かして5人が出迎えてくれる。

 英語と日本語のニュアンスの違いを如実に感じさせてくれる本だ。原題は“Five Creatures”直訳すれば「5つの生き物」といった感じだろうか。一つ屋根の下にいっしょに住んでいるメンバーのありさまを、それぞれが持つ特徴にあわせて紹介していく。それが実に公平で偏見がないので、言葉だけ聞けば人間なのかどうか判別がつかない。だからこそ同じ生き物として、お互いがいつくしみあって暮らしていることが伝わってくる。
 ところが日本語だと最初から、5人の穏やかで温かなつながりがわかる。日本語はものによって数え方が違う。時としてそのことは人間と他のものを分ける基準ともなるが、取り去ってしまうとより親しさが増すというわけだ。邦題では「5人家族」として動物も「1人」と数えていく。「5人家族」と一言いうだけで、成員がなんであろうとも、仲良しぶりが伝わってくるではないか。ネコも人間も一つの家族。仲良し5人家族に拍手。

(尾被ほっぽ) 2009年10月公開 


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